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【Chicago Booth】2年間の学び:Behavioral Science

今回は卒業時に取得予定の2つのConcentrationsのうち、Behavioral Scienceに焦点を当ててみます。

Boothの2年間で履修した21クラスのうち、Behavioral Scienceのカテゴリーに属するクラスは以下5つになります(履修順に記載)。

・ Managerial Decision Making
・ Strategic Leadership in Management Networks
・ Strategies and Processes of Negotiation
・ Managing in Organizations
・ The Study of Behavioral Economics

Boothに入学するまでは、正直Behavioral Scienceについてそこまで強い興味はありませんでした。一方で、関連するクラスを履修するうちに、どんどん学びたい意欲が増していき、気づいたらConcentrationを目指すまでになっていました。

Strategic Managementの専攻と同様、Behavioral Scienceでの学びも非常に多岐に亘ります。今回は、その中でも私が特に印象に残っているものを3つ、ご紹介できればと思います。

人は間違える

こう書くと当たり前のことなのですが、人間常に合理的に行動出来ているかというと、全くそんなことは無い、ということが一つ目の学びです。これは、本人の努力不足や知識不足で生じる誤り、というよりも、ある種人間である以上、克服することが難しい判断上の限界が多数存在するということかと思います。

Behavioral Science関連のクラスを通じ、如何に人間が(ミクロ経済学的な観点で)非合理的な行動をとってしまうのか、様々な研究や例も併せて学ぶことが出来ました。

所謂個人の力量や精神論ではどうにもならず、「わかってはいるけど間違えてしまう」「非合理的なことにすら気づけない行動がある」という人間の限界を知るうちに、自分にも相手にも過度の期待をしてはいけない、というなんだか哲学的な境地に達したのはいろんな意味でもブレイクスルーだったと思います。

人の間違え方にはパターンがある

ここからが学問として非常に面白いと感じた部分です。先ほど人は間違える、ということを取り上げましたが、人の間違え方にはパターンがあるのです。つまり、パターンを知っていれば、その間違えを予測することや、回避することが出来るかもしれない、ということです。一般的には「バイアス」という言葉でまとめられていることが多いと思います。

例えば、生存者バイアス。戦闘機の改良を行うため、戦場に行って生還した機体の損傷を分析し、どこが機体の弱点かを分析する。一見すると良さそうに見えますが、これが生存者バイアス。実際は撃墜され戻ってこなかった機体が多数存在するため、そういったパターンも含めて分析をしないと本当の弱点は見えてこない、という訳です。

この様に、パターン化された人間の不合理な行動については、色々なクラスを履修する中で様々な角度から学ぶことが出来ました。このパターンを知ることで、自分の行動を一歩引いて振り返ることが出来ますし、他人の行動をより深く理解することが出来るようになったと感じています。

人の行動を変えるには、仕組みづくりから始める

これが、個人的には最も大きな学びです。Managing in Organizationsという、行動科学をベースとした組織論を学ぶ人気授業の第1回目のクラスで扱われました。

まず、人の行動を以下のような非常にシンプルなモデルで表現します。

Behavior = Personality × Situation

このモデルが表すように、人間の行動には個人的な要素と環境の要素の二種類が影響しています。ここで、多くの人がBehaviorとPersonalityの繋がりを非常に重視してしまい、逆にSituationの影響を軽視してしまう傾向にあるとのこと。これをFundamental Attribution Errorと呼びます。

(参考)

思い返せば、何かが上手くいかなかったとき、すぐ個人の力量や、性格の部分に原因を求めていたことに気づきました。

「Aさんがもっと○○だったら…」

「Bさんは××に弱いんだよなぁ…」

こんな意見は、前職でも結構聞いていたように思います。もちろん、その理解は間違いではないかもしれませんし、その理解を元に個人をしっかりと指導し、成長に繋がれば問題は解決です。

しかしながら、この授業で強調されたのは、Personalityを変えるよりも、Situationを変える方が簡単で、効果も高いことが多い、ということです。

個人を批判するよりも、行動に繋がらなかった原因を仕組みや環境のほうに求め、人がより良い方向に動くよう、Situationを整える。これこそがManagerの仕事だと。

この学びは、卒業してからもずっと大切にしていきたいと思っています。

まとめ

Boothには、行動経済学の分野における貢献が評価されノーベル経済学賞を受賞したRichard H. Thaler教授を始めとし、Behavioral Scienceに関する非常にレベルの高い教授陣が集まっており、それに対応して開講されているクラスの幅も広いです。ビジネススクールで学ぶ2年間の中で新たに掘り起こされた興味についても、様々な角度からしっかり学習できたのは本当によい経験だったと思います。

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