見出し画像

イスラエルで感染者が激減中。妊娠中にワクチンを打つと赤ちゃんに抗体が移行!?(3月22日こびナビClubhouseまとめ)

「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース!」

少し前にブレンダーを買いまして、ペペロンチーノを作ったのですが、その時のブレンダーが上向きに穴が開いており、ペペロンチーノソースを攪拌すると、僕にペペロンチーノソースがかかってⅠ度熱傷になったという話を以前させていただきました。
その反省を生かし穴の開いていないブレンダーを買いまして、もう一度ペペロンチーノにリベンジを本日果たしました。
ボストンはもともとイタリア移民が多く、イタリアンのおいしい店や大きいイタリアンマーケットもあるので、本格的にいろいろ調理器具を買ってペペロンチーノにトライしたのですけど、二つほど問題がありました。

私はファビオさんのレシピを使っていて、「ファビオ飯」とYouTubeで調べたら出てくるので見たら面白いと思うのですが、彼は鮎の魚醬を使うんです。
ですがさすがにボストンで鮎の魚醬は手に入らないので、ナンプラーで代用しました。
僕もともとナンプラーの独特の匂いがあまり得意ではないんですけど、ペペロンチーノにちょっと入れるだけならそんなに気にならないかなと思い、入れてみたところ、かなりナンプラーの味の利いたペペロンチーノになった、という問題が一つ。

もう一つは、いつもイタリアンパセリを入れているのですが、イタリアのGlossary(食料品店)に行くと普通に手に入る量が結構多いんです。
一束が「プロポーズで渡すときの花束か!」みたいな量でしたので、五分の一程度を使って刻んで入れたのですが、イタリアンパセリの苦味がきついパスタになって微妙でした。

ハンドブレンダーという、手で持って攪拌できるものに、フライパンの中でオイルとにんにくとパスタの茹で汁を入れたものを混ぜると完璧に乳化するらしく、試しにやってみたんですけど、確かにまあまあ美味しい感じはするんですが、結局「リュウジのバズレシピ」のペペロンチーノの方が美味しいのではないかという結論に至りました。

ブレンダーの適用外使用をしてしまったので、先週「それはやめましょう」という話をしたのですが、週末これだけ「寄生虫の薬を承認される前からウイルスに使うのはやめましょう」という話をしておきながら、僕は再度適用外使用にチャレンジしていた、という「医療科学料理バラエティ」の始めの挨拶です。

木下喬弘
日本の皆さん、おはようございます。
月曜日ですね。
日本では朝の8:30ごろと思いますが、本日も「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース!」を進めていきたいと思います。

まず今日用意したニュースは二つで、一つはイスラエルからのものです。
最新のデータで「イスラエル感染者数爆下がり!」というすごいデータが出てきてますので、これを紹介していきたいと思います。
もう一つ、「妊娠中にワクチン接種することで、胎児・赤ちゃんに対して抗体が移行するのではないか」という話を先々週内田舞先生に解説していただきましたが、それが実際に確認されたというニュースについて拾っていきます。

まず最初のニュース、イスラエルの感染者数のニュースから見ていきたいと思います。
Israel's COVID reproduction rate drops to 0.62 - www.israelhayom.com
「Israel’s COVID reproduction rate drops to 0.62」
イスラエルでのコロナの実効再生産数が0.62まで下がりました、というニュースです。

最初のリード文に書いてあるのが、土曜日に17,438人の方にコロナの検査を行い、285人が陽性、感染率が1.7%だったということです。
1.7%って結構低いですよね。
日本では今どれくらいの感染率なのか、正確に把握していないんですけど、ずっと10%程度で来ていたと思います。
(※東京都では感染者数が減少傾向になった2月以降5%以下で推移している)
イスラエルでは陽性率がすでに1.7%になっており、現在治療中のコロナの患者さんが18,309人なのですが、そのうち561人が重症で、この重症者も全体の3%くらいしかいないという状況です。
それをデータと感染症疫学の立場から解説をしていきたいと思います。

イスラエルの保健省によりますと、イスラエルの実効再生産数は日曜日に計算したところ0.62になっています。
皆さん、実効再生産数の意味はなんとなくご存じかと思うのですが、一応復習します。
実効再生産数というのは、「今現在1人から次に何人の人に感染が拡がっているか」という数値です。
つまり、2021年3月21日現在イスラエルでは、1人が次に生み出す感染者の数が約0.62人になっています。
だいたいこの数値の1周期が5日くらいなので、5日で0.6倍、すなわち1週間ごとに約半分になるスピードでイスラエルでは感染者が減っています。
これが集団免疫の達成なのか、まだ言い難いところがあるのですが、感染者が減っているということ自体は間違いない事実だと確認されたと思います。

この実効再生産数(今現在1人の人から次に何人の感染者が生まれているか)がどう決まるのかについて端的に言いますと、
①集団の中でどれくらいの数の人が免疫を持っているか
②集団がどのような感染対策をするか
この二点で決まります。

日本は特にほとんどまだ誰も免疫を持っておらず、抗体検査などをしても(陽性者数が)1%以下の状況です。
このような集団の中で免疫を持っている人の割合は基本的にゼロだという計算をすると、実効再生産数を抑えるためには感染対策をしなければなりません。
この状況が一年間続いてきたわけです。

具体的な数値として、日本での基本再生産数(何も対策をしなかった場合に1人の人から次に何人の感染者が生まれるか)は、だいたい2.0から2.4くらいとされていると思います。
つまり何の対策もしないと5日で倍々で増えていくようなイメージです。
そうならないために、感染対策で人と人との接触を半分くらいにすることで、感染者があまり爆発的に増えることなく一年間過ごしてこれました。

一方で、例えば実効再生産数のもう一つのパラメータである「免疫を持っている人の割合」が50%を超えてくると、基本再生産数が2であると仮定した時に、実効再生産数は「感染対策をしなくても」半分になるので、1になります。
 
今イスラエルは、免疫を持っている人の割合が増えてきたということと、集団での感染対策がある程度継続されているということの合わせ技で0.62という数字になっています。
このままいくと毎週半分づつになっていく状況になっており、結構すごいデータかなと思っています。

イスラエルは何度かここまで解説させていただいた通り、「Reopen Strategy」(すなわち経済を再開するために例えばレストランを開けたりショップを開けたり、ワクチンパスポートも導入もしていますがジムやコンサートも再開していったりしている)中で、実効再生産数が0.62ということなので、かなり明るい兆しが見えてきている数値かなと思います。

ここまでが僕の解説で、一応その記事をもう少し最後まで見ていこうと思います。
実効再生産数はその集団の中での数値がめちゃくちゃ重要で、コミュニティによって全然違うわけですね。
イスラエルのアラブコミュニティはちょっと高くて0.77、正統派ユダヤ教徒のコミュニティは0.54というよう下がってきています。
実は正統派ユダヤ教徒は宗教的な理由でワクチンを受け付けない人というのが結構おられるので、かなり感染者が増えてきていたのですが、その人たちの中でも実効再生産数が0.54まで下がっているというのは、そのコミュニティの中でも感染が収まってきていることが見て取れる状況になっています。

先ほども言いましたが、今現在一日当たりの感染者は285人まで下がってきています。
先週一週間の新規感染者は平均1308人でしたので、日曜日の285人はめちゃくちゃ少なくなってきているわけですね。

今のところイスラエルでは516万人、すなわち全人口の55.2%にワクチン接種が1回済んでいて、452万人、すなわち全人口の48.65%にワクチン接種2回が済んでいます。
このルームでも何度か説明していますが、今回のmRNAワクチンは2回打って7日後からの発症予防効果が95%というのが確認されています。
イスラエルでは、2回打った人が大体5割くらいになっており、ほとんどの人は接種後1週間過ぎていると思いますので、集団で何の感染対策をしなくても実効再生産数は半分に近い状態になっているはずです。
なぜ半分に近いかというと、例えば感染を防ぐ有効性が90%であれば、50%の人がワクチンを打ったら45%の人が免疫を持っているという計算になります。
そのような計算をしていくと、今の時点で「同じ感染対策の中であれば、実効再生産数は約半分程度になる」と予想されますし、実際に実効再生産数はめちゃくちゃ下がっていることが確認されているというデータでした。

今のところワクチンの効果として、イスラエル全体で感染対策を緩めていく対策を取っていく中で、実効再生産数が0.62という値まで下がってきています、というニュースでした。

木下喬弘
ということでここまで「安川先生!」

安川康介
(笑)いきなりふられました。
いつも木下先生が何のニュースを持ってくるか当てようとするんですが、今日は完全に外れました。
イベルメクチンと学校でのソーシャルディスタンスが6フィートから3フィートになったというのがくると思っていたんですけど…外れました。

木下喬弘
あっ、でもイベルメクチンはちゃんとブレンダーのところで一応触れておいたんで…

安川康介
今度いつかじっくりやりましょう。

木下喬弘
わかりました。ありがとうございます!

安川康介
このイスラエルのニュースはすごく明るいニュースだと思います。
以前この「こびナビ」のClubhouseで、実社会でmRNAワクチンの効果というのは非常に高いという話をしましたが、ワクチンの効果もあるのかな、と思います。
ただイスラエルに関して言えば、流行っている8割くらいがB.1.1.7という、ワクチンの効果があまり下がらないだろうという変異ウイルスです。
もし例えばB.1.351など他の変異ウイルスに対してどれくらい効果があるのかというのは今後検証されていくことになると思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
変異ウイルスの話が出まして、B.1.1.7とかB.1.351でしたっけ?こんな数字なかなか覚えないという感じなんですけど、それぞれどんな変異ウイルスなのかって、峰先生、いけます?

峰宗太郎
はい、もしもーし。
今回転ずし食べながらですね、お話ししてます。

木下喬弘
くら寿司の写真あげてましたね、そういえば(笑)

峰宗太郎
そうなんです(笑)
まず、B.1.1.7というのはイギリス型といわれるもので、これはワクチンに関してはあまり効果は下がらないだろうと言われているんですよね。
B.1.351というのは南アフリカ型、P.1というのがブラジル型ということになるんですが、これら2つについてはものによってはワクチンの効果が下がっていることがわかっています。
例えばアストラゼネカ、ノババックス、ジョンソン&ジョンソンだとちょっと下がっていますが、ただmRNAワクチンに関しては今のところ大きくは下がらないだろうという基礎的な結果がでています。
ですので、実際に「Effectiveness」という実社会での検討はまだなんですけれども、これらにワクチンも効いてくるだろうということがわかっているので、大きく心配するような株は今のところないのかな、と全体感として持っています。

木下喬弘
ありがとうございます。
ちなみにB.1.1.7とB.1.351でしたっけ?なんとなく数字の桁が揃ってる感じなんですけど、もう1個がP.1というのはイマイチ納得がいかないんですけど…
この名前の由来って何なんですか?

峰宗太郎
あ、これはストレイン(Strain、株)といって系統名を分けています。
科学者がどのくらい距離が離れたか、とかウイルス学的な性状が変ったかということに注目をして、みんなで提案をしています。
そういう時にストレインを変えましょうと合意されると、そのたびに新しい番号を割り振っているんですね。
なので、実際は今回E484Kというものがあって、B1351とP.1というのはすごく似てはいますが、発生している場所が全然違うので、提案された時点ですごく大きく番号が変わっています。

木下喬弘
そもそもバリアント(Variant)とストレイン(Strain)って、僕も今一つわからないので、もう少し詳しく教えてもらってもいいですか?

峰宗太郎
はい、バリアント(Variant)というのは日本語に直すと「変異体」と表記されます。
たとえば変異をしたウイルスそのもの、とってきたものが「変異体」となります。
一方リニエージ(Lineage)とかクレード(Clade)といわれるものは、その変異をしたウイルスも含みますし、その子孫にさらに変異が加わっていくこともあります。
そういう時に「一家」、たとえば「木下一家」など、木下先生のお子さん・お孫さんもまとめて呼びたいときに、このリニエージとかクレードって言っています。
で、一人だけちょっとおかしくなった変異体である木下先生がいる(笑)というような時には変異体と読んでいます。
そういう差があります。

木下喬弘
なるほど。でストレインというのは?

峰宗太郎
ストレインというのは「株」と表記されますが、明らかにウイルス学的な性状が変わったラインのことを指します。
例えば、木下先生が突然ある日大きく暴れる人に変わって明らかに振る舞いが変わりますと「Mutated Strain」(変異株)といって新しいストレインに変わる。
そして、その子孫すべてをストレインといって扱っていきます。
そして、例えばある日ゴリラにまで変わると、「変異種」になるようなイメージです。

木下喬弘
なるほど。わかりました。
では人間からゴリラほどではないけれども、明らかに元の木下ではないふうにウイルス学者が認定したらストレインが変わるということですね。

峰宗太郎
その通りです。
なのでそれを変異株とはっきり呼んでしまっていいと思います。

木下喬弘
なるほど、ありがとうございます。
今回のB.1.1.7とかB.1.351とかP.1はそれぞれ全部違うストレインでしょうか?

峰宗太郎
ストレインではなくておそらくクレードといったほうが正しいです。
つまりウイルス学的な性質は大きく変わっているとまでは評価しにくいのかな、と考えています。

木下喬弘
なるほど。
だから先生が変異株と言わない理由ですか?

峰宗太郎
その通りです。
変異体とか変異ウイルスとごまかしているのはそういう理由なんです。

木下喬弘
なるほど。よくわかりました。ありがとうございます。
イスラエルでは英国で見つかった変異ウイルスがかなり主体になってきているけれども、実効再生産数は0.62まで下がってきており、「かなりワクチン効いてるんじゃないですか?」と考えられるニュースになるかと思います。

他にご参加いただいている皆さん、何かコメントありますでしょうか?
池田先生、お願いします。

池田早希
テキサスのこども病院で感染症科の医師として働いている池田と申します。
実はですね、私の働いている病院がある「Texas Medical Center」という病院群では、ウェブサイトにいつも実効再生産数がどれくらいなのか、出してくれています。
18日金曜日のものになっちゃうんですけれども、それは1.1になっていますね。
↓以下参照
( https://www.tmc.edu/coronavirus-updates/effective-reproduction-rate-for-harris-county/ )

木下喬弘
増えてるじゃないですか…(笑)

池田早希
(笑)
そうそう、あ、これでも実効再生産数が小さい方なんですよ!

木下喬弘
これでも…

池田早希
春先に1より少し下がっていたのですが、今周りの人たちの様子を見てみると、春で浮かれている印象を受けます。
さらに、この時期にルイジアナ州では、ザリガニ料理を皆で食べる習慣があるんですけど、そこでパーティーしているような人たちも何人かいますし、また増えてくるんじゃないかなと懸念しています。

ちなみにテキサス州のワクチンの接種の割合は、2回打った人は今のところ14%くらい、少なくとも1回は打ったという人は27%なので、進んではいます。
しかし、全然まだ実効再生産数に大きく影響するレベルではないと思います。
ただハイリスクの人に対して中心に打っているので、入院してくる患者さんの数には影響していると思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
ちなみにアメリカでは、確かに浮かれモードになっており、マイアミのビーチ等も封鎖になったニュースもありました。
そういう状況もあり、アメリカはまだまだ油断ならないなと思いながら僕もニュースを見ているところです。

残り9分になりましたので、もう一つのニュースにいきたいと思います。


「First baby in U.S. born with antibodies against COVID-19 after mom receives dose of Moderna vaccine while pregnant」
モデルナのワクチンを妊娠中に打ったお母さんから生まれたお子さん、赤ちゃんにアメリカで初めてコロナに対する抗体がみつかりました、というニュース
が出ています。


First baby in U.S. born with antibodies against COVID-19 after mom receives dose of Moderna vaccine while pregnant - CBS News

このニュースは、そもそも2月に出たプレプリントが基になっています。
プレプリントについて再度確認させていただきます。
例えば、科学者・研究者・医師などが「ついに赤ちゃんに抗体が移行しているということがわかりました」という研究をしたとします。
それを論文の形にして、医学系の雑誌に投稿するんです。これを載せてちょうだいというわけです。
そうすると医学系の雑誌が他の専門家を見つけてきて、この論文は何か間違ったことを言ってないか、をチェックして、ここを直してください、という要求を論文を投稿した人に返します。
それに対して書き直したり「いやいや、こういう理由で間違っていない。お前の方がむしろ間違っている」というふうなやり取りを繰り返して、結果最終的な形で医学雑誌に論文が掲載されます。

プレプリントというのはその外部の専門家とのやり取りはまだ終えていない状態で、とりあえず著者が「これ正しいと思う」と雑誌に投稿した状態での論文のことをさします。そのような違いがありまして、要は他の専門家の意見がまだ反映されていない論文ですので、ちょっと信頼性が落ちるというように思ってもらったら正解です。
「抗体が見つかりました」ということに対して結果が変わるとはあまり思えないので、きっと抗体は見つかったんだろうとは思います。

内田先生に入っていただいたので、そのあと続くニュースもあわせて解説を少ししていただければと思います。
同時に「Massachusetts General Hospital」まさに内田先生が働かれている病院なのですが、そこで131人の女性に対して同じようにワクチンの効果を調べた、というような研究がされています。
80人が妊娠中、31人が授乳中、16人が妊娠していない状況でワクチンを接種して、妊娠している人と妊娠していない人で抗体の上がり方が同じくらいであった、あるいはへその緒や胎盤の血液に抗体がちゃんと移行していた、母乳に抗体が移行していたというような研究が、同じくプレプリントの状態で発表されています。

そのあたりのデータを合わせて、妊娠中のワクチン接種が赤ちゃんに対してコロナから身を守る抗体を届けているんではないか、というようなことがアメリカで少し報じられてきているというニュースになります。
内田先生、このあたりを少し解説していただいてもよろしいでしょうか?

内田舞
はい、もちろんです。
これは、本当にワクワクするニュースだと思いますが、結論としては妊娠中、あるいは授乳中のお母さんがワクチンを打つことで、お母さん自身だけではなく、赤ちゃんをもコロナから守れるということです。
抗体が移行しているというのはそういうことなので、本当にうれしいニュースだと思います。

池田先生が何度かClubhouseでも言ってくださっているように、小さい子でもコロナにかかって重症化することはあります。
その場合は本当に悲しい話になるので、そのようなケースを少しでも防げるように、子どももコロナから守ってくれる、そうゆう意味で抗体を持っているというのはすごくありがたい話、うれしいことだと思ってこのニュースを聞いております。

私自身も妊婦としてワクチンを接種しました。
このまさにMGH「Massachusetts General Hospital」と「Brigham and Women’s Hospital」もう一つ「Beth Israel Hospital」というハーバードの附属病院の3大病院が共同でやっている研究に参加しまして、私が妊婦としてワクチンを接種したので、出産時には分娩室に研究スタッフ、とは言っても勤めている産婦人科医たちなのですが、そこへお医者さんたちが入ってきて、胎盤からの血液、初乳、私自身の血液、それから組織として胎盤と臍帯を持っていきましたね。
その結果が今回プレプリントとして報告されているんですけれども、産まれてきた私の赤ちゃんもこれでコロナ感染源から、コロナの発症から守られているかと思うとすごくうれしい気持ちです。

この仕組みですが、お母さんが作る抗体が赤ちゃんにいきわたるというのは、昔からわかっていたことで、これは進化の過程で形成された素晴らしいことなんですよね。
何かというと、たとえば流行している風邪にお母さんがかかってしまったときに、その風邪のウイルスに対してお母さん自身が自分の免疫系を使って抗体を作ります。
その抗体が自分の体を風邪のウイルスから守るためにはたらくという形なのですが、その抗体がお腹の中にいる赤ちゃん、あるいはおっぱいをあげている赤ちゃんにわたると流行している風邪から新生児の赤ちゃんも守られるという仕組みで、これは自然に進化の過程でできたすばらしい仕組みなんですよね。

なのでこのすばらしい自然にできた仕組みを利用して、という言葉が合っているかわからないのですが、ワクチンを接種してできたあとの抗体も同じように赤ちゃんを流行の風邪やウイルスから守ってくれるために抗体が移行する、ということで、非常にすばらしい話だなと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
少し追加で教えていただければと思います。
mRNAワクチンの成分が万が一母乳に移行しても、赤ちゃんの腸管の中に入って吸収される、あるいは体内に入り腸管免疫を突破して血中に入って暴走するといったことは考えられなくて、何も起こらないであろうとアメリカの公的機関などは書いていると思います。
一方で、抗体は母乳から赤ちゃんの口に入って赤ちゃんの体を守る効果を発揮してくれるものなのでしょうか

内田舞
はい、そうです。その通りです。
抗体に関しては母乳を通して赤ちゃんを守ってくれるので有り難い話ですね。

木下喬弘
なるほど。
抗体だけで免疫は語れないとは思いますが、臍帯血すなわちへその緒の血に抗体が見つかったということも、初乳・母乳に対して抗体が見つかったというのも、どちらもワクチン接種によって母親だけでなく赤ちゃんも感染から守る効果が示唆されている、と考えてよろしいですか?

内田舞
はい、その通りです。

木下喬弘
ありがとうございます。非常によくわかりました。
妊娠中のワクチン接種はすごくネガティブなイメージを持たれてる方がたくさんおられると思いますが、こういったポジティブなことも科学的にわかってきているということですね。
ぜひ皆さんも知っていただければなと思います。

内田舞
特に産まれたばかりの赤ちゃんは大人のような免疫がないんですよね。
その期間は特に赤ちゃんを流行っている感染症から守るには、お母さんから赤ちゃんに感染から守る術をあげるしかないのでこれは本当に有効かと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
繰り返しますけれども、6ヶ月ぐらいまでは子供は自分自身で感染から守る抗体を作ることはできないので、お母さんからもらった抗体で外から入ってくる病原体とたたかっているので、病原体とたたかえる抗体をちゃんとギフトとして与えてあげられることはすごくポジティブなニュースだと私も思います。
他、この件についてご意見・コメントのある先生いらっしゃいますでしょうか?

重見大介先生
おはようございます。

木下喬弘
おはようございます、重見先生。

重見大介先生
では一言だけいいですか?

木下喬弘
はい、お願いします。

重見大介先生
産婦人科と公衆衛生を専門にしている重見です。
この件に関して、抗体が移行するということもとてもすばらしいことですが、もう一つ、ちょうど1週間前くらいにWHOが出した記事で、このパンデミックの中で新生児とお母さんが産まれた直後に分離されてしまい、直接肌を接したりすることができないということが非常に世界中で増えていることが報告されています。
それによって初乳があげられず、赤ちゃんにとっては免疫の低下につながり、発展途上国を含めて感染症が実際に増えてしまっていることが報告されています。
WHOは、仮にお母さんにコロナウイルスへの感染の疑いがあっても、あるいは実際に感染していても、できるだけ出産直後から赤ちゃんと一緒に過ごしてください、と強く推奨しています。
このワクチンもしっかりと広まって、母子ともに抗体を持つことになれば、母子の分離も最小限に抑えられて授乳もできるので多く赤ちゃんが救われるとWHOの文章に書いていますので、そういった意味でも妊婦へのワクチン接種はとても大事になると思いました。
ちょっと一言、追加でした。

木下喬弘
ありがとうございます。
若干補足が必要かと思ったのですが、現時点では、お母さんがコロナに感染していた場合、赤ちゃんにコロナが移らないように分娩後に母子が分離をされているという状況が世界中で起きている、ということだと思います。

重見大介先生
そうですね。
ちょうどBMJのGlobal Healthという論文を引用してWHOが言ってましたが、世界中の調査で感染の疑いや実際に罹患しているお母さんの約三分の一は現在、出産後に母子分離を強制されているようです。
世界の妊婦の約四分の一は感染していないことがわかっていても母子分離を勧められていると報告されています。

木下喬弘
ありがとうございます。
ただ、今のお話と同じように実はコロナに感染したお母さんからも臍帯血を通って赤ちゃんに抗体が移動していることもわかっていますので、そうするとコロナに感染しているお母さんから産まれたお子さんはある程度抗体を持っている状況だと考えられます。
そうなのであれば分離しなくてもいいのではないか、メリットとデメリットを考えたときに、赤ちゃんとお母さんが一緒に過ごせるようにしたほうがむしろいいじゃないか、という話だと思いました。
重見先生、そういう解釈であってますでしょうか?

重見大介先生
実は、その辺もまだ情報がアップデートされていないので、おそらく念のために分離が推奨されてきた割合が高かったのですが、ここもアップデートされるべきですし、ワクチンが広がることでのアップデートというのも大事になると思います。

木下喬弘
はい、重見先生、ありがとうございます。
非常に重要なご指摘かと思います。
お母さんからお子さんへどのように抗体が移行するか、お母さんの感染防御策が赤ちゃんにどういうふうに伝わっていくかということの研究が進むにつれて、産んだ直後の赤ちゃんに会えるお母さんが増えるのは非常に素晴らしいことだと思います。
何か他にコメント・ご意見・ご指摘ある方、いらっしゃいますでしょうか?

池田早希
ではお願いします。
私は新生児の赤ちゃんのほうを診ていますが、新生児は産まれた後、コロナウイルスに感染しても軽症や無症状のことが多いと報告されています。私が診たのも、だいたい生後2~3週間後、他の理由で、(たとえば大腸菌という菌による髄膜炎)で入院してきた患者さんで、入院時のスクリーニング検査で、たまたまコロナも陽性だったお子さん達です。実は新生児がコロナウイルスで重症化することは稀ですね。

木下喬弘
なるほど。ありがとうございます。
もちろん今の時点で明確にどうすべきとは言えないと思いますが、赤ちゃんとお母さんを離す必要性は低いのではないかということですか?
そこまでは言えない?

池田早希
そうですね、そこはメリットとデメリットのバランスだと思いますが、お母さんがしっかりマスクをして手指衛生も気を付けながら過ごされるのがいいのではないかな、と思います。
一番の理想はお母さんがワクチンを妊娠中に打って、お母さんも赤ちゃんも守られることですよね。

木下喬弘
ありがとうございます。
その点も非常に重要だと思います。
あまり悪いケースの話をするのはよくないかもしれませんが、出産後に感染してしまうとお子さんを守れないということになってしまいますね。
妊娠中にワクチン接種をしなかった場合にはそういったリスクも抱えてしまうと、今お話を聞いていて思いました。

ほか、いかがでしょう?

内田舞
はい、少しだけ補足させてください。
先ほどの重見先生がおっしゃっていた、赤ちゃんとお母さんを分離するというときには、出産の時点でお母さんがアクティブに感染している場合は分離を推奨している病院がいくつかあります。
そのあとに木下先生がおっしゃったコロナウイルスに感染された妊婦さんから抗体ができてそれが赤ちゃんに移行するという話に関してですが、抗体ができるまでに少し時間がかかるので、アクティブにその場で感染しているときには抗体ができていない、そして赤ちゃんに移行していない可能性が高いです。
なので分離を推奨しているとは思うのですが、さっき先生がおっしゃったように、お母さんがしっかりとマスクをして自分の赤ちゃんを含めて他の人を感染させてしまうリスクを下げることで、赤ちゃんと一緒にいることもできるのではないかという会話が病院内でされているのを聞きますね。

木下喬弘
ありがとうございます。
よくわかりました。
感染しているお母さんから産まれた子どもはすでに抗体を持っているから問題ないと安易に言えるわけではなく、やはり感染しないように注意が必要ですが、母子分離のリスクもも含めてメリットデメリットを総合的に判断していろいろな病院で運用がされている、というような話だと思います。

内田舞
その通りです。

木下喬弘
ありがとうございます。
ということで、だいぶ時間が過ぎてしまい今日もクラウドファンディングの宣伝の話を途中で挟むのを忘れるというポンコツ司会っぷりを見せてしまったわけですけれども、毎朝聴いてくださっている皆さん、本当にありがとうございます。
新しく聴いていただいた方、朝8:30から9:00、9時をちょっと過ぎることがこのように多いんですけれど、我々医師、日米の医療・公衆衛生の専門家が30名以上で運営しています、こびナビというコロナワクチンの啓発プロジェクトで、最新の情報提供を行っています。

「こびナビ」というこのルームのタイトルにあるこのワードで、Googleで検索しても我々のホームページがトップにでてきます。
こびナビ - COV-Navi

ホームページを見ていただくとQ&Aや動画の解説など、いろいろなものが入っていますので、ぜひそちらもご利用いただければと思います。
また、こういったオンラインの情報に触れる機会のない方にも情報提供をさせていただきたいということで、3000万円を目標にクラウドファンディングを行っております。
#こびナビ :コロナワクチンの正確な情報で元の世界を取り戻したい(一般社団法人 保健医療リテラシー推進社中 2021/03/04 公開) - クラウドファンディング READYFOR (レディーフォー)

今現在1200万円のご支援をいただいております。
このClubhouseを聴いていただいていてご支援いただいた方がたくさんいると思いますが、本当に感謝しております。ありがとうございます。
もし我々の話、役に立ったと思ってくださった方がいらっしゃいましたら、またクラウドファンディングのページも覗いていただいてご支援いただければとてもうれしいです。

本日も少し延長してしまいましたが「こびナビの医師の解説する世界の最新医療ニュース解説!」をお届けしました。
明日も朝8:30から医療ニュース解説をしていきたいと思います。
ご登壇いただいた先生方、ありがとうございました。

それでは日本の皆さま、よい一日をお過ごしください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?