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資産除去債務の会計処理(実務的な考察)

こんばんは。久しぶりの投稿になります。
会計コンサルタントとして充実した日々を送っておりますが、
今回は実務において実際に検討した会計処理をシェアできればと思います。
テーマは「資産除去債務の会計処理」です。

会計をかじったことがある人であれば「あーあれね、割引計算して、毎年利息費用計算して、実際の履行時に履行差額出すやつね」とすぐに想像できるかと思います。
今回設例にはない、「固定資産の簿価がゼロではなかった場合」というものについてその解説をしたいと思います。


履行時の仕訳

「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」には下記の仕訳例が記載されています。

(設例1)
設備Aの除去及び資産除去債務の履行
設備Aを使用終了に伴い除去することとする。除去に係る支出が当初の見積りを上回ったため、差額を費用計上する。

(借方)
減価償却累計額 10,863
資産除去債務 1,000
費用(履行差額)50
(貸方)
有形固定資産(設備A)10,863
現金預金 1,050

固定資産の簿価がゼロになる前に履行した場合

パターン1 全部履行差額で処理!

(借方)
減価償却累計額 10,863 ,8,863
資産除去債務 1,000
費用(履行差額)2,050
(貸方)
有形固定資産(設備A)10,863
現金預金 1,050

パターン1は差額は全部履行差額となる仕訳になります。

パターン2 除却と履行差額は別で処理!

(借方)
減価償却累計額 10,863 ,8,863
資産除去債務 1,000
費用(履行差額)50
(New)固定資産除却損 2,000

(貸方)
有形固定資産(設備A)10,863
現金預金 1,050

パターン2は履行差額はあくまで資産除去債務残高と実際の履行額の差額であり、
固定資産の除却によって生じた損益は別計上となる仕訳になります。

基準は?

資産除去債務に関する会計基準に、履行差額に関連する記載があります。

15.
資産除去債務の履行時に認識される資産除去債務残高と資産除去債務の決済のために実際に支払われた額との差額は、損益計算書上、原則として、当該資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額と同じ区分に含めて計上する。

つまり、履行差額はあくまで資産除去債務残高と実際の履行額の差額であるため、固定資産の除却によって生じた損益は含んではいけないことになります。パターン2が正解になります。

最後に

いかがだったでしょうか?上記の解説を見れば「なんてことない」と思うかもしれませんが、実務で出てくると意外と頭を抱えることは多いです。当たり前の処理を当たり前と判断するのが結構難しかったりします。
今回の設例も公認会計士2人がかりで該当基準やその周辺部分を読み込みました。

実務で同じような処理が出てきた場合参考にされてみてはいかがでしょうか?
今日はこのへんで!


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