見出し画像

旧作杯Vol.4 観戦記事 ROUND2 骨付きチキンvsbel ~パワー~

text by ふみ

「昨今のクリーチャーはとても強力になった。」ここ数年前から言われる言葉である。実際M:tGの初期はスペルの強力さに比してクリーチャーはそこまで至っていなかったのは事実であろう。

OldSchoolという世界は、まさにその強烈なスペルが次々と繰り出される環境である。ある意味では「魔法使い」を真に体現している世界ともいえる。

そんな煌びやかにして強力な、力がぶつかり合った旧作杯Vol.4第2ラウンドのマッチをお届けしよう。


Game1


先手を得た骨付きチキンだがいきなりのダブルマリガン。だがその勢いは手札と反比例するかのように強烈なものだった。2ターン目に《Mishra's Workshop》から《巨大戦車》を作り上げると、続くターンには《Copy Artifact》でこれを増産。骨付きチキンの戦車部隊が、その力で戦場を制圧せんとエンジンに火を入れる。

十分に力に満ちたスタートを切ったと言える骨付きチキン……だがbelの動きは更にその何倍もの上をいった。

1ターン目には《Ancestral Recall》から《Mox Emerald》と《Mox Pearl》。骨付きチキンの《巨大戦車》に「嫌だなぁ」と本音を僅かに吐露しつつも《Time Walk》で時を渡ると、続くターンには《新たな芽吹き》から今再びの《Ancestral Recall》。

更には《玄武岩のモノリス》を設置し《Power Artifact》をエンチャントすることで準備を整えると、《Wheel of Fortune》ですり減った運命を強引に戻してみせると、そこに待っていたのは《天秤》だ。

平等とは優位者の語る言葉


これこそ黎明の時代の強力スペルの饗宴。

平等化の名のもとに、虎の子の戦車部隊を廃棄することになった骨付きチキン。《Ancestral Recall》で次なる弾丸を探しに行くのだが、その知識を持ってしても後続が戦場へたどり着くことは叶わない。

ここまでの完璧な準備を整えたbelはいよいよ《玄武岩のモノリス》に手をかけた。そこから生み出された3マナを使い、そのうちの1マナを自らへ注ぎ込むと今再びモノリス輝きを放つ。今一度これを繰り返し、更に重ねて二度三度、モノリスの奏でる鈴の音が鳴り響く……これ即ち無限の力。

強大な力を手にすれば、魔法使いが行うことはただ一つ。


詠唱せよ、その意思を力として

「5億点」の《火の玉》が放たれた。

骨付きチキン 0-1 bel


Game2

Game1であまりに強大な力を見せつけてしまった反動か、今度はbelがマリガン。しかもトリプルマリガンだ。いかにコンボデッキとはいえ、いきなりの4枚スタートは実に苦しい。

だがそれを乗り越えるのがbel。《Black Lotus》から《Wheel of Fortune》をいきなりキャストし、無かったはずの手札がいきなり復活。涼しい顔でリカバリーして見せる。

一方の骨付きチキン、まさかの《Wheel of Fortune》で2ターン目に出すつもりであった《Mishra's Workshop》を失ってしまうも、それならと《Mox Emerald》《ミシュラの工廠》《友なる石》と連弾し着実に力を蓄えていく。《Su-Chi》こそは《魔力消沈》されてしまうが、《巨大戦車》の追加には成功。《Time Walk》も絡めて一方的に攻撃をしかけていく。


力の具現化を見せつけよ

防戦に回ってしまったbel。なんとか《Ancestral Recall》で逆転の目を模索するのだが、これで手札を消費することができずに、無念のディスカード。

二人のデッキは方向性こそ違うが、膨大なマナに立脚しているということは一緒だ。大きな値は強い。それはいつの時代も変わらない普遍的なもの。

belに与えた最後の1ターン、そこで相手に何も動きが無いことを見届けた骨付きチキンは、自軍の力の象徴たる《巨大戦車》へ最後の指示を下した。

骨付きチキン 1-1 bel


Game3

お互いの目指すところを見せつけた2ゲーム。最終戦となったこの試合ではどちらの力がより強力に相手を圧倒するのだろうか。

belはまたもマリガン、だが6枚の手札は実に視界良好。《Ancestral Recall》でまるで何事もなかったかのように手札を7枚へと復活させると、《Time Walk》で2・3ターンを連続で掌握する。

一方の骨付きチキンも《Mox Ruby》《Mox Pearl》《ミシュラの工廠》《友なる石》とGame2を彷彿とさせるような華麗なスタートダッシュ。

両者ともに順調な立ち上がり、力と力が交錯するがっぷり四つ。一歩も引く様相を見せない……まだどちらに転ぶかわからないな、と思わせた矢先、勝敗の分水嶺はいきなり訪れた。

2ターン目に骨付きチキンは《冬の宝珠》。これをbelは宝珠の存在そのものよりも、宝珠が2マナであるということを改めて確認。そして今一度自身の手札を見返すと、これを《マナ吸収》。


対戦相手の力をも取り込め

belは今《Volcanic Island》《Underground Sea》《Library of Alexandria》という3枚の土地をコントロールし、さらに加えて2マナを得た。一歩前に出ようとした骨付きチキンを押しとどめ、むしろその力を取り込んだbelは一気に持てるものを全て公開する。

すなわち

《玄武岩のモノリス》
《Power Artifact》
《Mox Ruby》

望外の力を得たbelが描き出す光景はただ一つ。

この日2回目の5億点がbelの手から放たれ、骨付きチキンの目の前が真っ赤に染まることとなった。

骨付きチキン 1-2 bel



実はネットワークトラブルにより、対戦開始が遅れたこのテーブル。一旦は試合成立が危ぶまれたものの、各位の尽力により無事ゲームスタートとなった。その代わりとして試合時間は若干短縮されたのだが、二人はそんなトラブルなど感じさせないような力と、スピード感に満ちた試合を見せてくれた。

オンライン・テーブルトップ対戦であるが故の問題。勿論そのようなことが無いことが望ましいが、これも旧作杯などでしか味わえないある意味で特別な体験であろう。

そして試合を楽しく行う両者を見るに、本当に対戦が成立してよかったと胸をなでおろす次第である。M:tGが作り出す縁、それは何も代えがたい力と言っても過言ではないだろう。