名作杯Vol.1 観戦記事 ROUND1 U屋 vs かし ~時の止まった世界で~

text by いちごピザ

「時の止まった世界へ行ける」といったら、君は信じるだろうか?

ここでいう「時の止まった」とは、対戦中にプレイされる《時間停止/Time Stop》のカードの効果やカジュアルな統率者戦で決められる《タッサの神託者/Thassa's Oracle》コンボに対する周囲の反応でも、9割りが嘘と言われる時間停止系〇〇の話でもない。現実として、時の流れが止まった変動変革のないという意味だ。

マジックには「時の止まった」世界線が存在している。オールドスクールやブロック構築は当時のルール通りのフォーマットであり、拡張性とは無縁の、まさに過去へと遡ることができる。これらのフォーマットで行われる旧作杯や限築杯は、マジックの原体験を楽しめるイベントである。

ただし、「時が止まった」世界においてもプレイヤーの「思考は止まらない」。導き出されたはずの答えに体当たりし、その先を求めていく。だからこそ旧作杯や限築杯はカードプールが変化せず懐かしさを感じつつも、新鮮な出会いが待っている。

今回より始まる新イベント名作杯は「時が止まった」世界線、ミドルスクールが舞台。オールドスクールより手軽にカードを揃えられて、ブロック構築よりも広く、往年のパワーカードたちと共闘できる。プレイヤーの思考により、ありそうでなかったコンボやシナジーが見つかる可能性を秘めている。

それではこれより、名作杯の幕開けとなる。開幕戦をかざるのはU屋かしの青同士の一戦である。

Game1

かしのダブルマリガンで始まった初戦。《島/Island》、《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》とお互いに土地を置き合うのみの”青い展開”から、先に動いたのは先手のU屋。環境を代表するドローカードである《行き詰まり/Standstill》をプレイして「時を止める」。

このハイスペックエンチャントは呪文に反応してトリガーするため、うかつに呪文をプレイしようものなら無条件で3枚のカードを与えてしまう。理想は相手のターン終了時にインスタントをプレイして、引きすぎた分捨ててもらうこと。いずれにしても、しばらくの間はドロー、セット、ゴーとなるわけだ。

何度目かのドローゴーの後、互いに青白のマナベースを構築。十分な色マナ供給が行えるようになった段階で、遂にかしは動いた。U屋のエンドに《大あわての捜索/Frantic Search》をプレイ。

先ずは《行き詰まり/Standstill》がトリガーし、U屋へ3枚のカードがもたらされる。青白から放たれた《大あわての捜索/Frantic Search》に怪しさを感じ、《対抗呪文/Counterspell》を合わせる。

かしは自身のターンに入り、本命である《パララクスの潮流/Parallax Tide》を唱え、これにより激しいカウンター合戦が開幕。U屋は《意志の力/Force of Will》により打ち消しを試みるも、かしも同じ手で応じる。そこへさらに2枚目のウィルを切ったことで、軍配はU屋へ。

タップアウトの隙をつき、U屋は《サングラスの大草原/Sungrass Prairie》セットから《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake》をプレイグラウンドへ。そう、U屋のデッキは青白緑の3色コントロール、ウェイク。次のアンタップを迎えれば膨大なマナが手に入るというわけだ。

好事魔多し。《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake》を貼った代償としてU屋の土地はすべてタップされ、ノーガード状態。3枚目の《意志の力/Force of Will》でもない限り、あらゆる呪文が通ることになる。

このチャンスにかしは《大あわての捜索/Frantic Search》から《調律/Attunement》と《パララクスの潮流/Parallax Tide》を捨て、すぐさま《補充/Replenish》!《パララクスの潮流/Parallax Tide》×2と《調律/Attunement》が戦場へと戻り、U屋の土地を封じ込め「時を止める」。《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake》があってもマナの発生源である土地がなくては動こうにも動けない。

かしは次のターンから《調律/Attunement》を起動する。1度2度、引いては捨てるを繰り返し、墓地へエンチャントを送り込む。
しかし、いくら掘ってもその1枚へと辿り着かない。戦場にあるエンチャントをクリーチャー化する《オパール色の輝き/Opalescence》は未だに姿を見せない

攻め手を欠いたことで時間が生まれ、U屋にもチャンスが巡ってくる。《嘘か真か/Fact or Fiction》まで辿り着き、ここで《正義の命令/Decree of Justice》を手に入れる。
度重なる《古えの墳墓/Ancient Tomb》の酷使、《綿密な分析/Deep Analysis》のフラッシュバックで、かしの残ライフは2まで減っていたのだ。

インスタントタイミングで使えて打ち消されない

やがて《パララクスの潮流/Parallax Tide》の束縛から解放され時が動きだすと、エンドに「サイクリング」される《正義の命令/Decree of Justice》を見越してかしの投了となった。

U屋 1-0 かし

Game2

Game2でも試合を動かしていくのはかし。強烈なメタカード《浄化の印章/Seal of Cleansing》、打ち消しを封じる《防御の光網/Defense Grid》と続けざまにプレイしていく。後者こそ《対抗呪文/Counterspell》するU屋だったが、頼みの《ミラーリの目覚め/Mirari's Wake》は封じられてしまったかたちだ。

かしはGame1では終ぞ出会えなかった《オパール色の輝き/Opalescence》をプレイし、エンチャントへと活を入れる。淡々と刻まれる2点のクロックを前にU屋は《嘘か真か/Fact or Fiction》に解答を求め、《一瞬の平和/Moment’s Peace》と《賛美されし天使/Exalted Angel》が加わる。

《対抗呪文/Counterspell》にバックアップされた変異は、やがて純白の天使へと姿を変え、一方的なダメージレースをスタートする。《パララクスの波/Parallax Wave》も《パララクスの潮流/Parallax Tide》も青き呪文を前に”通らない”

淡々と刻まれる4点クロック。《一瞬の平和/Moment’s Peace》《天啓の光/Ray of Revelation》《意志の力/Force of Will》と間髪入れずに応じるU屋は、補充に対するすべての答えを持っている…ように思えた。

かしは《パララクスの潮流/Parallax Tide》で《意志の力/Force of Will》を炙り出し、《綿密な分析/Deep Analysis》でドローを進める。X=5の《正義の命令/Decree of Justice》が「サイクリング」され、即座に5点クロックが形成される。

ダメージを受けて残るは2。そう、2点残ってしまったのだ。コンボ側のかしにとって、ライフは残ってさえすればいい。たた一手でゲームはひっくり返るのだから。
《大あわての捜索/Frantic Search》でデッキを掘り進めプレイしたのは、このゲーム初めての《補充/Replenish》。そして、ここにカウンターはなし!

1枚のソーサリーによって、エンチャントは墓地より舞い戻る。さあ、ショータイムのはじまりだ

《オパール色の輝き/Opalescence》×3、《パララクスの潮流/Parallax Tide》×2、《パララクスの波/Parallax Wave》×2、《浄化の印章/Seal of Cleansing》2と、一気に9枚のクリーチャー化したエンチャントが戦場に。ダブルパララクスの消散カウンターを取り除き、U屋の土地とクリーチャーを追放して「時を止める」。

命短き消散エンチャントも、《オパール色の輝き/Opalescence》に照らされれば、ライフを削りきるには十分過ぎる時間があった。

U屋 1-1 かし

Game3

しかし、熱戦ゆえに勝負を決する時間はなし。決着はSEへ持ち越しとなった。

U屋 1-1-1 かし