2021年おすすめ新譜アルバムVol. 90: Baby Keem「The Melodic Blue」
新譜アルバム紹介Vol. 90です。
今回紹介するのは、西海岸のラッパー兼プロデューサーのBaby Keemがリリースした「The Melodic Blue」です。
Baby Keemは西海岸生まれラスヴェガス育ちのラッパー兼プロデューサーです。
10年代半ば頃に登場。初期はHykeem Carter名義で活動し、18年には映画「Black Panther」のサウンドトラックとJay Rockのアルバム「Redemption」とTDE関連作にプロデューサーとして参加します。自身の活動としても18年は「No Name」と「Hearts & Darts」の二枚のEP、ミックステープ「The Sound of Bad Habit」をリリース。19年には二枚目のミックステープ「DIE FOR MY BITCH」をリリースし、20年にはKendrick Lamar率いるpgLangに加入します。現在その人気を広めつつある新進アーティストです。
高い声で歌心のあるフロウを聴かせることが多いですが、低い声でどっしりとしたフロウも使える多才な引き出しの持ち主です。プロデューサーとしてはトラップをベースに、Kanye West的なマッドなセンスを加えたような作風を聴かせます。
今作はジャーキンのような遊びの要素も感じられる一筋縄では行かないビートに、フロウ面でも遊びを入れたキレのあるラップが乗る傑作に仕上がっています。
重厚なシンセが効いたTravis Scottが出てきそうな曲。
痺れるような低音シンセや例の高音シンセ、ヴォコーダーで南部とは違う西海岸フレイバーが出ています。囁きフロウも交えた変幻自在なラップもユニークな魅力。
2. pink panties
ボストンのシンガー、Che Ecruの「Fuck...Instagram」をサンプリングした曲。
シンセが印象的なビートも歌も大胆にサンプリングし(原曲を聴くとビックリします)、ボコボコしたドラムなどを合わせた変則ジャーキンです。Baby Keemの歌心のあるアプローチも見事。
4. range brothers with Kendrick Lamar
次々とビートが変化していくスリリングな曲。
ダーティな低音が響くトラップを軸に、Eminemが使いそうなシリアスなストリングスや逆再生っぽいシンセが彩るビートが強烈です。Kendrick Lamarのラップもキレ味抜群。
5. issues
Kanye West「808s & Heartbreak」に入っていそうな曲。
ピアノや重厚なシンセが効いたトリップホップっぽいビートに、クールに歌を乗せていく良曲です。インディ好きの方も是非。
6. gorgeous
Cardoも制作に関わった曲。
Travis Scottタイプのダークなトラップ路線です。冷たいピアノや凶悪な808が目立ちますが、フックで入ってくる高音シンセにCardoが確かに感じられます。
7. south africa
今作のベストトラック。
ピアノとダーティな808を用いたSoulja Boyがやりそうなビートでラップが際立つ曲です。のっぺりと伸ばすフロウやフリーキーなフロウなど、フロウの幅が堪能できます。
8. lost souls
穏やかなエレピが心地良い哀愁メロウ。
全16曲(デラックス版は19曲ですが)の8曲目という折り返し地点なので、A面の締めのような立ち位置の曲なのかもしれません。歌心のあるBaby Keemのラップが沁みます。
少しラテンっぽい匂いもするバウンス路線。
ボコボコした低音やミニマルなバンジョー(?)が目立つアッパーな曲です。妙にブラスバンドっぽい鳴りのバスドラやホーンがユニークな味をプラスしています。
11. scars
Kanye West「Love Lockdown」ネタ。
ザカザカとしたパーカッションと冷たいピアノを使ったシリアスな空気で、メロディアスなフロウを聴かせる佳曲です。スキャットの入れ方も印象的。
12. durag activity with Travis Scott
ミニマルかつダークなトラップ。
シンプルに繰り返されるシンセのループやダーティな低音を使ったビートで、クールなBaby Keemと高めな発声も交えたTravis Scottのラップが絡む好曲です。二人のバランスが絶妙。
16. 16
DJ DahiとJeff Kleinmanの共作。
穏やかなエレピで歌うようにラップした哀愁メロウ曲です。しかし随所でルーパーを使ったような不自然なドラムの連打が入り、ただの良い曲では終わらないユニークな魅力が出ています。
ここから先は
¥ 100
購入、サポート、シェア、フォロー、G好きなのでI Want It Allです