見出し画像

2022年おすすめ新譜アルバムVol. 30: Pusha T「It's Almost Dry」

新譜アルバム紹介Vol. 30です。

今回紹介するのは、ヴァージニアのラッパーのPusha Tがリリースした「It's Almost Dry」です。

ジャケ

Pusha Tはヴァージニア育ちのラッパーです。

ラップデュオのClipseのメンバーとして1990年代後半に登場。単独での客演は2000年代前半からあったものの、ソロ作のリリースは長い間なくデュオでの活動を中心に行っていました。その後Clipseでの活動は2009年のアルバム「Til the Casket Drops」を最後に休止し、Pusha Tはソロに転向。2011年には初のソロでのミックステープ「Fear of God」を発表します。同年には1stソロアルバム「Fear Of God II: Let Us Pray」をリリース。以降も2013年の「My Name Is My Name」などのアルバムをリリースし、精力的に活動しています。

少し高めの声質でMaseの影響を感じさせるネチネチとしたフロウを聴かせるラッパーです。サウンド的にはブーンバップを好みつつも、それをストレートにはやらずにエレクトロニックな音色や捻ったビートを使う傾向にあります。

今作はPharrell WilliamsとKanye Westがメインプロデューサーを務めた作品で、ダークなものやソウルフルなものでそのスキルフルなラップを聴かせる良作に仕上がっています。音数がやたら少ないか逆に声ネタでゴチャゴチャしているビートが多く、ラップ力が高くないと成立しない音楽です。


1. Brambleton

Pharrell Willliamsプロデュース。

不穏なシンセのループにボコボコした低音を合わせた、エレクトロニックな音色でブーンバップを作ったような曲です。Mobb Deep作品にも通じる緊張感があります。


3. Dreamin Of The Past Feat. Kanye West

Kanye West制作のソウルフル路線。

ソウルフルなネタを歌声ごとチョップし、ドラム控えめに組み上げたGriseldaなどの現行ブーンバップ勢に通じる曲です。歌声が主張するビートを軽々と乗りこなすラップ力の高さに唸らされます。


4. Neck & Wrist Feat. JAY-Z & Pharrell Williams

ミニマルなシンセと凶悪な低音が効いたハードな曲。

後ろで喋り声がかなり聞こえる混沌とした空気の中、JAY-Zと共にスキルフルなラップを聴かせる良曲です。フックでのPusha Tのフロウは今作の中でも特にMase度が高め。


6. Diet Coke

Kanye Westと88-Keysの共作。

ミニマルなピアノループにスクラッチでFat Joeの声ネタを入れた、ラップを乗せなくても成立しそうな曲です。しかしPusha Tのラップ力で見事に乗りこなしています。


7. Rock N Roll Feat. Kanye West & Kid Cudi

Beyoncé「1+1」ネタのチップマンク・ソウル。

Kanye WestとPharrell Williamsの両者(とOjivolta)がプロデューサーとしてクレジットされており、不穏なシンセとネタ使いとどちらのカラーも感じられる曲です。後半で登場するKanye Westのエモーショナルに歌うようなラップも良い味を出しています。


9. Scrape It Off Feat. Don Toliver & Lil Uzi Vert

Pharrell Williams制作のミニマルな曲。

奇妙な声ネタがアクセントになったビートで、速度の細かい変化が巧みなLil Uzi Vertと終始ネチネチとしたPusha Tと異なるアプローチのラップが楽しめます。フックを歌うDon Toliverもサラっと複雑なフロウを使用。


12. I Pray for You Feat. Labrinth & Malice

相方のMaliceとシンガーのLabrinthをフィーチャー。

オルガンの響きが少しゴスペルっぽい空気を醸し出した、近年のKanye Westらしい曲です。Labrinthの美しい歌声とPusha T同様のネチネチとしたMaliceのラップも好相性。

ここから先は

0字

¥ 100

購入、サポート、シェア、フォロー、G好きなのでI Want It Allです