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ワクチンのブースター接種、ワクチンに関するコミュニケーションについて議論しました(9月15日こびナビTwitter spacesまとめ)

※こちらの記事は、2021年9月15日時点での情報を基にされています。※

2021年9月15日(水)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:安川康介


峰宗太郎
はい、皆さん、こんにちはー!!👶
あれ? 安川先生いないですね。
……っていうか誰もいないのに私が喋っていいんでしょうか?
誰かが来るまで私が雑談をします。
あ、ばりすた先生、こんにちは。

ばりすた先生
あ、こんにちは、おはようございます。

峰宗太郎
元気ですか?

ばりすた先生
お陰様で元気にやらせていただいています。

峰宗太郎
そうなんですね。先生はあれですか?
週6日間勤務?週5日間勤務ですか?

ばりすた先生
一応週5日間、時々週6日間みたいな感じですかね。

峰宗太郎
あ、そうなんですね。
外来と入院と両方診られているんですか?

ばりすた先生
普通にまあ……まあ、そんな感じですね(笑)

峰宗太郎
ちょっとなんか個人的に探ろうとしてるんじゃなくて、どんな働き方してるのかな? 👶と思っただけです(笑)

ばりすた先生
(笑)
あ、黑川先生もいらっしゃった。

峰宗太郎
黑川先生は週5日間働いていますか?

黑川友哉
私は週5日間は大学で勤務で、うち4日間が臨床試験の支援をやる部門でマネジメント業務、1日は臨床で耳鼻咽喉科の外来をさせてもらっていて、あとは当直もやらせてもらっています。
土曜日は基本的に外勤を午前中やらせてもらってるって感じですね。

峰宗太郎
手術とか全然してない感じですか?

黑川友哉
手術、全然してないです。
手術をやるとやはり病棟の管理とか、急変した時に病棟で対応しなきゃいけないことになりますが、私はそこに責任を持てないということで、外してもらっています。

峰宗太郎
なるほどー、日本らしい。
日本は執刀医が最後まで責任持ちますよね。

黑川友哉
そうです。

峰宗太郎
僕、頭頸部外科志望だったんで、学生の時はよく咽喉食摘小腸置換代替皮弁再建法とかで、15〜16時間かかる手術を最初から最後まで入らせてもらって、最後に閉めたりするのをずっとやらせてもらったりしてました。

黑川友哉
深夜に(笑)

峰宗太郎
そろそろ安川先生に引き渡したいと思います。
安川先生、前座を温めておきました。

安川康介
ありがとうございます。だいぶ温まっている感じですね。

峰宗太郎
ええ、かなり温まってまして、いつでも始めていただいていい感じになっております。

安川康介
分かりました。
皆さん、最近どうですか? お元気ですか?
あ、リスナーに池田先生がいらっしゃいますね。
池田先生も久しぶりにお誘いしたい。大丈夫かな?

そろそろ8時30分になったので、始めていきます。
皆さん、おはようございます。
アメリカのワシントンD.C.で内科医として働いている安川康介です。
本日のこびナビのモデレーターを務めさせていただきます。

日本のワクチン接種率が5割に達しました。

こびナビの活動を始めた当初、日本の接種率がどれくらいまで行くのか分からなかったんですが、これは1つの大きな到達点です。
これに関して何かありますか?
ワクチン忌避の問題もあるので、どうなるかなと思ってたんですけども、順調に半数まで行って、1回接種した方がアメリカを超えてしまったという状況があります。

峰宗太郎
これ、ちょっと自慢していいですか?👶
3月に「なんでこんなに、日本のワクチンの開始が遅いんだ?」という論調があったことを覚えてます? 実際に3か月くらい遅くて。
その時のインタビューで、僕「日本は順調に接種が進めば8月か9月ぐらいにアメリカを追い抜かすキャパシティがあるので、全然慌てなくていいですよ」とちゃんとインタビューに答えてるんですよ。

安川康介
その通りになりました。

峰宗太郎
なりました。
本当は内心すごくひやひやしていたので、予想が当たってホッとしていたところでございます。

安川康介
そうですね。

峰宗太郎
なんでそう思ってたかというのはいくつかあるんですけど、1つは、やはり日本人って医療機関とか、医療行為を受けることが大好きだと思うんですよ。
その差が大きいんじゃないかなと思っています。
アメリカの方って結構セルフメディケーションとか我慢しちゃうとか、そもそも関心ない人多いじゃないですか。
でも日本人って(医療従事者の負担は多いんですが)、個々人で「病院に来てね」って言われた時、健康を求める行動力はすごく高いと思うんです。
それが良い方向に転んだかなと思っていました。
ごめんなさいね。長くなっちゃって。

安川康介
いや、ありがとうございます。そうなんですよね。
アメリカってワクチンに強く反対されている方が、2割弱いると言われていて、日本でどんな情報を提供されてもワクチンを受けたくないという方は、調査結果では本当に数%ぐらいしかいないので、ひょっとすると結構今後も進んでいくんじゃないかと思っています。


最近の新型コロナウイルス関係情報アップデート

僕の回では、ひとつのトピックをずっとやるよりも、いろいろ話した方が聞いてる方が面白いんじゃないかと思っています。
まず最初、ニューヨーク・タイムズの COVID-19 Live Update を見て行きます。

▼Covid Updates
https://www.nytimes.com/live/2021/09/30/world/covid-delta-variant-vaccines?name=styln-coronavirus&region=TOP_BANNER&block=storyline_menu_recirc&action=click&pgtype=LegacyCollection&variant=1_Show&is_new=false
出典:ニューヨーク・タイムズ 2021/9/15

アメリカ陸軍にいる方が12月15日までに全員ワクチン接種するようにするという発表がありました。
イギリスが冬に向けての COVIDー19 プランを発表し、50歳以上にブースター接種を考えているということを、今日首相が発表しました。
ブロードウェイがずっと閉まっていたんですが、再オープンします。
プーチン大統領がコロナウイルスの濃厚接触者になって、今隔離中です。
というようなニュースがあります。

他にも結構面白いのが、キューバが2歳の小児のワクチン接種を開始するという発表をしました。今まで中国とかアラブは3歳までのワクチン接種を行っているみたいですが、2歳は世界最年少ということになります。
面白いのが、キューバは小さい国なんですが、独自のワクチンを開発しています。
ソベラナ2と、ソベラナプラスという2つのワクチンがあり、論文という形にはなっていませんが、ソベラナ2が有効率が60%ぐらい、ソベラナプラスが90%ぐらいと言われています。ただ、査読付きの論文として学術雑誌に発表されているわけではないので、透明性はどうなんだという批判はあるみたいです。
ソベラナ2をちょっと調べたら、結構面白い仕組みをしていて。
破傷風菌の毒素に新型コロナウイルスのスパイクタンパクの一部をくっつけているような仕組みで、結構面白いワクチンの構造をしています。

来週、Global COVID-19 Summit があるんですが、そこでバイデン大統領が「世界全体でワクチン接種率70%を目指していこうと表明することを考えている」というようなことが書かれています。

このように色々動きがあって、毎日新型コロナウイルスワクチンに関しては、新しい情報が出てるんですが、何かこういう面白いことがあるよ!みたいな方いらっしゃいますか?
遠藤先生、話せますか?

遠藤彰
そうですね。
すごい最近というか、数時間前ですが、イギリスの PHE(英国公衆衛生庁)から、新しいデータが出てきました。
ワクチンの長期の waning(接種してから数か月経った後の効果はどうか?というもの)ですが、イスラエルなど複数のデータで、ワクチン効果は長期的には下がるみたいですと言われていました。PHE のデータも、これまでだいたい見えてきていた知見と基本的にはそんなに差はありませんでした。
発症予防効果で、ファイザーで90%〜95%あったものが、2回目の接種から4か月半ぐらい経つと70%ぐらいになる、アストラゼネカは、70%ぐらいあったものが50%ぐらいになるという結果が出ています。
ただ、入院の防止、死亡の防止については、4か月半経っても、90%ぐらい、あるいはそれ以上が保たれているという結果が出ていました。

安川康介
ありがとうございます。
まさにさっき遠藤先生のツイートで知って、少し読んでいたところです。

▼話題になっているツイートは以下のものです
https://twitter.com/john_actuary/status/1437798693726523392?s=21


「ブースター」の是非で揺れる米国

安川康介
今日は、まずブースターについて話したいと思います。

▼In a new review, some F.D.A. scientists and others say boosters aren’t needed for the general population.
https://www.nytimes.com/2021/09/13/health/covid-vaccine-booster-lancet.html
出典:ニューヨーク・タイムズ 2021/9/13


今アメリカでまさにブースターに関して揺れているよ、というお話です。

実は、2週間前に、新型コロナウイルスのワクチン審査に関わっていた FDA(アメリカ食品医薬品局)の幹部2人が辞任を発表して、アメリカでは話題になったんです。
生物製剤評価研究センターのワクチン研究審査局長マリオン・グルーバー博士と副局長フィリップ・クラウス博士の2人が辞任を発表しました。おそらく最大の理由は、ブースター接種に関してホワイトハウスと意見が分かれているということだと言われています。

以前、こびナビのスペースでもホワイトハウスと CDC(アメリカ疾病管理予防センター)が9月20日以降に、2回接種してから8か月経った人のブースターを検討しているというようなお話をしました。
FDA が審査する前にホワイトハウスがブースター接種の目標を設定してしまったことが結構問題になって、こういう決断に関しても、今回辞任した2人は反対したのではないかと言われています。
実際に、クラウス博士とグルーバー博士は、他の研究者の方と一緒に Lancet(医学雑誌)の Viewpoint(視点)というセクションに9月13日付で論文を発表しています。

▼Considerations in boosting COVID-19 vaccine immune responses
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)02046-8/fulltext
出典:Lancet 2021/9/13

まさにブースター接種に関しての意見なんです。
この論文を詳しく見ていくわけではなく、長いので簡単に論点をまとめると、以下のような点が書かれています。

(1)無症状の感染を含めた感染予防効果や発症予防効果が薄れてきたと言われていますが、遠藤先生がおっしゃったように、重症感染や入院を予防する効果というのは高く保たれている。
現時点での科学的根拠を見る限り、一般の方(general population、おそらく免疫不全が無い方、特殊な population じゃない方)に関しては、ブースターは不要なのではないかとしています。

(2)ブースターのリスクである副反応について、そこまでよくわかっているわけではない。
メッセンジャーRNAワクチンでは、稀ですが心筋炎、アデノウイルスベクターワクチンでは、例えばギランバレー症候群が起こることが知られているので、もしブースターによってこうした副反応がより問題になってくるようであれば、コロナワクチン以外のワクチンを含めた「ワクチンへの信頼」が低下してしまうのではないかという懸念が書かれています。

ギランバレー症候群や心筋炎に関しては、こびナビでも今まで詳しく触れてきたかと思います。

この記事では他にも、
⚫色々な研究結果を見ても、現時点で「重症感染の予防効果が大幅に下がっている」という研究結果はない(一昨日の木下先生の話に関係しますが、ワクチンの効果に関して、今いろいろな観察研究と呼ばれる種類の研究結果が沢山発表されていますが、こうした研究によって、正確にワクチンの効果というのを検証するのは難しいということです)

⚫ブースターよりも、やはり「ワクチン未接種の人に優先的にワクチンを回したほうがいい」というような主張が書かれております。

ブースターはすごく難しい問題だと思います。
科学的根拠が全部出揃うのを待っていると、それだけで死亡者が出てしまうかもしれないという意見がある一方で、今回のように科学的根拠が全部出揃うまでは慎重にいこうよ、みたいな意見もあります。
どこまで社会で感染流行のリスクや、ワクチンのリスクを取るのかという話になってきます。多分、日本でも今後議論されていく話題だと思います。
峰先生、何かありますか?

峰宗太郎
まず、その話に入る前にソベラナとソベラナプラスというワクチンは優秀なんですが、実はキューバにはもう1個、アブダラというワクチンがあるんです。
これがまた優秀らしくて、データが公開されてないんですが、有効性92%ぐらいという話が出ています。
こちらも組換えタンパク質ワクチンなんですが、キューバの開発力、これすごいな!と思って、僕もずっと調べてるんですよ。
聞くと、アメリカに学びに来てた先生方がキューバに帰って、アグレッシブにワクチン外交するための研究資金を与えられて研究しているって話も聞いてまして。

安川康介
そうなんですか!🥦

峰宗太郎
これはまあ、余談でした。
まじめな話に戻ります。
ブースター接種は僕も最初に、色々な人から質問された時に、全く同じようなことを思っていました。

この Lancet の論文にも出てくるものなんですが、いわゆる科学的根拠が不十分で、特に安全性情報が全く出てない段階で、ホワイトハウスとアドバイザリーボードが独自で、あそこまで突っ込んだ話をしたことについては、疑問だったんですね。

基本的に、感染予防効果は確かに差があり、それは抗体価が下がってくれば、相関して下がってくるということは以前から言われていたわけです。
一方で、重症化予防効果や発症予防効果はそんなに言うほどは下がってないんですよね。

そういう状況でブースターって、特にアンソニー・ファウチ博士を中心として、CDC長官ワレンスキーさんもそうなんですけど、途中から結構前のめりになりましたね。
これを見ていると、ちょうどブースターの議論に行く前に、デルタ変異体のすごい流行が始まって、CDC がとったノン・マスク政策が緩和方向に揺れすぎてしまったということに対する反動的な反省があるんじゃないかと、僕は深読みしちゃったんですよ。

つまり、今までリスクを取りすぎたので、ここは締めすぎる方向にした方が、その先のパンデミックを締められると、アメリカの公的機関は考えたんじゃないかなっていうところをちょっと疑っているんですよね。
こう言う背景もありますので、日本ももし第5波の最中だったら、確かにブースター接種イケイケドンドンみたいな話になったんですよ。
実際には今治まりつつありますから、色々な、流行のリスク、クラスターの発生状況、特に医療従事者にクラスターが今後本当に発生しやすくなるのかといった点を見ながら慎重に話をしないと、以下の2つの観点から問題になってきます。

(1)安全性の問題
安川先生が紹介してくれたように、3回目必ず副反応が出ますし、その頻度はよく分からないです。
そこにさらに交差接種の話が入ってくると思うんです(違う会社のワクチンを3回目に打ってもいいかという話ですね)。安全性については、慎重にならなきゃいけません。

(2)全世界へのワクチン供給
この点について、WHO(世界保健機関)が懸念しています。
今日「2022年の半ばまでに70%を目指したい」という目標が発表されました。
この目標を達成するためには、とにかく1回目、2回目を打てる人を増やさなければいけないわけで、その割り振りを考えると、ブースターを先進国だけが優先的にやってしまうということは、世界的に公平なのかという視点からも話をしなきゃいけません。

私ももちろん自分の経験なんてものは全然ないわけですが、安川先生がこの話題を取り上げたということで、非常に興味をもって聞いています。

安川康介
ありがとうございます。
久米さん、入っていただいてるんですが、今話せますか?

久米隼人氏
はい、お疲れ様です。
僕も実はアメリカがなんでこんなにブースターをやりたいのか分かっていなくて。
⚫単純に感染自体を抑えたい
⚫マスク義務をやめたいから、とにかく感染者を減らしたい
ということもあるでしょう。

さらに深読みすると、
⚫ファイザーなどの製薬企業の経営的な部分を考えると、ブースター接種をやってくれた方がいいので、プッシュを受けている
⚫世界でブースター接種が当たり前になれば、アメリカはワクチン覇権を持っているので、そういう力がもっと強くなる
とか、色々勝手に考えています。
結局のところ、よく分からないので、僕も峰先生、安川先生のように、今なんでそういう感じなのかな?というのをよく見ている状況です。

安川康介
ありがとうございます。
まあ、やはりブースターというのは難しくて、社会で何を目指すのかということにもかなり大きく関わってくると思うんです。
もし感染者(発症する人)を本当に減らしたいとか、感染者数をできるだけ減らしたいなら、ブースターはもしかしたら合理性があるかもしれません。
もし死亡者を減らすということを最低目標にするんだったら、今はほとんどの方には必要ないかもしれないということになります。
ただ、高齢の方、免疫不全がある方に関しては、重症感染予防効果も落ちてくるのではないか? みたいな情報が出始めているので、やはり少し慎重にみたいと思います。

あと2つ記事を用意してるんですが、多分ゴリラのワクチンの話(注)には行けないと思います……🥦

(注)動物のコロナワクチン  ※今回は時間の都合で紹介されていません
https://www.washingtonpost.com/nation/2021/09/12/zoo-atlanta-gorillas-coronavirus-vaccine/

内田舞
安川先生、2つ目に行く前にちょっと意見させていただいていいですか?
ゴリラの話もすごく聞きたいんですけど(笑)。

峰先生がおっしゃった途上国への公平供給に関して、私はなかなか難しい問題だなと思っています。

もちろん世界のために先進国ができるリソースの供給は非常に重要だと考えておりますし、世界的なパンデミックを収めるためには、より多くの世界の人が1回目、2回目を打たないとこのパンデミックはなくならないということは明らかなので、それは非常に重要です。

それと同時にちょっと難しいなと思うのが、コロナ感染に関しては、先進国の国民の行動と移動が発端となって爆発的に世界的な感染拡大を起こしてしまったもので、これからも先進国の国民が(複数の国の間などを)動くことで感染が止まらなくなるのではないかという懸念もあると思うんです。
そういったことを考えると、先進国内の感染を抑えない限りはパンデミック終わらないという考え方もできるので、その場合は、先進国の感染を抑えるためのワクチン供給を先進国内でやる方が実は世界的なパンデミック抑えるために必要なんじゃないかという、そういった考え方もできます。
公平供給は非常に大事、でも、全世界で新型コロナウイルス感染症を収めるために何が必要なのか? なかなか難しいです。

それからやはりこのワクチンに関しては(発症であっても感染であっても)予防するものでありますので、「様子を見てから」ということでクラスターが起きてからの対応では、やはり残念ながら遅すぎる対応になるっていうこともあります。

アメリカで一番最初に接種したのは、コロナの感染症の治療に最戦線で関わっていらっしゃる医療者の方々、例えば安川先生、池田先生などが、もうすでに接種から8か月以上、もう9か月経っているところです。「様子を見ましょう」といったところで、様子を見られることになるのは、最前線でコロナと戦ってくださっているお医者さんだったり、ナースだったりなんですよね。
様子を見て、その方々が感染してしまった、それに合わせて「3回目のブースターを打ちましょう」では、それはせっかく頑張って戦ってくださっている方々に申し訳ない、さらにこの医療者たちなしでは次の波は戦えないので、社会的機能的にも影響が出る政策になってしまいます。そういったところも、未来が見えないっていうこともあって、難しい判断だなと思っております。

安川康介
ありがとうございます。
そうなんですね。
ブースターを主張している方は、やはり「科学的根拠が出揃ってから打とうよ」ってやってると、それだけ死亡者が増える可能性が高いので、そうなる前にブースターをしていきたいという話ですね。
これはこの前のホワイトハウスのブリーフィングでもやっていたかなと思います。


「ワクチン受けた?」って聞いていい?

安川康介
残り7分なので、2つ目の記事についてお話して、ゴリラのワクチンはもう完全に話せなくなってしまいましたので、また今度話そうと思います🥦

このスペースを聞いてくださってる方は、ワクチン接種を完了している方が多いと思うんです。僕の周りの友人も全員受け終わっている状況です。

このこびナビのスペースでは、本当に色々なことを話してきたと思うんです。
ワクチンの基本的なことから変異ウイルス、あとはメンタルヘルスの問題、ワクチン接種後の死亡をどう考えるとかですね。ほぼありとあらゆることを話してきたんじゃないかと思いますが、実はまだあまり話してない領域があるので、今回はそこをちょっと突いていきたいです。

英語のメディアにはいくつも記事があるんですが、日本だとまだあまり議論されていない領域になります。
ニューヨーク・タイムズの6月22日の記事があります。

▼How to Have the Hard Vaccination Conversations
https://www.nytimes.com/2021/06/22/well/family/employee-vaccine-status-questions.html
出典:ニューヨーク・タイムズ 2021/6/22

このニューヨーク・タイムズの記事は、他の人にワクチンを受けたか聞いていいのか、それを聞いてどう行動すればいいのかを生命倫理学者、疫学者、弁護士、エチケットの専門家に聞いてみたという記事になります。
こちらをもとに、ワクチンについての難しい会話をどうするかとか、他の人にワクチン接種したか聞いていいのか、みたいな話を残りの短い時間でさらっとしていきます。

(1)誰に対して「ワクチンを受けた?」と聞いていいのか?
その人がワクチンを受けたか受けてないかで、その人と何をどうするか(例:屋外/屋内で会う、マスクをする/しない、など)が変わってくる場合は聞いてもいいのではないか、と多くの専門家は考えているということでした。
聞くことはできるのですが、ただし、慢性疾患や妊娠のように、ややプライベートな情報となりますので、誰もあなたに答える義務はない、と書いてあります。
例えば、学校で親が自分の子どもの先生に直接「ワクチンを受けているか?」と聞くことはできますが、その先生は答える義務はなく、学校はその情報を多くの場合シェアできないです(この先生は受けてませんとか、この先生は受けてますということは答えられません)
ただ、先生のワクチン接種率については公表できることがあります。
例えば、僕の子どもが行っている学校では、校長先生から「先生を含む従業員の90%はワクチン接種してますよ」みたいなことを僕自身も言われたことがあります。

(2)どのようにこのような話題を持ち出すのか?
情報をシェアして欲しかったら、自分からまずシェアすることが重要です。
今回のニューヨークタイムズの記事だけじゃなくて、他にもウォールストリートジャーナルとか、いろいろなところに書いてありました。
どうやって切り出せばいいのか、どうやって聞けばいいのかっていうのは、あまり正解がないところだと思うんですが、「もし相手のワクチン接種状況を聞きたい場合は、まず自分から言ってみる」ということが、具体例と一緒に色々な記事に書いてあり、参考になりそうでしたのでご紹介させていただきました。

ご意見が有る方がいたらぜひお願いします。

内田舞
ワクチン接種に関しては、個人医療情報ではあるんですが、これは他の個人情報とはちょっと違うのが、「その人がワクチン接種しているかいないかによって、私自身や私の家族の安全と健康が変わる」っていう点ですね。
私が話してる人が糖尿病であっても、糖尿病でなくても私には影響がない。
私が話してる人が妊娠していても、妊娠していなくても、私に直接の健康的な害や影響はないです。
一方で、ワクチンを接種しているかしてないかによって、私と私の家族に本当に直接的な影響があるわけなんですよね。

以前、ラジオで Your freedom ends with my safety(貴方の自由は、私の安全と共に止まる)と言っていた方がいました。例えば車を運転していて「スピード出すのも自由じゃないか」と言ったところで、制限速度があるのは、それは「あなたの自由が他の人の安全に脅威を与える、だからあなたの自由はそこ(他の人の安全に影響を与えたところ)で終わる」という言い方をしてたんです。

まさに同じようなものだと思っていて、接種する/しない、マスクをする/しない、感染対策をする/しないという判断に自由があるのは確かです。
でも、その自由が私の安全に影響を与えるのであれば、それは私からのコントロールがあっても良いのではないか。そういった点で私は相手の個人情報であってもワクチンの接種しているか/してないかは聞いてもいいものだと思っています。

私の子どもたちが行く学校で、私は校長先生に「もし接種をしていない先生やスタッフがいるんだったら、その方々は毎週定期的に検査をするんですか? 陰性証明をしてから学校に来るんですか?」と切り出しました。
これは検査が簡単にできるアメリカだから言える方法かなと思いますが、そしたら「私たちのスタッフは全員100%ワクチン接種しています」と校長先生が言ってくれました。
確かにちょっと婉曲に聞きたいですが、聞くことに関しては、私はそんなに遠慮しなくていいんじゃないかなと思っています。

安川康介
ありがとうございます。
登壇されている方で、他に実際に「ワクチンを受けた?」って聞いたことがある方とかいらっしゃいますか?
木下先生、話せます?

木下喬弘
聞いたことはないんですけど、普通に聞かれましたね🔥(笑)

安川康介
あ、ボストンでですね?

木下喬弘
いや、まだ帰ってないですけど、実は Boston University で秋にもう1回講演をやってくれって言われてるんですよ(実は去年も HPVワクチンの講演をしました)。
ハーバードにいた時に論文を書いているので、そういう取り組みを紹介して欲しいと Boston University の公衆衛生大学院のグローバルヘルスの教授に言われてるんです。
「今年はオンサイトで来れる?」と聞かれて「大丈夫です」と答えたら、「ワクチン打った?」って普通に聞かれました。
別に普通の会話として、なんか、そんなことみんな考えてるのかな?って思いながら聞いてました。

内田舞
ちなみに、それ「打ってない」と答えたら、オンサイトで授業できなかったんですかね?

木下喬弘
どうなんでしょうね?
まぁ、そうだから聞いてるんでしょうね。

安川康介
そうなんじゃないですかね。
アメリカの大学だと学生とか、キャンパスで働いている方、全員義務化しているところが多いので、もしかしたら講演に来る方も必須になるのかもしれないですね。

木下喬弘
ハーバードってワクチン義務化されていましたっけ?

内田舞
はい、ハーバードは学生も職員も義務化ですよ。ハーバードの学部生に関しては、ワクチンは義務化で、さらに毎週PCR検査で陰性証明をしなきゃいけないっていう、結構厳しい安全管理がされています。

病院に関しても義務化になりました。
私、ちょっとびっくりしたんですが、今週私の勤めているクリニックの受付さんが辞めることになって、それはワクチン義務化につき、自分は打ちたくないからやめますということだったんですね。彼女はちなみにリモートで働いていただいていたので、直接誰にも影響がなかったです。
確かにアメリカの中では、大学だったらアカデミックセンターや、医療機関では義務化が進んできている感じですね。

安川康介
ありがとうございます。
ジョージタウン大学も義務化になってますね。

もし時間があれば、ワクチンをためらっている人、家族とか友人にどう話せば良いのかっていうことも少し触れようと思ったんですが、時間がないので、ちょっと飛ばします。
この話題は、4月6日に僕がモデレーターをした回で少し詳しく話しているので、もし興味がある方は読んでみてください。
note に全部文字起こしされています。

〈参考〉4月6日の文字起こし
https://note.com/cov_navi/n/n863646e3b9bf

あとは、岡田先生と吉村先生がインスタライブを最近して、そこで「もしワクチンに反対する家族がいたらどういうふうに考えたらいいか、どう接したらいいか」ということを話していて、精神科医の吉村先生がすごくいいアドバイスをしていたので、もしよければそちらも見てみてください。

〈参考〉岡田先生と吉村先生のインスタライブ
https://www.instagram.com/tv/CTe7hL4Atz2/?utm_medium=copy_link

また次回、僕が担当する時にゴリラの感染とか、ペットとか動物に対するワクチンの話を少ししたいと思います。
最後に何か付け足しておきたい方いらっしゃいますか?
大丈夫ですか?


「自分がどういうアクションを取るか」を考えて

峰宗太郎
あ、1つだけいいですか?
今の話すごく大事なんですけど、実践しようと考えている方がいるとしたら、ちょっと慎重に考えていただきたい点が1点あります。
それは、相手の返答が何かによって、自分がどういうアクションをするか準備できていない状態では聞かない方が良いということです。
聞いて、もし相手が「ワクチン打ってない。私は打つつもりはない」と答えた時に、あなたはどういう反応が出来ますか? っていうことを考えてから尋ねるべき質問になると思うんですね。

(久米さんがいるところで喋るのもあれなんですが)某アメリカ大使館の某氏の送別会に私が行った時に、主賓の方が会場に入って来られなかったんですよ。
どうしてかっていうことになって、その人が入ってきた時に演説を始めたんですね。「私は免疫力があるからワクチンは打たないんだ」と言い出したんですよ。この時にね、周りの人がどういうふうに反応していいか分からなくて、本当にみんな固まっちゃって。

これは、本当に難しい話でですね。「それは危ないよ」って直接言うわけにもいかないですし、喧嘩になっても困りますし、ドギマギしちゃうんですよ。
そういう時に「どういうふうにこういう人を説得したらいいですか?」と言う人もいるんですが、説得するって問題でもない場合もあるわけです。
相手の距離感、その状況によっては「聞く」ということ自体が非常にセンシティブだということを念頭に、ただセンシティブなんだ、テクニックがあるよ、という話だけではなくて、実際にもし会話をしたら相手の反応によって、自分はどうするだろうか? ということを一度必ずシミュレーションしてから臨んでくださいね、ということを言いたいです。
結構そういう場面に何回か出くわしていまして、うちの研究所でも「ワクチンどうだった?」とかいう会話をみんなでしていたら、1人「いや、俺は打たない」という人がいたりするわけです。そのときに、会話は止まります。その後、すごい空気が流れます。

これだけは、本当に、皆さんよく覚えておいてください。
私も、いくら科学的な情報を広げるっていう活動をしていても、突然「いや、打った方がいいよ!」と言えるかというと、言えないんですよ。言うのは難しい。
そういう状況にもなり得るということだけは、どうか皆さん、想像してから会話に臨んでください。
生兵法で「私は安川先生からコミュニケーション手段を学んだ!」とか言って、周りにやたらめったら聞いてみるというようなことは、ぜひやめていただきたいなという、蛇足ながら1つのアドバイスでした。それだけです。

安川康介
ありがとうございます、重要ですね。
時間があれば少し触れようかなと思ったんですが、他にも例えば、プライベートで聞く(色々な人がいるところで聞かない)とか、どんな返事が返ってきても、ジャッジメンタル(一方的な判断を下すような感じ)ではなくて、淡々と聞くというようなことも重要になります。確かに反応ができなかったら、最初からそういう質問はしない方がいいかもしれないですね。

12分オーバーになってしまいました。
今日も2000人を超える方に聴いていただきました。
貴重なお時間ありがとうございます。
それでは、日本の皆様、良い一日をお過ごしください。
ありがとうございました。


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