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限築杯 観戦記事 ROUND7 pay3 vs ンドゥバ@ガイ ~マリガン~

text by ふみ

マリガンと土地事故はマジックの長所であり、短所でもある。これはM:tGがこの世に生をうけてから変わることなく、プレイヤーを悩ませてきた大きな特徴だ。

勝てば天国、負ければ地獄、所謂バブルマッチは大会の度に必ずやってくる分水嶺。今日もどこかでプレイヤーが笑い、そして泣く。そんな場に今回歩を進めたのはpay3とンドゥバ@ガイ(以下ガイ)の両名。共に勝てばほぼ確実に決勝トーナメント進出、負ければ逆に……という状況である。

「疲れましたね」

席に着くなりどちらともなく零す言葉。無理もない、慣れているわけではないフォーマットで、そして久しぶりに紙のマジックをさわり、ここまで6回戦を潜り抜けてきた。それでもまだ試合を続けられるし、更にここに勝てば、マジックを続ける権利を得ることができる。

疲れているはずなのに、席に着けば言葉とは裏腹にやる気に満ちてくる。

「お互いベストを尽くして頑張りましょう。」

その言葉は互いに向けたものか、はたまた自分への鼓舞であろうか。


Game1

両者オープニングハンドを開くと、乾いた笑いがこぼれる。まさか「疲れた」という言葉がデッキに伝播したわけでもなかろうが、共にマリガンということになってしまう。「この環境、土地関係のキープは絶対に甘えられない」そのようにガイは何度も発し、pay3もそれに同意する。

ガイが6枚を受け入れる一方で、pay3は苦しそうな声と共に新たな7枚を捲り、そして「まじかよ」と呟きながら三度シャッフルを開始する。まさかのトリプルマリガン。

先手で6枚の手札を持つガイの《頭の混乱/Addle》がファーストアクション。環境に従い選択した「青」で見事に《吸収/Absorb》を当て、ただでさえ手札が少ないpay3を攻め立てる。pay3には土地しか残されていない。

この隙にとガイは続くターンに《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》をキャスト。だがそこには今まさに引き込まれていた《回避行動/Evasive Action》が飛び、さらに続くターンには《噓か真か/Fact or Fiction》。

マリガンをしたとは思えないぐらい順調に土地を置き、スペルを解決するpay3。一方のガイは二つの行動以外はただひたすら《沼/Swamp》と《平地/Plains》を置き続けるのみでアクションを終える。

お互いに8ターン土地を置き続け、迎えた9ターン目。ガイがセットした土地は《島/Island》! そうガイはずっと青マナを待ち続けていたのだ。出番にしびれを切らしていた《翻弄する魔道士/Meddling Mage》をようやく使用するのだが、そこには《除外/Exclude》が当てられてしまい、更にはこれがpay3にもたらすのは待望の《ゴブリンの塹壕/Goblin Trenches》!!

塹壕

土地こそがM:tGの基幹、マナを生むのも相手に勝利するのも

pay3が置き続けた土地が一気にガイを打ち倒すためのゴブリンへと変わり、ガイの土地は無念にも手札を消費するだけの十分な色を生み出すことができない。それを悟ったガイは次のゲームへと頭を切り替えるのであった。

pay3 1-0 ンドゥバ@ガイ


Game2

色事故によりGame1を失ったガイは更に続けてマリガン。pay3は今度は7枚でゲームを始めることに成功する。

だが二度は同じ轍は踏まないガイ。今度はしっかりと青マナを確保すると、まずは《翻弄する魔道士/Meddling Mage》で自身にとって障害となる《火/Fire》を止め《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》と続ける。

一方のpay3も《戦場の鍛冶場/Battlefield Forge》《シヴの浅瀬/Shivan Reef》などを並べ、こちらも色事故の心配はなさそう。

pay3は、ガイが更なるダメージクロックとしてキャストした《幽体オオヤマネコ》を《吸収/Absorb》で打ち消さんとするも、《撹乱/Disrupt》でこれは成就せず。実はpay3が支払ったマナは全てダメージランドから支払われており、ネコは着地し、相手にカードを引かれ、更に3点ダメージを受けると
pay3にとっては踏んだり蹴ったり。

確かに色事故はないが、そのための代償がとても大きい。

なんとか《デアリガズの息/Breath of Darigaaz》で《幽体オオヤマネコ》以外を一掃して見せるのだが、これによって自身が支払うことになった4点が非常に痛い。

デアリガズ

強力なスペルには相応のコストが求められる

ガイが《頭の混乱/Addle》で障害となりそうな《ゴブリンの塹壕/Goblin Trenches》を事前に取り除き《ガリーナの騎士》を繰り出すと、pay3にこの鉄壁の2体を押しとどめるための術もライフも残されていなかった。

pay3 1-1 ンドゥバ@ガイ


Game3

ガイはGame3でもダブルマリガン。しかしここまでマリガンを重ねたほうが勝利しているのであるから、これもある意味では吉兆ととらえるべきかもしれない。

「土地キープだけは妥協できない」同じ言葉を繰り返す。「俺はマリガンができる」とも気合を入れるかのように発する。

《沿岸の塔/Coastal Tower》の重ねうちから《島/Island》を置くのみでターンを終了するpay3に対して、ガイは少し悩みつつ「嫌だな」と呟きながら《翻弄する魔道士/Meddling Mage》を使用。

これはpay3の《回避行動/Evasive Action》で打ち消されるのだが、ガイも想定通り。だが続くターンの《幽体オオヤマネコ》も《回避行動/Evasive Action》されてしまったことは想定外であったか。

それでもガイは《ガリーナの騎士/Galina's Knight》を通すことには成功し攻撃の狼煙をあげる。

それを見てpay3は《噓か真か/Fact or Fiction》。これで《吸収/Absorb》《山/Mountain》/《火+氷/Fire+Ice》《沿岸の塔/Coastal Tower》《シヴの浅瀬/Shivan Reef》の5枚から前者の2枚を手中に収め、じっくりと反撃の時を待つ。

ただちくちくと《ガリーナの騎士/Galina's Knight》のみがダメージを重ねる中、来るべき時を待つpay3に対してガイは《頭の混乱/Addle》。

これで先ほど確認済みの《吸収/Absorb》を奪い取りつつ、残りの手札が《除外/Exclude》《ウルザの激怒/Urza's Rage》であることを確認すると、pay3のトップからやってきた《稲妻の天使/Lightning Angel》をもきっちりと《ドロマーの魔除け/Dromar's Charm》で返すと状況を再確認。

「立ってるのは3マナですね」

pay3の肯定の返事を受けガイは《翻弄する魔道士/Meddling Mage》を使用。何かあることが察せられても、これがたとえ釣りだとしても、この魔道士は通すことはできないpay3は《除外/Exclude》を打たざるを得ない。そしてガイはこれをしっかりと《撹乱/Disrupt》で対処して見せる。

攪乱

ガイは文字通り「攪乱」してみせる

当然《ウルザの激怒/Urza's Rage》が宣言され、《ガリーナの騎士/Galina's Knight》が追加されるとpay3は最早進むことも引くことも能わず。苦し紛れに《翻弄する魔道士/Meddling Mage》に《予言の稲妻/Prophetic Bolt》を打つのだが、これを《反論/Gainsay》することでガイは決勝トーナメントの椅子を勝ち取った。

pay3 1-2 ンドゥバ@ガイ


期せずして3戦して、全てマリガンを多く重ねたほうが勝利することとなったROUND7。

マリガンと土地事故はマジックの大いなる特徴である。時にプレイヤーを苛立たせ、その運を呪いたくなることもある。だが、だからこそそういう事態でどのように対処すればよいのか、それもまたプレイヤーの技量というものであろう。

それはインベイジョン環境でも現代マジックでも何も変わることはない。