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『キズにぬるシオ』実験7分の1ー小説の神様を読んで血を流すー

223ページ。
読んでいる最中に鼻の奥から液体が落ちる気配がした。思ったよりも粘度がなくティッシュが間に合わない。あ、やべっ! と思ったものの、本に直撃はしなかった。良かった。いや、赤い。鼻血?!ちょっとびっくりするも、読み進める手を止めたくなくて、雑にくしゃっとさせたティッシュを鼻に詰め込んだ。いま誰かに部屋に入ってこられたら…困る。頭の片隅でそう考えつつも目は文字を追っていた。困る気持ちよりも先を読みたいという気持ちの方が勝っていた。

382ページ。
最後まで読み終わるまでそんなに時間はかからなかった。鼻に詰めたティッシュはそのままだった。雑なこよりは赤黒く染まっているが先端が赤い。綺麗なこよりに変えた。変えざるを得なかった。じわじわとながら、まだ赤が滲む。頭がぼーっとしている。熱い。熱を受け止めきれずに湯気が上がっている感じだ。風呂に入っていたわけではない。単純に本の中の世界にのぼせたのだ。

こよりをつけた状態で失礼。
さて、私は何を読んでいたのか。
「小説の神様」だ。
続編も出ているから知っている人も多いかもしれない。
でも、知らない人もいるかもしれないから言っておきたい。

これ、すごいよ!!

本当にすごい。160ページ近く。鼻血出てるのに読む手を止められなかった。なんならその中間でもう一度鼻血出るくらい脳が沸騰した。ラストスパートに至るまでもやられた感じがある。

小説の神様。なんとなくメディアで取り上げられててタイトルをちらっと聞いていたかもしれない。でも流していた。だから私も数週間前まで知らなかった身だ。

数週間前の私は、2000字を書くために何をすべきかを考えていた。そして、「キズにぬるシオ」というワードをひねり出した。傷に塩をぬってくる本。読んだときはすっごく痛いけど、その痛みを再認識し、必要な薬を考えさせてくれる本。思い当たる表紙が何冊かある。それを特集にしたらどれほど面白いだろうか!!
パズルがピタッと合う感じがした。ものすごく興奮した。いいんじゃないか!!
今思えば、舞い上がっていたのだ。
浮上したら落下するのが自然の摂理である。

いけるんじゃないか。希望に膨らんでいた私の心に一つの疑念が浮かんだ。

痛い思いって誰もしたくないんじゃない? 

途端に、気分は真っ逆さまに急降下した。
心をえぐられる体験は需要があるのか。
個人にとってのキズシオ本は他人にとってもキズシオ本足り得るか。
悪魔の声は大きくなる。
不安になった私はツイッターに駆け込んだ。

「傷を抉ってくる系の本を教えてください」

私はインフルエンサーでもなんでもない、ただの一般人だ。だから、賭けをした。誰も反応してくれなければ、この発想は需要がない。流そう。もし返ってきたならば、心にキズを残す本は存在し、キズを与えてくれる本に需要はあるかもしれない。
返ってきたならば。他人にとってのシオは自分のシオ足り得るのか。まずは自分で実験をしよう! そう決めた。

賭けの結果を報告したい。
7冊の本が上がってきた。
0か1冊くらいだろうかと思っていたので、きちんと反応があったことが非常に驚きだった。
せっかくなので1冊ずつきちんと検証したい。
そう思い、休みを待った。キズをえぐられる覚悟を整えた本日。1冊目に手を伸ばした。

「小説の神様」


教えてくださった、友よ。ありがとう。早速読みました。

結果、これはキズシオ本じゃーーーーー!!! と叫びました。

キズシオ本。やはり、ある。
自分以外の人に刺さったものでも、刺さりうることが少なからず、ありそう!!

今回、私はグッサグサと心にしみました。

小説の主人公になり得ないと初っ端から嘆く高校生作家の主人公にも。
天は二物を与えずを前提条件で覆しているヒロインの美少女作家の強気さにも。
この二人が合作を作っていく最中の葛藤にも。

大いに感情を動かされた。それこそ、鼻血が出るほど刺さった。なんだか、自分では気づいていなかったキズも存在を主張してきた気がする。他人のシオだとこういうところも追加メリットがあるのね。

そして、この本はキズシオ本であると同時に抉ってきた傷を癒してくれた。だから、傷ついても是非最後まで辿り着いて欲しい。痛いのは怖いという方も勇気が出せれば、ぜひ一度物語の世界にダイブしてみていただきたい。キズの化膿を防いで、痛みと引き換えにちょっとずつキズを浅くしてくれると思う。そして、タイトルになっている「小説の神様」とはなんなのか。確認してきていただきたい。本を読むものとして、それを知るのは楽しかった。多分、この本を読んだ後の「小説への向き合い方」が変わるのではないだろうか。私は変わった。


あぁ!! 続編を買わなかった自分、ジーザス!! 読み終わって、これからはちゃんと本屋に通おうと思ったので、電子書籍には手を出していない。でも、次が待ちきれないのでいろいろ調べていたら…「小説の神様」映画化もしているじゃないか。
しかも、美少女作家は橋本環奈だと!!! なんだって?!!!
書き終わるし、ちょっとこのままアマプラってきます!!!
実写に殺されたら骨は拾ってくれ!!

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キズシオ本、実験7分の1
「小説の神様」 相沢沙呼著

推薦してくれた優しき人のコメント:どうして自分から傷つきにいくのかわかりませんが、何かしらの創作にはまったことがあるのであれば相沢沙呼「小説の神様」を。

検証結果→100%キズシオ本兼マキロン本
しみたキズ→天才と凡才に悩むキズ
      書けない(表現できない)キズ
      書くのをやめないでキズ
      諦めたいキズ
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読んだ本:小説の神様

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