見出し画像

変異ウイルス オミクロンへの向き合い方について議論しました(12月2日こびナビTwitter spacesまとめ)

こちらの記事は、2021年12月2日時点での情報を基にされており、
一部情報が古くなっております。

2021年12月2日(木)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:峰宗太郎


峰宗太郎
皆さんおはようございます。
Taka先生こんばんは。

木下喬弘
こんばんはー。

峰宗太郎
元気ですか?

木下喬弘
元気ですよ♪

峰宗太郎
僕は元気じゃないです。

木下喬弘
なんでですか?

峰宗太郎
昨日、ブースターショットを受けたんですよ。

木下喬弘
ほう! どうでした? 結構しんどかったですか?

峰宗太郎
しんどくなっちゃって、今日一日は使いものにならない廃人と化して、非生産的にすごしております。
引いてくるとは思うのですが、打ったところの痛みと倦怠感がきますね。

木下喬弘
ちなみに先生は2回目が結構きつかったタイプですか?

峰宗太郎
2回目も同じように翌日寝転がってた人ですね。

木下喬弘
ほう、なるほど。

峰宗太郎
「2回目の副反応が強かった人は3回目の副反応も強いのか」とはよく聞かれる質問なのですが、Taka先生はそういう論文って見たことありますか?

木下喬弘
ないっすねえ。

峰宗太郎
ないっすよねえ。
僕も2回目と3回の頻度とか、(副反応の)重さがどうこうで比較したのは見たことがあるんですけどね。
2回目の重さが重かった人が3回目も重いのかというのは、クリニカルクエスチョンとしてはおもしろいと思うのですが、論文で見たことはないですよね。

木下喬弘
あの解釈がばっちり正解かはわかりませんが、多くの人が2回目と同等かそれ以下と答えているということは、逆転現象はそんなに起きていないということじゃないですかね。

峰宗太郎
なるほど、それはそうかもしれないですね。
安川先生も、もう受けたんですよね、ブースターショット。

安川康介
受けました。

峰宗太郎
この時、副反応はどうでしたか?

安川康介
副反応は、2回目よりも軽い感じがしましたね。
僕の周りはほとんど(ブースターショットを)受けていますが、やはり人によって全然違います。
2回目ひどかったから3回目もそうだというわけでもなく、1回目が1番きつかったという同僚もいます。
ただ、やっぱり3回目結構きつかったっていう人もいます。
本当にこれはまちまちで、よくわかんないですね。

峰宗太郎
そうですよね。
いずれにせよ、ブースターショットについては何度もこびスペでやっているので、今日はブースターショットについてふれる気は無いのですが、雑談のはしりとしてお話をさせていただきました。

皆さんおはようございます。
今日はもう12月に入りましたね。
日本ではブースターショットが始まりました。
考え方は色々ですが、本当にいろんな情報が出ているので、皆さん、情報を取得しながら臨んでいただければと思います。
もしここを聴いている方の中に、まだ1回目・2回目を打たれていない方がいらっしゃれば、是非打っていただきたい状況にはなっていると、色んな意味で思います。

谷口先生、どうですか?
千葉県もついに感染者ゼロの日があったそうですね。

谷口俊文
そうですね。
少ない日が続いていますが、今週に入ってから2人、また新たな入院がありました。
「不穏な空気」とツイッターで呟いてしまったのですが、感染経路が全くわからなくて、やはり無症状の方が多くて検査してないだけなのかなと思ったり、よくわからない状況が続いています。

峰宗太郎
そうですね。火種が消えたわけではないというのはとっても大事ですよね。

谷口俊文
そうですね、そのように思います。

峰宗太郎
ときに、谷口先生のブースターショットを受けているときのあの Tシャツはどこで手に入れられたんですか?(笑)

▼谷口俊文ツイート 2021/12/1

谷口俊文
いや、もうね、ネットで買いましたよ。もう1発決めなきゃいけないなと思って。

▼あ、普通にネットで売ってます。。。

峰宗太郎
ああ……決まってました。
ついハンサムってつぶやいちゃいましたけど。

谷口俊文
いや、いつもありがとうございます。

峰宗太郎
というか、マシュマロにね、谷口先生とか Taka先生がイケメンだっていうわけのわかんないマシュマロが来るんですよ、本当に。
それね、僕に送る必要はないんですよね、っていうのを送ってくるんで、返してませんけど(笑)

木下喬弘
重要なご指摘ですね。

峰宗太郎
重要なご指摘です(笑)
遠藤先生も今日はイギリスからですか?
遠藤先生はブースターショットを接種されましたか?

遠藤彰
僕は2回目を打ったのが8月の半ばくらいなので、半年後、おそらく1月とかになるんじゃないかと。
ボリス・ジョンソン(英国首相)が、基本的に1月末までには全ての希望者にブースターショットを提供すると言っているので、おそらくその頃までには打てるのではないかと思うんですけども。
(遠藤注:その後、2021年12月末に目標が前倒しされました)

峰宗太郎
なるほど。そういう状況なんですね。
黑川先生、今日はご機嫌斜めですか?

黑川友哉
すみません、ちょっと電波が悪くて峰先生の声がよく聞こえないのでごめんなさい。

峰宗太郎
ああ……それは何か申し訳ないです。
次に、曽宮先生に来ていただいているんですね。
今日ちょっと聞きたいことがあるんですけど、曽宮先生はブースターショットをのぞまれますか?

曽宮正晴
もちろんです。


慌てず騒がず、まだまだわからぬオミクロン

峰宗太郎
ありがとうございます。
ということで、今日はもう皆さん予想していると思いますし、これだけメディアがにぎわっているので、オミクロンの話をしたいと思います。
すみません、「またオミクロンかよ」と思った人は結構いい感覚の持ち主です。

木下喬弘
ええ~!? オミクロンの話題?!!

峰宗太郎
(爆笑)
そう、オミクロン、英語でどうやって発音してます? Taka先生。

木下喬弘
言われてみれば、アメリカ人とまだオミクロンの話してないですわ。
でもツイッターでは見ましたよ、「アミクロンなのかオミクロンなのか」みたいなやつ。

峰宗太郎
安川先生はどちらの発音ですか?

安川康介
これ、結構日本の発音に近いんじゃないかなと思っています。

峰宗太郎
なるほどね。
僕はうちのボスとかと話していますが、まあ年齢もあるので結構もごもごお話をされることもあり、最初「アン」としか聞こえなかったんですよ。
「アミクロン」って言ってるんですけど、「アン」って言うから「何の話してるんだろ?」みたいな非常に失礼な状況になりましたので、少し発音にもこだわってみたいと思います(笑)

オミクロン、新しい変異ウイルスです。
ここを聴いておられる方はコロナに関してこびナビの話を今でも聴いていただいているということで、情報に非常にセンシティブな方がほとんどだと思うので、ご存知の方が多いでしょう。

最初は南アフリカの研究機関が発見の報告をしてくれたということで、B.1.1.529 という PANGOネームが付いた、新しい変異ウイルスです。
※PANGO・・・PANGO系統(PANGO Lineage)は、新型コロナウイルスの国際的な分類命名法。PANGO は、ラテン語の「設定する、記録する」という意味の動詞。これに対し、アルファ、デルタ等のギリシャ文字による変異体の呼称は WHO の命名である。

今は25か国近く、またはそれ以上で検出されているということで、世界中に広がっています。
いろんな情報を総合すると、どうも南アフリカで最初に報告されたときよりも先に採取された検体から、アフリカ地域や、場合によってはイギリス等でも早めに検出されているかもしれないということで、本当の起源がどこかはわかっていません。
件数をみると、南アフリカや南部アフリカのあたりでちょっと流行が大きいのではということです。
これは当然、市中で感染しているということですね。
スコットランドでも市中で感染したんじゃないかという事例が見られていたり、世界中の検疫とかで捕まっているそうです。
日本でももう2例報告されましたし、今日はアメリカは、カリフォルニアで見つかったということが話題になっています。

ざくっとまとめてから、皆さんの意見をお聞きするつもりです。
まずは、わかってないことが多いというのが、わかっていただきたいです。
大事なことはですね、なぜこんなに騒いでいるのかということです。
デルタだってまだめちゃめちゃ流行してるわけですね。
デルタ以外の変異体も、世界中ではいっぱい流行しています。
だけど、なんでこんなオミクロン、オミクロンと騒いでるのかというと、僕が観察した限りでは2つの大きな要因があると思います。

1つ目、こっちが大きいんですけど、いわゆる人から人への移りやすさである伝播性(=流行の広がりやすさ)です。
この性質が、大きく変わって伝播性が上がっているのではないかと言われています。
まあ言い換えれば感染しやすさ、感染性(infectivity)と言ってもいいですが、これが上がっているのではないかと懸念されています。

2つ目は、変異箇所が多いということです。
全体で50か所あります。
まず、50か所くらいに変異が入っているのは大したことではないのですが、変異が入っている場所が、スパイクタンパク質なんですね。
ワクチンのターゲットになるスパイクタンパク質で32か所、報告によってはもう少し多くなってるものもあります。
これだけ変異が入っていると、スパイクタンパク質に対する抗体の付き方の性質も変わってしまうだろう、要は簡単な話、免疫から逃れやすくなるということで、ワクチンの効きが悪くなるんじゃないかとか、1回目はオミクロン以外の新型コロナウイルスに感染した人が、2回目の感染も多くなるんじゃないかというようなことが推測されるんですね。
これはまだ実証はされていません。
なので、伝播性の方についても実証でダイレクトに「絶対上がっている」と言い切るのは、今のところ難しいのではないかと思います。
ここはですね、遠藤先生とかに今日は聞いていきたいところであります。
ということで、この2点に特に懸念事項があるということで、オミクロンは大変話題になっているものだと認識しています。

実際、世界中の動きが非常に速かったです。
WHO は26日には VOC(Variants of Concern:懸念すべき変異体)に指定してオミクロンというラベルを付けました。
ギリシャ文字は数学をされている遠藤先生もマスターされていると思いますが、

大きいオー(o)=オメガ=ω
メガ=デカい という意味で、テラとかギガとかは言いません。これに対し
小さいオー(o)=オミクロン=ο
ミクロン=小さいという意味で、オナノとは言いません。

余談でした。

ということで、ニュー ν とクサイ ξ の2つの名前は飛ばしています。
ここら辺は、社会的なことに興味のある方は聞いてください。
ニューは英語の new と混同しやすいとか、ξ=xi は多く使われる苗字や人名があり、WHO のラベル付けでは、人名や地名が入らないように配慮するということがあるので、それに沿ったと WHO は声明を出したりしています。
ということで、オミクロンが話題になってからの世界中の対応は速いです。

日本も、外国人の入国のみならず、航空機での予約が取れなくなるということで、私の帰国計画はこれで無くなりました。
そういう状況で、かなり水際対策を徹底しています。
各国も対応していますが、それがもう手遅れの可能性ももちろんあります。
というのが、各国で検出され、スコットランドなどで市中感染も疑われているため、既に入り込んでいる可能性もあるんですね。
特に先進国だとゲノムサーチはしているわけですが、アフリカ地域や、それ以外の発展途上国などにおいては、検体の数パーセント程度をシークエンスできればマシという地域もたくさんありますのでね。
そういうことで、まだ実態は掴めていません。

ということで、ダイレクトな比較や証拠は少ないのですが、ニュースもたくさん出てきています。
オミクロン騒動というか、まあ、騒動という言い方もアレですが、これだけ大きなパニックで、多くの国が反応して、実際に水際が強化されて対策して人の動きを制限する……これ私権制限もありますからね。
それから経済も、マーケットがすごく反応しました。
そういう中で、なぜこんなに騒いでいるかについて、皆さんの観点からどう感じておられるかをお伺いしたいです。
その前に、伝播性上昇の蓋然性や、今後どういう研究がなされればわかってくるかについて、突然ですが、遠藤先生にちょっと聞いてみたいと思います。
遠藤先生ご対応願えますでしょうか?

遠藤彰
すごくデカい質問が飛んできて、どうしようってなってるんですけど……。

これから起こるであろう研究、伝播性の変化について起こるであろう研究は、まずは既存のデルタの増加率に比べて、新しく入ってきたオミクロンの増加がどうかを見るのが、まず1つになるだろうと思います。

今のところ、ある程度の数で増えていて、かつある程度データがあるのは南アフリカだと思うので、現地のデータで、相対的な増加率がどうかを調べるのが1つあるかなと。

あとは、英国でも、残念ながら市中感染だろうと思われるものが出てきていますが、今後の増加を見て行きます。
これまでも、以前の変異ウイルスに比べ、新しいものがどれくらい移りやすいかを、元の変異ウイルスを基準値として相対的に見るというのをやってました。
今度は、デルタに比べてオミクロンがどうかを見ていくだろうと思います。

今後、市中感染が起こった国、特にイギリスの今後のデータを使って解析が進むでしょう。
伝播性以外にも、重症化率、死亡率などが既存のものに比べてどうなのかを合わせて見ていくと思います。

峰宗太郎
ありがとうございます。
とてもわかりやすく説明していただきました。
今までに出ていたデルタなどの伝播性に比べて、どのくらい上がっているか、下がっているか、変わっていないか、ここを比較しながら見ていくのがポイントということですね。

報道やツイッターの世界でも刻々と変化しています。
そこで、遠藤先生の目から見られて、今、南アフリカでの第3波、デルタによる波がちょうど収まったところで、新たな波が立ち上がり始めています。
その中で、オミクロンの割合が非常に高く、77例ではオミクロンの検出割合が100%近いということで、デルタを強力に置き換えたのではないかということを、大きな声で言われる方や報道も多くなっています。

実際、直接比較が可能なものなのか? または、一部の外国メディアもまたファウンダー・エフェクト=創始者効果の話だとか、それから流行対策が南アフリカでちょうど第3波が終わって切り替わり始めた時期に当たっているから、見かけ上Rが上がっているんだよ、という説明をしている記事も見かけました。

今の時点で、遠藤先生から見てデルタと比較してこれが高そうだという根拠になるようなデータは見られていますでしょうか?

遠藤彰
正直かなり難しくて、今の状況だとまだ何とも言えないというのが正直な感じです。
創始者効果というのは、1回デルタがほぼ絶滅した後に、たまたま少数のオミクロンが残ったので、その後は事実上オミクロンだけしか残ってないことになったから、それが増えていくみたいな話だと思うんですね。

では南アフリカでそういう状況が起こっているのか、たまたま最初がある意味少しランダムな増え方で、たまたまデルタを大きく上回ってオミクロンが増えたので、実は伝播性にはそんなに変わりはないけれども、最初の比率がそのまま続いて今こうなっている可能性は、ゼロではないと思います。

ではそんなにデルタが最初からほとんど消えかかってたのかというと、何とも言えません。
数がかなり減っていたことは確かなので、まあそういうこともあり得ます。
しかし逆にそうではない可能性も十分あるかなと思うので、南アフリカだけのデータを見て、それをどうこう言うのは、ちょっとまだ早いかなと思っています。
データのポイントを増やすというか、残念ながら複数国で感染者が確認されていて、市中感染が起こりつつあると思うので、複数国でも似たような置き換わりが起こるのか、そうではなく、イギリスも含めたデルタがかなり流行っている地域だと、思ったほど速いスピードで増えないのかを見ながら考えていくとは思います。

峰宗太郎
ありがとうございます。
とてもわかりやすかったです。
現状、断言できることはまだ本当に少ない状況であることを教えていただいたと、私は捉えました。
海外を含む多くの報道は、ツイッター上だとか、あとはイスラエルの一部の報道局が流している状況で、「伝播性が大きく変わっている」と断言するようなことをおっしゃる方もいますが、今のところ、そういうことがわかっているとか、新たな数字が出ているということは無さそうだということですね。

2点目の部分を掘り下げてみたいと思います。

伝播性については後で皆さんの意見もお伺いしたいと思いますが、2点目は、変異箇所が非常に多いということなんですよね。
特にスパイクタンパク質=表面に出ているトゲトゲで、ワクチンのターゲットになる部分について変異が多いのです。
そして、変異のある32か所のうち、今までの変異ウイルスでも確認されている免疫逃避、つまり、ワクチンの効きに関係している場所が複数あるということを、安川先生もツイートされていました。
あれはすごくわかりやすい論説でしたよね。

▼Report on Omicron Spike mutations on epitopes and immunological/epidemiological/kinetics effects from literature

ここについて、
・今どのくらいわかっているのか
・どういう実験をしていくのか
・変異の組み合わせにより、今の時点でどの程度ワクチンの効果が下がっているか予想できるのか
ということを、専門家の観点から曽宮先生にお聞きしたいです。
曽宮先生、今お話ができますか?

曽宮正晴
はい、オッケーです。

峰宗太郎
よろしくお願いします。
まず、スパイクタンパク質にたくさん変異が入っていますよね。
まず率直に考えられて、蓋然性としてですね、これ感覚でいいです。フィーリングで。
ワクチンによってできる中和抗体に影響する可能性はあるのでしょうか?

曽宮正晴
可能性は十分あると思います。
ただ、1個1個の変異を加えたときに中和抗体の効果が下がるかどうかは比較的よく調べられていますが、それが30個集まったときにどうなるかは全くわかりません。
1+1=2になる効果もあれば、1+1=3になる効果もあるし、1+1=0になる効果もあるので、その30個の変異の総合的な効果を推測するのは、今の段階では無理ですね。

峰宗太郎
ということは、今後実証が大事だということになりますよね。

曽宮正晴
その通りです。

峰宗太郎
そうすると、ここ数週間、ワクチンメーカーや世界中の研究者はどういう実験をして、どういうことを決めていきたいと考えているか、先生の考えをお教えいただいてもよろしいでしょうか?

曽宮正晴
はい。
基本的にはシュードウイルスという、新型コロナウイルスの偽物ウイルスを作ります。
これはオミクロンと同様のスパイクの変異を持つように実験的に改変されたウイルスで、本物のウイルスと比べて取り扱いが容易という特長があります。
このシュードウイルスが細胞に感染する力を、中和抗体やワクチンを打った人の血清がどれくらいブロックするか見て、それが速報値として、おそらく2週間以内に出てくるのではないかと思います。

峰宗太郎
ありがとうございます。その通りですね。
実験には、今までの抗体を作っている血清を用います。
つまり、ワクチンでできた抗体が、他の変異ウイルスなどとオミクロンとを比較して、どの程度効果が落ちているかを調べます。
2週間くらい経って速報値が出てくると、こういうことが分かってくるということですよね。
今、いろんな情報が出回っていますが、ワクチンの効果として、少なくとも中和力価について断言できるようなデータは、現状、曽宮先生もご覧になっていなくて、断言できない、わかんないということですよね。

曽宮正晴
まあ物理的に不可能ですよね。
発見されて間もないので、誰もそれを検証していないのが現状です。

峰宗太郎
ありがとうございます。
それでは次ですが、ワクチンの戦略を変えるかもしれないということで、モデルナ、ファイザー、ビオンテックそれぞれの CEO がいろんな発言をしています。
曽宮先生はこういった様々な言説や、ワクチン戦略に影響が与えられるかについて、断言できないこと、まだわかってないことがあまりにも多い中で、今、どういうふうに受け取られて、どういう情報を発信されるべきだと捉えられていますか?

曽宮正晴
製薬会社の CEO が何か言うってことは、株主とか、利害関係とかのいろんなことを全て含めての発言だと思うので、現時点ではあまり真に受けなくていいかなと思っています。

峰宗太郎
ありがとうございます。大事な観点ですよね。
会社を率いる方にはステークホルダー(利害関係者)も多いですからね。
やはり科学者としては純粋に、どう挙動が変わるか、特にベータやミュー、ラムダでは中和能が結構下がったということで、興味がわくところです。
やはり今回32か所もの場所が変異していて、しかも組み合わせが今までにないものですから、結局、実験しなければわからない、そういう結論になります。
曽宮先生も、今後、そういう流れでデータを追われて行くということですね。

曽宮正晴
その通りです。はい。

峰宗太郎
ありがとうございます。
ということで、遠藤先生と曽宮先生に僕が懸念している2つの点について伺いました。
どちらも、まず結論から言うと、
・現状、データが足りなすぎる。
・解析するにもデータがない。
・物理的にやっていることもない。

ということで、実は断言できないんですね。
つまり、十分な情報がないのです。
なので、こういう場合にどうリスクを捉えるか、どう騒ぐか、どう備えるかが大事になってきます。
不完全な情報の中で、何かの意思決定をするとか、どのように情報を捉えるかとか、そういうことが重要になってくると思うんです。

突然ですが、安川先生は今回のこのオミクロン騒ぎをどのように捉えられていますか?
全体的に、もっと騒げ! なのか、騒ぎすぎなのか、それとも何かモノ言うの早いんじゃないの? とか、いろんな観点から、どう思われますか?

安川康介
今の情報量だとまだ不確定なことが多いので、ちょっと騒ぎすぎだと感じています。
いろんなところで過剰反応が起きていて、今後、新たな変異ウイルスが出てくるたびに同じことが起きるのかと思うと、憂鬱な気分になるほどです。
今、峰先生がおっしゃった通りですし、木下先生も Voicy で同じことを言っていましたが、伝播性や病原性、ワクチンの免疫逃避に関しては、今のところ「よくわからない」の一点です(12月2日時点)。
ですから、非医療従事者の方は一旦オミクロンの情報から2週間くらい離れた後に帰ってきて、少し出た新しい情報を確認する程度がいいでしょう。
今はいくらネットを漁っても、不確かな情報しかない状況です。

峰宗太郎
ありがとうございます。ということで、Taka先生はどうですか?
Voicy を聴かれていない方もいると思うので、先生の感触を。

木下喬弘
騒ぎすぎるなと言っても無理があるので、僕が昨日の Voicy で一番言いたかったのは、「持っていく方向性を考えて欲しい」ということです。

Yahoo!ニュースで見つけた記事2つを例にとります。
1つは、イギリスはオミクロンが出たけれどあまり入国制限をせず、その代わり、全員に3回目の接種を決めたという記事です。
オミクロンに対するアクションとして、一応念には念を入れてというか、病毒性が上がって、かつ伝播性が高かったら嫌なので、まずしっかりプロテクトする方向で進めるというのが記事になっていて、それは妥当だなと思いました。

もう1つは、毎日新聞さんの、めちゃくちゃコメントが付いていた記事で「ワクチンの3回目接種始まる オミクロン株への有効性不明の中」というタイトルです。

▼ワクチンの3回目接種始まる オミクロン株への有効性不明の中

出典:毎日新聞 2021/12/01

こちらは、「なんでなん? なんでそっちに行くの?」という感じなんです。
「普通、不確実性が上がったときは防御の力を上げようと思うやん?」というところがあまり共有されず、
「え、効かないかもしれないのに打たされるの?」みたいな方向性の話に持っていくのは止めて欲しいと考えながらお話をしていました。

峰宗太郎
なるほど。
そこも大事な観点ですね。
どう備えるかというのはマインドセットの問題もありますし、実対策として、じゃあ何をやるの? 何をゴールにしているの? というのは大事ですよね。

木下喬弘
そうなんです。
別に私はオミクロンが出たからワクチンを打てと言っているわけではありません。
そんな雑な話をしているわけではないけれど、せめてニュートラルかプラスの方向やろ! ということです。

峰宗太郎
ありがとうございます。
すごくわかりやすくて助かります。
あっ、吉村代表が来てくださっていますが、今お話ができますか?

吉村健佑
はい、大丈夫です。
おはようございます。

峰宗太郎
吉村先生、一昨日のスペースですごく迅速に対策が動いているとご紹介いただきましたが、それからも非常に速く動いていますよね。

吉村健佑
動いてますね。
今、医学的な知見や個人でできることは議論の通りだと思います。
しかし、少ない情報しかなく、不確実性が高い状況であっても、おそらく国としては、決断して行動しなきゃいけないところで、水際対策にそれが反映されているのだろうと思います。
私から見ても、これまでにない反応を日本国政府は見せていると感じますが、いかがでしょうか?

峰宗太郎
いや、そう思います。
それは吉村先生の、行政におられた方として、そして行政ウォッチャーとして、行政の一部に検疫で参画される立場からしても、やはり速さを感じますか?

吉村健佑
速いですし、かなり影響の大きい対策を打っていますね。
具体的には、濃厚接触の範囲をかなり広く見て、かつ全員に施設で一旦療養いただく感じです。
多くの方を対象にしているので、検疫のキャパシティがかなり課題になっている状況です。

峰宗太郎
なるほど、そうですね。
対策を強くするとかすばやくすると、それだけ現場の負担もかかりますからね。
是非無理をしないでやっていただきたいです。
ありがとうございます。

ということで、れおにいが締めをしゃべる係として指定されるわけですが、れおにいは聞こえますか? カツオ?
※カツオ・・・11月27日の、こびナビとみんパピ! コラボのインスタライブのコメント欄で生まれた岡田玲緒奈の新しい二つ名。由来は「サザエさん」の磯野カツオ。

岡田玲緒奈
カツオでーす。


新しい変異ウイルスが出ても、基本的な感染対策は変わらない

峰宗太郎
オミクロンが出てきた現状で、一般国民や皆さんは結局何をすればいいのかを、れおにいから聴きたいです。

岡田玲緒奈
いや、もう本当に基本的な感染対策以上のことはありません。
仮に、伝播性上昇とか、病毒性上昇とか、いずれかがもし最悪の状況シナリオだったとしても、基本の感染対策は変わらないはずです。
全然違うものになってしまったような相当な変異でもない限りは、基本の感染対策を続けていただきたいです。
そして、1・-2回目のプライマリーシリーズのワクチン接種がいまだ行われていない方に関しては、ぜひ積極的に検討していただき、高リスクの方に関しては3回目の接種も検討していただくことになるかと思います。

峰宗太郎
ありがとうございます。
僕も同じメッセージですけれど、谷口先生はいかがですか?
診療するにあたり臨戦態勢になっているとか、今までより大げさに診療しなければいけないとか、もしくは国民の皆さんにメッセージとして出すとしたら、どういったところになるでしょうか?

谷口俊文
今の対応としては、オミクロンが入ってきたら、陽性例は基本的に入院扱いになり、個室隔離で、PCR検査で2回の陰性を確認するまでは退院できないという対応を取ります。
千葉県内にも帰国者からの濃厚接触者がいるので、僕たちも少し備えていますが、今のところまだ来ていません。
ただ、今は隔離して厳重に管理しますが、数が増えてきたら、そのような基準も撤廃されるでしょうから、今後の動向には非常に注目しています。

峰宗太郎
ありがとうございます。
最初はとにかく広げない努力をして、広がってしまった場合、または現状が分かったら、柔軟に対応するのが非常に大事なのかなと感じます。

さて、すごく駆け足トークで皆さんに意見を聞きながらオミクロンについてまとめてきました。
今後、もっと情報がどんどん出てきます。
騒ぐ人は多いですし、騒ぎも大きくなってくると私は思っています。
しかし、実際問題として、オミクロンに対する考え方としては、変異ウイルスではありますが、新型コロナウイルスの一部であることを忘れちゃいけません。
何も新しいウイルスが流行りだしたということではなく、オミクロンだろうが、デルタだろうが、アルファだろうが、ガンマだろうが、変異体がどれであろうが、とにかく
・流行らせない
・感染しない

ことを心がけることも大事だと私は訴えておきたいですね。
そのためには、れおにいが言ってくださいましたが、まずは基本的予防策をしっかり取ることです。

デルタだって、第5波だって、3密回避などの皆さんの行動変容で収まったわけですよ。
あと、ワクチンの接種ですね。
ワクチンの効果がゼロになることは無いと思っています、私は。
たとえ何十%下がることがあろうと、効果が無くなるわけではありません。
まして、病毒性に関するところで、重症化は防げる蓋然性が高いのではないかと、予想ではありますが、感じているところです。
なので、「もう無意味だからワクチンを打たないんだ」というわけのわからないやけっぱちの、全く論理的に繋がりのない結論に飛びついたりはしないでいただきたいと思うんですよね。

隔日にはなっていますが、こびスペでは今後もオミクロンの話題を追わざるを得ないと思うので、今後も情報発信があると思います。
確かに日本でも2例確認されています。
今後も何例か確認されるでしょうし、初めての市中感染で多分騒ぐでしょうし、1例事例で「空気感染するようになった」とか騒ぐテレビ局がですね、何チャンネルかは言いませんが、そういうところも出てくると思います。

でも、皆さんはそういうことに振り回されず、自分たちのやることが即座に変わらないという点はしっかりおさえて、冷静に情報を見ていただくのがいいのではないでしょうか。
僕の方からは、今日はそんな感じの感想的なもので締めにしたいと思います。


木下喬弘、重版出来! 峰宗太郎、単行本&電子書籍同時発売

ということで、宣伝コーナーです。

手を洗う救急医Taka、「みんなで…」あー、はい、宣伝の時間ですよ。

※「みんなで知ろう! 新型コロナワクチンとHPVワクチンの本当の話」木下喬弘 著

木下喬弘
これ覚えられないんですよね。
本のタイトルが長すぎて覚えるのに1か月くらいかかるんですよ。

峰宗太郎
「すばらしい人体」にかけて「すばらしいワクチン」とかにしとけば良かったんじゃないですか?
※「すばらしい人体」・・・外科医けいゆう先生こと、山本健人先生の著書「すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険」のこと。

木下喬弘
それ、タイトルだけで絶対買わへん人いっぱいいるでしょう(笑)
買って欲しい人に届かないタイトルナンバーワンじゃないですか。
あの…何とかカントカの大切な話という本が出ておりまして、皆さんありがとうございます。

峰宗太郎
重版出来したことをバラしていいですか?

木下喬弘
大丈夫です。

峰宗太郎
そうなんですよ、さすがです。
これは盛り上がってまいりましたね。

木下喬弘
ありがとうございます。
ひろゆきさんがおもろいツイートしてくれて、おかげさまで電子書籍化も決まりまして。

峰宗太郎
素晴らしい。
ひろゆきさんに宣伝していただくなんて、これは影響力大ですね。

木下喬弘
そうなんですよ。

峰宗太郎
ひろゆきファンは結構ものを買いますよ。

木下喬弘
そうなんですね。
ありがとうございます。
ひろゆき夫妻にも無事1冊送らせてもらいました。
フランスって、日本から物を送ったら関税を取られるらしいんですよね。
献本として送っているのに25ユーロ(約3,200円)くらい払わせてしまったみたいで。

峰宗太郎
ああ、そうでしたか。
じゃあ僕もひろゆきさんにたくさん送りつけよう!

木下喬弘
そういう話でちょっと盛り上がっていました(笑)
皆さんのおかげで第2刷が決まりまして、売り切れつつあるところにもお送りできるようなので、是非お手にとっていただければと思います。

峰宗太郎
はい、ありがとうございます。
ということで、Taka先生の本をよろしくお願いします。

あとですね、私の本も宣伝させてください。今日発売になっております。
私も、何ていう題名だったか忘れました(笑)
ナントカは正しかったの私たちは正したかったのか、たたかっ……ん、ちょっとよくわかりません。

※「新型コロナとワクチン わたしたちは正しかったのか」峰 宗太郎・山中浩之 著

木下喬弘
「わたしたちは戦ったのか」でしょう? 戦いましたもんね、一緒に。

峰宗太郎
ちがうちがうちがう!
戦ったらマズいって!(笑)

私も、ちょうど去年の今日、ちょうど一年前に出した新書の続刊本ということで、日経ビジネス社の山中さんという編集者さんとの対談形式で書かれています。

内容は、実はオミクロンには間に合わなかったのですが、変異ウイルスについても少し話していまして、考え方は今日ここ、こびスペでお話をした内容や、Taka先生や安川先生が発信されている内容とも全然齟齬はないです。
みんな大体同じようなことをおっしゃるな、という内容です。
「だから買わなくていいよ」っていう話にはならないので、是非お手にとってご覧いただければと思っております。

その他、皆さんから最後に何かひとこと、「これは!」というのはありますか?

岡田玲緒奈
午前0時から峰先生の本は kindle で解禁されていまして、既に読み始めています。

峰宗太郎
そうなんですね。
実は Taka先生より先に電子版を出してしまいました。

岡田玲緒奈
これはすごいです。
エキサイティングな本になっていますので、是非お手にとってください。

峰宗太郎
ありがとうございます。
なぜかれおにいに宣伝担当していただきました。

ということで、今日は黑川先生が締めます。
黑川先生よろしく願いします。

黑川友哉
いや、本当にネーミングって大切ですよね、オミクロンとか。
ジャイアンの妹のジャイ子も、「そんな名前の人はきっといないだろう」ということでジャイ子という名前が付けられたそうなのですが、皆さんご存知でしたか、峰先生。

峰宗太郎
知らなかったですねー!

黑川友哉
だから、やはりウイルスの名前とかをつけるときにもそういう配慮は大事なんだなって思いながら聞いていました。
今日も皆さんありがとうございました。
来週のこびスペは月・水・金ですね。
どうぞよろしくお願いいたします。

峰宗太郎
ということで、日本の皆様、今日も良い一日をお過ごしください。
こびスペはまた来週以降も最新の情報をアップデートしていきますので、お付き合いいただければと思います。

では、皆さん私は夜に Voicy をやりますので、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?