2023年おすすめ新譜アルバムVol. 57: JPEGMAFIA & Danny Brown「SCARING THE HOES」
新譜アルバム紹介Vol. 57です。
今回紹介するのは、NYのラッパー兼プロデューサーのJPEGMAFIAとデトロイトのラッパーのDanny Brownがリリースした「SCARING THE HOES」です。
JPEGMAFIAはNY生まれのラッパー兼プロデューサーで、Danny Brownはデトロイト出身のラッパーです。
JPEGMAFIAは2010年代前半、Danny Brownは2000年代後半に登場。2010年代にはそれぞれソロでのアルバムやミックステープを数枚発表してきました。初合体はDanny Brownの2019年作「uknowhatimsayin¿」収録の2曲で、タッグ作のリリースは今作が初となります。また、この後もEP「SCARING THE HOES: DLC PACK」をリリースしています。
JPEGMAFIAは、クラウドラップやノイズ、R&Bなどをミックスした奇怪な音作りを聴かせるアーティストです。ラップはSpaceGhostPurrpの影響を感じさせるスタイル。Danny Brownは基本的には素っ頓狂な高音でユーモラスな味のあるフロウを聴かせるラッパーですが、時折低めの発声で迫力のあるフロウを聴かせることもあります。かなりの実力派ラッパーです。路線としてはブーンバップを軸にしつつ、ダブステップやクラウドラップなど多彩なビートに果敢に挑みます。
今作は多彩な質感のネタをサンプリングした刺激的なビートで、伸び伸びとした二人のラップが堪能できる快作に仕上がっています。一聴すると奇怪なようで、かなりオーセンティックなブーンバップとしても楽しめる作品です。
早回しサンプリングが印象的な曲。
硬質なシンセや固いドラムの鳴りなど、JPEGMAFIAなりにJ Dilla的デトロイトヒップホップを作ったような要素もある曲です。二人のラップとの相性もばっちり。
2. Steppa Pig
極太シンセが目立つエレクトロニックなブーンバップ。
この曲のドラムも固い鳴りで、やはりJ Dillaマナーを咀嚼したような味わいがあります。引き続きチップマンク・ソウルも使用。
フリーキーなラップが映えるスカスカな曲。
クラップやヨロヨロのサックスをメインに、ロックっぽい質感のスネアや蠢くようなベースが絡むユニークな曲です。Danny Brownのラップが特に強力。
昨年のZelooperZのアルバムに入っていそうなメロウ曲。
スムースな歌声をループしたR&B風味のビートに、二人のキレのあるラップが乗った好曲です。フロウは詰め込み気味ですがリラックスした良さがあります。
10. God Loves You
2000年代前半のJust BlazeやKanye Westの作風を、思いっきり音を悪くして作ったみたいな曲。
ソウルフルなネタ使いとタイトなドラムに、邪悪な低音が合わさったドロドロのブーンバップです。妙に明るいDanny BrownとダウナーなJPEGMAFIAの異なるラップのアプローチも見事。
心地良いエレピを使ったJPEGMAFIA流ジャジーヒップホップ。
ビートの展開も凝っており、途中JPEGMAFIAがメロディアスに歌ったりと仕掛けが多く楽しい曲です。抜けの良いドラムの入れ方も絶妙。
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