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独り立ちの瞬間、どれだけ「信用スコア」が溜まっているか?

コロナ不安が薄らいだ2023年春。
私が主宰するフリーランス塾に新入生たちがやってきました。

塾には「いつかはフリーランス学部」と「すでにフリーランス学部」の2学部があります。今回は「いつかは学部」に定員を超える応募があったため、応募レポートをもとに選考させていただきました。

選ばれる人と選ばれない人--この「人を選ぶプロセス」が近年大きく変化しています。私は今回「選ぶ側」に立って、そのことを実感しました。

今回の選考プロセスで実感した「やってきた未来」。
塾生だけでなく、残念ながら落選となった方、そしていつか塾に応募してくれるかもしれない皆さんに向けてこれを書くことにしました。
キーワードは「信用スコア」です。

タイミーに内在化する評価システム

最近話題のChatGPT、大きな声では言えませんが、私はまったくすごいと思いません。でも周りがあまりに騒ぐので仕方なく話を合わせています。
興奮する彼らを見ながら、ある人のことを思い出します。学生時代、肉体労働のバイトをしていたときの現場監督(中年独身男性)です。彼はとても面倒見がよく、我々を自腹で飲みに連れて行ってくれました。ある日、彼がとんでもない自慢を話しはじめました。
なんでも通販で新型のダッチワイフを買ったところ、その具合がたいへんよろしいのだと。「人間よりよっぽどいいんだぜ」と豪語する彼にどう相づちを打てばいいのか、困惑したことを覚えています。
それを懐かしく思い出します。「ChatGPTすげえんだよ」と興奮する人たちをみると。でもこれは他人がとやかく言う問題ではありません。気を悪くせず、思う存分デジタル・ダッチワイフを楽しんでくれ、アミーゴ。

おっといきなり話が脱線してしまった。
「ChatGPTすげえ」と騒ぐ人たちを尻目に、私がそれよりはるかに衝撃を受けたのが「タイミー」なんです。そう、最近の高校生や大学生がバイトを探すのに使っている、あの有名アプリ。知らない大人のために説明すると、若い子たちは「明日の午後バイトしたい」と思ったとき、仕事を探すのに使うのがタイミーです。そこには「ご近所の明日の仕事の求人」が出ています。

わが子たちもこれでバイトを探していました。横目で見ながら、「なぜこれが成立するのか?」不思議でした。雇う側からすれば、「どこのウマの骨がやってくるかわからない」わけじゃないですか。

謎はあっけなく解けました。「どんな人間かは過去の履歴でわかるんじゃない?」と息子が教えてくれたのです。タイミーでバイトする場合、「雇った人・雇われた人」それぞれが仕事終わったあとで相手を評価します。その評価履歴が残るので、パワハラ雇い主や約束破り学生の悪行はただちにバレてしまいます。よって双方ともに変なことはできません。一方、真面目にやれば「この人物は信用できるという記録=信用スコア」を蓄積できるわけです。
タイミーで応募する/応募される場合、相手の評価履歴をみれば「信用できる人物かどうか」判断できます。しかしながら初対面の相手を評価できる--これは画期的な変化だと私は思います。

信用スコアとはなにか?

このデジタル評価システム、遠くない将来に「雇用と社会を変えてしまう」のではないかと感じています。タイミー世代が大人になったとき、就活・転職のやりかたは一変していることでしょう。
20年前でしたか、中国が社会的に「信用スコア」実験をはじめるとニュースで聞いたとき「そんなアホな」と思いました。ところがどっこい、資本主義社会はじわじわそちらの方向へと向かっているようです。

私も海外に出たときは(コロナ以前です)タクシーではなくUberを使っていました。最初は「個人の運転に乗るなんて」と不安もありましたが、料金が最初から明確で、クレジット払いが可能な利便性は大きい。気になる「運転手の信用」は過去の履歴をみれば「この人は大丈夫だな」と判断できます。
日本はいまだタクシー会社・個人タクシーを行政規制することで安全性を維持している一方、海外諸国ではそれがデジタル分散評価システムにとって代わられている事実を実感しました。

それ以前に私たちはamazonはじめネットショップで買い物する際、「評価点」を気にします。それゆえネットショップの経営者たちは自分の店の「評価点」を神経質なまでに気にしています。
元々は物販ではじまった評価がUberなどの「サービス」へと広がり、とうとう「人間そのものが評価対象となる」タイミーが登場したわけです。
これからは新入社員採用にも「現社員の推薦・紹介」などが要素として取り入れられるでしょうし、融資の際にも「その人の信用スコア」が利用されるのはまちがいありません。さまざまなデータが「人材評価に活用される」事態がすでにはじまっています。

これから「人間が評価される」流れがますます進んでいくことでしょう。
たとえば定年退職を迎えて独立開業しようとしたとき、その人がどれだけ信用スコアを貯めているかが成功のカギを握るようになると思います。

ChatGPTによって定型的知識やスキルに差がなくなるとすれば、差が付くものは人間性や魅力、その人のキャラクターといった要素です。それはこれまで「定性的」と括られ、数値化できないものとされてきました。しかしこれからは他者からの「信用スコア」として顕在化し、再就職できるか否かを左右する要因になるはずです。すでにそんなことがあちこちで起こっています。私は今回の塾選考において「選ぶ側」に立って実感しました。

あなたは現時点でどれくらいの「信用スコア」を貯められていますか?
コミュニティの輪を乱したり、SNSで揚げ足を取ったりして、自らの信用スコアを下げる行為をしていませんか?
あなたはそもそも「評価されている」感覚を持っていますか?

今回のフリーランス塾の選考について

私は今回フリーランス塾の選考にあたって無意識のうちに「信用スコア」を重視していました。
私はフリーランス塾を良き空気の流れる良き場にしたいと思っています。ならばその趣旨に賛同して協力くれそうな人を選びたいと思うわけです。
そんな観点から選考に当たってはその人物とレポートからスコアを付けさせてもらいました。その作業はいまの世の中、簡単にできてしまいます。

塾長の私や学部長と知り合いで印象がよければスコアアップ。信頼できる塾生が紹介の場合にはこれもまたスコアアップ。私のSNSに感じの良いコメントを書いてくれている人、応募レポートで塾への貢献について触れてくれている人もスコアアップ。
逆に塾にまったく知り合いがおらず、私の本も読んでおらず、応募レポートで自分のことばかり書いている人はスコアゼロとさせてもらいました。

今回の選考では行いませんでしたが、私が初めての人に仕事を頼む時には「その人がSNSにどんな書き込みをしているか」は必ずチェックします。逆に私自身、SNSを見たうえで仕事を依頼されることがほとんどです。

実のところ、本人が意識している・いないに係わらず、他人から評価されています。これによって「信用スコア」が溜まっていくわけです。
飲み友だちレベルではなく、「仕事を依頼される人」になるためにはそれなりの信用スコアをためねばなりません(これは私の持論ですが、飲み友だちスコアと仕事仲間スコアはまったく別のものです)。

ここで問題はサラリーマンの人で「勤め先の評価」だけを気にして生きている人。そんな人の中には社外の「信用スコア」がめちゃくちゃ低い人がいます。定年で孤独になって困るのはこのタイプ。
逆にサラリーマンであっても社外的「信用スコア」が高い人がいます。こういう人は定年になっても困りません。「一緒に仕事しましょう」とお声が掛かる可能性が高いからです。

改めて、自分の信用スコアって、なんでしょうね?
あなたはそれをどれだけ貯められていますか?

これからはサラリーマン・フリーランス関係なく「信用スコア」を意識した方がいいと思います。今回のフリーランス塾ではこのテーマについて考えます。

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