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ワクチンをうつ、うたないの自由(6月21日こびナビspacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年6月21日時点での情報を基にされています。※

2021年6月21日(月)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:木下喬弘

木下喬弘
Good morning, everybody.

安川康介・岡田玲緒奈
おはようございます。

峰宗太郎
Good morning!(リバーブ付で)

木下喬弘
ねみぃっすね……。

峰宗太郎
Good night!

木下喬弘
えへへへへ……そっちはね(笑)

いや、おはようございます、皆さん。
日本は、相当蒸し暑くて……僕は一刻も早くアメリカに帰りたいです。

安川康介
日本の食事とか美味しいじゃないですか?

木下喬弘
そう思うでしょう?
アメリカに行くと忘れちゃうんですけど、あんまり太るとよくないということ、思い出しまして。いまちょっとダイエットしてるんですよ。

安川康介
全然太ってないじゃないですか。

木下喬弘
そんなことないです。太ってます。アメリカに行ってから 6kg 太って、3kg ぐらい戻したところで、あまり「日本の美味しいご飯をいっぱい食べてる」みたいな感じではないんです。

安川康介
確かに木下先生を見るとしたら顔だけ、ミーティングとかで。

木下喬弘
そうなんすよ、顔だけやったらね、全然いいんですけど。日本にいると、あ、太ったな……って思うんです(笑)

安川康介
僕、日本に戻ると、だいたい太って帰ります。

岡田玲緒奈
逆じゃないんですか? アメリカの方が太りそうですけど。

木下喬弘
アメリカにいるとね、なんというか、「太ってもいいかな」って思うんですよね。

岡田玲緒奈
なるほどなるほど(笑)
確かに、全身が写っている写真だと、先生、顔だけとちょっとイメージが違う感じ。

木下喬弘
別に、誰かに何か言われるわけではないんですけど、ちょっと咎められてる気分になるんで……いやちょっと痩せよう! と思う訳ですわ。
※ 8月12日現在、諦めました(本人加筆)


接種しない自由、そして人権(日弁連)

木下喬弘
始めますか!
最近話題になっている、あれですよ。「ワクチンを接種しない自由」についてちょっと考えていきたいと思います。これ、最近けっこう話題になっておりまして、まず日弁連(日本弁護士連合会)が配信したニュースから見ていきたいと思います。

「ワクチン接種しないと退職要求」「職場にチェック表貼り出し」
医療従事者の相談、日弁連が公表
https://www.bengo4.com/c_18/n_13165/
出典:弁護士ニュースドットコム 2021/6/9

ニュースが出たのが6月9日で、ここからワクチン差別の話であるとか、ワクチンを接種しない自由みたいな話が盛り上がった、というふうに私は理解しているんですけれど。日弁連が開設した人権差別問題ホットラインの結果を公表して、記者説明会をしているところの写真があって。ここから、けっこう怖い話が始まっている感じがします。

医療従事者や介護施設の職員などから「職場でワクチンを拒める雰囲気がなくて、接種しなければ退職などを求められる」とか、「ワクチンを打ちたくなければ、ここでは働けないと言われた」ということで……ワクチン接種の強制に関する相談が多数寄せられた、というニュースになっています。

いろいろ事例があって、看護学生さんの「ワクチンを接種しないと実習させてもらえず、単位も与えられないなどと言われて、強制されている」であるとか、医学部生が「ワクチン接種しなかったところ、医学部の寮担当の教授から呼び出されて自主退寮を勧められた」とか、そういう事例があるということです。
日弁連の川上人権擁護委員会委員長が「ワクチンを打つ・打たないというのは、自らが判断することが出来て、その判断は尊重されなければならず、打たなかったからといって不利益を被ることがあってはならない。現場では、それが充分に考慮されていない実態があるのではないか」とおっしゃっているということです。

これが話題になって、そのあとテレビでも「ワクチンを打ちたくないのにも関わらず、打てという空気を出された」とか「打たざるを得なかった」と、看護師の方が匿名でインタビューに答えられたりして。いま、けっこう盛り上がっているという状況なわけです。

いろんな論点があると思うんですけども、ざっくり皆さんと話し合いながら、2、3記事を用意しているので、進んでいきたいと思いますけど……どうですか、これ?
じゃあ、こびナビのアペタイザーこと安田先生から行きましょうか。


医療従事者の「職業倫理」として考える

安川康介
アメリカではもう決着がつきつつあるのかな、という議論だと思います。
というのは、雇用機会均等委員会(EEOC)というところがあって、ここが5月28日にコロナワクチンに関するガイダンスみたいなものをアップデートしています。基本的に、経営者、雇用側は「コロナワクチンの接種を義務化してよい」といっているんです。あと「インセンティブも与えていい」ともしています。ただし、障がいですとか宗教上の理由など、除外基準は認められるということです。

▼雇用機会均等委員会
https://www.eeoc.gov/newsroom/eeoc-issues-updated-covid-19-technical-assistance

木下先生が次に取り扱うと思うのであまり深く話しませんけれども、実際に、テキサス・メソジストという医療グループが、医療従事者にワクチン接種を義務化し、それに反対したナースが訴訟を起こして、それが退けられた、みたいなことが起きています。

もう僕の病院でも義務化が始まりますね。他のいろいろな病院でも義務化が始まっていますし、病院だけでなくて学生などでもです。ジョージタウン大学、僕はそこの教員なんですが、「キャンパスにいる人は全員、8月何日までにワクチンを受けなきゃいけない」だとか、メリーランド大学でも同じようなことをやっていて。アメリカでは「義務化がどんどん進んできている状態だ」ということを、まずお伝えします。

木下喬弘
ありがとうございます。
日本で何かコメントありませんか。岡田先生、しゃべれますか?

岡田玲緒奈
難しいですけど、これはやはり、医療従事者や医療系の学生なんかと一般の方を分けて考える必要があると思うんですよね。リスクが高い人たちと接するわけですし、もしそこから院内クラスターが発生したとしたら大変なことになるんですよ、病棟を閉鎖したり……そういうことを考えると、この「個人の信条で」というのはなかなか許容しにくいのかな、と僕個人としては思っています。

木下喬弘
ありがとうございます。そういう論点になってくるかなと思っています。
(ワクチンを)打つというのは「個人の選択である」という、日弁連の方々のおっしゃることはその通りだと思うわけですけれど、打たないという選択をした時に、その方が感染し、かつ誰かにうつすリスクがあるということも、事実なわけですよね。それがどの程度許容されるのか? ということが問題になるんだと思います。

医療従事者というのは、職業柄、新型コロナウイルス感染症にかかった人を診療する可能性が常にあるわけで、かつ患者の安全を守るということが、職業倫理上の、すごく重要なポイントになっているわけです。そういう人がワクチンを接種しないことで感染をし、かつ患者に感染させた時に、その医療従事者個人の打たないという選択の自由を尊重してよかったという話なのか、どうか。そういうところが論点になるというところかと思います。

安川先生に「アメリカでは既に決着している」というふうにおっしゃっていただきましたけど、実際、これが裁判になっている……というところで、次の記事の紹介に行きたいと思います。

Texas Hospital System Can Require Employees to Get Covid-19 Vaccine, Judge Rules
https://www.wsj.com/articles/u-s-judge-in-texas-says-hospital-system-can-require-employees-to-get-covid-19-vaccine-11623613922
出典:The Wall Street Journal 2021/6/13

これも、日本でもご存知の方がけっこういらっしゃると思いますけど、病院が「自分のところで働きたければ、ワクチンを打ってください」と求めたところ、接種したくなかった看護師から訴訟を起こされて、テキサス州で裁判になりました。結果的に、病院側が勝訴というか、主張が認められて「ワクチンを接種するのは安全な医療を提供するために必要なことである」という判断が出て、「従業員に対してワクチン接種を求めることができる」となったようです。
この判決が出たからか因果関係はちょっとわからないですけど、判決の頃から、アメリカのさまざまな病院でワクチン接種を義務化する動きが進んでいる、という状況かと思います。

一応、この記事に書いてある「例外」、例えば接種をしたくないという人がいたときに、こういう例外であれば認められる、というのが2つ書いてあります。

●妊娠している方
●宗教上の特別な理由

妊娠してる方に関しては、我々も何度も情報提供してますし、特別に何か危険であるということでは全くないです。我々としては「妊婦さんのワクチン接種のリスク」って、本当に存在するのかどうか非常に曖昧で、おそらく、メカニズム的には「妊婦だから」といって特別にあるわけではないだろうと思っています。実際に妊娠して出産した女性のデータを見ても、自然流産率とか死産とか先天奇形とか、そういった割合は自然発生率を全く超えていませんから、「接種してもいいでしょう」という情報を出しているわけです。
ただ、長期の安全性が確認されていないことに対する不安を持っている人、とくに妊婦さんに対して、自己決定の自由を奪うのは非倫理的だという、裁判所の判断なのだと思います。それで「妊娠している女性は除外される」と。

※編集注:こびナビでも幾度か触れておりますが、現在妊婦の方々へのワクチン接種は推奨されております。

もう1つが、「宗教上の理由」ということで、これは難しい。そういうことを言い出すと、「私は宗教上の理由で打てません」なんて、いくらでも言えるような気もするわけですけど。

その2つが「除外基準」になっているというところが、ニュースになっています。
安川先生、どうですか?

安川康介
さっきは非医療従事者も含めた全体のお話をしたんですけれども、医療従事者に限っていえば、その義務化は当然の流れになってくると思います。

僕も去年から、新型コロナウイルスの患者さんをずっと見てきて、本当に怖い病気なんです。とくに高齢の方ですと、感染した時に亡くなってしまう確率が10%超えてきますので……僕が常に病院で診ている患者さんって、基礎疾患が複数あるんですよね。なので、実際に新型コロナウイルス感染者の方も診療していて、怖かったのが「自分が感染して、自分は重症化しなくても、患者さんにうつしてしまう」ことで、本当に恐怖の中で働いていました。

本当のことかはわからないんですけども、最初の記事のように医学生の方の例だとか看護師で打ちたくないという方がいます。
ただ、今回の、メッセンジャーRNA ワクチンは、安全性がかなり高い、つまりリスクは非常に少ないということもわかっています。その「非常に少ないリスク」を取らず、一方で、自分が感染してうつしてしまった患者さんが亡くなる率はかなりあるのに、そのリスクを許容するのであれば、もしかして、医療の分野に進まない方がいいのでは? 別の、ワクチンが義務化されてないような分野で働けばいいのでは? と思ってしまいます。

もともと医療従事者は、インフルエンザや MMR(おたふく風邪、風疹、麻疹)、B型肝炎のワクチンは接種しなければいけないんですよ。インフルエンザは毎年接種しなくてはいけなくて、僕もアメリカに来てからは毎年、すでに十数回打っていますが、雇用側に接種済のカードを提出しなくてはなりません。ワクチン接種することは「普通のこと」と考えていいと思いますし、新型コロナウイルスのワクチンも接種が義務になるのは当然なのかなと思っています。

木下喬弘
踏み込んだところまで、ありがとうございます。
峰先生、いかがですか?

峰宗太郎
安川先生と同じような指摘を僕もよく言っていたわけですが、やはり「国民の皆さんが医療に求めているものは何か?」ということをしっかり考えて、義務感をもって医療従事者になるというのが、職業倫理かなと思うんですよね。

例えば、標準治療である手術を選択しないで、「金の延べ棒であなたの体を撫でることによってがんを治します」という人がいたとしたら、その人に免許を与えていいのか? という問題と一緒なんですよね。訳のわかんないことを言ったり、訳のわからないことをする人が医療の中に紛れ込んでいたら、これは多くの患者さん、国民にとって不幸になってしまうわけですから。

「国民に資する」「公衆衛生に資する」というのは、医師法にも書いてあることです。そう考えると、やはり標準的な医療からかけ離れたことをしない、リスクを患者さんに押し付けるような危険行為をしない、そういう基本的な職業倫理にかかってくる話になるのかな、と思って聞いています。
ただまあ、宗教的なことだとか信条の問題もありますので、あまりにも馴染まないようなら、そういう人には医療職は諦めていただくっていうのは、皆さんにとってハッピーかな、と思いながら聞いてる部分はありますね。

木下喬弘
重要なポイントはかなり出揃ってきたかと思いますけれども、やはり患者の安全を守る責務がありますし、職業選択の自由もありますので、どうしても「ワクチンを接種する」という考え方が自分に合わなければ、他の職業も選べるのではないか? みたいな話になっていると。じゃあ、その「他の職業」ってどこまでなのか? ということをちょっとだけお話したいと思うんですけど。

安川康介
あ、ちょっとその前に、すみません!
「宗教上の理由で受け入れない人」というのはどういうことか、日本にいる方だとちょっと分かりにくい方もいると思いますので、補足します。

たぶん「個人の信条」というのは、なかなか認められにくいと思います。それは各病院で認めるかどうかを審議することになると思うんですけども。
例えば、有名なところだとキリスト教の小さな派でクリスチャン・サイエンスっていうところでは、ワクチン接種を受けないという表明をしています。

宗教上の理由で思い浮かぶのが、インドネシアで中国のシノバック製の不活化ワクチンが入ってくる時に、「不活化ワクチンはハラールなのか?」とニュースで話題になりました。ハラールはイスラム教徒にとって「許されている食べ物、物質」ですけれども、豚のゼラチン質なんかが成分に入っているとハラールにはならないので、宗教上(接種を)受けられないことになります。
少ないんですけれども、宗教上ある特定のワクチンの接種は受けられない人、とくにアメリカだとすごく多様な人々がいらっしゃるので、ありえます。

※用語解説:ハラール=イスラーム法上で「許されること・もの」を指す

木下喬弘
ちょっとだけ補足しますと、全世界的なワクチン忌避の問題に目を向けると、ハラールはけっこう大きな問題です。イスラム指導者の方が「ワクチンは特別」みたいなことを言ってくれることで接種が進んだ……みたいなことって過去にもあった事例なんです。
実際、その問題は確かに、いまアメリカ含めイスラム教徒の多い国では重要な問題として上がってきているとは思います。
池田先生、どうぞ。

池田早希
私の勤務先のベイラー医科大学でも義務化されるんですけれども、そこでの学長の「言葉のリーダーシップ」がけっこう大事だったなあと思うんです。彼が言っていたのは、「医療従事者は、私たちの患者さんに最も安全な環境を提供する必要がある」と、先ほど安川先生がおっしゃっていたことなんですけれども。

あと、私たちの病院、大学には「科学的知見や新しい発見などを、教育だったり、医療コミュニティに還元することがとても大事だ」というミッションあります。そのためにも、そして、他の分野によい example(例)を提供するためにも、私たちが率先してこれを始めないといけない。例えば、私の孫の託児所などで安全な環境を提供して欲しいと思った時に、まず医療従事者自身が率先してやらなくては、その託児所に「ワクチン接種者を増やして欲しい」とか、そういうことを求められないではないか……みたいなことを言ってましたね。

木下喬弘
医療従事者のワクチン接種に関しては、アメリカでは義務化が進んでいく方向になってるということで……じゃあ、それをどうやって広げて解釈してるかってことをちょっとお話したいと思うんですが、その前に。

ちょっとだけ中休みみたいな感じで、岡田先生しゃべれますか?


 こびナビ Instagram Live ご紹介

岡田玲緒奈
はーい! これはCMです(笑)

木下喬弘
毎日の Instagram Live ありがとうございます。フォロワー1万人、おめでとうございます! せっかくなんでちょっと告知をお願いします。

岡田玲緒奈
私が毎晩 Instagram で、22時15分からの場合が多いんですけれど、15分から30分ぐらいライブで「質問に答えまくる!」ということをやっています。今日は特別ゲストを迎えて、21 時半から 30 分間やります!
ということで、ぜひ皆さん参加いただければと思います。セミの先生(峰宗太郎のこと)です。
※ 本予告は終了していますが、毎週月・木・土の22時15分頃から、Instagram のこびナビのアカウントでライブを行っています。

▼こびナビ Instagram 公式アカウント
https://www.instagram.com/covnavi/

木下喬弘
はい、ありがとうございます! ということで、我々で Instagram Live もやっていますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。


医療従事者“以外の”ワクチン接種義務化は?

木下喬弘
さて、話の続きをさせていただきたいと思うんですけど……患者の安全を守るためにワクチン接種を義務化するのなら妥当ではないか。少なくとも、アメリカだとそう判断されていると。
では、サービスを提供している相手に対して、「安全上の責任を負う職業って医療従事者だけなのか?」という問題が次に出てくるわけです。

これ、文化人放送局で、ちょっとだけ間違ったことを言っちゃったんです。アメリカでも介護施設でも義務化されていると言ったんですよ。これはごめんなさい、私が勘違いしてて。UK のニュースで「イングランドでも COVID ワクチンが compulsory(義務)になる」ということ、ケアホームスタッフに対して義務になるっていうことが、本当に、ほぼ同時期にニュースになっていたのです。
イギリスでは、介護施設におけるワクチン接種も義務になる。ほとんど同じ考え方だと思うんですけれども、介護施設、特別養護老人ホームみたいなところでは、そのサービスを利用してる方はガチガチのハイリスクなわけです。その方たちに施設の職員が感染をうつしてしまうことで、人の命を奪ってしまうリスクがあるので、これもやっぱり「安全を守るためには必要なことである」というふうに私も考えますし、UK でも実際そういう判断になっているということです。

そうすると、「この考え方って、いったいどこまで広げるのか?」という問題がけっこう本質的だと私は思っています。

まずは、医療者は患者のためにやらないといけない、介護施設の職員は入所している高齢者のためにやらないといけない。そう考えていくと、社会に暮らす一員である以上、自分が感染することで他人に感染させて、その結果、他者の生命に害を及ぼすリスクがあるわけですよね、生活している以上は。そういうリスクと、ワクチン接種をするかどうか、その決断をする自由というのは一体どこで折り合いがつくのか……ということが、かなり本質的な議論になってくると思うんですね。

次のステップでいうと、教育現場なんかがそうですよね、いまの時点ではこどもはワクチンを打てないですから。子どもといってもいろいろですけど、少なくとも 11 歳以下は世界中どこでも、正式に承認してる国はおそらくないと思います。そういった 11 歳以下の子どもたちを教えている学校の先生が、ワクチンを打たずに子どもたちに感染を広げてしまったとして、それは OK なのか、倫理的に許容されるのか、みたいなこともそうですし。じゃあ学校がダメなら次は……みたいなことって、どんどんどんどんステップが進んで。集団生活を送る生き物ですよね? 人間というのは。社会の中で生きている以上は、やっぱり他人から感染させるリスクある中では、いったいどこまで許容されるのか? みたいなことが問題になってくるんじゃないかなと思っています。

本質的なところはここかなと思ってるんですけど、残り3分で次の記事も基本的にはこの話かと思いますので、まず、このお話について皆さんのご意見をうかがえたらなあ、と思いますけれども、どうでしょうか。

安川康介
そうですね、これ、すごく難しい問題だと思います。
でも、アメリカでは先ほども言った EEOCのガイダンスみたいなものを含めて、経営者が「義務化する」という判断をしたら義務化できるということなので、今後かなり広がっていくんじゃないかと思います。例えば、スターバックスが「自分たちの従業員は全員ワクチンを受けさせます」ですとか、そういう流れになってくるのかなと思っています。

木下喬弘
ありがとうございます。他の先生、黑ちゃんしゃべれますか?

黑川友哉
そうですね、私も「経営者の判断」というのは大事だと思います。それってやはり、その会社自体が「どういうスタンスで社会に対して貢献しようとしてるのか」ということの見せ方にもなるかなと思ってますので。

あとはもちろん、いま事例として挙げていただいた「11歳以下の子どもを教えている学校の先生」では、相手にしている子どもさんは、どうしても守られにくい立場になってしまいます。そういう方と触れ合うような職業の方は、やっぱり基本的には打つことが推奨されるというか義務化されても、それは社会的にしょうがないのかなって考えちゃいますね。

木下喬弘
敢えて自分でカウンターを返しますけど、さきほどのお話では「職業選択の自由があるから、医療従事者にワクチン接種の義務化をしても、どうしても接種したくないという信条の方は、他の職業を選べるじゃないか」ということでした。ですが、どの職業も「他人と接する以上、そのリスクがある」とすると、その「職業選択の自由があるじゃないか」という議論が成立しなくなってくるわけです。
本当に、社会の安全と人権のトレードオフみたいなことになってきて、人権って、もちろん非常に重いもので、それをないがしろにしていいのか? という最初の日弁連のニュースのような主張も、それはそれで筋が通っているところもあると思うんです。これ、どうやって折り合いを付けていけばいいのか、考えないといけないですね、という話ではあると思うんですけども。

私は科学的に、日本で使用されてるメッセンジャーRNAワクチンは非常に安全性の高いワクチンで効果も高く、これだけ人の命を危険に晒し続けた新型コロナウイルス感染症で集団免疫を達成できて、ある一定の集団の中では(感染症を)ゼロにできる素晴らしいものだと思っていますので、これを接種しないということの責任も大きいとは思うんですけど。どうしていくかを考えないといけないと思ってます。


「ワクチン接種」論争の本質とは何か

木下喬弘
最後に、僕は論点として挙げたいのは、この「打ちたいですか? 打ちたくないですか? 打ちたくない自由も存在しないといけないですよね」という議論って、まだ早いんじゃないかなって思ってまして。やっぱり、打ちたくない人を尊重するということはその通りなんですけれど、本当に突き詰めていくと「なぜ打ちたくないんですか?」ということだと思うんですよね。

打ちたくないその理由が、科学的に効果が証明されている、いまの時点で証明されている安全性についての理解が正しくされている、「メッセンジャーRNAワクチンの副反応は、熱が出るとか接種部の痛みや腫れ、そういう軽度のもので、数日内に収まる」、「アナフィラキシーが存在する。ただ、非常にリスクが低くて100万回あたり4.7回とか2.5回といった頻度である」、「心筋炎という病気は因果関係があるんじゃないかということがわかりつつある」けれども「ほとんどが軽症で、コロナに感染して発症する心筋炎に比べると、重症化は明らかに低いでしょう」という話だとか、そういうことを全て正確に理解した上で、それでも「打ちたくない」と言ってるのかどうか? が本質的な問題だと思うんですね。

この「ワクチンを打ちたくない人の自由を守れ」というその議論は、それを世の中で巻き起こす前に「なぜ本当に打ちたくないって思ってるんですか? ちゃんと向き合ってますか?」っていうところが本質だと思っています。
とくにメディアがこの問題を取り上げてくれて、しばしばテレビとかで流れていたりします。けれど、その前にいま一度振り返って、「ワクチンの安全性評価ってどうやってるんですか?」とか、例えば「遺伝子が組換えられるだとか、不妊になるだとかは誤情報です」みたいなことを真剣に伝えてくれているのか? というのも、本質的な問題かなと思っています。それを理解した上で、個人の意思としての「打ちたくない」をどうやって守っていくのか、という問題じゃないんですか? というところが私の考えている、いま自分の中で持っている結論になります。

というところで、だいぶ人が減ってきちゃいましたけど(笑)
池田先生お願いします。

池田早希
ごめんなさい、せっかくいい感じにまとめてくださったんですけど。
ちょっと話が戻りますが、自分が消費者側だったら、やっぱり子どもは「安全なところ」に預けたいです。ヒューストンだと、もうみんなマスクを外して経済100%オープンという感じになっており、ヘアカットとかもやっぱりワクチンを打っている人に切って欲しいです、自分の安全を守るためにも。
あとは、マッチングアプリのフィルター機能で「ワクチンを打ってますか?」っていうのも出るようになっているだか、なるだかなので、自分としてもワクチンを打った人と接したいですよね、消費者としても。いろんな場面でって思いますね。

木下喬弘
ありがとうございます。安川先生どうぞ。

安川康介
僕もベビーシッターを探すウェブサイトを見ますが、皆さん、セールスポイントとしてワクチン接種完了者などと書いています。それは消費者側、子どもを預ける側としては、やはり「ワクチンを打っていない人よりも打っている人の方がいい」というのは当然だと思いますね。

木下先生の話に戻ると、僕もすごく同感です。新型コロナウイルスのワクチンに関しては、僕は「全員、絶対に受けなければいけない」とは全く思っていない。強制的に受けさせた方がいいなんて全く思っていないし、できませんよね。羽交い絞めにして三角筋にいきなり筋注(筋肉注射)するなんてできないので、それはないんですけれども。

メディアには影響力がありますので、いまこの時期に「ワクチンハラスメント」なんて言葉をお披露目して「受けない自由」について話すよりも、その時間を使って、ワクチンの有効性、副反応の度合い、有害事象と副反応の違い、そういうことをていねいに説明する方が、遥かに有意義なんじゃないかなと思います。

もちろん、その上での受けない人をどういうふうに考えていくかというのは、すごく重要なポイントだと思うんですけども、社会的には、いまもっと重要な課題があると思いますので、メディアの方はどういうトピックを扱うかを慎重に検討していただきたいなってふうに思います。

木下喬弘
安川先生にも池田先生にも同意いただいたというところかなと思います。

実際、そうやってワクチンの理解が進んで、どの程度人権が守られながら接種されたかわからないですけど、イスラエルでは実際に1日あたりの感染者数が1桁になって、ワクチンパスポートすら廃止してしまっています。うまく接種が進んでいくと、ワクチンを「僕は打ちたい、打ちたくない」「あなたは打ったの?打ってないの?」みたいなことが“問われなくなる世の中になる”、それが目指せるんじゃないかというのが僕の考えている結論になります。

※編集注:この状況はデルタの感染拡大のため変わってしまいました。

7分オーバーしてしまいましたので、こちらで終わせていただきたいと思います。
さきほど幹事の岡田から紹介させていただいた通り、毎夜 Instagram Live をやってまして、今日も21時半から峰先生をゲストに呼ん……ゲストって団体メンバーをゲストつってどうすんねん! て話もありますけれども(笑) ご興味のある方はぜひご参加いただければと思います。Instagram のこびナビ公式アカウントを見つけていただいて、そちらをフォローしていただければご参加いただけるかと思います。

本日はここまでさせていただきたいと思います。ご登壇いただいた先生方ありがとうございました! それでは日本の皆さん、よい一日を! バイバイ!

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