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アストラゼネカ社がプレスリリースを撤回・DNAとはそもそもなんなのか(3月24日こびナビClubhouseまとめ)

木下喬弘

おはようございます。
昨日、このClubhouseで「カルボナーラを2人分作って、1人で全部食べたたら胸焼けがした」というお話をしました。

ボストンも人の入れ替わりがありまして、日本に帰るドクターもいます。
彼は2回ワクチンを打っているので、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のルールに則って、昨夜会いに行ったんです。
これがですね……
日本では朝のClubhouseが終わると、こちらは夜の8時です。
その後、ちょっと食事をしながらお酒を飲むという計画だったんです。
そこで私の友人が作ってくれて出て来たのが、カルボナーラだったんですね……。
昨日1日で3食分のカルボナーラを、昼と夜に掛けて食べるという、ちょっと苦行みたいな……苦行と言っては失礼ですね。
作ってくれて申し訳ないんですけど(笑)
そんなことがありました。

よくないニュースは続きます……というところから、本日のこびナビの「医師が解説する世界の最新医療ニュース」に持ってきたいと思います。

日本の皆さん、おはようございます。
今朝も200名以上の方が既に入っていただいてます。
ありがとうございます。
まず最初のニュースです。

悪いことは続くということで、木下先生はアストラゼネカ社に激おこ! なわけです。
アストラゼネカ社製の新型コロナウイルスワクチンの不備について、再度昨日のニュースを取り上げていきたいと思います。

アストラゼネカ社製のワクチンが一昨日、79%の有効性があったというプレスリリースを打っていました。
これを元に、FDA(アメリカ食品医薬品局)は承認してアメリカでも使えるようになるだろう、という話だったんです。
しかし、アメリカ NIAID(国立アレルギー感染症研究所)がアストラゼネカ社の情報がちょっとおかしいんじゃないか? という指摘をしています。

【参照】
アストラゼネカ社製ワクチン 評価に「古いデータ」 米研究所
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210324/k10012932491000.html


アストラゼネカ社が書いている79%の有効性というデータ、あるいは人種別のデータか高齢者のデータのいずれかが、2月に発表された中間解析のデータそのものなのではないか? ということのようです。
プレスリリースの中に古いデータが含まれてるということが指摘されています。

最悪ですよね。
そもそもアストラゼネカ社は、イギリスを中心に行った臨床試験でも用量を間違えて投与していたのですが、その後間違った用量の方が効いたから、あたかもこれを狙っていたかのように発表しています。
いろいろグダグダ感を演出してますけど、「またか!」っていう感じですね。
「この会社大丈夫か?」とみんな思ってるわけです。
一応、アストラゼネカ社はプレスリリースを打ち直しており、データを再度確認して、もう一度統計学的な解析をやり直して発表します、みたいな形にはなっています。
ちょっと不注意のミスということで発表していて、微妙以上に微妙という感じですね。

ファウチ博士もこれについてニュースで答えてまして、「良くないよね」という話を最初にしています。
しかし、臨床試験に関しては「発表されたデータに対して、アストラゼネカ社とは全く関係のない第三者機関が、データの正確性や発表内容の正しさ等を審査している」ことを分かっていて欲しいと言っていました。
モデルナ社、ファイザー社のものは何も問題なく承認されたので、どんな厳格な審査をされていたのかが見えにくかったと思います。
しかし、こうした間違ったデータが出ることがあれば「その製薬会社とは別の機関が確認するシステムが出来ている」ということがわかりますよね。
彼もアメリカの中でのワクチン忌避・ワクチン躊躇に対してかなり懸念を持っていて、「これだけ厳密な審査がされていると思ってください」という話で締めくくっていました。

ファウチ博士も仰っているように、ワクチン自体は大丈夫なんだと思います。
第三者機関の検査が終わって、しっかりしたデータが発表されたところで再度評価されます。
その後、こびナビでもQ&Aなどで、このワクチンの有効性・安全性について解説していこうと思っています。

このニュースについて登壇者の先生方、コメントありますでしょうか?

安川康介
あ、いいですか?

木下喬弘
はい、安川先生。
毎朝ありがとうございます(笑)


安川康介
木下先生のカルボナーラじゃないんですけど、トピックを見た瞬間「またアストラゼネカか!」と思って、ちょっと胃もたれがしております(笑)

このニュース、すごく興味深いなと思って、いくつか記事を読みましたが、ワシントンポストの記事が結構面白くて、詳しく書いてあったのでもし興味がある方は読んでみてください。
https://www.washingtonpost.com/world/astrazeneca-oxford-vaccine-concerns/2021/03/23/2f931d34-8bc3-11eb-a33e-da28941cb9ac_story.html

これは、DSMB(データ安全性モニタリング委員会)というデータと安全性を評価する委員会がレターを書いています。
プレスリリースに対して懸念があるとしてレターを書いたということで、今回問題になっています。
このレターによると、今回のものは中間解析で、2月17日までのデータをアストラゼネカ社がリリースしました。
しかし、3月に入ってからのデータを解析すると、実は発症予防効果はもう少し低いのではないかということが書いてあります。
具体的な数字では、それを「69%から75%に落ちるのではないか? 」と書いてあります。
昨日このプレスリリースの話をした時に、透明性の話をしましたが、アストラゼネカ社は今までいろいろ批判されてきたのに、なぜまた同じようなことをやるんだろうというのが不思議ですね。

木下喬弘
ありがとうございます。
なんかちょっと微妙過ぎて……僕たちだけのSlackの中では、ほぼ悪口みたいな感じになってます(笑)
それと同時に、日本にもアストラゼネカ社のワクチンが入ってくるため、あまり悪く言いたくないという面もあるんです。
会社の情報開示の不透明性に関して、単純な誤植なのか意図なのか、みたいなところに関しては科学者としてやはりきちんと批判をしないといけないと思っています。
それと同時に、例えば69%の有効性だったとしても、FDAの緊急使用の基準はみたすわけですから、必ずしもそのモノが悪いというわけではないですね。

安川康介
そうですね。
プレスリリースをする際に、DSMBはアストラゼネカ社に「3月までのデータを発表するように」と言っていたようです。
しかし、あのプレスリリースで中間解析の結果を持ってきたので、「なんでそんなことをしたんだ?」という風になってるのかなと思います。

木下喬弘
なるほど。黑川先生どうぞ。

黑川友哉
こびナビ事務局の黑川と申します。
データの信頼性について、懸念が上がってるっていう話だと思います。
今回のアストラゼネカ社のプレスリリースについては、薬事の承認審査で使われるデータとは分けて考えるべきだと思います。。

皆さんの安心材料のためにお話をします。
お薬の審査をする時には、企業から治験のデータが提出されます。
そのデータに嘘や間違い、抜けがないかという点は、治験の間から常に、モニタリングという作業を通して第三者が監視をするシステムになっています。
承認申請で出されたデータが本当に間違っていないか というところは、規制当局が治験をやった施設まで直接行って、カルテなどを見ながら照合します。
他にも、治験では「こんな手順で治験を行います」という手順書と、実際に出てきた書類に齟齬がないかまで調べていますので、最終的に審査で使うデータに関しては(プレスリリースレベルのものとは違うので)、心配しなくてもいいのかなと思います。
これは監査という作業ですが、その結果も含めて、審査報告書には、FDA だろうが、 PMDA (独立行政法人医薬品医療機器総合機構)だろうが、透明性をもって発表されています。
薬事の審査で「大丈夫でしょう」とされたものは、このように厳格なチェックが行われているので、今回のプレスリリースとは、捉え方を変えていただければと思います。

木下喬弘
黑川先生、ありがとうございました。
ご指摘の通り、企業が発表したデータと FDA が承認したデータの間には、かなり正確性にギャップがあると思います。
FDA が承認したデータであれば一定の信頼性は置いていただいて心配ないですから。
PMDA、日本の場合でも同じでしょう。

この話は一旦これぐらいにします。
あと一つ、昨日のお話について質問をいただいています。
それを簡単に、数分で解決させていただければと思います。


数日前から、お子さんのワクチン接種や、授乳中のワクチン接種についてのお話をしてきました。
「ワクチンを接種された方の初乳には、抗体がしっかり入っている。
赤ちゃんが初乳を摂取することで、粘膜のIgA(免疫グロブリンA)の抗体が作られ、感染から防ぐ効果があるのではないか。」というお話をさせていただきました。
この話題に関して、出産を控えていらっしゃる方や、心配されてる方から、毎日いくつも質問をいただいています。
その中で「出産直後の授乳中にワクチン接種を完了した場合、初乳でなくても授乳によって、抗体は移行するのでしょうか?」という質問をいただいています。
これについてお答えいただける先生、重見先生いかがでしょう? 
あ、池田先生いけますか?


池田早希
先に重見先生どうぞ。

重見大介先生
では、私が先にお話して、追加があればぜひ池田先生にもと思います。
産婦人科医で、公衆衛生を専門にしている重見と申します。木下先生、ありがとうございます。

出産した後にワクチンを接種してできた抗体が、お母さんからお子さんに移りますか? というご質問かと思います。
これまで、インフルエンザワクチンなどで、母乳を介してお子さんに免疫が移行する例は知られていまして、米国の CDC などもきちんと文章で明言しています。

今回の新型コロナワクチンに関しては、まだ「膨大なデータ」までは出ていません。ただ、ちょうど今月上旬に、査読前のプレプリントという形でしたが、「数十名のお母さんのデータを見たところ、ワクチンによって作られた抗体が母乳にきちんと含まれていた」という報告がありました。
まだ断言できるほどのデータがないのは事実ですが、他のワクチンのことを考えても、おそらく、母乳によって赤ちゃんに抗体が移行すると考えていいのではないでしょうか。
追加等ご指摘あれば、ぜひお願いします。

木下喬弘
重見先生、ありがとうございました。池田先生、どうでしょう?

池田早希
もう、仰る通りだと思います。
新型コロナウイルスだけのお話ではなく、基本的に、初乳には免疫のための物質、免疫グロブリンとかタンパク質がたっぷり入っています。
初乳の後の母乳を成乳というのですが、それでは少し少なくなります。
それでも、成乳にも一般的には免疫グロブリンも含まれていますし、たくさんのメリットはありますので、可能であれば母乳を続けていただきたいですね。
ちなみに私の場合は、出産直後にカンガルーケアをしたのですが、すぐには上手くくわえることができなくて……出産直後に上手く初乳を与えられたか? っていうのは、ちょっと謎です。その後、病院でいっぱい苦労しました。そういうお母さんもたくさんいるんじゃないかな、と思っています。

木下喬弘
ありがとうございます、池田先生。
医師かつ母ということで、いろいろな経験をされて、非常に苦労されているのがこの数日のお話で伝わってきました。
明確なお答えをいただいて、両先生方、ありがとうございます。
基本的には妊娠中に必ず打たなくても、出産後に接種したワクチンから出来た抗体が赤ちゃんに移行するのではないか? と考えられている、という結論になりますね。

いよいよ、こびナビのクラウドファンディングも、残すところあと7日になりました。(3/31まで)連日お願いをしていますが、もし今日は初めてこのルームに入って来られて、我々の話を面白いとか、お役に立ったと思われた方がいらっしゃいましたら、ぜひクラウドファンディングへご支援をいただければと思います。

また、この週末の土曜日には、幹事会がYouTubeライブで、今までの活動を振り返りつつ、今後どのような活動を行なっていくのか、ご説明する機会を設けさせていただければと思っています。
ライブで、顔が見えるような状況で、お話をさせていただきたいと思っていますので、こちらもぜひ楽しみにしていただければと思います。

次の話題に行きたいと思います。
メッセンジャー RNA ワクチンの話をずっとしていましたが、昨日ふと目に入った記事があって。「そもそもコロナワクチンの材料 RNA とは何か?」という記事で、遺伝子研究の歴史からいろいろな切り口で解説をしていて面白かったんです。

【参照】
コロナワクチンの材料「RNA」とはそもそも何か
「タンパク質」「DNA」「RNA」に至る遺伝子研究の歴史

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64579

そもそも「メッセンジャーRNAって、いったい何なんだ?」というのを、いまいちよく分かっていない方もたくさんいらっしゃるかなと思いますので、こびナビメンバーに解説をしてもらおうかな、と思います。

僕がいくつかポイントを挙げて、聞いていきたいと思います。
それを分かりやすく解説していただける方、ミュートを外してもらって、お話しください。
「タンパク質とは何なのか」、誰でも知ってるような具体例を3つぐらい挙げて欲しい。
「DNAって何なのか」、どこにあるのか、何で出来ているのか。
「RNAって何なのか」、どこにあって、何で出来ているのか。
DNAからタンパク質が作られるって、どういう順番、仕組み、メカニズム、機序なのか。
「なぜメッセンジャー RNAで遺伝子は書き換えられないのか?」
この辺りを順番にいきたいと思います。
まず一発目「タンパク質とは何なのか? 誰でも知ってる具体例3つ」について、お答えいただける方いらっしゃいますでしょうか。

岡田玲緒奈
じゃあ……いいですか?

木下喬弘
玲緒奈先生お願いします。

岡田玲緒奈
こびナビの岡田です。
タンパク質の例は何でもといえば何でもなんですけど(笑)

木下喬弘
ほらぁ、またそういうことを言う〜(笑)

岡田玲緒奈
大事なことは、タンパク質というのは、アミノ酸という構成成分が繋がって、複雑な立体の構造になっているものなんです。
そもそも「遺伝子って何か?」というと、これは、タンパク質の設計図なんです。
AとかTとかGとかC、というのを見たことがあるかもしれませんが、「どのアミノ酸がどの順番で並びますよ」という指示が書かれてるのが遺伝子です。その遺伝子に書かれている内容によってタンパク質が作られる、という形です。
人間の体はタンパク質で出来ている、と言っても過言ではなくて、もちろん、組成でいえば水が一番多いのですが、その次がタンパク質ということになるかなと思います。そんな感じです。

木下喬弘
あの、これNGです、先生(笑)
なぜかと言うと、これ「タンパク質とは何なのか?」っていう質問に「アミノ酸で出来たものです」って、アミノ酸の説明しないといけなくなるんで。
いやゴメンナサイ(笑)
相当無理な質問をしているのは理解しているんですけど。

黑川友哉
いいですか?

木下喬弘
はい、どうぞ!

黑川友哉
私、タンパク質の専門家ではありませんが説明してみます。
タンパク質って、レゴに例えると分かりやすいかなと思います。
レゴのブロック一つひとつが、岡田先生が仰ったアミノ酸です。
その(アミノ酸の)ブロックを重ねて、例えばお城の大砲のようなパーツを作る。出来上がったパーツが、タンパク質です。
さらに、タンパク質が集まって、お城が出来上がったのが臓器や組織などです。
そういうふうに考えていただけると分かりやすいかなと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
アミノ酸がレゴのブロックで、これは元々10個か20個ぐらいしか種類がない。
それを組み合わせて作る戦車や大砲がタンパク質で、臓器の元になっている。そんな感じの説明ですかね?

黑川友哉
いいですかね、それで。どうでしょう?(笑)

木下喬弘
ありがとうございます! いいと思います!(笑)
はい、それでは、池田先生どうぞ。

池田早希
はい、先生の質問に答えようかなと思って(笑)
「3つ挙げてください」っていうことで、挙げてみます。

木下喬弘
どうぞどうぞ、お願いします。

池田早希
皮膚もタンパク質だし、髪の毛、筋肉……で、いいですか?(笑)

木下喬弘
(笑)
いいですね。そういうことですね。
要するに、そもそも体の中で出来ている、臓器だとか、池田先生に挙げていただいた皮膚、髪の毛や筋肉といったものがタンパク質でできているということですね。
つまり、人の体は「レゴの部品を組み合わせるように、アミノ酸の組み合わせで作られている」、さらに「その設計図が遺伝子である」ということです。


池田早希
つまり、レゴの説明書ってことですね?

木下喬弘
そういうことですね。レゴのブロックだけあっても勝手には作れないので、遺伝子にはどうやって組み立てればいいか書いてあると。
今日はレゴの方向性になりそうなので、このまま行ってみます。
じゃあ「DNAって何なのか、どこにあるのか、何で出来ているのか」について、どなたかお願いできますか?

岡田玲緒奈
この沈黙はまた僕ということでしょうか……。

木下喬弘
どうぞどうぞ、玲緒奈先生。
玲緒奈先生が答えてる間に、他のみんなは考えるという(笑)

岡田玲緒奈
(笑)
人間の細胞の中には核という小部屋があって、その中にDNAは入ってます。
ちなみに、これは、人間とかそういうもの(真核生物)に限られていて、全ての生物に成り立つことではありません。
そして、(人間の場合は)核に入っているDNAには、さきほど「(レゴの部品で)いろんなパーツを作って、さらにそれを集めてお城にする」と言いましたが、そのお城全体の設計図が書いてあります。

木下喬弘
ヒト全体の設計図が書いてあるものがあって、それが核の中に入っているという説明でいいですか?

岡田玲緒奈
そうです。

木下喬弘
ありがとうございます。
その DNA が何で出来ているかということに関してはいかがですか。
玲緒奈先生どうぞ。

岡田玲緒奈
そうですね、そもそも「略語がそれを説明している」といっても過言ではありません。
DNA=DeoxyriboNucleic Acid(デオキシリボ核酸) なんですね。
「デオキシリボ」の部分はデオキシリボースと言って、糖(五炭糖)です。核酸の酸にあたるリン酸は、DNAが長く繋がっている部分の「繋ぎ目」に当たります。そしてAとかTとかGとかCとか、アミノ酸の並ぶ順番についての情報を持った、塩基というもので出来ています。
糖とリン酸と塩基が一つのユニットですが、これがず〜っと繋がっているのがDNAです。

木下喬弘
ありがとうございます。
ということで、デオキシリボ核酸が糖とリン酸と塩基で出来ている、また設計図自体はA、T、C、Gという塩基の4文字で構成されている、ということをご説明いただきました。
つまり、日本語でいうと「あ」から「ん」まで五十音ありますが、 DNA自体は、この4文字の並びで設計図が書かれてる、という説明でよろしいでしょうか?

岡田玲緒奈
はーい。

木下喬弘
ということで、細胞の核というものの中にDNAがあり、そこにはレゴの設計図が書いてあって、それは A・T・C・Gの4文字で書かれているということで、今のところ落ち着いてきてるかなと思います。
次に「RNAって何なのか、どこにあって、何で出来ている?」ということに行きたいのですが、ご説明出来る方いらっしゃいますか?

岡田玲緒奈
このDNAはすごく大事な設計図なので、核の中に大事に置いてあります。
部品(タンパク質)を作る時は、DNAがある部屋(核)の中で作るわけではありません。
まず、DNAから目的のタンパク質を作るために必要な分だけコピーを取ります。そして、そのコピーを核の外(細胞質)に持ってきて、そこでタンパク質を作るのです。
そのコピーされたものがRNAです。


木下喬弘
ありがとうございます。
ここまでちょっと整理しますと、
核の中には人の体全体の設計図(DNA)が入っている。
その各々のパーツを作りたいとなった時に、DNA全体をコピーするのではなくて、そのパーツを作るのに必要な部分だけコピー(RNA)を取る。
そのコピーを核の外に持ち出して、核の外で、コピーをもとにタンパク質を作る。
ということでよろしいですか、玲緒奈先生。

岡田玲緒奈
その通りです。

木下喬弘
ありがとうございます。
このRNAは「DNAの一部のコピーである」と説明していただきました。
ちなみにRNAにも、メッセンジャーRNA(mRNA)とか、あまり出てきませんがトランスファーRNA(tRNA)があると思います。
それらの違いについて、この文脈でご説明いただける先生いらっしゃいますでしょうか?

岡田玲緒奈
これきついなぁ(笑)
先ほど、RNAが「DNAの一部分のコピーを取って核の外に持ち出す」と説明しましたが、正確にはメッセンジャーRNA(mRNA)です。
それは DNA の情報をメッセンジャー(伝令役)として持ってくるので、メッセンジャーRNAといいます。
そのメッセンジャーRNAを持って来たら、そこからタンパク質にその情報を変換しなければいけません。

木下喬弘
はいはい。

岡田玲緒奈
そこに関わってくるのがトランスファーRNA(tRNA)です。
トランスファーというのは、何かを「運ぶ」という意味ですが、これはアミノ酸を運んできます。
このアミノ酸をメッセンジャーRNAのところまで持ってきて、タンパク質を作っていくという役割をしているのが、トランスファーRNAです。

木下喬弘
なるほど、ありがとうございます。
ちなみにメッセンジャーRNAというのは、核の中に入ってるDNAからコピーした設計図そのもののことですね?

岡田玲緒奈
そうです。

木下喬弘
誰が箱の外に運び出すか、分かります? 僕も分からないんですけど……。

岡田玲緒奈
そこは私も仕組みを構成する詳細な分子などについてはこの場では出てこないです。
しかし一つ言えるのは、核から外に運ぶために、複雑なシステム、メカニズムが必要です。
逆に、核の外から内部というように反対方向には行けません。
メッセンジャーRNAで核の外に運び出すにはある仕組みが必要で、これが一方通行だということをご理解いただければ十分かなと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
つまり、オリジナルデータであるDNAは核の中に入っていて、外からメッセンジャーRNAが中に入ってくるという仕組みは、基本的にない、ということですかね。
ご指摘いただいたのは、その辺りの話かと思います。
このメッセンジャーRNAを外に運び出す仕組みについてご説明いただける先生いらっしゃいますか?


木下喬弘
……今日は基礎研究チームは少し都合が悪いみたいなので、この辺りにさせていただこうと思います。
明日はこの話の続き、「レゴの設計図(mRNA)からレゴ(タンパク質)をどのように作っているか」、「作ったレゴから設計図が変えられない」、などについて少しお話させていただきます。

そして、「RNAとは何か?」「メッセンジャーRNAワクチンって、なぜ大丈夫なのか?」について、もう少しお話させていただければと思います。
玲緒奈先生、どうもありがとうございます。一人でだいぶお話しいただいて、大変だと思います。

岡田玲緒奈
ありがとうございました。時間制限があるのと緊張とで、上手く説明できていなかったかもしれません。

木下喬弘
とんでもないです。すごく分かりやすかったです。
黑川先生もレゴの例えをいただいて、すごく分かりやすかったです!
ありがとうございます。

黑川友哉
レゴの流れにしてごめんなさい。
かえって説明しにくくなっちゃったかもしれない(笑) 
ありがとうございました。

木下喬弘
そんなことない!(笑) ありがとうございました。
池田先生。

池田早希
さらにまたレゴに絡めちゃうと……核の中にあるDNAは、レゴなんでデンマーク語のような暗号(A・T・C・G)で書いてあるんですよ、そのままだと読めないんですよね。

木下喬弘
なるほど、なるほど。

池田早希
例えばコロナのワクチンだったら、最初にスパイクタンパクを作る部分(作りたい部分)だけを日本語(A・U・C・G)にします。(RNAにコピーを取る)
そのコピーには、アミノ酸をこういう風に並べましょう、(つまりレゴのブロックをこういう風に並べましょう)、というのがプログラミングのようにコーディングで書かれているので、その通りに並べていきます。
次に、それをリボソームっていう装置に読み込ませて、ブロックを並べていくっていうことです。

木下喬弘
ありがとうございます。
そうするとDNAはデンマーク語で RNAが日本語ってことですか?

池田早希
そうですね。
日本語に変換したってことですかね。

木下喬弘
ありがとうございます。
そういう、言語を少し変換しているというお話もありますが、この辺りも明日もう少し突っ込んで話をしていきたいと思います。
前半に少しこういうお話をさせていただいた上で、また何か新しいニュースがあったら、それも取り上げられればと思います。
この記事は「RNAとは何?」やメンデルの話から入っていますので、それはそれで読んでいただいても構わないかなと思いますが、今後こびナビでもより分かりやすく説明していきますので、楽しみにしていただければと思います。
本日も登壇していただいた先生方もありがとうございました。
日本も9時5分ということで、日本の皆様、本日も良い一日をお過ごしください。


【参照】
寝ころんでまなべない??セントラルドグマ-1 タンパク質 編 岡田玲緒奈note
https://note.com/eirthewegie/n/n847c03a6dc73

寝ころんでまなべない??セントラルドグマ-2 DNA編 岡田玲緒奈note
https://note.com/eirthewegie/n/nd4d6e3fd5dbd

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