2024年おすすめ新譜アルバムVol. 13: PRICE「C.I.T.Y.」
新譜アルバム紹介Vol. 13です。
今回紹介するのは、西海岸のラッパー兼プロデューサーのPRICEがリリースした「C.I.T.Y.」です。
PRICEは西海岸出身のラッパー兼プロデューサーです。
2000年代半ば頃に登場。初期はラップデュオのAudio Pushで活動し、2012年のシングル「Teach Me How to Jerk」のヒットのほか、2016年のアルバム「90951」のリリースなどを行います。ソロ活動は2020年頃から本格化。2020年には初のアルバム「CLRD.」をリリースし、その後も2022年の「THE PRICE EP」や2023年の「NO SLEEP IN THE CITY」など精力的に作品を発表しています。
低めの濁った声質で、詰め込み気味のフロウからゆったりとした歌心のあるフロウまで器用に使うスキルフルなラッパーです。サウンド的には初期はジャーキンを作っていましたが、後にトラップやブーンバップなども導入。現在はTDE勢あたりに通じる音楽性です。
今作はゴスペルの匂いが漂うソウルフルな路線を中心に、ハードな路線も少し織り交ぜたサウンドで実力あるラップが楽しめる快作に仕上がっています。
PRICEとDJ Camperの共作。
ミニマルにピアノを鳴らした音数少なめのビートで、Eazy-E風のフロウも交えてラップする西海岸らしい曲です。T-Painの一瞬の使い方も絶妙。
3. REJOICE
セルフプロデュース。
ハープの音を使った哀愁漂うメロウなトラップから、ドラムレスのソウルフルなビートにスイッチする構成です。フロウの切り替えも含めてPRICEの器用さが感じられます。
例の高音シンセをループしたラチェット系の曲。
ベースもブリブリでG色強めですが、バウンシーな808はやはり現行マナーです。一人で掛け合うようなラップも楽しく聴けます。
5. PROTECTED 2
DJ Camper制作のソウルフル路線。
歌声のサンプリングや美しいピアノ、太いドラムが印象的なブーンバップ寄りの曲です。生演奏っぽいピアノとラップの組み合わせが沁みます。
6. CUZO
今作のハイライトの一つ。
セルフプロデュースの哀愁系トラップです。歌声をピッチを変えて用いたビートで、PRICEの落ち着いたラップが堪能できる良曲。
7. CREAM OF WHEAT (feat. Alex Vaughn)
DJ Camperプロデュース。
モコモコとしたブギーっぽいベースを使ったR&B寄りのビートで、Alex Vaughnの漂うような歌声と絡む好曲です。ここでも生演奏と思しきピアノが光ります。
9. PROUD
Hit-Boy制作。
前半では美しいピアノと骨太ドラムが目立つブーンバップ系のビートを、堅実なラップで乗りこなしています。後半にはより自由度の高いゴスペルっぽいサウンドに変化。
10. WRITEOUS
美しい歌声とピアノが目立つ曲。
ウワモノはジャジーヒップホップ的ですが、808のバウンシーな使い方は2010年代以降のウェッサイマナーです。PRICEの真摯なラップも見事。
11. HARDT ST
ソウルフルなヴォーカルをサンプリングした曲。
途中までネタのみで進むドラムレスブーンバップ的なビートですが、ブリブリのベースや硬質なギター(?)などが入ってきてウェッサイ流儀になります。アウトロでのネタに被せた歌声も素晴らしいです。
Drakeo the Rulerがやりそうなシリアスな曲。
ブヨブヨのベースと浮遊感のあるシンセ、冷たいピアノをループしたバンギンです。PRICEの淡々としたラップにも凄味があります。
ここから先は
¥ 100
購入、サポート、シェア、フォロー、G好きなのでI Want It Allです