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20年後、日本でオペラは観られるか?「ジュリオ・チェーザレ」

2022/10/2 新国立劇場 オペラ「JURIO CESARE」観劇。

過去、オペラ観劇について良い思い出がありません。何度となく「香水おばさん」のお隣になってしまい苦痛を味わったからです。
今日もドキドキでしたが、幸いなことに香水被害には遭いませんでした。
会場を見渡せばふつうの服を着た、ふつうの皆さん。ただ年齢層はかなり高め。見た感じの推定だが平均年齢は60歳を超えている様子。

新国立劇場オペラパレスはほぼ満席。しかも高いS席(27,500円)の方が安い席より埋まっている気がします。どうやらオペラは「お金もちのご老人が気軽に出かけるレジャー」になっているようです。

ちなみに終演後、twitteを確認しましたが”つぶやいている”人はごく少数でした。今日客席にいた皆さんは「つぶやかない」方が圧倒的多数なのです。

「ジュリオ・チェーザレ」夜の部が17:00開演の理由

チェーザレはイタリア語。ラテン語でカサエル、英語ではシーザー。
ローマの将軍シーザーとエジプトのクレオパトラをめぐるヘンデル作古典オペラが本日の演目です。
初日の今日10/2は昼の14:00開演。次回の平日10/5(水)は17:00開演です。
「夕方17:00開演って、早すぎないか?」と思いましたが、今日見終わってその理由がわかりました。上演時間が4時間半だったからです(休憩含む)。

あと10/2、5、8、10と「間隔を開けて上演」の理由もわかる。踊ったり、寝転がったり、よくあんな姿勢で歌えるものだと感心。あの熱唱を連日続けるのは無理。

私が「これは面白い!」と感動したポイントがありました。
それは最初から最後まで、舞台セットが「現代のエジプト博物館の倉庫」だったこと。
現代の服装を着た「博物館の係員」がローマ時代の胸像やら壺やら絨毯を移動させます。その同じ舞台で「ローマ時代の人物」が歌い踊ります。お互いはそれぞれ見えていない、という構成です。現代とローマ時代を交錯させるユニークな手法。

20年後、日本でオペラは観られるだろうか?


覚悟はしていましたが4時間半はやっぱり長かった。でも、すべての伏線が回収されての大団円ハッピーエンド、そして主人公&悪役入り交じってのカーテンコールには「久しぶりのオペラ、来て良かった」と生の感動を思い出します。これは数百年続く「長かったけど感動する」観劇の伝統にちがいない。

終演後、ステージ上に並ぶ大勢の出演者、オーケストラの皆さん。このオペラもコロナで延期の上、やっと開演できたこともあって笑顔があふれています。その姿には私も精一杯の拍手を送ったわけですが・・・。

少々心配なのは「これから」です。

今回のように指揮者、演出・衣装・美術担当が外国人、役者さんの数名も外国人といったオペラや演劇ですが、「円安」が続くとすれば今後招聘するのは難しくなることでしょう。エネルギーや多くの食品と同じく価格転嫁するとしたらチケット代金がさらに高額になってしまいます。
今日の会場を見渡す限り、チケットが高くなっても変わらず来てくれる人は多いと思います。いわゆる「お金もち高齢者」が多いから。しかし、あと10年すると健康上の理由で「行きたくても行けない」人が増えるはずだし、20年後となれば「行きたくても生きてない」人が多いはず(ごめんなさい)。

今の中高年世代は20年後、退職金や年金でオペラを観られる経済的余裕があるでしょうか?
今の若きYouTube世代は20年後、4時間半のオペラ観劇に耐えられるでしょうか?

もし今後もオペラを残すのであれば、チケット価格の再考やダイナミックプライシングの導入、そしてデジタル世代への魅力発信といった新たな取り組みが必要になりそうです。考えることは多し。でも後には引けませんよね。
「賽は投げられた」

新国立劇場オペラパレス「JURIO CESARE」
2022年 10/2(日)14:00、10/5(水)17:00、10/8(土)14:00、10/10(月祝)14:00

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