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アストラゼネカ社製ワクチンと血栓症の関連、イギリスの感染状況の改善について(4月8日こびナビClubhouseまとめ)

4月8日(木)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター: 木下喬弘


オープニング

木下喬弘
おはようございます。今日のモデレーターは峰先生だったんですけれども残念ながら、峰宗太郎がスッキリ!に呼ばれてしまいまして、代わり映えがしなくて申し訳ないですけれどもいつも通り私が対応させていただきます。

そういえば、Twitter が Clubhouse を買収しようとしていたというニュースが出てきまして。

Twitter、「クラブハウス」買収で一時交渉 米報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN080GA0Y1A400C2000000/
出典: 日経電子版 2021/04/08

ツイ廃?クラ廃?Clubhouse ヘビーユーザーとして、ちょっと見逃せないなと思って見てたんです。
4400億円で買収しようとしてたみたいなんですけど、交渉は決裂したということで、特に何も起こらないみたいなんですが。
今の時点でも Twitter と Clubhouse で結構ちゃんとコネクションができていて、 Clubhouse 上でルームを作ると「Twitter でつぶやきますか?」という画面が出てきてそのままツイートできるので、現状特に問題は感じていないのですが、Facebook と Instagram のような連携ができれば僕的には使いやすいなという感じがしたので、交渉は決裂したみたいですけど、できれば再度 Twitter 社には頑張っていただいて Clubhouse を買ってほしいなと個人的に思いました。

・・ということで、今日も始めていきたいと思います。

今日のテーマが少し重めなので、ゆっくり見ていこうかなと思います。


【ニュース1】アストラゼネカ社製ワクチンと血栓症の関連について

皆さん気づいていらっしゃると思うのですがイギリスからアストラゼネカ(Astrazeneca)社の新型コロナウイルスワクチンについて色々と追加の情報が出てきています。
それを順番に見ていって、結局どのように考えたらいいのかということをディスカッションできればいいなと思うのですが。結構難しくて……。
アストラゼネカ社のワクチンはどう捉えたら良いのか僕自身も決めかねているところがあるので、できるだけ事実に基づいて説明していきたいなと思います。

アストラゼネカ社製ワクチン、血栓症「関連の可能性ある」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/96586
出典: 東京新聞web 2021/04/08
※こちらの記事は、clubhouseで取り上げられたものではなく代替記事です。

アストラゼネカ社製新型コロナウイルスワクチンについて欧州医薬品庁(EMA)が会見を行い、接種後の発生が報告されている血栓症はワクチンの接種に関連する可能性があると認めました。
ということで、アストラゼネカ社製ワクチン接種後に報告されている血栓は接種と因果関係がある可能性があり、副反応の一つとしてリストされるべきとしています。
会見で欧州医薬品庁はアストラゼネカ社製のワクチンの接種と、その後に発生することがある血栓症について関連している可能性を認め、接種による免疫反応の可能性があるという調査結果を発表しました。
ただし、副反応の発生は非常にまれで、ワクチンは高い効果があり接種の利益はリスクを上回るとの見解を改めて示しています、ということです。
これは本当にその通りで、 EMA 自体の発表も概ね同様です。

AstraZeneca’s COVID-19 vaccine: EMA finds possible link to very rare cases of unusual blood clots with low blood platelets | European Medicines Agency (europa.eu)
出典: EMA 2021/04/07

"EMA finds possible link"ということで、この言葉はちょっと微妙なんですよね。
"link”って、必ずしも因果関係を示唆するわけではなくて。"association" や "link" 、特にイギリス勢は "link" という言葉を結構使いたがる傾向にあります。
例えば BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルの略。1988年から BMJ が正式名称となっているイギリスの医学誌)では、「観察研究で因果関係を語ろうとするな」と言い出した時があって、RCT 以外は因果関係について言及してはダメというようなルールを作り出していました。
わたしが通っていたハーバード公衆衛生大学院は、どちらかというと観察研究から因果関係を導き出すという手法を開発してきたグループなので、これには結構反発してたんです。
BMJ では "effect" とか "effectiveness" というような因果関係を示唆する言葉を観察研究で使うなということになり、では代わりにどのような言葉が使われていたかというと、この ”link” なんですよね。
つまり、 ”link” って因果関係があるとは言ってないけど疑っていることをそれとなく示唆するような単語なんです。

少し話はそれましたが、いずれにせよ、このタイトルからはEMA(欧州医薬品庁)自体は ”possible link” としているということなので、絶対にこのワクチンのせいで起きているということまでは書いておらず、このような表現で留めています。
一方で、 これはプレスリリース?ステートメント?なのか少し分からないですけれども、一番最初に何て書いてあるかと言うと、

EMA’s safety committee (PRAC) has concluded today that unusual blood clots with low blood platelets should be listed as very rare side effects of Vaxzevria (formerly COVID-19 Vaccine AstraZeneca).

と、 "Side effect" という言葉を使っているんですね。これは、 日本語で訳すと「副反応」ということなので、こちらの用語は明確に因果関係を示唆します。
EMA(欧州医薬品庁)の文章だけからは、 EMA がワクチンと血栓症の間の因果関係についてどう捉えているのか?ということを読み取ることは難しいのです。
この EMA(欧州医薬品庁)の発表には、血栓症がどのくらいの頻度で起こっているか?ということしか書いていないくて、ワクチンを打っていない人との比較や、どのような統計解析をしたかというのは触れられておらず、実際に副反応なのかどうなのかを評価するのはこの文面だけでは困難です。
専門家グループが評価したそうですが、その具体的な内容などは書かれていないのでちょっとよくわかりません。
ほとんどのケースは60歳以下の女性でワクチン接種後2週間以内に起こっていて、かつ血栓症、おそらくこれは静脈に(起こる)ということでいいと思うんですが、血の塊ができるということに加え、血小板という「血の塊を作る」タイプの血球の値が下がっているというのが特徴だとしています。
他の発表では、例えばイギリスのものですと、これらの症状は25万人に1人くらいの確率で発症するということです。
EMA(欧州医薬品庁)自体もはっきりと言っているように、ワクチンのメリットはデメリットを上回る、Benefit は Risk を上回ると言っているので、これを前提にはしているものの、また新たに副反応がでてきているというのが話題になっています。
こうだから打つべき打たないべきという話に持っていきたくないのですが、データとしてはとにかく25万人に1人の頻度でこのアストラゼネカ社のワクチンを打った後に血栓症が起きているという人がいると報じられている、ということがまず一つ目の話題になります。

もう一つ、ここから結構難しいリスクコミュニケーションになってきます。
とにかく私は、このトークの結論としてアストラゼネカ社製のワクチンの良い悪いを伝えたいわけではなく、かつこのワクチンを打つべき打たないべきという話をしたいわけではないということを前提で聞いていただきたいです。
少なくとも血栓症は有害事象である、 ワクチンを打った人の中にこういった症状が出た人がいる、と。
頻度としては25万人に1人ぐらいの頻度であると。
これらが Fact =事実なので、事実ベースで話をしよう、ということです。

ではもう一つアストラゼネカ社製のワクチンがイギリスに何をもたらしたかということは、見ておくのがフェアだと思うので、この観点から、ちょうど同じ日(アメリカ時間の今日の朝、日本時間の昨日)にイギリスの感染者の推移を報告した記事が朝日新聞デジタルから出ているので、これも一応見てみましょうということで、このニュースも取り上げたいと思います。


【ニュース2】イギリス、感染状況が劇的改善

英首相「私もパブでビールを」感染状況が劇的改善https://www.asahi.com/articles/ASP476RCRP47ULBJ00H.html
出典: 朝日新聞 2021/04/07

英首相、 ジョンソン首相ですね、「私もパブでビールを」感染状況が劇的改善ということで、感染状況が劇的改善ということが同時にニュースになっています。
「私たちの努力が報われていることは明らかです」
英国のジョンソン首相は5日の会見で、1月から続く3度目のロックダウン(都市封鎖)の一部緩和に踏み出すと宣言した、と書かれています。
イギリスでは、いわゆるイギリス型の変異ウイルスが最初に確認されてから非常に感染拡大が早く1月には1日当たり新規感染者数が6万人というような時期があったんですけれども、4月6日の時点で2379人まで下がっていたということで非常に低下しています。
政府発表によると、一時は1日1300人を超えた死亡者数も20人に減ったということで、大衆酒場、イギリスはパブ、アメリカはバーが多いと思うんですが、こういったパブについて、ジョンソン氏は来週から「私もパブへ行き、慎重に、でも確実にビールジョッキを口に運ぶ」と、まどろっこしいイギリス的な言い回しをして、感染者が減っていることをアピールしています。
イギリスは今のところ、アストラゼネカ社とファイザー社のワクチンを使っているんですけれども、人口の47%にあたる約3162万人が1回目のワクチン接種を終えている。特に70歳以上では9割が受けている。これは人口接種率が32%の米国や14%の EU を大きく引き離していると。1%未満の日本とは比べるまでもないという感じですけども、

まとめてみますと、今回わかったことは、イギリスとEUで主に使われている アストラゼネカ社製ワクチンを接種した後に血栓症ができたという報告があって、それを EMA(欧州医薬品庁)も関連がある可能性があるということで認めており、その頻度は約25万人に1人であると。
一方で、ワクチンが47%まで普及しているイギリスでは1日当たり約6万人の感染者が出ている状況だった過去から現在は2000人台までかなり劇的に改善していて、来週から店が再度オープンができるというような状況になっている、という二つのニュースをまとめてお伝えしました。

どうしますかね。なんていうのがいいのか難しいですけども。
ここから、どういう話の展開にしていくのが適切なのかというのが、私も非常に迷っているところで、難しいんですけれども、いったん Opened Question という形で、登壇者のみなさんにこの2つのニュース合わせてどのようなご意見・ご感想をお聞かせいただければと思います。

黑川友哉
よろしいですか?

木下喬弘
黑川先生、お願いします。

黑川友哉
おはようございます。なんか木下先生の声のトーンがすごくに暗い感じに聞こえるのですが、気のせいですか?

私の意見としては、これらについて非常にポジティブに捉えています。
医薬品というのは、承認された後に、治験で使われていたよりも圧倒的に多くの患者さんとか、ワクチンの場合は健常人に使われることになるので、治験で見られていなかったような副反応というのは必ず見られると思っておいた方が良いです。むしろ、ファイザー(Pfizer)社の方でこういう重大な副反応が見られていない方が不思議なんです。
今回、アストラゼネカ(Astrazeneca)社のワクチンで、承認後にこういった血栓症という重要な副反応が見られたということは、これがキャッチできている、ということがまず重要です。
さらに、先ほど木下先生の方からアストラゼネカ(Astrazeneca)社のワクチンにおける Efficacy と Effectiveness の話もいただきましたけど、 全般的には EMA(欧州医薬品庁)も言う通り、有用なお薬であることは間違いないと僕は思っているんですね。
このパンデミックを抑えるためにこのお薬は必須だとは思っています。
ただ一方でこういったまれでかつ重要な副反応というのは出てくるので、これをしっかりと捉えながら、使う人、患者さんや健常者、また特に医療者がこういった副反応が起きるんだということをしっかり把握するということが重要なんですね。
で、このファーマコビジランスという、お薬が承認された後に安全性の情報をしっかりキャッチしていくという作業は「育薬」といって、お薬の価値というか使い方をより適切にしていくために必須のことなんですよね。 それがうまく機能しているということですので、そういう意味で私はこのニュースをポジティブに捉えていると言ったんです。
ですから、日本で(このワクチンが)承認される前に、ヨーロッパの方で上手に「育薬」が進んでいるという状況です。
これをもって、日本で承認申請中で、承認されるにあたってどういうふうに医療者が何に注意していかなければいけないのかということをしっかり把握した上で使っていくということが重要です。
また、EMA(欧州医薬品庁)のホームページを見てみると、これを使うにあたって血栓症が出る時には特有の症状が出ることが載っていて、患者さんは息切れであったり、胸の痛み、あとは足が腫れるとか持続的なお腹の痛み、これは静脈血栓だけでなくて動脈にも一部見られてるという方もいらっしゃるので、こういった症状にちゃんと注意しようと。そしてこういった症状があるときには必ず医療機関を受診すること、かつ診察したドクターは、アストラゼネカ(Astrazeneca)社ワクチンを接種した方の中にこういった副反応が起きるんだ、ということを念頭に置きながらしっかり全世界でこのワクチンを正しく使っていく、そして使った人を正しくフォローしていくという姿勢を持つことが「育薬」ということで重要かなと思います。
そこまで悲観的になることはないのかなと私はとらえていますね。

木下喬弘
黑川先生、ありがとうございます。
重要なポイントとして、とにかくデータがちゃんと集まってきていて、それが正しく報告されているという事が重要であるという論点かと思います。
それはわたしも同意していて、実際に本当は副反応があるのにそれが報告されていないよりは、しっかり報告されているという制度がしっかりと働いているということがポジティブかなと考えています。
他の先生方どうでしょうか?
峰先生どうぞ。

峰宗太郎
あの、僕の観点からは、いつも木下先生とタッグを組んで色々なところで話をしているんですけれども、常に疫学者、たくさんのデータを扱っていて、どういうことが実際に起こったかを調べていただけるような専門家と、実際に何が起こったかどうかをミクロのレベルで調べるメカニズムを解析する基礎研究者、これらがタッグを組んでなければいけないと思っていまして。
今回、出足が遅い、というより出始めたところだとは思うんですけれども、どうして血栓症が起こってしまうんだろうというメカニズムはまだ全然分かっていないんですよね。で、これに関して症例があったということですので、情報だとかデータを集めてどういうことが起こったのかということを明らかにすることも非常に安心感や実際にどういったうことを注意すれば良いのかという解明につながるので急いでいただきたいと思っているんですよね。
特にアストラゼネカ(Astrazeneca)社だとかジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社、それからロシアのスプートニクVですね。こういったワクチンはウイルスベクターワクチンと言って、今までのこびナビではまだ解説が不十分な種類のワクチンで、特に日本ではまだ承認されていないので、今後やっていこうという段階なんです。
こういうベクターワクチンっていうのは運び屋さんとして「ベクター」というウイルスを使っているんですよね。
これを体に入れた時にどういう反応が起こって、このベクターに対しても免疫というのは応答するわけなので、抗体というものが出来てくるのです。そういうものがどのぐらいできているのかとか、どういう種類の抗体ができるのか、というのを実はこれらの製薬企業は全然明らかにしていなくて、調査・検討を十分に公表していないんですね。
なのでそういったところのデータも含めてファイザー(Pfizer)社やモデルナ(Moderna)社のようにどういうことが起こっているかというのをもっとしっかりデータを出していこうよ、ということを科学者もしっかり訴えて、しっかり手を動かすことが大事な段階に入っているのかなと感じましたね。

木下喬弘
ありがとうございます。
これも本当にご指摘の通りで、リスクコミュニケーション上、非常に重要な観点にもなってくるのかなと思うんですけども、リスクがあるのはわかった時に、そのリスクはなぜ起こってくるのか?ということと、どのような解決策があるのか?というところについて、情報提供したいところですよね。
これは速報的なものなので、峰先生は基礎研究的な知見はまだ全くない、ということをおっしゃっていただいたんですけども、疫学上の知見もほとんどないですね。
要するに、接種した人25万人に1人くらいこういったことが起きたということだけであって、自然発生がどのぐらいなのかということもわからないですし、それと比較して多いのかどうかということもわからないということで、解釈をしても、専門家の立場からの情報提供するということも非常に難しいという状況です。
より詳しく解釈できるような情報開示を早くしてほしいなということで、正直私も同じことを思っています。
安川先生どうでしょうか。

安川康介
メカニズムに関してはまだまだ解明されなければいけないですけれども、言われ始めているのがサイエンスのマガジンのオンラインの記事とかにもあったんですけれども、血小板減少を伴う血栓症が例えば脳の静脈ですね、脳静脈洞というところにできたりとか、お腹の中の静脈、腸管の静脈や門脈という肝臓の周りにある静脈とか、そういうところにできる特殊な静脈血栓が報告されています。
おそらく自然発生している率よりも高く起きているということで、今回こういう ”Possible link” という表現になったと思います。
静脈血栓を防ぐためにヘパリン系の薬を使うことがあるんですが、これを使っているとヘパリンと血小板第4因子(Platelet factor-4)というタンパク質の複合体に対する抗体ができることがあって、それによって血栓ができてしまうということがあるんですよね。
まだプレプリント(査読中の論文)とかいう状態なんですけれども、もしかしたら、今回のワクチンを打って 血小板第4因子というタンパク質に対する抗体ができているのではないかという報告が出始めています。ですので、今後どういう検査をして治療をしていくべきか?という事は分かっていくかと思います。
今度医者の方でこの Clubhouse を聞いている方も一緒にいらっしゃるので
そこをメンションしようかな、と思いました。

木下喬弘
安川先生のご指摘の通り、いわゆる HIT(ヘパリン起因性血小板減少症:heparin-induced thrombocytopenia)という病気があって、ヘパリンを使うと血小板が下がることがあることはよく知られているんですね。
この病気の解決策はヘパリンを使わないということ以外ないんですけれども、この病気に近いような抗体が産生されているんじゃないか、ということは確かに EMA(欧州医薬品庁)の文章でも書かれています。
ただ、これが原因だということはまだ判明していないという状況ですね。
他に何かご指摘いただける先生はいらっしゃいますでしょうか。
黑川先生お願いします。

黑川友哉
1個だけ。これから調査がもっと必要であるという話はあったと思うんですけども、 原因やメカニズムの特定プラスアルファ、これらは同時進行になると思いますが、危険因子ですよね。
こういった症状・有害事象を発現しやすいような患者さんはどういう人なのか?という因子・何かのファクターがあるのか?ということも併せて調べて行かないといけないですから。
なにぶん症例数が少ないでしょうから、その辺も企業としても発表がしにくい部分はあるのかなと思います。

後は死亡に至った患者さんがどういう経過をたどったのか、というのは患者さんの個人情報が特定されない範囲内で出来るだけ公開しておくべきなのかなとは思います。
それによって医療従事者は、この死亡に至った患者さんの場合は対応が遅れてしまったからなのか、あるいは適切に対応したにも関わらず死亡に至ってしまったのか、という、それって結構大きな違いだと思いますので、こういった情報も是非開示してもらいたいなと思いますよね。

木下喬弘
おっしゃる通りですね。一応この EMA(欧州医薬品庁)の文書には、ほとんどの症例、静脈血栓症ができた人は60歳以下の女性でワクチン接種後2週間以内に起きている、ということが書かれているんですけど、一方で、現状用いることができるエビデンスからは特別なリスクファクターというのはまだ分かっていない・確認されていないということが書かれています。
こういう人は血栓症のリスクが高いからアストラゼネカ社ワクチン接種はやめましょうとか、逆にそういうリスクがない人は接種してもらっても大丈夫でしょうとか、そういうことが分かってくると、もう少しこちらとしてもやりようのある情報提供ができるかなという感じが確かにしますよね。
あとはですね、ここからはどれぐらいの危険性なのかということが皆さん知りたい事だとと思うんです。
それについては慎重なリスクコミュニケーションが必要で、25万人に1人という頻度が多いのか少ないのかということを考えていくことになると思います。比較というのはリスクコミュニケーション上よくないという説もあるんです。
すなわち、何かと比較して、それよりリスクが低いということを情報提供するのには慎重になるべきで、その比較に基づいてリスクを取るべきだ、と押しつけることはよくない、というように解釈されているんですね。
リスクはあることにはあるけど、そんなに高くないから気にするなよ、ということを気軽に言ってはいけないということです。
なので、このルームで最初に断っているんですが、結論としてアストラゼネカ社のワクチンを受けた方がいいとか受けなくていいとかそういうことを言いたいのではないということです。これを前提に聞いていただければと思います。
まず、デメリットとして25万人に1人ぐらいの確率で血栓症が起こるという推測されています。
一方、メリットはというと、1日当たり6万人の感染者が出ていたのが2300人になり、パブも開けることができたという現状があるわけです。
これは比べるまでもなく、25万人に1人の副反応よりも、コロナウイルスの影響の方が大きいということは、EMA(欧州医薬品庁)も明確に言っています。

その他、ご登壇いただいてる方々で何かコメントされる方いらっしゃいますでしょうか。

黑川友哉
先生ありがとうございます。その通りで、こういうのってやっぱり、評価が難しくて、マクロな医療としての治験の結果であったり、リアルワールドのデータであったり、こういった重要な副反応が起きたときにミクロの医療ですね、個別の患者さんで起きた時にどうするかであったりは、頭の使い方を変えないと。
今後の症状調査とか、詳細な患者さんの情報とか出てきたときにしっかり注視していかないといけないなと思いますので、ぜひ日本でも医療従事者のみなさんには注目していただきたいなと思っています。

木下喬弘
ありがとうございます。
というところですかね。
本当に、あまり準備が整う前に情報提供するのってすごく嫌なんですけど、速報で出てしまうので、情報を隠すのもリスクコミュニケーション上よくないということで…非常に僕らもあまりノリノリでしゃべれる訳ではないテーマで、今日はちょっとしんどかったんですが、ワクチンで血栓症が出てという話でした。
安川先生どうぞ。

安川康介
やはり僕たちはなるべく正確な情報を伝えようと思っているので、こういう話をできるだけ早くみなさんにお伝えするのはすごく重要なんじゃないかなと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。おっしゃる通りですね。
重要なことは、できるだけ早くかつ正確な情報をお届けすることだと思いますので、もう少し解釈がしやすいような情報が EMA(欧州医薬品庁)ないしNHS(国民保険サービス。National Health Service の略語。イギリスの国営医療サービス事業)からでてくれば、それらも加えてお伝えしていければと思っています。

ということで、本日はこのあたりで閉じさせていただこうかと思います。
明日金曜日は、いよいよ岡田玲緒奈先生がモデレートをする Clubhouse となりますので、もう少し明るいポジティブな情報提供ができればと思っております。
どんなニュースを選んでいただけるのか我々も楽しみにしています。
……ということで本日ご登壇いただいた先生方ありがとうございました。
では日本の皆さん良い1日をお過ごしください。

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