FA杯準決勝を終えて。監督インタビュー和訳。
前書き
パトリック・ヴィエラ体制1年目で臨んだFA杯。
魔境、The Denでのサウスロンドンダービーとなったミルウォール戦。
相手監督の奥さんの病気の治療のためにサポーターとクラブが多額の寄付をしたハートルプール戦。
中々出場機会を得られなかったリーデヴァルトがまさかの逆足で勝ち越しゴールを決めたストーク戦。
苦しい序盤を乗り越え、苦手なセットプレーで若きゲームキャプテンが先制ゴールをこじ開け大勝したエヴァートン戦。
我々パレスサポーターに様々な思い出を残してくれたFA杯はフットボールの母国の聖地、Wembleyでの準決勝チェルシー戦での敗戦によって幕を閉じた。
3万人を超えるパレスサポーターによる、まるでセルハースト・パークかと錯覚させるような素晴らしい雰囲気の中、悔しい敗戦となってしまったが、指揮官パトリック・ヴィエラは以下の様に振り返っている。
Football London
今日の試合のパフォーマンスはいかがでしたか?
不運だったとは思わない。ベストのプレーをしようと試みたが、今日はチェルシーが良かった。良すぎた。彼らを苦しませようとゲームプランを組んだし、前半はうまく行った。最善を尽くしたけど及ばなかった。
いくつか良い形でボールを奪うシーンがあったが、前線の2枚を見つけられず、素早く繋げられなかった。その間にチェルシーに攻め手を絶たれてしまった。試合を闘ったチームを誇りに思うよ。前半は素晴らしかったけど、得点は挙げられなかったね。
試合後、ミッチェルが敗戦に対して動揺しているように見えましたがどうですか?
彼は大丈夫だろう。こういった試合の経験が、彼を成長させる。感情をコントロールする方法を学び、今日のような試合を経験すればするほど、彼は成長していくだろう。
マテタとアイェウの交代の意図について
右サイドでリースジェームズがボールを持ち過ぎていて前線の2枚がそっちに引っ張られているのが問題だった。クヤテを一列上げ、4バックに戻し、攻守の循環のためにもう少し中盤のサポートを増やしたいと思いアイェウを投入したが、少しペースを落とし過ぎてしまい、ジョルジーニョによりボールを握られてしまった。
5バックの採用など守備陣の起用について
チェルシーの前線5枚(アロンソ、ハヴァーツ、ヴェルナー、マウント、アスピリクエタ)を数的同数で監視したかった。セルハーストパークでは、サイドで苦しめられた。4バックの間(ボックスの角)を走られ、チャンスを作られたのでそれを防ぐ意図があった。
オリーセの怪我とギャラガーの欠場が選手選考に影響を及ぼしましたか?
答えるのが難しい質問だが、いない戦力を計算に入れることはない。現有戦力の中で選手の選考をする。それ以上でもそれ以下でもない。
サポーターの熱狂などが、自分がプレミアリーグの監督だと実感することにつながりますか?
監督として、選手やスタッフとトレーニングを通して高めあうことで自分自身の成長にもつながっていると思う。より高いレベルでこういった機会を享受できるプレミアリーグに戻ることができて本当に嬉しい。
皆さん(メディア)が先ほど目撃した試合の雰囲気がこの試合が最高レベルだったということを物語っている。プレミアリーグはどのスタジアムも素晴らしい雰囲気を持っているが、ウェンブリーは特に素晴らしい。出来るだけ早くこの場所に戻って来れるようにハードワークをし続けたい。
クヤテのパフォーマンスはどのように振り返りますか?
彼は昨シーズンCBをメインにプレーしていたということは当然把握しているので難しい決断ではなかった。彼はポジショニング能力に長けていて、ウォード、アンデルセンを助けた。
今日の最終ラインは準備してきたことを遺憾なく発揮してくれてとても満足をしているが、結果が全てだ。
クラインが先発から外れることを彼に伝えるのは難しかったですか?
もちろん、右SBに関する決断は難しかったし、アイェウを先発で使うかどうかの決断も、ここ数週間トレーニングから外れているオリーセの起用の決断も難しかった。だがこれは、ある種の私が望む状況でもある。スタメン選出について、選手は競争によって私を悩ませてほしいし、競争が生まれるとき、クラブは今よりいい位置にいるだろう。
今シーズン、ビッグクラブに対して接戦を演じ、多くの勝利を挙げましたが、今日は難しいものとなりました。もう少し運が向けばよかったですね?
キーパーから前線まで世界的なプレーヤーを擁する、準決勝や決勝などの大舞台になれているチームに勝つ必要があるなら、幾許かの運も必要だろう。私たちは先日のリヴァプール戦で運の重要性を実感したと同時に、難しさも感じた。
リーグは彼らが上位を争い、その次に我々が存在している。
我々はフットボールクラブとして価値観を持つチームを構築し、彼らと同じ土俵で争えるようになりたいと考えている。そして今日、我々はいい試合を演じたが、まだまだ我々と彼らの間には大きな差が存在する。
パレス公式HPによるヴィエラの声明
決勝に近い雰囲気がある試合でプレーすることは選手にとって本当に貴重な経験だ。選手であれば、このような経験を何度も味わいたいと思うに違いない。
今日のファンの姿を見て、彼らは選手たちのプレーひとつひとつに興奮してくれた。どのコンペティションでもこのクラブのサポーターはとてつもない声援を送ってくれる。素晴らしい熱量の興奮がこのクラブを包んでいる。だからこそ、いま取り組んでいる土台づくり(チームの強化のみならず、アカデミーの新設や、スタジアムの増設案等)が重要だ。
今はこのクラブにとって、とてもエキサイティングな時期であり、少しでも多くこういった経験をするために私たちは進み続けなければならない。私は素晴らしいフットボールクラブの中で、監督という本当に良い仕事をさせてもらっている。だからこそ、このクラブを違うレベルに押し上げたいし、そのために働き続けなければならない。
戦術面から見るゲームの振り返り(Football Londonの補足記事)
今日の結果が、現時点でチームが発揮できるクオリティを表している。ボールを保持し、チャンスを作ろうとしても他の箇所で問題が生じてしまう。前半はよかった。チェルシーにこれというチャンスを作らせず、彼らは見るからにイライラしていた。
試合を通して、選手たちに指示し、実行してくれた戦術面に満足はしているが、勝たなければ何にもならない。今日のようなビッグゲームでは、いい時間帯に店を決め切ることが何よりも重要だが、やり切ることができなかった。
彼らの後半のポゼッションへのアプローチによって、選手たちは左右にかなりの距離を走らされ、苦しめられた。その結果、ボールにプレッシャーをかけられなくなってきて、ジョルジーニョに多くの時間を与えてしまった。彼にそれだけの時間を与えることは我々にとって致命傷の一つだった。
彼らはCLのチャンピオンであり、クラブW杯のチャンピオンであり、FA杯のチャンピオンだ。我々とは違うレベルにある。しかし、我々が実行したゲームプランによって、チャンピオンを苦しめることができた。本当に選手たちを誇りに思う。
今日の前半のようなパフォーマンスを基準にこれからチームを構築していく。
PalaceTV インタビュー
残念ながら負けてしまいましたが、チームのパフォーマンスを誇りに思いますか?
今日やろうとした事、パフォーマンスの出来をとても誇りに思っている。また、ファンがつくり出してくれたスタジアムの雰囲気は素晴らしく、誇りに思う。
決勝まであと少しだっただけに悲しい。ただ、この大会を通じてやってきたことは結果を見ても正しかったし、ポジティブだと思う。このようなチームをまた作り上げていかなければいけないね。
スタメンから選手を少し変えてフォーメーションをいじり、うまくいった時間もありましたね?
あぁ、1週間このシステムを想定して練習してきたし、その結果いいプレーもできた。
特に前半はよかった。でも、後半は常にボールの動きに対して受動的に動かなければならず、フラストレーションを抱えた。それでもボールを追いかけなければいけない展開の中で改善をしなければいけなかった。
でも、全体を通したパフォーマンスには満足している。なんてったって相手はチェルシーだからね。そんな中でもチャンスを作ることができた。特に前半は好セーブに阻まれたものの、ゴールに迫る雰囲気を出すことができた。結果には結びつかなかったけどね。
若手選手を数多く抱える中で、通常のビッグマッチとは異なる雰囲気のもとプレーをしましたが、今日のような試合をまたしたいと思いますか?
このような舞台に立つために日頃から練習をしている。今日の試合の雰囲気やプレッシャーはチーム作りをする上でとても重要だ。このような試合をもっとしたいという欲望を選手たちが常に持ち続けることが、練習を続け、自分自身を高め続けることにつながる。
最後に、初めてウェンブリーでパレスファンと対峙しましたが、どうでしたか?
正直なところ言葉を失ったよ。試合を通してずっと素晴らしかったからね。ドレッシングルームでこのリーグで1番のファンのみんなを決勝に連れてって喜ばせたいって話していたよ。わざわざウェンブリーまで来てくれたしね。
でも出来なかった。チェルシーにはテクニカルな部分で上回られてしまった。それでもこのチームのタレントと能力はファンのみんなには見せられたと思う。これを土台にチーム作りを強化して、できるだけ早くみんなとウェンブリーに戻ってきたい。
あとがき
結果的には惜しくも、内容的には実力差を見せられて敗戦してしまったFA杯だが、ミッチェルやエゼ、グエイ、オリーセ等若手選手がウェンブリーの舞台を経験できたことはかなりプラスに働くと考えている。
さらにアカデミーの選手たちもスタンドからプレーを見守っていたようで、彼らのモチベーションに繋がることを期待する。
ヴィエラ体制1年目、両CBを含む相当数の選手の入れ替わりを経験し、システムも去年までのものとはかなり異なるものに取り組んでいる中でこのような結果を残せたことはクラブにとってかなり有意義だったのだと思う。
ヴィエラが言うように近いうちにウェンブリーで戴冠式をあげるパレスの選手たちの姿を早く見れることを期待している。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?