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8/22の日記 今年は金木犀、ベランダで育てようよ

最近、異常に暑い。

まだ子供時代で止まっている私の感覚では、お盆が終わった今くらいの時期は段々と涼しくなり、夏休みの終わりと共に「もう夏も終わりか」とノスタルジーに浸っていたと思う。

気温30度を超えることなんて滅多になくて、超えた日には普段エアコンを点けたまま寝ることを許さない母も「今日はエアコンつけながら寝なさい」と言ってくれるので猛暑日が逆に嬉しかった。

今日の最高気温35度、昨日は37度だった。

私が東北出身で昨年九州に引っ越してきたばかりなので、毎年こんなに夏が過酷なのかと絶望していたのだが、上司曰く「今年は異常」らしいし、なんなら年々暑さは増している様だ。

更に驚いたのが、今年は10月までこの暑さが続くらしいという事。
9月に入れば多少涼しくなると思い、最後のひと踏ん張りをしていたのだが、まだ1か月以上続くとなればここで頑張る筋合いもない。

早く金木犀の香りを感じたい。

私の地元では金木犀が一本も生えていなかった。どうやら寒さに強い樹木ではなく、雪国では育たないらしいのだ。

なので私は曲の歌詞で「金木犀の香り」と出てきてもどんな匂いか全く想像が出来なかったし、そもそも金木犀が何なのか知らなかった。

金木犀の存在を知ったのは、まだ私と彼が東北と九州で遠距離恋愛をしていた時。

彼はまだ学生だった私の代わりに、わざわざ私の地元にちょくちょく会いに来てくれていた。

彼と居る時間は当時の私が感じられる最上級の幸せで、特に2人でドライブをするのが大好きだった。

彼の方に顔を向けると、運転席の窓から入ってくる心地の良い風に彼の匂いが混じって私まで届き、彼の存在を感じられるから好きだった。それに運転している彼の横顔はとても優しく、いつまででも見ていられた。

こんなにドライブが好きなのに私はよく助手席でうたた寝をしてしまっていたので、気が付いたら目的地ということが多かった。が、一度だけ車の揺れで運転中に起きたことがある。

寝起きで意識が遠い中、薄っすらと聞こえる彼の歌声。私が寝ていると思って滅多に歌わない彼が「オレンジスパイニクラブ」の「キンモクセイ」を歌っていたのだ。

起きたことがバレたら歌うのを辞めてしまうと思い寝たフリをしながら聞いていた。

私はそこで初めてこの曲を知ったし、金木犀の存在も知った。

本当は「この曲なんて名前」とか「金木犀ってなに」とか聞きたかったが、彼の歌を聞いて居たかったので黙って寝たフリを続けた。

この時も今日みたいに暑い夏の日だった。

昨年、九州に引っ越して嗅いだことのない匂いを感じた時、彼に「これなんの匂い?」と聞くと「金木犀だよ。嗅いだことなかったの」と少し笑われてしまった。

これが金木犀の香りなんだ。

まるで、人間に秋の訪れを知らせる為にいい香りを秋の風に乗せて、夏頑張ったねとご褒美をくれているような香り。これが金木犀か。

私は金木犀を気に入りすぎて、家のベランダで育てようと彼に全力で持ちかけたのだが、全力で却下されたので、しょうがなくトイレの芳香剤の匂いを金木犀の香りの物にすることでお互い妥協した。

それから私は、秋を望むと自然に金木犀の香りを連想してしまう。

あの時彼は、今日の私のように夏の暑さにやられて、早く秋が来ないかと金木犀の香りを連想したからあの曲を歌っていたのだろうか。

そんな彼の気持ちを思うと、「オレンジスパイニクラブ」の「キンモクセイ」は、曲調も歌詞も普段なら聞かない種類の曲なのに、プレイリストに入れてしまうのだ。

私にとっての金木犀のイメージは彼だから。

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