《私の狂愛本》ストーリー・セラーを読んで叫んだ夜の話[ネタバレ有]
ストーリー・セラー
これはとある本の名前です。皆さんは何を思いつきましたか?
「あのリボンのかかった表紙の本でしょ」っていうそこのあなた! ハグさせていただいていいですか。
「あの作品に出てくる作家と旦那、最高じゃない?」あら、あなた気が合いますね。こちらのお席を用意いたしましたのでちょっとお茶でもいかがですか。
わからないという方、是非1度調べてみてください。気になって読んでみたくなった?
ならば、あえて引き返して!! そして、ひとまず約2ページにわたる「すき」を2回ほど味わってから戻ってきて!!
というわけで、社交辞令も済みました。
はい。ここから先は「猫が剥げかけ」
いや「猫が完全に剥げ」ます。なので、ネタバレ嫌な方はご退出ください。
ストーリー・セラー。著者、有川浩さん。
狂ったように愛せる本はなんだ?! と聞かれて真っ先に思いついた1冊だ。
今回は、ストーリーセラーと出会った時の私の叫びを聞いてほしい。
1度目の出会いは、2009年。
新潮社から出版されているアンソロジー「story seller」シリーズのストーリー・セラー(side:a)だ。
もうね、良かった!!!!! 登場人物も話の内容も何もかも!! 出会えたことに感謝!! 有川さんのお話は大好きだけど、読んできた中でも一番心揺さぶられた!!
揺さぶられたポイントは多々あるのだけれど、かいつまんで言う!
原稿のページが、ほぼ、ひらがな。
そう!目に飛び込んでくるひらがなにまず、やられる。彼女の頑張りがどれほどのものだったか。どれほど極限のものだったのか。ここから泣かせにくる有川さんの構成力よ!!もう天才か!!
途中で読むのを諦めてしまうほどのすきの羅列。
見たくなかった「絶筆」の2文字。
もう、滂沱(ぼうだ)。
彼女視点でも、彼視点でも。想いが溢れて止まらない。読みたいのに読み続けられなくなって、上を向くなんて初めてだった。
ひとしきり嗚咽して、少し落ち着いて先に読み進めようとページをめくった……矢先に!! 彼女の手紙!!!!!
有川さんっっっっっっっっっ!!!! 鬼畜!!!!!!
もうほんと、彼の言う通り「うるせぇな」だった。
一度壊れた涙腺は量を調整できずにガンガン流れる。
「君はずるい。」
もう、本当にそのとおりだ。彼女はずるい。いつだって残された側は伝えたかった言葉を腹に後悔する。ありがとうと言われてもごめんが残る。
ティッシュがなくなって、新しいのを開ける。止まらない。白いものがうず高くどんどん積まれていく。全然止まらない。人間の体はほとんどが水分だって本当だったんだなぁ。
こんなに泣かされる短編初めてだった。もう、単体で売って欲しい!
その願いが叶ったのが2010年。今見返せば1年。嘘でしょ。体感では5年は経っていたと思う。
かくして、2010年の私は、ついに!!ついに!! と書店に走った。
そして一気読みをして。
最初と同じように泣いた。そして呆然とした。
ねぇ、このside:b。どうなの?
あとがきに出てくる編集者の言葉が胸騒ぎを助長する。そして、締め。
逆夢にしていくのだから。
え。
まじか。
有川さん。まじですか。
今読み終わった物語を隅から隅までもう一度読んだ。まじですか。
そう、私も有川さんの話を追っていた端くれだから、すごくわかる。
ねぇ、この雑誌に載っていた話がアンソロジーの「ストーリー・セラー」でしょ。
有川さん、旦那さん大好きだし、旦那さんがめちゃくちゃできた人だっていうのも過去の作品から知ってる。
しかも有川さん、仕事は夜型……
え。え。え。
ねぇ、本当なのかしら。
3度目に読み返して、読み終わって泣いて。4度目にして泣きながらも怒りが湧いてきた。
一読者としてはきっとお門違いだが、収まりつかぬので言わせてほしい。
「おののくな。さぁ俺を殺せー」じゃないよ。
今読むと「おどけて両手を広げた「彼」に思わず吹き」出せないわ。全然吹き出せない。
「私」にとっての「彼」がどんなに大きい存在なのか。それを作中でも現実でも感じているがゆえに、理不尽とはいえども心が落ち着かない。三度も泣きながら読みきった分際で何をいうと言われてしまえばそれまでだけれども。けれども、こっちだって、大好きな作家の作品が読めるか読めないかがかかっているのである。
もう、一ファンとして、いう。
これは逆夢になってほしい。
「逆夢として売っていく」その言葉を現実にしてほしい。
切に願った。泣き終わるまで祈って、それでも心もとない。
泣き疲れた頭で必死に考えた。
私が今できる祈りよりも強いものはなんだ?
……そうだ、呪おう!
旦那よ! どうか健全であれ!
君が死んだら、有川浩の作品に出会えなくなる未来も十分ありえそうなのだから!
旦那のためになんて傲慢なことは言わない。
どうか!! どうか!! 読者(私)のためにできる限り長寿であれ!!
有川さんが生を全うするまで死にたもうことなかれ!!
以上が、それぞれの「ストーリー・セラー」を読んだ、私の雄叫びである。
そして、幾度となく読んでの、いま。
変わることなく、この本にティッシュ一箱を使わされた。
なぜ、今更昔の話をしたのかって?
実は、これを読んでいる人の中にタイムマシンがある世界線の人がいたら、お願いしたいことがあるのだ。
泣いて、泣き明かして、死ねない呪いを調べたあの日の私にこの3行を届けてほしい。
こちら2021年の私。
一ファンの呪いは届いている。
精度を落とさず、呪え!!!!!
※有川浩さんは改名され有川ひろさんとしてご活躍されておりますが、読んだ当時は有川浩さんだったので旧名で書かせていただきました。
※「ストーリー・セラー」がどこまで本当か。それは、有川さんのみぞ知る、です。
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