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旧作杯Vol.4 観戦記事 決勝戦 龍之介 vs SAWATARIX ~読みを超えろ~

text by ふみ

前回2021年8月に行われた旧作杯Vol.3の決勝戦のカバレージは、以下のような文章で書き出された。

龍之介というプレイヤーをご存じだろうか。

Vol.2のディフェンディングチャンピオンとして紹介された龍之介は、同大会でも堂々の勝利をおさめ、見事に二連覇を達成することとなった。相手の隙を見逃さずに攻勢をしかけ、僅かな綻びであってもそれを強引にこじ開けるその胆力に、遂には龍之介は魔王とまで呼ばれるようになった。

それから半年たったVol.4、当たり前のように予選ラウンドを全勝で突破し、更にはそれが必然とばかりに四度目の決勝進出。決勝進出率100%ともなれば、最早そこには驚きも存在していなかった。

だから敢えてこう記そう。

龍之介というプレイヤーを知らないものなどいない。


Game1

龍之介の威圧感、まさかそれに気圧されたというわけでもないだろうが、SAWATARIXはまさかの4枚スタート。そしてそこに1ターン目から襲い掛かる龍之介の無慈悲なる《トーラックへの賛歌》。


強制クインタプルマリガン


何もしないうちに、あっという間にSAWATARIXの手札は2枚。洗礼と呼ぶにはあまりにえぐすぎる攻撃。それでも《ミシュラの工廠》と《Mox Jet》を置くのだが《陥没孔》により工廠は失われ、続くターンの《Volcanic Island》も間髪入れずに《露天鉱床》で破壊されてしまう。

龍之介、どれだけ勝利を積み重ねても、一切の油断を見せることはない。

進退窮まったSAWATARIXに対して、龍之介が更なる《トーラックへの賛歌》をキャストすると、最早そこに一切の対抗策も残されていないのであった。

龍之介 1-0 SAWATARIX


Game2

龍之介の勇名はこれまで記したとおりだが、一方のSAWATARIXも全く負けることはない。テーブルトップのGP京都2015 ベスト4をはじめとして、数多くの大会で結果を残し続ける一方で、拡張アートのプロジェクトでもその名を馳せる。SAWATARIXは世界レベルで知られているプレイヤーであり、アーティストなのである。

龍之介が強いことは重々わかった。だがSAWATARIXであるなら、その実力と理知的な判断でそれを止められるはずだ、とも誰しもが思っているであろう。

メインデッキこそは、龍之介の重量クリーチャー陣に対して、3点火力(《稲妻》《稲妻の連鎖》)を除去の主とするSAWATARIXは苦戦を強いられるものの、サイド後は《剣を鍬に》も追加で構えることができる。

そしてこの試合ではそんなSAWATARIXの妙技がいかんなく発揮される。

1ゲーム目を圧勝して見せた龍之介が1マリガン、そして次の手札も悩みに悩む。少々珍しい光景と言っても過言ではないかもしれない。このマリガンには「乱数調整」「魔王ではなく人間アピール」などという軽口も飛ぶが、その実こういったところをしっかりと選択しきってきたからこそ今の魔王の姿がある。

しかしながら1枚少ない開戦となったのは事実。その優位さを利して戦いの先手を取ったのはSAWATARIXとなった。1ターン目にセットした《ミシュラの工廠》にそのまま流れるように攻撃を指示。まずはダメージを先鞭をつけると、《サバンナ・ライオン》も援軍として送り込む。

龍之介は《露天鉱床》でSAWATARIXの土地を破壊し、《暗黒の儀式》からの《憂鬱》で速度を落とさんと企図。これでSAWATARIXは簡単にはスペルを使用できなくなる……はずであった。


白いスペル"は"重くなる


だがここでSAWATARIXが設置したのはサイドインした《森の知恵》。そしてアグロデッキの龍之介を前にして惜しげもなく8ライフを注ぎ込み一気に手札を回復する。

相手が持つ本来の攻撃性を考えるとこのコストは軽いものとは決して言えないはずだ。しかし今の龍之介には攻撃手段も、防御策もない。そして《トーラックへの賛歌》を実質無効化でき、《憂鬱》を乗り越えるだけのスペルとマナを確保するために、これ以上ないともいえるクリティカルなプレイといっていいであろう。

なによりこの《森の知恵》のための緑マナは《真鍮の都》からしか生み出せない。土地が壊れやすいOldSchoolにおいて、そこに都があるという保証はどこにもなく、リスクもあるだけに成功したときのリターンは筆舌に尽くしがたい。今それをSAWATARIXは達成して見せた。


知識が欲しくば命を捧げよ

《森の知恵》から授かった《Demonic Tutor》を《Ancestral Recall》へと変えると、その間も攻撃は絶え間なく続け龍之介のライフを攻め立てる。

ここまで防戦一方の龍之介を見るのはいつ以来か。龍之介は必死に《Juzam Djinn》をブロッカーに立て延命を図るのだが、SAWATARIXは意に介さず攻撃を宣言。龍之介の残りライフは2。

一方で《森の知恵》に命を捧げ続けているSAWATARIXもライフを5としているのだが、龍之介よりも6枚も多くのカードを引いているのだ。当然そのような状況で止めを刺す術を持たないわけがない。

《Juzam Djinn》が龍之介から1ライフを奪い取るのを見届けると、《心霊破》を打ち込みフィニッシュを華麗に飾ってみせた。
敢えて自分のターンではなく、相手のアップキープを待ったのはSAWATARIXならではの絵作りだろうか。


龍之介 1-1 SAWATARIX

Game3

SAWATARIXの《森の知恵》に一敗地にまみれた龍之介。最終ゲームの手札は熟慮の上で7枚でスタートを宣言。一方のSAWATARIXは1マリガンという形になった。

《沼》《暗黒の儀式》《トーラックへの賛歌》《Order of the Ebon Hand》と畳みかける龍之介。十二分に強力そうな出だしに見えるが、《Order of the Ebon Hand》が《稲妻》の射程圏内であるということが、悩みの種だったというところだろうか。

SAWATARIXは《真鍮の都》でゲームをスタート。これは龍之介に《露天鉱床》されるが、代わりに予定通り《稲妻》で《Order of the Ebon Hand》を道連れにする。

序盤構築のために組みあう両者、ここでSAWATARIXが《Tundra》から《Ancestral Recall》で、一気にすべてを取り返し流れを掴みにかかる。《Tundra》は龍之介の《陥没孔》に破壊されるのだが、ここでSAWATARIXがやや沈思黙考。

《Ancestral Recall》で引き入れた土地から何をセットするか。リソースを吐き続けた龍之介の手札は1枚へと減っている。ここまで相手は《露天鉱床》を1枚、《陥没孔》を1枚使用している。後1枚は壊される可能性があるかもしれない。

だが2枚壊される可能性は低いと考えてよいのではないか。

SAWATARIXは《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》をセット。これが壊されるのならばそれは良し、残るなら最上の展開がまっている。そしてこれは想定通り《陥没孔》への贄となったのを受けて、本命の《Plateau》を送り込んだ。

魔王覚醒

刹那、マンガやアニメであれば、龍之介の目に光が宿ったといった感じであろうか、いや魔王ならば漆黒の翼でも生えたイメージだろうか。その手に何も持っていなかったはずの龍之介が次に使用したのは……まさかの《露天鉱床》であった。


OldSchoolの土地は壊れるものなのだ


あってはならない2ターン連続の土地破壊が現実のものとなってしまう。そしてそれで終えることなく、龍之介は更にそこから立て続けにクロックをも積み重ねる。

まずは《黒騎士》、そして続くターンには《Order of the Ebon Hand》。

《Plateau》を失い、マナソースが《Mox Sapphire》《Mox Jet》になっているSAWATARIXには、あるはずの除去を全く放つことができない。赤マナも白マナも出てこない。

龍之介の意に従い《黒騎士》が《Order of the Ebon Hand》が、SAWATARIXの元へと次々と攻撃をしかけていく。


そして遂に、SAWATARIXは手札を公開することで投了の宣言をせざるを得なくなった。。

そこには《天秤》という強力除去と《Wheel of Fortune》という全てを取り返す2枚が残されていた。あの《Plateau》さえ残っていれば試合展開は全く違ったものになっていたであろう。

SAWATARIXの読みは正しく、だがそれを龍之介の力が上回って見せた。だからこそ皆が言うのだ。


龍之介は、旧作杯の最強の魔王なのだと


誰よりも旧作杯を戦っている男、威風堂々の三連覇を成し遂げたそのものの名は、魔王「龍之介」。

これを止める勇者はいまだ現れない。