2021年おすすめ新譜アルバムVol. 34: Guapdad 4000 & !llmind「1176」
新譜アルバム紹介Vol. 34です。
今回紹介するのは、ベイのラッパーのGuapdad 4000とニュージャージーのプロデューサーの!llmindがリリースした「1176」です。
Guapdad 4000はベイ出身のラッパーで、!llmindはニュージャージー出身のプロデューサーです。二人ともフィリピン系アメリカ人という共通点があり、今作はアジア系アメリカ人やアジア人のアーティストの作品をリリースする88risingからのリリースです。
Guapdad 4000は10年代後半にシーンに登場。19年のアルバム「Dior Deposits」などをリリースしています。!llmindは90年代後半から活動しており、ScarfaceやG-Unitなどをプロデュースしています。二人が組むのは恐らく今作が初。88risingとの絡みでは、Higher Brothersの19年作「Five Stars」やRich Brianの20年のシングル「BALI」などへのGuapdad 4000の参加があります。
Guapdad 4000は高めの声質で、歌心のあるフロウや軽妙なフロウを聴かせるスタイルです。路線的にはメロウやベイらしいファンク、トラップなど多彩。どこかファニーな雰囲気を出すのが得意なアーティストです。!llmindは初期はブーンバップが中心でしたが、Gファンク風味やトラップなどこちらも多彩な作風を持っています。ストイックになりすぎないブーンバップや燻んだような質感のトラップなど、多彩な引き出しがあるからこそのテクニックを感じさせるプロデューサーです。
今作もトラップやソウルフル路線などやはり多彩な曲が揃っていますが、芯が通ったタッグ作ならではのバランスがある良作に仕上がっています。
1. How Many
寂しげなギターをループしたトラップ。
圧の強いキックとドロッとしたベースが効いており、しっかりと!llmindの質感に仕上がっています。Guapdad 4000の優しい歌フロウも見事にマッチしています。
!llmindの名前はクレジットされておらず、P-LoとMansaによるプロデュース。
Ying Yang Twinsの名曲「Wait (The Whisper Song)」を思わせる、スカスカの静寂系バンガーです。後半には囁きラップも披露。
3. 10finity
James Delgado制作でこちらも!llmindの名前がない曲です。
ノスタルジックなピアノと歌のサンプル、遠くから聞こえてくるようなドラムを使ったビートで歌うインタールード的な曲です。Guapdad 4000の優しい歌フロウが映えています。
4. Big Shot
Al Hugと!llmindの共作。
アジアな響きのギター(?)が印象に残る、寂しげな雰囲気の曲です。テキサスG名曲の引用でオヤGの方はソファに泣き崩れるはず。
今作のベストトラック。
ボコボコと鳴る低音に笛のような音やピアノが絡むビートに、Guapdad 4000の軽妙なラップが乗るエモーショナルな曲です。メロディアス成分は控えめながら心地良く聴けます。
8. Touch Dough
DTBプロデュース。
シリアスなピアノループに手数の多いドラムを使った、現行ベイらしいバンギンな曲です。フックでは例の高音シンセとToo $hortの例の声ネタが入ってきます。
10. Uncle Ricky
Wu-Tang Clanがやりそうなブーンバップ。
琴のような音のループに太いドラムを絡めたビートで、Guapdad 4000が飄々としたラップを乗せる好曲です。声ネタ(?)のフックもマッチしています。
今作のハイライトの一つ。
浮遊感のあるメロウなウワモノに、生っぽい質感の優しいドラムを合わせたビートが心地良い佳曲です。BuddyとGuapdad 4000のメロディアスなアプローチも抜群。
13. Chicken Adobo
ハイライトが続きます。
ノスタルジックなアコースティックギターを使ったトラップビートで、Guapdad 4000が歌フロウを優しく聴かせる良曲です。生演奏と思しき動きのあるギターの絡みが極上。
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