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随想 ーー心を澄ますーー

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心の奥底に潜む声を掬い上げるエッセイ・詩など
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#エッセイ

Poor Youngness

 ふと振り向くと、私の後ろで溺れている女の子が沢山いた。その時気づいた、後ろを振り返る余…

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coyoly
4年前
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共依存

 英雄になり損ねた怪物、怪物になり損ねた小心者--すなわち境界例に殺されかけたあの時に引…

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coyoly
4年前
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異世界(Une femme est une femme)

 「女性のライフサイクル無視の歴史は長い」と明示されている通り、ここに私たちのための服は…

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coyoly
4年前
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肉体

 肉体を持つとはどういうことなのだろう。  肉体を喪った人のために嘆く人がいる。そしてそ…

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coyoly
4年前
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(You Make Me Feel Like) A Natural Woman / 想いあふれて

 詩なんて棺桶に片足突っ込むまで書くことは許されないとずっと思っていた。  怖かった。な…

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coyoly
4年前

これは恋ではない

 ああ、この人も虚無なのだ。  空洞に風が吹き荒ぶ人なのだ。  そうわかった時、全てが腑…

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coyoly
4年前
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はぐれざくら

 高校の校舎の裏手、図書室と私たち吹奏楽部の練習場の間に桜の木が一本植わっていた。よく、ひとことも発さずに語り合った。私が崩れ落ちそうになると支えてくれた。やさしさに涙をこぼすこともままあった。  そんな桜の木に、一度だけ翻弄されたことがある。  合奏中だった。顧問が私を怒鳴る。当然だ、一人でも気がそぞろになっていると音楽は作れない。頭では理解しているのに目が離せない。満開になった彼女は私を誘惑して離さない。これ以上見とれていると殴られ追い出されるのにやめられない。  

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桜月夜

 満開の桜の木を見上げていると、胎内から毛細血管やその周りの肉を見つめているような気分に…

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coyoly
6年前
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険路

 7年前の3月、いくつもの街を消し、原子力発電所を爆発させ、2万人以上の命を奪った蠢きは、…

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coyoly
6年前
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呪文

 二十代のある日、突然話すことができなくなった。その状態でも可能な仕事を探していたら美術…

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coyoly
6年前
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罪深かるべき者

  股間に古傷がある。七歳の時に公園で遊んでいて足を滑らせた拍子に剥き出しのコンクリート…

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coyoly
6年前
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母性の沼

 仏様よりマリア様に縋り、抹香臭い数珠より舶来物のロザリオやメダイに心惹かれるが、復活よ…

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coyoly
6年前
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海の処方箋

 雪の結晶が好きだ。  ある冬の朝、中学への登校途中に横断歩道で立ち止まると、ちらつき始…

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coyoly
6年前
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折り返し地点に立って

 四十歳の誕生日を目前に控えた昨夏、原因不明の体調不良により伏せっていた。毎日毎日、目を覚ます度に衰弱しているのがわかり、どこが分水嶺なのだろう、「その日」は明日か明後日か、など漠然と意識しつつ原因と治療法を探していた。  そんな日々の中で「雨ニモマケズ」を読み返す機会があった。  ずっと宮沢賢治を理解できぬまま生きてきた私にすっと浸みてきて驚いた。  「丈夫ナカラダ」を持つことは、病を得た人間が何よりも憧れることだ。もし「丈夫ナカラダ」を持っていたならこうしたいと、

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