見出し画像

【第37回 ミーム演劇教室 稽古日誌 2022.2.15開催②[もう一人の受講生へのアドバイス編]】

一昨日に続いて、今週2/15に開催した教室の記事更新です。
前回は、先生の私へのアドバイス編でしたが、今回はもう一人の受講生へのアドバイス編です。

『The Holy Man』は、演者(受講者)に合わせて、モチーフになる人物が異なります。私には、シェイクスピアによって稀代の悪役として描かれた(てしまった)リチャード三世。もう一名の受講者には、女性ということもあり、ジャンヌ・ダルク。
テーマは同じですがアプローチが全く違い、私も教室や彼女の稽古に付き合ったりして、この作品がどこに行くのか、3/15の試演会が楽しみなのとなかなかに怖いのと……。

今回トピックは2つ。「台詞術」と、「ジャンヌ・ダルクの孤独」です。

────────────────

[台詞術] 母音の長さで距離を出すんだ。

「母音を長くすることによって距離を出す。「かつてえぇぇ〜〜〜」「おおぉぉぉ〜〜〜い」。それが舞台上の処理だ。そうすることで袖からの声が100キロ位の距離として聞こえてくるんだ。それが客に届く時に、距離を感じる台詞術だ。大声を出せばいいってことじゃないし、心の中で100キロ作ればその音声になるかったら、ならない。技だ。技術でしかそれはできない。
そして遠くになればなるだけ、怒りを込めれば込めるだけ、いわば掠れの息声を使うのも、一つの技術だ。客席には壮大に聞こえてくるわけだ。で、それをわかってて台詞音声をやって、その台詞音声の技術をあえて壊して、今回は作ろうとしてるわけだ。基本的にその基本の音声ができないと、壊すこともできない。まずそれをやって。」


[ジャンヌ・ダルクの孤独] この世にとどまっても私を理解してくれる人は1人もいない

先生:ジャンヌで一番共感することは何。
受講生:男の服を着るっていう選択をしたっていうところです。自分を男のように強くなりたい、対等に見られるために、っていう。
先生:今お前は対等に見られてないの。
受講生:見てくれる人もいます。
先生:ジャンヌにとっては、あったの。
受講生:なかった、男の服を着る前はなかったと思います。
先生:男の服を着て死ぬことに関して、それをよしとしてくれる人がいたの。
受講生:いない……。
先生:そう。1人もいなかった。1人もいないから自分は、この世にとどまっても私を理解してくれる人は1人もいないということに関して、それが神のご意思だと思って、人間を理解するよりは、神の下に行くということを決めて、異端を放棄したわけでしょ。私は異端だと、神の声を聞いたなんて私の勘違いでした、と認めれば、生き延びることができたんだけど、誰も理解してくれない、私の努力に対して誰も理解してくれないということがわかったための悲劇でしょ。自分の決断でしょ。その決断のところの台詞だからね。

────────────────

ジャンヌ・ダルク解説

2/1の教室で先生から解説がありました。
「ジャンヌ・ダルクって知ってる? 実際的に生きて19歳、20歳という説もあるけど、19世紀に火あぶりにされちゃった。
フランスがイギリスと戦争して全部、フランス軍が壊滅的に何もできなかったにも関わらず、自由の女神みたいに旗を振って、「私は神の声を聞いた」「あなた方を導く」って言って、その子がフランス軍を率いてイギリス軍を打ち破っちゃったわけだ。フランス建国の礎を築いた。

ノルマンディー近くの都市でジャンヌ・ダルクが裁判を受けたときにフランス人は誰も助けなくて、異端者として火あぶりの刑にされたわけだ。「あなたは神から言葉をもらったって言っているが、それはあなたが神を見たわけではなくて、信じるがために思い込んだんですよ」って裁判官が言うことをジャンヌは認めなかった。「自分は神の言葉を私は受けた」ということを譲らなかった。実際的に神から言葉をもらったら、「私は神から言葉をもらったから何でもできる」というような異端者と同じ扱いになるから、宗教的に。法王を上回っちゃうのよ。それはローマ・カソリックでは異端者なのよ。

ジャンヌ・ダルクが、「自分の思い込みでした」「思い込みで行動して、結果フランスを導くことになった」ということを認めれば、ジャンヌは救われた。だけども「私は神の声を聞いた」っていうのを譲らない。だから異端者になっちゃった。それを単純に言うために「魔女だ」って言ってるけれども、実際的には魔女裁判でも何でもなかった。宗教都合で、国の都合で殺されてしまった。でも国の都合で殺されてしまったっていうだけなわけでもなくて、本人が、ジャンヌ・ダルク自身が、「それは真実であって、私は神の声を聞いたという真実を、私は否定することはできない」って言って火あぶりになっちゃった

『ひばり』の前にバーナード・ショーが『聖女ジョウン』を書いて。その前にジャンヌ・ダルクのことを書いたのは、フランス人でもなければイギリス人でもない。ドイツ人だ。シラーだ。シラーが1801年に、『オルレアンの乙女』という名前で戯曲を書いて、それが1番最初だというのは、フランス人もイギリス人も非常に宗教的な問題に関わるんでジャンヌ・ダルクのことを書けなかったんだ。1番そこに切り込むのは、西洋の文化だったら演劇なんだけど、1番最初に切り込んだのはドイツ人だった。シラーが立ち入れなかったのは、ジャンヌ・ダルクが『乙女』っていうのは、「処女性がある」ということだ。監獄でも強姦されたとか将軍達のおもちゃにされたということは一切書かなくて、火あぶりさえも書かなくて、神格化した処女のまま、あの世に行ってしまった少女として書いてある。シラーの『オルレアンの乙女』は、だから結末は全然火あぶりになってない。

『The Holy Man』では、そうしたジャンヌ・ダルクを神格化された少女ではなく、人間として、一人のヒトとして扱い、その真性を観客に届けることが目標であり、内容的な上演目的となります。

前半部、ロープに吊り下がる。

2022.2.18
寺原航苹

[ミーム演劇教室]
毎週火曜日15:00〜17:00
新宿ダン⭐︎スタ3
東京都新宿区西新宿7丁目13-7 タカラビル3F
*場所を変更する可能性があります。事前に必ずご連絡ください。

受講──1,500円/回
見学──2回目まで無料・3回目から1,000円/回
(学生はいずれも無料)

《新型コロナウイルス感染症感染拡大防止に関してのお願い》
・ご自宅での検温(37.5℃以上の発熱があった場合は来場をお控えください)
・会場での手指の消毒
・見学中のマスク着用(パフォーマンス中、表現上必要と判断する場合、舞台上ではマスクを外します)

お問い合わせ
小屋+kop 主宰 寺原航苹
080-8295-8919(寺原携帯)
coya.2581@gmail.com

いただいたサポートは小屋+kopの「より豊かなものを目指して」という理念に基づいて、公演などの活動のために使わせていただきます。 また、スキやコメントもすごく励みになります!! ご贔屓のほど、よろしくお願いいたします!!