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【今更聞けない コロナとワクチンの話を専門家に聞くvol.4】文字起こし

3月22日に株式会社Ridilover代表の安部 敏樹さん、こびナビ副代表の峰宗太郎、木下喬弘が対談させていただきました。
当日の議論された内容のまとめをご紹介します。


・アストラゼネカ社製ワクチン

日本でも使用される可能性の高いアストラゼネカ社製ワクチンについて、ワクチン接種後に血栓症の報告があり、EU各国でワクチン接種を一旦中断していたが、その後EMAが安全性を確認し接種再開へ。もともとなぜ中断されたかがわからないような僅かな頻度の報告であり、絶対に因果関係がないとは言い切れないものの、ワクチン接種を中断するほどではないと判断された。

・国産ワクチン
日本でもワクチン開発が進められている。世界より遅れているが、ワクチン開発はもともと長年かかるものであり、それを1年2年で作ってしまった英米中露印が凄いと考えるのが妥当なのではないか。なお国産ワクチンを開発できるようにしておくことは以下の理由により重要である。
(1) 疫学的な安全保障、先進国としての国策国防
(2) 日本国内のローカルな変異ウイルスへの対応
(3) 国際協調(現在は日本は他国より高値でワクチンを購入しており、他国の接種機会を奪っていると批判されている)
(4) 科学技術力の維持

・科学技術力×投資
日本がワクチン開発などの科学技術力において、また投資の目利きという観点で世界と比較して少々遅れている理由としては、以下のようなことが考えられる。
(1) 日本ではSARSが流行しなかったため20年間なにもせずに来た。そのため研究分野への投資総量が大きく減少し技術力も低下した。
(2) 1970年代にワクチン禍、その後も薬害を経験し、産業/研究体質が弱体化している。
(3) 再生医療への重点配分投資により、他分野への予算配分が行われなくなった。

・日本の感染対策、国際比較
日本は総合的にみて中の上か上の下、国際ランキングをつければ上位である。
良い点:3蜜回避の早期発見、クラスター対策等。
悪い点:緊急事態宣言の失敗、政府のリーダーシップが弱く明確な目標設定がない等。
ただし、日本は運がよかった面もあり、それを実力だと勘違いしないことも重要である。

・イスラエルの政策
国策としてワクチン接種が進み感染者が激減しており、集団免疫達成に近づいている。

・ワクチンパスポート
日本国内で運用されるかどうかはわからないが、イスラエルはじめ海外では導入する方向である国も多く、渡航時に相手国から求められる可能性はある。また民間が早々にアプリを開発する等、前のめりになっている部分もあり、民間主導でワクチンパスポートの導入が進んでしまう懸念もある。今後の展開も要注目。


・変異ウイルス(変異体)に対するワクチンの効果
日本語でいう「効果」について、英語では次の3種類にわけられる。
Immunogenicity
免疫原性、中和抗体ができているかどうかという効果 
Efficacy
臨床試験(ランダム化比較試験等)で検討し判明した効果 
Effectiveness
実社会で実際に接種した時の効果 

(1) いわゆるイギリス型変異ウイルス/B.1.1.7
ファイザー社、モデルナ社製mRNAワクチンは、イギリス型変異ウイルスに対しても効果があることがわかっており、この変異ウイルスはおそらく問題にならないと予測されている。
-Immunogenicity 
試験管の中で抗体力価を測定し低下しないことを確認。
-Efficacy 
殆ど試験されていない。
-Effectiveness
イスラエルの感染者の8割はB.1.1.7変異ウイルスに感染しているとされており、イスラエル実社会でのワクチン接種の結果がそのままEffectivenessだと考えられる。発症予防効果、感染予防効果とも90%以上。

(2) 南アフリカ、ブラジル、日本、フィリピンなどの変異ウイルス/E484K
ノババックス社製サブユニットワクチン、アストラゼネカ社製ベクターワクチン、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製ベクターワクチンは、E484K変異ウイルスに対しては効果が低減することが判明しつつある。それに対してmRNAワクチンは、まだ確定はしていないがE484K変異ウイルスに対しても効果がありそうだと考えられており、この変異ウイルスもそこまで問題にならないと予測される。

ノババックス社製、アストラゼネカ製、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチン
-Immunogenicity 
従来のウイルスに比較して低下するが、一定の効果はあると予想されている。
-Efficacy 
アストラゼネカ社製は少数のランダム化比較試験で効果が下がると判明。
ノババックス社製、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製は発症予防効果が60%程度。

mRNAワクチン
-Immunogenicity 
従来のウイルスに比較して低下するが、一定の効果はあると予想されている。
-Efficacy、Effectiveness
判明していないが、プレプリントをみる限りでは期待値は高い。

・日本の医療従事者先行接種におけるアナフィラキシー
日本の医療従事者が先行接種しているファイザー社製ワクチンにおいては、個々の医師がアナフィラキシーだと思ったものを厚生労働省に報告することになっている。その後の専門家の精査(ブライトン分類に基づく)によりアナフィラキシーだと認定された症例は、全体の報告の半分以下であった。
このようにブライトン分類に基づくアナフィラキシーに限定したところ、日本の医療従事者における発生報告数は100万人あたり約100人である。アメリカの医療従事者のアナフィラキシーは100万人あたり270人程度と報告されており、日本で多いというよりも医療従事者に多いのではないかと推測される。

臨床試験におけるアナフィラキシーは、ファイザー社製ワクチンで100万人中4.7人、モデルナ社製ワクチンは2.5人であり、医療従事者ではそれより多い傾向がみられる。

また女性に多いことも判明しており、日本では1人の男性を省き殆どが女性、世界でも94-96%が女性だと報告されている。

それらの理由として、アナフィラキシーの原因はmRNAワクチンに含まれる成分の1つであるポリエチレングリコール(PEG)によるアレルギー反応だと考えられている。このPEGは化粧品や医薬品などに含まれていることがあるため、女性や医療従事者に多いのではないかと考えられている。

・科学リテラシー
専門家に話を聞くことは重要であるが、COVID-19に関しては専門分野が多岐に渡ることもあり、本当の意味での専門家とは誰かという定義が難しい。
発信者側は常に慎重に発信する必要があり、また受信者側はどこから情報をとるかが極めてクリティカルな問題となっている。
公的情報、複数の情報源、クロスチェック、外国の情報をとることも重要だが、それらも間違うこともある。
本当の専門家でも突然突飛なことを言い出すこともある。
情報は生き物であり、それをとるということは自然を相手にすることと同程度に難しい。

少なくとも現在効果があるのではないかと話題になっている、ある治療薬に関しては、効くのではないかという噂レベルの話に惑わされるのではなく、手順を踏んでしっかりとしたエビデンスを構築し、効果があると判明してから使用することが重要である。

・緊急事態宣言
日本の緊急事態宣言は実質的に「お願い」であり、新規陽性者数が減るほうが驚きでもある。日本の唯一の武器である緊急事態宣言をこんなに雑に扱ってよいのか、もう二度と効かないのではないかという懸念もある。政治家が全体観(大局観)をもって判断することができていない。

また最初に解除基準を定めないままスタートした理由は何なのか。何により開始し、何により終了するかというところで揉めている。外国では明らかにオープン戦略、クローズ戦略、加えてワクチンの普及率もからめた戦略、マクロ視点での政策施策など幅広い基準を定めて行われており、日本も見習うべきではないか。日本でも次の流行があると想定し、第4波、3回目の緊急事態宣言、ワクチンによるCOVID-19終息のシナリオ、といった議論を始めるべきではないか。

以上

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