新型コロナワクチンが無症状の感染を90%抑えるという研究が報告されました(3月30日こびナビClubhouseまとめ)

木下喬弘

(声に普段の張りがない)
日本の皆さんおはようございます。
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュースやっていきたいと思います。
今日はね、なんですかね、あんまりしゃべることがないですね。
え~っと、最近何してたかな。
とりあえず週末何していたかをちょっと今思い出していますけども。
あんまり思い出せない…なんか作ったっけな…。
1週間前くらいににビーフシチュー作ってからの記憶がちょっと僕あんまりないですもうダメですね…何食べたかもあんまり覚えてない…。
ちょっとあんまり今日は…

安川康介
大丈夫ですか?木下先生(笑)

木下喬弘
ちょっと……今日はね、キレのある始め方ができなさそうです。

安川康介
(笑)

木下喬弘
も~ちょっとね、さっきまでまたバタバタと資料整理していましてギリギリなんですよ今日の準備も。
ゆえにしゃべることをあんまり用意してございませんでした、すみません。
なんか、土曜日の昼くらいにペペロンチーノをもう一回作った気がしますね、そういえば。
まあまあでした、まあまあです(笑)ほぼ情報量がゼロ(笑)
まあこんな感じで今日も適当にやっていきますけれども、皆さんお元気ですか?

黑川友哉
元気でーす、ありがとうございまーす。
今日もよろしくお願いしまーす。

木下喬弘
はいよろしくお願いします(笑)。
今日は早速一つ目の話題に行きたいと思います。

Interim Estimates of Vaccine Effectiveness of BNT162b2 and mRNA-1273 COVID-19 Vaccines in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Health Care Personnel, First Responders, and Other Essential and Frontline Workers — Eight U.S. Locations, December 2020–March 2021
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7013e3.htm?s_cid=mm7013e3_w

アメリカで発症や重症化に加えて、無症状感染も防ぐエビデンスが出たということで、解説していきたいと思います。

ここまで新型コロナウイルス mRNAワクチンの有効性について、主に3つあると解説してきました。

①感染そのものを防ぐ効果
➁発症を防ぐ効果
③重症化を防ぐ効果
という3つです。

第三相試験、つまり治験では➁発症を防ぐ効果と③重症化を防ぐ効果の2つを調べていました。(重症化を防ぐ効果というのは、そもそも発生イベント数が少ないので結果が不安定にはなります。)
一方で、今まで➀感染を防ぐ効果自体はあまり調べられていないという話をしてきました。
イスラエルでの、ワクチンを接種した人60万人と接種していない人60万人の合計120万人を追跡して調べた研究では、接種した人はしていない人に比べて無症状の PCR陽性も含めて92%くらい感染が防げているということが明らかになっていました。
このことを元に92%くらいの感染予防効果があるのではないかといわれていました。

イスラエルの研究のすごいところは、年齢層や性別、アラブ系であるとか正統派ユダヤ教徒の方などの民族・宗教的なカテゴリー、そして過去5年間でインフルエンザワクチンを接種した回数まで、ワクチンを打った人と打ってない人の、ワクチンを打つまでの背景を揃えたという点です。
そうすることで純粋に発症数を比べることで評価できるという考え方です。

しかし一方で、イスラエルでの研究にはワクチンを打った人と打っていない人で、「ワクチン接種後の行動の変化というものを調整できない」という問題点がありました。ワクチンを接種した人は接種後の行動様式が変わる可能性があり、この臨床試験ではその行動変化に対する調整ができません。
たとえば、 PCR検査陽性の無症候感染をどれだけ発見できるかについて考えてみます。
感染者が身近に出て自分が濃厚接触者になった時、ワクチンを接種していない人だと積極的に PCR検査を受けに行き、無症状の感染であっても発見される可能性が高いです。
一方で、ワクチンを接種した人はすでに自分が守られていると思っているので、濃厚接触者になってもわざわざ PCR検査を受けに行かないと考えられます。
そのため、ワクチン接種者は無症候感染が発見されにくく、無症状の感染が少し低く見積もられているのではないかということがいわれてきました。
このことから、 PCR陽性の無症状のものも含めて92%感染予防効果があるというのは少し大げさに見積もられているのではないかと批判されていたのです。

今回のお話は、アメリカの研究において CDC (アメリカ疾病予防管理センター)のMMWR (CDC が発行する疫学週報)に無症状の感染をどれだけ防げたかということについて速報という形で報告があがったというものです。
この研究では、無症候性感染を見つけるための定期的な調査を行ったというところがポイントです。
つまり、無症状の人も一定の頻度で体系的に PCR検査をすることで、無症状の感染を見つけて、その頻度がどれくらい変わっているかを調べることで、ワクチン接種によってどれくらい無症状の感染を減らせるかがわかるだろうというアイディアです。
イスラエルの研究は120万人の研究ですが、国全体でこのような調査研究はできません。
アメリカのこの研究は、3950人の医療従事者を対象にしたワクチン接種による無症候性感染の抑制効果を見ているという研究になります。
今回の研究では定期的に週1回の PCR検査を行っており、その中で見つかってきた感染の頻度を比べています。
その結果、今回の研究では、2回目のワクチンを接種してから14日経った人、いわゆる CDC が言うところの “fully immunized” すなわち完全な免疫が達成された人は、1000人日中0.19人の発症であったということです。
一方でワクチンを打っていない人の発症に関しては1000人日中1.38人ということで、これを計算すると90%くらいの有効性になるということです。
正確にはこれはハザード比という統計学的な基準を使っているのですが、概ね解釈としては90%感染を抑えられるということがわかったという形になります。

一度ここまでをまとめます。
これまではそれぞれが好きなタイミングで PCR検査を受けに行くという形で、定期的な検査はやっていなかったので、無症候性感染を全部は捕まえられていませんでした。
このことからワクチン群に有利な解析が行われた研究結果しか報告されていなかったのです。
しかし、今回の研究は定期的に検査をしているアメリカの医療従事者を対象にして、ワクチン接種によってどの程度無症候性感染が抑えられるかということを調べています。
その結果、mRNAワクチンでどの程度無症候感染を抑えられるかということがかなりわかってきたというお話です。

先述の「人日」というのは疫学的な単位で、少し直感的な解釈とは異なります。
例えば集中治療室の研究などでは、結果を見る日数を28日で切ることが多く、集中治療室に入室してから28日以内の死亡率などを%で比較するのが一般的です。
ある薬を使って100人中50人亡くなっており、薬を使っていない人が100人中60人亡くなったとすれば、60%の死亡率が50%の死亡率に改善したということが言えます。
今回のワクチンの研究では、感染など「一定の観察期間の中で時々起こる」イベントの評価に関して、「何人を対象に調査したか」ということと、「どれだけの日数調査したか」という二つの軸があります。
例えば100人の人を10日間みたら、1000人日と表します。
人数に加えて観察期間を考慮に入れた比較をしているというのが今回の研究になります。
通常、ポアソン分布を使って解析することが多いのですが、今回は「ハザード比」という尺度を使っています。
ハザード比を使う場合は少し仮定が必要だったりするのですが、あまり細かいことを議論できるデータも見当たらないので、ひとまず90%くらいの有効性と解釈しましょう。
この研究には、十分な背景因子の調整がイスラエルの研究ほどはできているわけではないという問題点もあります。
イスラエルみたいに120万人くらいいると、ワクチンを打った人と非常に似た状況の人をワクチンを打っていない人から見つけてくるということができていたのですが、3950人しかいない状態だと、そもそも1人と1人をマッチさせるなんてことは当然できません。
そのため、背景的な人種や性別などを数学的に調整するのですが、どこまで調整できているのか微妙なので、90%という数値がすごく確からしいとは言いがたいです。
しかし、無症状の感染を見つける手法自体はかなり改善している研究になっています。
安川先生どうぞ。

安川康介
はい、この研究の一番すごいところは無症状でも毎週 PCR検査をやっていたということだと思います。
今までワクチンに関する情報を発信していると、中には「発症予防効果はあるけれど、無症状の感染は防がないからワクチンを打っても他の人に移してしまうし、あまり意味がないのではないか?」と批判する人もいて、そういうメディアの報道も一部ありました。
でもここ最近は無症状の感染も含めた感染自体を防ぐというデータが結構蓄積されてきて、効果としては本当に申し分ないかと思います。
イスラエルの大規模な研究では毎週 PCR検査をしていたわけではなくて、診療録に症状の記載がなかったものを無症状とするということだったので、感染自体を防ぐ有効性はあまりはっきりしていませんでした。
他にもモデルナ社の大規模な臨床試験で2回目を打つ前に感染していないことを確認する PCR検査を行ったときのデータはありました。
こびナビのウェブサイトにも一応そういったデータは出していて、まだはっきりとはわからないと記載していたのですが、この論文が出たのでまた更新しないといけませんね。
更に、ちょうど Nature Medicine にも1回ワクチンを受けた後に感染したとしても、ワクチンを受けなかった場合と比較してウイルス量が下がっているという報告も出ています。
発症自体を抑えて、無症状の感染もおそらく抑える、ウイルス量も下げる効果があるので、他の人にうつす確率も下げるということがわかってきていますから、本当にすごくいいワクチンだなと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
安川先生が今ご指摘頂いたその点に関しては本当に完全に同意です。
ここからはちょっとマニアックな話をしようかなと思います。
ここでは今までワクチンには感染を防ぐ効果と、発症を防ぐ効果と、重症化を防ぐ効果の3つがあるといっていたのですが、これは実は厳密に言うと4つに分けられるのです。
ワクチンによる効果は、発症と重症化を防ぐのは当然ですが、それに加えて susceptibility (感受性)と、 transmissibility (伝播性)の問題があります。
要するにワクチンを打った個体が感染したときに他者への感染をどれだけ防げるかという効果(transmissibility)は、ワクチンを打った個体が感染するかどうか(susceptibility)とは微妙に別問題なのです。
95%の発症予防効果ということからも明確ですが、コロナウイルスに感染したとしても、このワクチンを打っていれば体内でのウイルスの増殖を抑えることができます。
そうすると、無症状の感染というのがたとえあったとしても、ウイルス量自体が相当下げられるということで、他者への伝播性も明らかに下がるはずなのです。
なので、数字的なことははっきり言えないにしても、第三相試験の発症予防効果95%という結果を見た時点で、長期的な意味で集団免疫を達成するためにこのワクチンが有効かどうかという答えは見えていた訳です。
人から人に感染するかどうかは完全に0か1かの問題ではなくて、どのくらいの距離でどのくらい長い時間飛沫を浴びたかということで確率的に決まります。
ウイルスの増殖量が減ると言うことはどう考えても排出量も減る訳なので、他人にうつす可能性はかなり減ることになります。
そうすると、たとえワクチン接種後に感染したとしても、無症状で、かつ他人にも移さないのであれば、それはもはや社会的には感染ではないのではないかという話になってきます。
細かい話になりますが、正確な感染症疫学の観点からすると、感染を防ぐということに関して、個人が感染するかどうかと他人に感染させるかどうかというのはちょっと微妙に違う問題であると分けて考えられます。
安川先生どうぞ。

安川康介
ちょっと注意点をあげるならば、ほとんどの方に症状があったという点です。
87%くらいの方に何らかの症状があって、本当に無症状の方はこの研究だと10%くらいでした。
かなり若い集団で、5割以上が医療従事者というところも注意が必要です。
といっても、毎週 PCR検査をやって感染自体を9割ぐらい減らすということがわかったので、素晴らしい研究だと思います。

木下喬弘
今回の研究では、58%は毎週行われた PCR検査で見つかっていて、42%はその症状が出たときに行った PCR検査で見つかったということで、発症で見つかっている人が少ないというのは今までのデータ通りです。
その中で経過を見ていると感染した人全体の87.3%に症状が出てきたというので、多くの人は感染すると症状が出たということです。
頻度としても、従来の報告より少し多いですが、診断時には無症状でもその後に症状が出てくることがある(そして無症状の間に他者に感染させることがある)という新型コロナウイルスのすごく大きな特徴を、この PCR検査で捉えられているというデータかなと思っています。
その他何かコメントある先生いらっしゃいますか。
この辺りは少し微妙なところもあって、無症候性感染をどれくらい防げますかという問いに対しての答えとして、今回別の角度から切りこんできた訳です。
イスラエルのデータはワクチンを打った人で PCR検査を受けている人が少ないが故に無症状の感染が見つかっていないんじゃないかという問題点がありました。
一方で今回の研究は症例数もイスラエルの研究に比べると少なくて、かつ打った人と打ってない人の背景因子の調整が不十分なところがあるので、90%という数字が出ていますが、統計学的には不確実性が結構大きい研究ではあります。
では何%感染予防効果があるのかというと、どの数値を使うのが一番いいのかというのは結構難しいところにはなってきます。今回の研究は定期的な PCR検査をすることによって無症状の感染をどれだけ減らすかというデータを出したおそらく世界で初めての研究なので、その意味で90%辺りではないかと捉えるのが一番フェアな考え方なのかなと思います。
というところで、他の先生方コメントがなければこの話はこの辺りにしようと思います。

岡田玲緒奈
先生、少しだけいいですか。

木下喬弘
はい、お願いします。

岡田玲緒奈
これは一個前くらいに第三相臨床試験の結果から感染予防効果もあるだろうというのはほぼ確実だったと木下先生がおっしゃっていたのですが、それこそワクチン接種後は有症状者でもうつす可能性が低いという例があります。
水ぼうそうのワクチンが日本でもかなり進んできていて、すごく軽症の「これ水ぼうそうなのか?」みたいなケースがあります。麻疹でもこういった例が見られます。
そういうものを修飾水痘とか、麻疹だったら修飾麻疹といいまして、そういった状態ではうつす可能性はあるけれども、通常のものより伝播性が低いというのはわかっています。
発症していてもうつす確率が小さいという例が複数ありますから、発症自体をこれだけ抑えるmRNAワクチンが伝播性を抑えないわけがないというのが私たちの中にあった考え方だということを一つ補足しておきます。

木下喬弘
ありがとうございます。おっしゃるとおりですね。
要するにウイルスが増殖するのを抑制するという効果がある以上、常識的に考えて伝播性自体も下げるだろうという話かと思います。
発症を抑える効果が例えば50%くらいであれば、どれだけ集団の中での流行を防ぐのに役に立つ薬剤なのかというのは確かに議論はあるのですが、95%の発症予防効果ということであれば、完全に感染自体を0にできなくても、他人への感染性自体はかなり下げるということは過去のワクチンの例からも考えられます。
ということで、この話はこれでおしまいにします。

次は、若干愚痴っぽいインタビューになるのですが、「国産ワクチン、なぜ出てこない?」っていう質問に塩野義の社長が答えていますので、これを少し紹介したいと思います。
結論的にいうと僕たちがいままで話していたこととあまり変わらないのですが、このインタビューをみていこうと思います。

国産ワクチン、なぜ出てこない? 塩野義・手代木社長に聞く
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/032600173/

木下喬弘
これは日経ビジネスに載っているのですが、塩野義の手代木社長が「日本の製薬会社のワクチン開発が欧米勢よりも遅いのはなぜでしょうか?」という疑問に答えています。
色々理由があるのですが、大きな理由として今回出てきたmRNAワクチンにしても、あるいはウイルスベクターワクチン、そしてノババックスが最近開発した組み替えタンパクワクチンに関しても、今まで日本にそうしたプロジェクトをやるベンチャー企業や製薬会社がなかったことが大きい、とのことです。
アメリカではモデルナという会社が mRNAワクチンを作っていましたし、イギリスではアストラゼネカがウイルスベクターワクチンを作っていて、ドイツではビオンテックという会社が mRNAワクチンを作っていました。
結局そのファイザーとビオンテックが合同で mRNAワクチンを作り、モデルナはモデルナで mRNAワクチンの作成に成功した。アストラゼネカはエボラに対して作っていたウイルスベクターワクチンの技術をほとんどそのまま転用する形でウイルスベクターワクチンを作っています。
一方で日本がずっと得意にしていた不活化ワクチンは、新型コロナウイルスに対して作るのがかなり難しかったということから、日本は出遅れた、というのが一つ目の手代木社長の答えです。

もう一つお答えされているのが、 mRNAワクチンが非常に早く開発された上に、95%というものすごく高い有効性を出してきた点です。
そのため第3相試験をするのがとても難しくなり、日本勢はかなり苦労しています。
つまり95%の有効性を持つワクチンが既に存在する状況で、ランダム化比較試験を行ったときに、プラセボ、すなわちただの生理食塩水を肩に打たれる人は感染から全く防御されないため、相当不利益が大きいということになります。
そうするとワクチンを打った人と何もしない人を比べるというこの臨床試験自体がやや非倫理的であるので、大規模な試験をこれから行っていくのはかなり難しいだろう、と手代木社長はおっしゃっています。
結果的には塩野義製薬は組み替えタンパクワクチンを作ることに成功し、昨年の12月から臨床試験を開始しています。
この組み替えタンパクワクチンに関しては、2021年の4月から生産設備を増強して、年間3000万人分を製造する体制を2021年中に整える計画になっているようです。
しかし、大規模な第3相試験はできないだろうということで、国と相談して、どの程度抗体が産生されるかといったデータと、小規模な安全性の確認でよいという承認プロセスにできないかと協議中であるというのがこの記事の結論です。
要するに、最初に出たワクチンの性能が良すぎて、次にできたワクチンもほとんど全て70%程度の有効性を出しているのが問題なわけです。
最低限、それを越える有効性でないと承認しにくい状況になっていて、これが高いハードルになっているということです。
一方で手代木社長もこのインタビューの中で答えられているのですが、例えば日本独自の変異などが出てきたときに、対応できないと困るので、国内での生産体制を作るのも非常に重要です。
やはり、アメリカや中国のように莫大なお金をかけてワクチン開発を長期間やってきた国に比べて、日本の研究費ではやや厳しいということですね。それは事実ではあると思いますが、研究資金の不足などの理由で少し出遅れているという結論になっています。
私は「別に海外で開発した技術を国内で作れるようになったらええんちゃうか」と思うタイプなのですが、国産にすごく期待をしている方も一定数いらっしゃいますので、現状の国産ワクチンの開発状況について少しお話をさせて頂きました。
何かこのニュースに対してコメントのある先生いらっしゃいますか。

黑川友哉
よろしいですか。

木下喬弘
はい、お願いします。

黑川友哉
前にもこのような話題が出たときにお話しさせて頂いたのですが、そもそも国内では新型コロナウイルス関連の治療薬の開発ですら、試験の組み入れが進まないという状況があります。
この背景にはワクチンの開発が進んでいることもあります。軽症や無症状の患者さんを対象とした治療薬の治験を行う場合、対象者がそもそも入院適応にならずに自宅療養となった時に、治験でとても重要な「データを集める」ことが進みにくいんです。
入院の方だけでは数が集まらないので、自宅療養やホテル療養の方も試験への組み入れて良いことになっていますが、患者さん一人一人の療養は保健所が調整していることも多いので、療養方法の統一などに関して臨床試験を実際に行っている病院とのコミュニケーションがうまく取れず、試験が進みにくいということもあります。
このように先ほどの背景に加えて、制度上の問題もあって日本では、ワクチンに限らず軽症とか無症状の方々を対象とした臨床試験というのはなかなか進みにくいということがあり、これは根の深い問題だとわたしは思っています。

木下喬弘
ありがとうございます。
まず、日本では臨床試験は科学技術が進歩する上で必要不可欠であるという認識が薄いことが問題だと思います。
また、感染の流行状況自体が諸外国と比べて抑えられていたので、アメリカのように次々と治験をできる感染者数ではなかったという面もあって、ワクチン開発が進まなかった面もあると思っています。
どうぞ黑川先生。

黑川友哉
そうですよね、アメリカだと医療費がものすごく高いし、良い保険に入っていないと良い医療を受けられないです。
日本だと誰でも最高の医療をどこででも受けられるので、そこも治験に入りにくい背景の一つですね。

木下喬弘
なるほどありがとうございます。
要するにアメリカでは治験が一種のサービスになっているということですよね。

黑川友哉
そうですよね。

木下喬弘
この辺りの臨床試験に関する問題点というのは今に始まったことではないのですが、どちらにせよ日本で開発された薬を海外で臨床試験をやるという手もあります。
総合的に判断すると、日本の製薬会社はこの1年間、良いワクチンを作るのが難しい状況にあったこと、それに加えて臨床試験をやる素地が整っていなかったことなどが理由で苦戦しているのが現状かなと思います。
では、その他コメントのある先生方いらっしゃいますでしょうか。
大丈夫ですかね。では今日はこの辺りにさせて頂こうかなと思います。

今日もあと2日なので宣伝させて頂きたいと思うのですけれども、このこびナビのクラウドファンディングがついに48時間を切りました。週末いくつかイベントをさせていただいて、色々な情報提供や、団体の運営方針などに関してお話をさせて頂いたこともあり、現在ついに1154人の方から、1789万5000円のご支援を頂いています。本当にありがとうございます。

黑川友哉
ありがとうございます、本当に。

木下喬弘
頂いたご支援に関しては、どのように使うのが一番効果的かという点をこれからしっかりブラッシュアップしてミーティングして高齢者への情報提供を皮切りに、いくつかの施策をこの半年くらいの間で進めていきたいと思っておりますので、どうぞご期待頂きたいと思います。
それでは本日もご登壇頂いた先生方ありがとうございました。

黑川友哉
Taka先生、ちゃんと寝てますか?

木下喬弘
えっ…まあまあ、今日はあまりちょっと寝る時間なくてあれだったんですけれども……

安川康介
昨日…僕となんか夜中まで普通に打ち合わせみたいなのしていましたよね。

木下喬弘
そうなんですよね、ちょっと本当にたまっていた査読が終わったら4時半くらいだったんで、それでちょっとダメージを本日受けているんですけれども、今からちょろっと寝ます。

黑川友哉
お疲れ様です、いつも本当にありがとうございます。

木下喬弘
ということで、本日はこの辺りにさせて頂こうと思います。
日本の皆様良い一日をお過ごしください。


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