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仕事は苦役なのか

 数年前、楽しく仕事したいんです、と話していた新人記者が退職していくのには1年もかからなかった。楽しくなかったのだろうな、と思う。
 先日、やりたいことができなくて毎日が苦役なのです、と話す若手記者に会った。嫌なサツ回りをさせられて他社より半日早く情報を得るゲームに楽しみを見出せず虚しいという。
 苦役。そうだろうな。30年以上も勤めてきて、仕事が楽しいと思ったことなどあっただろうかと振り返る。あったのかもしれないが、悩んでいる時間の方が多かったし、食べていくために上から命じられる嫌なこともしなければならないと受け入れてきた。

 映画「教育と愛国」の監督で毎日放送ディレクターの斉加尚代さん著「何が記者を殺すのか」を読むと、斉加さんの仕事ぶりも決して楽しそうとは言えない。けれど、これこそ記者の仕事だと思う。締め切りのストレス、テーマ選定、取材相手からの攻撃、SNSからの攻撃などに耐えた先にある成果。ジャーナリズムを諦めない姿勢。
 苦役をこなした先にほのかに見える光。それを楽しいと形容するものなのか分からないが、誰かがそういう仕事をしていくことの大切さを思う。ストレスに耐えるメンタル、斉加さんは本当にすごい。同世代として励まされるし、尊敬する。
 若手記者さんは斉加さんのことが好きなようだから大丈夫だと思う。苦役の先に何かをつかみ取っていけますように。

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