シンプルすぎず、複雑すぎないパターン
気づいていなかった自分の好みに気付かされて、それまでの選択に補助線が引かれる、みたいな経験のお話。抽象的で「なんやそれ」かも知れませんが、実例を引きつつ以下に書いていきます。
またも、旅先での一瞬「カケラ」の体験談を並べて嬉しそうにする記事です。
仙台駅の新幹線改札で
これは今から5年ほど前の仙台駅。何の気なしにユニクロで買ったTシャツの件。山仲間と東北の山に行った帰り。東京に帰る友人を見送った後の一瞬。
「そのTシャツ、おもしろい柄ですね」
「えっ、そう?」
「そういうの好きそうですよね?」
このTシャツは好みが反映されてるつもりはなく、まさに「何のこだわりもなく」選んでいた柄(安売りワゴンに入ってたやつかもしれない)。友人曰く、「なんか化学の構造式っぽい」。白黒で、規則がありそうな幾何学模様、というのは共通点かも。全くそんなことを意図してなかった、駆け出し化学者の私。
「そういうデザイン好きだから化学やってんじゃないですか?」
(自分の中では)遠かった2点が、別の人から見たら同一平面にあった、みたいな体験でした。
ポルトガル・リスボンの郊外で
これは今から3年ほど前のポルトガル・リスボン。郊外の観光地でのこと。アラブ時代の雰囲気を残す宮殿で一通りテンションが上がった後のギフトショップにて。明るい色遣いのコースターを見た途端「これ買う!」となりました。そこですかさず友人から
「あー、こういうの好きそうやねー」
あ、やっぱりそう思われてたすか。ま、壁の飾りタイルの幾何学模様を嬉しそうに眺めてたら悟られるのかも。
オランダ・ハーグの街角で
これも今から3年ほど前のオランダ・ハーグ。『真珠の耳飾りの少女』で有名な美術館を一通り見終わった後。ふと訪れたのは『地球の歩き方』に中見出しぐらいの扱いで載ってた「エッシャー美術館」。
あの途轍もなく分厚い本、『ゲーデル・エッシャー・バッハ』の一角。または「だまし絵」として紹介されがちな作品群。一方的に馴染みがあったので行ってみることにしました。(ちなみに、御多分に洩れずGEBは途中で投げ出した)
そんな「ライトな」知識で入ってみたものの、展示作品を見ているうちにどんどんテンションが上がってくる! 特に少しづつ違うパターンで平面を埋め尽くした作品。
結晶格子のように完全な規則があるわけではないけれど、緩やかな規則で平面を埋め尽くすパターンに見入ってしまいました。
トルコ・イスタンブールで
何度行ったかイスタンブール。地下鉄が自由自在にボスポラス海峡を越える今となっても、網の目のように海峡を渡るフェリー。ローカルな船着場からふらーっとに乗れて、往来する大型船のスキマを縫って走る船。ICカードをピッと改札に通してから向こう岸につくまで15分ないし20分。風が気持ちよく、たまに戻りたくなる時間です。
定番観光地でもあるトプカプ宮殿。トップ画像の通り、細密で複雑ながら規則的なパターンが楽しめる場所です。
巣籠もり時期の研究室で
そんな感じで自分の好みに気づいたのはアラサー以降。すでに化学系の研究者となった後のことでした。ふと本棚やPCの論文フォルダなどを見ると、化学構造式がわんさか出てきます。私は白衣を着てフラスコを振っているような、モノづくり「有機合成」の領域ではありませんが、その隣接分野に居ります。
とりわけ「分子が集まるときにどんな『集まり方』をするのか」という点に興味を持っていて、「分子くんたち」に「集まれー!」と号令をかけたとき、整然と格子縞に並ぶのか、ぐちゃぐちゃに集まるのか、みたいな話を深掘りしています。
整然とした並びのパターンを見つけるのも、それはそれで楽しいのですが、個人的には「ぐちゃぐちゃ」した集まり方が好きで、「なんかこいつら、我々が知らないパターンに従って集まってるのかな」みたいなことを考えるのが特に楽しいと思ってます。
「氷が解けて」ブハラに戻ってみて
巣籠もりが解けて戻ってきたブハラ。改めて景色に入り込んでみて気づいたのは、建物の外形とその装飾でのパターンの違いでした。建物は四角くって直線的。一方で、その中の装飾は唐草模様、いわゆる「アラベスク」で曲線的。でも、完全にランダムではなくて最低限の対称性を持ってる、みたいな。
旅先にせよ、研究室にせよ、そういう「パターン」ばかり探してるなぁ、私。
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