新型コロナウイルスの接触感染について、ワクチンのコクーン効果とは?(4月9日こびナビClubhouseまとめ)

4月9日(金)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター: 岡田玲緒奈


【れおにい先生🎻モデレーターデビュー】

木下喬弘
れおな先生

岡田玲緒奈
はーい。
めっちゃ緊張していますが。

木下喬弘
始めましょうか。

岡田玲緒奈
みなさん、おはようございます。

全員
おはようございます!

岡田玲緒奈
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース。
本日初めてモデレータをさせていただきます、こびナビ幹事の岡田玲緒奈です。

全員
拍手!👏

岡田玲緒奈
ありがとうございます。
金曜日の暫定モデレータはツイッターで「れおにい」「えもにぃ」と名乗っております、わたくし岡田玲緒奈です。
視聴率次第では降板になりますので、最後までお付き合いいただければと思います。

さて今日の前説はこの話題しかないですよね。
4月9日は子宮の日ということで、木下先生が副代表を務められている「みんパピ!」さんが HPVワクチンの啓発イベントを沢山開催されます。そちらもぜひチェックしていただきたいと思います。

参考:
みんパピ! 4月9日子宮の日イベントまとめ
https://minpapi.jp/day-49/
出典:みんパピ!ホームページ

ちなみに木下先生、Clubhouse と YouTube の時間がかぶってるのはなぜでしょう。

木下喬弘
これはですね、仕方がないんですよ。
先に Clubhouse が決まってたんですが、YouTube のゲスト時間設定などもありましてこうなりました。どちらにも興味のある方もいらっしゃると思いますので、聖徳太子的に Clubhouse を聞きながら YouTube を観ていただければと思います。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。
YouTube はアーカイブはあるんでしょうか。

木下喬弘
もちろんです。
Clubhouse はアーカイブがないので、重見先生の Clubhouse を聞いていただいた後にアーカイブでゆっくり YouTube を観ていただくのもよいと思います。

岡田玲緒奈
YouTube の視聴者数を増やすために、ガチ勢はリアルタイムではミュートで再生して、Clubhouse を聞くというのが正しいやり方ですね!

木下喬弘
ありがとうございます🔥

岡田玲緒奈
それでは早速、ニュースを進めていきます。


【ニュース1】新型コロナウイルスの接触感染について

SARS-CoV-2 and Surface (Fomite) Transmission for Indoor Community Environments
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/more/science-and-research/surface-transmission.html
出典: CDC

CDC(Centers for Disease Control and Prevention、アメリカ疾病予防管理センター) による、新型コロナウイルスの、物を介した接触感染に関する知見のまとめです。

基本的には、新型コロナウイルスの殻(エンベロープ)はもろくて、界面活性剤で洗浄したり、環境中に放っておいたりすると壊れてしまいます。

これゆえに、物を介した接触感染を起こすためには、いくつかの条件に影響されるということで、箇条書きで挙げています。

・地域での流行状況
・感染者が排出するウイルスの量ーマスク装着で減少
・排出されたウイルスがどのくらい物の表面に付着するかー換気の影響あり
・空気中を漂っていたり、物に付着していたりする間に、周囲の温度や湿度の影響でウイルス粒子が受けるダメージの度合い
・ウイルスが付着してから次の人が触るまでの時間
・汚れた表面から手について、手から鼻目口に移る確率ー要は顔に触るなということ
・粘膜からの感染に必要なウイルス量ー新型コロナウイルスは1個だけでは感染しない

このように、かなり様々な条件に左右されます。
新型コロナウイルスが物を介した接触感染を起こす確率は、直接触れ合ったり、飛沫感染をしたりするのに比べると低いと考えられています。

但し、これをしっかりと示した証拠はなく、たとえば「これは飛沫感染はなくてドアノブとかを介した接触感染だ」と断定するのは難しいですよね。一緒に同じ部屋にいたとしたら「それ飛沫感染なんじゃない?」という話になりますし、少し前に地下鉄の休憩室でクラスターが発生した時に水栓の蛇口から接触感染したのではないかという疑いが報道されましたが、そもそもその部屋で一緒に昼食を食べていたからではないの?という話もありました。

そこで、物を介した接触感染の起こる頻度について、QMRA(Quantitative microbial risk assessment、定量的な微生物のリスク評価)というシミュレーション手法を用いた研究を行った結果、新型コロナウイルスで汚染された表面を1万回触ると、そのうち1回で接触感染が起こる程度だということです。

参考:
http://qmrawiki.canr.msu.edu/index.php/Quantitative_Microbial_Risk_Assessment
出典:QMRA wiki


この QMRA について、僕は概念図を見ただけでそっ閉じしちゃったんですが、木下先生わかります?

木下喬弘
私?
私はわからないです(笑)聞き間違えたかと思いました。

岡田玲緒奈
単純にウイルス量を測るということでもないらしく、ここは木下先生の守備範囲かと思ったのですが…。QMRA についてわかる先生いらっしゃいますか?

木下喬弘
ああ、疫学っぽい手法なんでしょうか。
ちょっと時間もらっていいですか。

安川康介
ちょっと読んだところでは、ただのシミュレーション、モデリングなので、実際に正確なのかというとわからないですね。おそらく次のような、いくつもの仮定をしなければなりません。

・表面にどれぐらいの数(コピー)のウイルスが存在するか
・そこを触った時点でどのくらいウイルスがくっつくのか
・手で顔を触ったときにどのくらいくっつくのか
・どのくらいのウイルスが体内に入ったら感染するのか
・表面についているウイルスの何%が感染性を保っているのか

これらを仮定した上で、何回触ったうちの何回感染するかという推計をしているようです。このようにかなり多くの仮定を踏まえて予測しているモデルは過去に CDC が引用している文献で2件ほど見たことがありますが、実際に人から人にどの程度感染したかを観察しているという研究ではありません。

岡田玲緒奈
そうなんですよね。こういうシミュレーションとなるとどうも私は苦手です。しかし、様々な条件を仮定して複数のシミュレーションを行いまとめるとこうなる、と CDC が公式に言っているので、ある程度の信頼性はあるかなと...。ざっくりいうと、とにかく、1万回触って1回くらいしか感染しないということです。

他にも、
・どのような表面だと、どのくらいウイルス粒子が不活化されずに存在しやすいか、たとえばステンレスなどのつるつるした表面だと生き残りやすいなど。
・専用の消毒剤(disinfectant)は不要で、洗剤で1日1回程度拭けば十分にリスクを下げられる。
・感染が確定した人がそこにいた場合は少し話が違う。

ということも書いてあります。

結局まとめると、新型コロナウイルスは飛沫感染が主なので、各自マスクを装着し手指衛生をして、常識的に綺麗にして(つまり汚れたテーブルでご飯を食べないように、という意味だと私は受け取りました)おけば OK ですよ、ということです。

僕は先月3月に感染者が減った一瞬の隙をついて行きつけの蕎麦屋に行ったんですが、入店人数の制限をし、席の間隔もしっかりとっていたんですね。これで十分だと思ったんですが、入店してみたらメニューの1ページ1ページを全部拭いていらして…そこまでしなくてもいいのでは…と思いました。

また、子どもの幼稚園では、トイレの手洗い場の蛇口に除菌ウェットティッシュを何重にもまいてゴムで止めてある写真のついたお知らせがありました。それを子どもが使うたびに1枚ずつめくって捨てるようにしているというようなことが書いてあるんですね。本当にそんなことをしているのか、子どもに訊いてみたのですが幼稚園児なのでさすがによくわかりませんでした。

こういう明らかに過剰な接触感染対策を行っている状況が気になるんですよね。
これについてはお客さんや親御さんからの問い合わせがすごくて、やりすぎなほどやらざるをえないとい側面があるのでしょうけれども。

みなさん、こういう接触感染対策がらみのことで何かありますか。

安川康介
COVID-19 の流行が始まってから、みなさんが気になっていたことだと思います。
たとえばアメリカの YouTube では、買い物から帰ってきて→プラスチック包装の表面を触らないように出して→綺麗にして、という動画が流行っていましたし、至るところで頻繁に綺麗にしていた人もいるようです。

たとえばプラスチック表面では、状況によってはウイルスが3日ほど不活化せず感染性を保ったまま存在するだろうということがわかっています。しかし、それがどの程度の感染者を出しているのかは、今でもはっきりとわかっていません。

ここでは QMRA というシミュレーションを行いその結果、物を介した接触感染のリスクは低いのではないかという考察がなされていますが、実際にこれだけで接触感染が殆ど起こりえないといっていいのかについては、まだ医学的なコンセンサスは得られていないと思います。

一般的に考えて飛沫感染が主であろうということで、物の表面をそこまで頻繁に拭かなくてもよいのではないかという意味で CDC は推奨を出したわけですが、エビデンスとして確固たるものではなく、けっこう勇敢な思い切った推奨だなという印象です。

今回の新型コロナウイルスはエンべロープという脂質の膜をもっており、比較的不活化しやすく、たとえば石鹸やアルコールで膜を壊して感染性を失わせることができます。

膜がないウイルス、ノロウイルス、A型肝炎、アデノウイルスなどは、不活化しにくく、かなり厄介です。たとえばノロウイルスがクルーズ船で多くの感染者を出したり、プールでアデノウイルスの感染が流行したこともあります。

今回のウイルスはエンベロープがあってよかったな、と当初から思っていました。

岡田玲緒奈
私も内容に期待して読んだのですが、エビデンスとしてはレベルが低めかなと思いました。ただ仮に表面に付着しているウイルスを触ったとしても、きちんと手指衛生をし、マスクをし、顔を触らなければ気道や粘膜に付着することもありませんので、基本的なことが大事という理解でよさそうですね。

他の先生方はいかがでしょうか。池田先生お願いします。

池田早希
私たちの勉強会では流行が確認された2020年3月、物を介しての接触感染で感染するというデータが当時はなかったのですが、CDC の推奨通りにしっかり拭きましょう発信していました。しかし上司と、実はエビデンスに乏しいんだよね、という話をしていました。

岡田玲緒奈
どちらにしてもはっきりしないということなんですよね。そもそも証明することも難しいですし。

木下喬弘
私は、接触感染予防策をできるだけ緩めていただきたいと思っています。これは変なところに繋がるのですが...空間除菌を小学校で行おうとしていた件、ご存知ですか?

岡田玲緒奈
空間除菌機を扱う業者が学校に機械を寄付しようとしていたというようなニュースはみた記憶があります。

木下喬弘
学校で実際に使われていたようなのですが、どうやら学校の先生方の、学校でクラスターを作ってはいけないという責任感からきていたようなんです。

学校には飲食店などとは違った厳しい目が向けられる風潮もあり、学校の先生は授業後に机などを拭かなければならない状況に追い込まれたわけですが、そんなことを毎日やってられないということで、児童生徒が帰宅した後に空間除菌をすれば環境消毒の代わりになるのではないかと考えたようです。

人がいないところで噴霧した時に何がどれだけ悪いかというエビデンスはありませんので、それ自体を責めるつもりはありません。しかし、「接触感染予防は中心ではなく、あまり神経質な予防をしすぎないことも重要」だということを周知し、医療機関でも行っていないような対策を学校に求めるような空気感をなくしたいと思っています。

その意味で、CDC としては攻めた推奨になっていますが、こういうものはありがたいなと思いました。

岡田玲緒奈
なるほど、空間除菌問題と関連づけてお話いただき、新しい視点として僕も勉強になりました。

内田先生どうぞ。

内田舞
予防でも何でもそうですが、対策というのは持続性がないといけないんですよね。あれもこれもやれと言われ続けていると、何もかも投げ出してしまう人がいるのが現実です。その中で、これはやってもいいよ、これは心配しなくていいよ、と優先順位をつけて扱っていただけると、では重要なマスクと手洗いをしておこうという行動に移せますよね。持続性を持ち続ける対策という観点で、こうした推奨はありがたいと思いました。

また昨年、何から感染するかわからないと言われていた時期に、アメリカでは公園も学校もお店も閉鎖されており、子どもはどこにも行けない状況でした。公園の遊具を通して子どもが家にウイルスを持ち帰るのではないかという懸念があって閉鎖していたようですが、それを続けることは社会としては難しかったわけです。せめて、これはやらなくても大丈夫そうだよと言ってくれれば(優先順位の低いところはやめて)重要なところを継続してくれるのではないかと思いました。

岡田玲緒奈
日本でも、公園のジャングルジムなどの遊具を使ってはいけないところがちらほらあります。ほぼ関係ないだろうと僕は思っているんですが、やりすぎな部分が是正される方向に行ってほしいと思っています。

最後にひとつ私から追加しますと。
「1年もたってマスクと手洗い、3密回避しか言うことがないのか」という人がいますが、当初から飛沫感染や、今回話題にした接触感染対策などを含めて様々なことを実行してみた結果、実際に食事中にマスクを外して会話することが最もリスクが高いということがわかってきており、重要な的が絞れてきたのだと理解していただければなと思っています。

峰宗太郎
僕からも追加でいいですか?ダメ?👶

岡田玲緒奈
どうぞどうぞ。

峰宗太郎
この後もTaka先生と予定があるんですが、間違ってお酒を飲んじゃってるんですけど👶

木下喬弘
うそやろ🔥(みな爆笑)

峰宗太郎
手を洗う救急医Taka が、手をそこそこ洗う、にならなくてよかったなと思いながら聞いていました。

大事なことがもう1つあります。
日本の専門家会議、分科会は、昨年の4月という早い時点から3密を避けるという「飛沫感染対策」をしっかりと推しており、接触感染対策に関してはそこまで強く言っていないんですよね。つまり日本の専門家はけっこう早くからこの傾向をつかんでいたということであり、この対策が真っ当であったということが世界中で証明されつつあります。日本の専門家もすごいなと思って聞いていました。

岡田玲緒奈
結果として日本の3密対策は輸出されてますよね、3Cでしたっけ。

峰宗太郎
そうですね。

岡田玲緒奈
日本の対策は海外と比べて変だということはないですよね。むしろ現在のような感染状況に抑えられているのは、こういった3密などの提言が効果的であったことや、日本人の真面目さも関係しているのではないかと思っています。

木下喬弘
3密を発見した時、感染のチェーンを相当さかのぼったらしいですね。クラスター対策班はここまで追いかけることができるのかと、患者を診療していた医師が驚愕したと聞いています。日本のように詳細な濃厚接触者調査を行っている国は他にはあまりないんですよね。感染者がしっかりと追えている間に、誰から誰に感染したか、感染者の行動を徹底的に追い、どういう場所で感染しているかを明らかにしたということで、3密の提言は画期的だったと思います。

岡田玲緒奈
公衆衛生のプロがそう仰るなら間違いないですね。

では次のニュースに移ります。


【ニュース2】新型コロナウイルスワクチンのコクーン効果、集団免疫について

Vaccines shown to protect even those who don’t get them - Israeli study
https://www.timesofisrael.com/hope-for-herd-immunity-vaccines-shown-to-protect-israelis-who-dont-get-them/
出典: THE TIMES OF ISRAEL 2021/4/5

新型コロナウイルスワクチンはそれを接種していない人も守る、つまり集団免疫の獲得や、それと関係のあるといえるコクーン効果の話です。コクーンというのは繭(まゆ)のことで、周囲の人たちが予防接種することで、接種を受けられない人を守るという効果のことです。

たとえば風疹について。
妊娠中に感染すると赤ちゃんに先天性の病気を起こす風疹ウイルスのワクチンは生ワクチンなので、妊婦さんは接種できません。

一方で、風疹に関する予防接種は、現在男女とも MR(風疹麻疹混合)ワクチンが定期接種となっていますが、昭和54年以前に生まれた男性については「(妊娠しないので)先天性風疹症候群と関係ない」とされ、定期接種ではありませんでした。このあたりはHPVワクチンが女性にしか定期接種になっていない問題を若干彷彿とさせますね。

妊婦さん(先に述べた通り風疹ワクチンを接種できない)に風疹を感染させるのを防ぐために、現在、風疹ワクチン未接種のおじさんたちもワクチンを接種しましょうというプロモーション施策が行われていますが、これはまさにコクーン効果を狙ったものです。

参考:
厚生労働省、風疹の追加的対策について
昭和37~53年度生まれの男性の皆様へ、風疹の抗体検査と予防接種を受けましょう

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index_00001.html
出典:厚生労働省ホームページ

とりあえずここまでで、みなさん何かありますか?

木下喬弘
HPVワクチンも実は、男性と女性が5割ずつ接種するとかなり感染が減るというモデル研究もあります。多くの感染症において、集団免疫的な発想は重要ですね。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。

記事を進めます。この記事は冒頭で内容をきっちりとまとめてくれています。
未査読の研究ですが、イスラエルの新たな研究結果で、地域における成人の新型コロナウイルスワクチン接種率が20ポイント...

このポイントは、パーセントでいいんでしょうか? 木下先生いかがでしょうか。

木下喬弘
これは難しいですね…まあパーセントということなんでしょうね。

岡田玲緒奈
では改めて、成人の新型コロナウイルスワクチン接種率が20%上がると、その地域の子どもが PCR検査陽性となるリスクが半分に減少するとの結果が出たということです。

既に人口の半分がワクチンを接種したイスラエルでは感染者数が激減していますが、それはワクチンを接種した個人を守っているだけなのか、あるいは人に感染させることをも防いだ結果なのか、という課題があります。

イスラエルで接種されているファイザー社製ワクチンについては、今後12歳以上での承認も追加される予定ですが、12歳未満の承認はまだしばらく先になりそうです。また、まだ接種していない人が100万人ほどいて、さらにその半分程度は断固として接種しないという人たちでないかと推測されています。

このようにワクチンを接種しない人々が一定数いることを考慮し、コクーン効果に期待されているということです。

この研究では、3週間ごとに区切った成人のワクチン接種率と、その35日後の子どもの PCR検査陽性率を比較して効果を見ています。その結果、成人のワクチン接種率が、まだワクチン接種していない子どもの PCR検査陽性率に明らかに影響しているという結果が得られたということです。

元の論文を読んでみましたが、数式満載で、図も見たこと無いようなもので、分かるような分からんような…この手のものにありがちな…。

現在ワクチンを接種している子どもはいないので、その子どもたちのPCR検査陽性者数が減るとすると、コクーン効果をダイレクトに反映しているはずだ、という内容ですね。

先生方、いかがでしょうか。

木下喬弘
これは、めちゃくちゃ重要な研究です。
僕も公衆衛生大学院で疫学を学んだのですが、感染症疫学の専門家ではないので、論文を読んでも完璧には理解できないと思います。

感染症疫学のクラスター対策班の方にこびナビに入っていただいたので、月曜日にもう一度やりませんか。

岡田玲緒奈
ぜひぜひ。
月曜日のモデレーターは木下先生ですか?

木下喬弘
あ、私ですね(笑)
私が月曜日に責任をもって解説するか、感染症疫学のスペシャリストに登壇していただいて話していただくか、と考えています。ただしロンドン在住なので時差が…来てくださるかどうかわからないですけれども。

その感染症疫学の専門家に教えていただいたことですが、実はインフルエンザも子どもから子どもへの感染だけでは流行が成立しないという説があります。すなわち、学校から家庭に持ち帰って親や兄弟姉妹が感染し、さらにその家族が他で感染させるなどのことが起こらなければ、学校の子ども同士の感染だけでは拡大しないということです。

集団免疫に到達するために現在、ファイザー社、モデルナ社ともに未承認の15歳以下の臨床研究を進めており、その年齢層に対してもmRNAワクチンを承認しようとしていますが、実は大人だけワクチンを接種すれば、いわゆる集団免疫達成に必要とされる接種率に到達しなくても感染を抑えられるのではないかという研究もあるようです。

成人の接種率が20%上がると子どもの感染が半減するのが本当ならば、現在60%程度のワクチン接種率であるイスラエルは、早々に集団免疫に到達するかもしれませんね。

岡田玲緒奈
そうですね。まさにそのことがこの記事にも書かれています。
子どもには(承認されるまでは)ワクチンを接種できない中で集団免疫は本当に達成できるのかという懸念がありましたが、今回のこの研究結果により集団免疫についても有望なのではないかといったようなことです。

他の先生方いかがでしょうか。安川先生どうぞ。

安川康介
ファイザー社製ワクチンの重症予防効果、発症予防効果は早い段階からわかっており、最近は無症状の感染を抑える効果についてもしっかりした論文が出てきています。そして、ワクチン接種後に新型コロナウイルスに感染した人については、その人が持つウイルス量が減るだろうということもわかりつつあります。

これらのことから、「ワクチンを接種した人は、新型コロナウイルスに感染したとしても他人に感染させにくいのではないか」ということは、なんとなく予想できていたことですが、この論文はそれを示唆する研究だと思います。今後同じようなデータは沢山出てくるだろうと思います。

他のワクチンに関するこれまでの研究では、たとえば肺炎球菌ワクチンを大人が受けると子どもの肺炎球菌も減少するというものもあります。

そういったことから考えても、これはすごくよい研究結果だなあと思いました。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。
ワクチン接種をした人が新型コロナウイルスに感染した場合に、その人の持つウイルス量を減らせるということであれば、当然、伝播(でんぱ、人にうつすこと)の可能性を下げるだろうなと思ったんですけれども、こうして1つ1つ研究していかなければならないんだな、と思い知らされました。

池田先生どうぞ。

池田早希
子どもの感染については、学校や保育園での子どもから子どもへの感染よりも、大人からの感染、家庭内での感染のほうが多いことが追跡調査の研究からわかっています。その家庭内感染では、子どもから子どもへ、子どもから大人へ感染するという報告もありますが、最初に感染するのは大人で、大人から子どもに感染するケースが最も多いこともわかっています。
この研究は、大人の感染が減少することで、連動して子どもの感染も減少するということを示している結果だと思います。

但し、ティーンエイジャーにはワクチン接種が必要だと思います。たとえばスポーツのコーチから感染したり、ティーンエイジャー同士で感染させやすかったり、子供の中でも年齢により他人への感染のさせやすさが違いますので。

岡田玲緒奈
日本の小児科学会も臨床データを公開していて実際に子どもがどこから感染しているかというデータもあります。
やはり同居している大人が家に持ち込んでいるパターンが最も多くなっています。日本ではまだワクチン接種が進んでいませんので、現時点で子どもたちを感染から守るには、とにかく同居している大人が家庭内に持ち込まないことが第一だということですね。

しかし現在は感染者数が増加しており感染経路不明者も出ていますので、同居している大人が家庭内に持ち込んだと断定し責めるような趣旨で言っているわけではないことはご理解いただきたいと思います。

感染予防、ワクチン接種に関しては、みんなで、大人がしっかりとした行動をして子どもを守ることが重要ですね。

他の先生方いかがでしょうか。木下先生どうぞ。

木下喬弘
1点だけ補足ですが。
ワクチンの接種が進んでいくにあたって懸念されることは、集団免疫の単位なんですよね。
どういうことかというと、国全体の接種率が上昇しても、生活圏やコミュニティーでの接種率が高くないとその中では流行してしまうということです。

たとえば東京の接種率が80%で国全体で60%であっても、10%、20%といった地域があればそこでは感染拡大します。あるいは高齢者の接種率が上昇したとしても若年~中年者がほとんどワクチンを接種していない状況では、全体的にワクチン接種が進んだからといってリスク行動を取る人が増えてしまうと、大きく感染拡大するリスクがあります。

こういった懸念があるため、集団免疫を考える時には、全体の接種率だけではなく感染させ合う可能性のあるコミュニティー内、単位内での接種率を考えることも重要なんですね。

その観点でこの研究において、大人のワクチン接種率が上がると子どもコミュニティーで感染が拡がっていかないということであれば、結構ポジティブな結果なのではないかと思います。

岡田玲緒奈
まさにこの研究においても、地域を区切って、コミュニティー内でという表現をされています。そして16~50歳の接種率、特に子どもの近くにいる親の年代の接種が進むと、より子どもが守られるのかなと思いました。

他の先生方、いかがでしょうか。

内田舞
昨年発表された論文ですが、ボストンのある東海岸ニューイングランド地方にて、昨年の3~5月末頃の新型コロナウイルス感染が深刻だった時期に、医療従事者の親を持つ子どものためにオープンしていた保育園に通っていた、子どもの感染率を調べたものがあります。

その研究によると、保育園で PCR検査陽性と確認されたのは先生などの大人で、子どもはほとんどいなかったんですよね。つまり、どうやら子どもから子どもには感染しないのではないか、ということが昨年夏頃に話題になっていたのを思い出しました。

岡田玲緒奈
仰る通りで、何故なのかはまだ謎に包まれている部分もあるのですが、小児科学会としても子ども同士の感染が起こる確率は低いと言っています。

内田舞
これは重要な論文だと思っています。以前私が妊婦さんのワクチン接種についての話をさせていただいた時に、峰先生が「妊婦さんがワクチンを接種しないことを選択したとしても、その場合に妊婦さんを守るのは妊婦さんだけの責任ではない」ということを仰ってくださったんですよね。すごく心に響きました。

パートナー、同僚、医療従事者など妊婦さんと関わる方々がワクチンを接種することで、妊婦さんの感染リスクを下げることができる、つまりコミュニティー内で守らなければならない人のリスクを下げることができるのは、非常に重要なコンセプトです。

子どもに関しても、大人が子どもを守るのは社会の責任だと思いますので、そういったことを数値化してくれたメッセージ性のある論文だと思います。

岡田玲緒奈
ありがとうございます。
峰先生どうぞ。

峰宗太郎
拍手しているだけです👶

岡田玲緒奈
わかりづらいですね(笑)峰先生は以前はしゃべりたい時にそれをやっていましたから。
(編集注: Clubhouse ではミュートアイコンを連続タップすることで拍手を表現するようです。)

池田早希
さきほど集団免疫を考えた上でお話しましたが。
COVID-19 はお子さんでも稀に重症化しますし、他のお子さんや大人に感染させることもあります。ですので子どもの臨床試験は重要ですし、稀であっても予防できるものは予防すること、そしてお子さんがワクチンを接種できるようになれば接種することも重要です。

岡田玲緒奈
そうですね。
私たちが診療する上で、小児の場合は COVID-19 なのか風邪なのか、見分けがつかない症例が多く、ワクチンを接種しているかどうかで診断や治療が変わるのはもちろんのこと、家での対策の指導なども変わってきます。小児のワクチン接種も進んでほしいと思っています。


【ばぶ先生👶祝!生誕記念日】

黑川友哉
今日、僕の言いたいことはこれだけです。
峰先生、お誕生日おめでとうございます!

岡田玲緒奈
峰先生はアメリカ時間ですので、いま言うとフライングで怒られます(笑)
日本時間で本日の13時以降にしていただければと思います(笑)

全員
(ざわざわ)
だいじょうぶ、だいじょうぶ(笑)
峰先生、いんしゅ(笑)
峰先生はもう呑んでるから~祝い始めていいと思います!(笑)

おめでとうございます🎉

峰宗太郎
ありがとうございます👶

岡田玲緒奈
ということで、12分も延長してしまいましたが。
土、日をはさんで月曜日に、コクーン効果についてさらにマニアな感染症疫学の先生方とお話できればと思っております。

それでは…終わっていいんですよね?(笑)

みなさん、よい1日をお過ごしください。
ありがとうございました。

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