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2024年おすすめ新譜アルバムVol. 57: MIKE & Tony Seltzer「Pinball」

新譜アルバム紹介Vol. 57です。

今回紹介するのは、NYのラッパーのMIKEとプロデューサーのTony Seltzerがリリースした「Pinball」です。

MIKEはニュージャージー出身でNYを拠点に活動するラッパーで、Tony SeltzerはNY出身のプロデューサーです。

二人とも2010年代前半に活動を開始。MIKEは2010年代半ば頃から精力的にソロ作をリリースし、Tony SeltzerはJay CritchやPrincess Nokiaなどの作品を手掛けていきます。2017年にはMIKEのアルバム「MAY GOD BLESS YOUR HUSTLE」収録の二曲をTony Selzterがプロデュース。その後もNiontayの2023年作「Demon Muppy」収録の「Real Hiphop」で共作しています。

MIKEは太く低い声質で落ち着いたフロウを聴かせるラッパーです。ジャズやソウルをサンプリングして歪なセンスで組み立てる、MF DOOM的な音楽性の持ち主です。Tony Seltzerはブーンバップも作りますが、ネタ感の強いトラップを得意としています。

今作はMIKEのセンスとTony Seltzerの手腕が完璧に融合した、タッグ作ならではの魅力が出た作品です。トラップ寄りの曲も多いのでMIKEファンの方は戸惑うかもしれませんが、挑戦的な試みやトラップとしての面白さを楽しめる方は是非。


1. Two Door

メンフィスラップの声ネタを使ったダークな曲。

妖しいシンセのループとダーティな808が効いたビートで、MIKEの太いラップが楽しめる好曲です。BeatKingみたいな良さがあります。


4. On God (feat. Earl Sweatshirt & Tony Shhnow)

今作のベストトラック。

スペイシーで不穏なシンセやシリアスなピアノを使ったプラグ系の曲です。フックを担当するEarl Sweatshirtも、Lil Uzi Vertのリリックを引用しつつ見事にビートに溶け込んでいます。


5. Skurrr

大ネタ使いのリラックスした曲。

ドリーミーな質感と細かく揺れるようなグルーヴ、後半のピッチチェンジなどMIKE寄りの印象です。ドラムも非トラップ的。


6. Underground Kingz

R&B色の強いメロウなネタを使った曲。

高音シンセやスウィートな歌声の切れ端と手数の多い808が効いたビートで、まろやかなラップを聴かせる良曲です。後半ではスピードアップします。


8. R&B

MIKE寄りのスタイル。

例の高音シンセのループと繊細なドラムを用いた、リラックスしたメロウ曲です。チョップド&スクリュード仕様のアウトロも印象的。


9. Reminiscing (feat. Jay Critch)

今作のハイライトの一つ。

Zaytovenが作りそうなプラグ系のダークなビートで、Jay Critchの歯切れ良いラップと絡む佳曲です。ヴァース交代の瞬間がお気に入り。


11. 2k24 Tour (feat. Niontay)

ストリングスが目立つドラマティックな曲。

ソウルフルなビートですが、Jeezyタイプビートからドラムの手数を減らしたような味もあります。Niontayの脱力フロウとも好相性。

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