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ストレスと認知的評価・ストレス反応の種類

前回はストレスを生み出すストレッサーについて話してきました。

今回は、そのストレッサーが人体に及ぼす刺激に対し、我々がどのように対処しているのか?その仕組みをお話しします。

ストレッサーが加わると、身心の変化(ストレス反応)が起こります。しかし、ホルモンバランスの不調や免疫力の低下といった生物学的な反応はすぐに起こるわけではなく、その前に、私たちの体は、頭の中で刺激を判断して処理しようとします。このように、ストレッサーを受けたときにそれが有害なものか無害なものかを判断することを「ストレスの認知的評価」といい、それに対して対処することを「コーピング」といいます。

1.ストレスの認知的評価

人は周囲から刺激を受けた際に、それが有害なものか無害なものかを判断してから、刺激をよりします。アメリカ心理学者ラザルス博士によると、この判断のことを認知的評価と呼び、一次評価と二次評価の2段階で評価を行うそうです。

・一次評価

ストレッサーを受けたとき、それが自分にとって

「無関係」か「無害ー肯定的」か「有害(ストレスフル)」

かの判断をします。
この段階には、その人の今までの価値観やモノの見方・考え方が強く影響します。

例えば「上司に仕事を頼まれた」という事実があるとします。その事実に対して、何の意味も持たず、得るものも失うものもないようなときは「それは自分がやるべき当然の仕事」と考え、「無関係」と評価します。また、それに対して、「自分には無理だ」「なぜ自分がやらなければならないのか」と考える人にとっては「ストレスフル(有害)」と評価します。「無言ー肯定的」とは、良好な状態の維持や増進に結び付くような場合の評価を指します。例えば、「仕事を任せてもらえて光栄だ」「興味深い楽しい仕事だ」といった肯定的な感情を伴う場合です。

・二次評価

第一段階で「ストレスフル(有害)」と評価されたストレッサーに対して、その状況を処理したり切り抜けたりするために、何をすべきかを検討する段階が、第二段階目の評価です。ここでは、過去の経験や周りにある資源、その人の性格などに基づいて、いつ、どこで何をどのようにすると最善な結果が得られるのかをいろいろ考えて方針を立てていきます。

例えば、上司に仕事を頼まれ、今後起こりうる問題や残業のことを考えて、この出来事を「ストレスフル(有害)」と評価しました。しかし、そのあとで、どのような問題が起こるのか、どのようなことをすれば起こりうる問題が最小限で済むのか、ということを過去に経験のある担当者に相談したりすることで情報を集め、心構えをすることができます。このように、その出来事について検討を行い、対処の準備を行うのが第二段階なのです。

・コーピング(対処

「コーピング」とは「対処する」という意味で、「ストレスコーピング」は「ストレスにうまく対処しようとすること」を指します。このコーピングには大きく分けて「問題焦点型」と「情動焦点型」の2つの種類があります。

A)問題焦点型コーピング・・・ストレッサーそのものに働きかけて、その原因そのものを解決し除去しようとするもの。例えば、問題について上司や同僚と相談しながら仕事を進めることや、勉強して新たな知識を身につけるなどがこれにあたる。

B)情動焦点型コーピング・・・ストレッサーそのものに働きかけるのではなく、それに対する考え方や感情を変えようとするもの。例えば、友人につらい気持ちを聞いてもらう、気晴らしに飲みに行く、「そのうち軌道に乗るだろう」と考える、マッサージなどでリラックスするなどがこれにあたる。

このような対応でうまくコーピングできれば心身の安定は保たれます。しかし、対処しきれないとなれば、身体は長期的なストレス反応にさらされ、ストレス疾患の発症につながります。

2.ストレス反応の種類

ストレッサーを有害であると認知したときに、私たちの体はどのような反応をみせるのでしょうか?ストレスを感じたときにまず現れるのが、不安や怒り、恐怖、焦りなどの「情動変化」です。情動とは、急速に引き起こされた本能的な感情の動きのことをいいます。続いて、内分泌系や呼吸器系、消火器系、心血管系などの機能に影響が及び、動機や冷や汗、鳥肌、震えなどの「身体変化」が現れます。さらに、お酒を飲んだり仕事でのミスや事故が増加したり、せかせかと動き回るなどの「行動変化」が現れます。これらの変化は、その人の性格や体質によって現れ方や程度はさまざまですが、その環境に慣れるにしたがって反応は徐々に大きくなり、ストレッサーにさらされる前の状態を維持するようになります。

3.人生のスパイス?

「ストレッサー」=「悪いもの」と考えられがちですが、すべてが悪いものではなく、人間にとって、良い働きをするストレッサーも存在します!

例えば、演説の前に体験するような適度なストレッサーは、集中力や注意力、覚醒力、処理速度などを高め、自劇に対する反応をよくします。

このようなストレッサーは短期的なもので、ストレスが有益に働き期待以上の成果が得られれば、やる気の源となるドーパミンが分泌され快感が生まれます。すると、さらなる快感を得ようと、次の行動へのモチベーションが高まり、ドーパミンによる「強化学習」と呼ばれ、適度なストレッサーは私たちを成長に導きくこともあるのです!

4.まとめ

以上のように、一言にストレッサーといっても、その影響の仕方によってはいい方向に作用することもあり、逆に、長期的なストレッサーによる影響は、身体を悪い方向に作用することがわかっていただけたかと思います。

ストレスの対処の仕方は人それぞれ。うまく対処し、ストレスに負けない生活を送るようにしましょう。

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