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新型コロナウイルス感染症における日米での重症の定義、インドの感染状況について(4月28日こびナビClubhouseまとめ)

こびナビ広報

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4月28日(水)
こびナビのブロッコリーが解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:安川康介🥦


【オープニング】

安川康介 
おはようございます。

木下喬弘 
おはようございます。

黑川友哉 
Clubhouse とかって BGM とかって設定できないんですよね?

木下喬弘 
BGM?

黑川友哉 
できないんですよね、多分。音声だけですもんね。

木下喬弘 
峰でございます♪

峰宗太郎 
峰でございます。

安川康介 
安川でございます。

木下喬弘 
キュッキュッキュッキュキュミューテーション♪(笑)

峰宗太郎 
ミュ……ミュミュミュミュミュ……ミュミュミュミュミュ……♪

黑川友哉 
オープニングでそれ流れると……(笑) かけなくていいか(笑)

安川康介 
今日は古事記の話はやめて、雑談から入りたいと思います。
この前、新妻免疫塾の YouTubeチャンネルの木下先生の出ているビデオを見てました。木下先生がどういう人物なのかということを話してたんですけど、あのビデオを見ても全然わからないんですね。木下先生がどうしてこうなっているのかってのがよくわからなくて。
もう少し、大学以前の話まで遡ってみたら、どういう人物なのかという糸口が見つかるんじゃないかなと思っていて。
あの、木下先生、高校生の時って何やってたんですか?

木下喬弘 
高校生の時ですか? 普通に部活してました。

安川康介 
何部だったんですか?

木下喬弘 
サッカー部です。

安川康介 
サッカー部。なるほど。生徒会みたいなのはやってたんですか?

木下喬弘 
いや全くですね。全然そんなタイプじゃないです。

安川康介 
サッカー一筋。なるほど。情報発信っていつの時点で始めたんですか?
HPV の活動の時からですか?

木下喬弘 
いや、僕は医者6年目の時から書き始めた論文が8年目ぐらいに出て、その後ぐらいに上司に「論文を書いたらツイートしろ」と言われたんですよ。
Twitter のアカウントを作れと言われて、「今時の研究者は論文を書いたらツイートをするもんや」と言われました。それで Twitter のアカウントを作ったのが始まりです。

安川康介 
それ日本にいる時ですか?

木下喬弘 
そうですね。日本にいる時に始めたんです。なので本当は僕の Twitter アカウントは自分の論文の内容をツイートする bot になる予定だったんです。でも、ツイートしても誰も見ないじゃないですか(笑)

安川康介 
(笑) まぁでも、アメリカではよく、自分の論文ツイートする人いますよね。

木下喬弘 
そう、そうなんです。僕の上司はそれを聞いて、僕にそれを勧めてきたというか、強制的にやらせたわけなんけど、フォロワーが増えないことには、ツイートって相当虚しい作業じゃないですか。なので、フォロワーを増やす方向というのを考えて、考えに考えて研ぎ澄ませていった結果、論文を書かない人になってしまいました(笑)

安川康介 
(笑) あの、炎上させるということですか?

木下喬弘 
いやーそうですね、やっぱり一番増えるのは炎上ですよね(笑)

安川康介 
わかりました、参考にさせていただきたいと思います(笑)

木下喬弘 
(笑)。最大1日で1万3000人増えたことがあるので、皆さんも頑張ってください。

安川康介 
すごいですね、それは。
峰先生が情報発信を始めたのっていつぐらいなんですか?

峰宗太郎 
僕ですか? いやぁー、これはね、アメリカ来てからだから、2018年からかな?
僕、国立感染研究所、公の所にいたので、うかつに情報発信したら怒られるというか、許されない場所にずっといたわけですよ。4年間。その前も、国立国際医療研究センター病院にいたので、ここも迂闊なことを言えない感じだったので……こっち(アメリカ)来て、フリーーーダムになってからですね(笑)

安川康介 
その時は、記事を書いたりブログ書いたりとか、そういうのもしてなかったんですか?

峰宗太郎 
何もしてないです。2018年から、ふと思いついて、始めました。

安川康介 
へー。面白いですね。すみません。今日は僕の関心がある質問をしてみたいと思いまして、お二人に質問を振ってみました。
それでは、始めたいと思います。


【テーマ1】新型コロナウイルス感染症の重症の定義の国ごとの差について

どうも、こびナビのブロッコリーが解説する世界の最新医療ニュースになります。
実はですね、このこびナビの Clubhouse を医者ではない僕の友人とかも聞いてることがあるんですが、フィードバックとして ”話が難しくてわからない” というコメントをいただくことがあります。
なので、今日は学術論文ではない別のテーマを扱いたいと思いまして、メインに2つトピックを選んでみました。

1つ目は、新型コロナウイルス感染症の重症の定義について、日本とアメリカとかで違うよというお話、
もう1つは、新型コロナウイルスの感染が爆発しているインドについてのお話をしたいと思います。

まず、新型コロナウイルスの重症の定義について、基本的な事をお話したいと思います。
皆さんは毎日、新聞やテレビとかで、感染者が何人とか重症者が何人とか聞くと思います。
実はアメリカでは、重症者が何人という報道は、僕の知る限り、通常報道はなされていないんですね。
去年、日本で感染者が出始めた時に、重症者数の報道がされていて、なんだかやけに少ないなと最初は思ってました。それで調べてみたら、やっぱりアメリカで使われている重症の定義と違うということがわかりました。
さらに言えば、東京都が使っている重症の定義と厚生労働省が使っている定義も違うんですね。ここについては少し後で触れたいと思います。

この Clubhouse では、特に新型コロナウイルスワクチン(以降ワクチンとします)が重症化を防いた効果が何パーセントという話をすることがあるんですが、その時の重症化の定義は、多くが CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とか NIH(アメリカ国立衛生研究所)の基準に近いものを使用しています。

Discontinuation of Transmission-Based Precautions and Disposition of Patients with SARS-CoV-2 Infection in Healthcare Settings
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/disposition-hospitalized-patients.html
出典:CDC 2021/2/16

CDC、NIH の「重症」「重篤」の定義は以下の通りです。

① Severe 
これが「重症」と訳されます。
1. 呼吸数が1分間に30回以上。
普通の人は、呼吸しているのは1分間に大体12回くらいなんですね。
2. Saturation(サチュレーション、酸素飽和度)が94%未満
もしくは
3. 肺炎が肺の50%以上に広がっている、などが基準になっています。
このうち、どれか1つでも満たしたら「重症」とアメリカでは通常判断されます。
酸素飽和度というのは、動脈の赤血球のヘモグロビンの何%に酸素がくっついているかという数字で、指に簡単な機械を付けて測ることができます。
大体、96%以上が正常値です。一般的には、90%以上を保たないと全身に十分な酸素を供給できないと考えられます。

② Critical
これは「重篤」と訳されます。
呼吸不全・敗血症性ショック、これは感染によって血圧が下がってしまう状態ですね。あとは複数の臓器不全等があることが基準になっています。

一方で、日本の重症の定義はどうなのかというと、アメリカと結構違うんですね。
厚生労働省の出している重症の定義は、
基本的には ICU に入室をしているか、人工呼吸器が必要としている方
としています。

アメリカで重症とされる酸素飽和度94%以下の方は、日本の基準では、基本的には「中等症」ということになります。人工呼吸器を装着している場合、日本の重症の基準は、アメリカでは呼吸不全があるということで、Critical、重篤の定義に当てはまります。

さらに、東京都は厚生労働省とは違う定義を使用しています。
人工呼吸器もしくは ECMO(体外式膜型人工肺)を使用している方とあります。
この ECMO というのは、心臓と肺の補助をする治療になります。
東京都のモニタリングのウェブサイトに行くと、何人入院しているのかとか、感染者が何人いたとかというのは書いてあるので皆さんチェックしていただきたいんですけれども、
入院している人は1,923人、軽症中等症1,868人、重症が55人、とさっき調べたら書いてありました。

重症が東京の中で55人と聞くと、少ないという印象を持つ方が多いと思うんですけれども、これはアメリカの基準だと重篤、Critical に当てはまると思います。
なぜ、東京都の重症の基準が違うのかというと、都によれば
ICU に入ってる人が必ずしも重症ではない・人工呼吸器管理下の重症患者が必ずしも ICU に入室していない・集中治療の基準が病院によって異なる可能性がある・人工呼吸器や ECMO の導入は判断の差が出にくく基準が明確
これらの理由で、厚生労働省の出している重症の基準とは違うものを使用していると説明しています。
なので、ワクチンの重症化予防の数字や、日本の重症者数の報道を見る時は、どのように重症というものが定義されているのか、これを聞いている方は注意していただきたいと思います。

日本の中等症の中には、他の国、例えばアメリカでは重症とされる人が多く含まれること、日本の重症者というのは、基本的にはかなり症状が進んでいる人が多い、というのは言えると思います。
ここまでで、何かコメントある方いらっしゃいますか?

木下喬弘 
純粋な疑問として、人工呼吸器とか ECMO の、特に ECMO の導入基準は客観的なのかというのはありますよね。

安川康介 
そうですね。現場での判断というのが入ってきますね。

木下喬弘 
数値で表せる SpO2(酸素飽和度)とか、呼吸数とかの生理学的な指標が基本だと思うんですよ。客観的な基準が作りたいのであれば、そういった数値が好ましいのではないかと、私は思いました。

安川康介 
そうですね。

次に、致死率の話に移りたいと思います。
新型コロナウイルスについての情報発信をしていると、特に僕はアメリカに住んでいるので「アメリカと日本は違うし、日本人は重症化や亡くなる人も少ないから参考にならない」
「安川は黙っていろ」「医学部からやり直せ」というような厳しいコメントをいただくことがあります。

木下喬弘 
普通普通! 全然普通!

安川康介 
久しぶりに YouTube のコメント欄を見たら、地獄みたいになっていて、読むと少し悲しくなることが最近ありました。
中には日本人の死者が少ないのは、日本人には何か特別な原因があって、感染したとしても日本人は特別に守られているのではないかというコメントもいただきます。
では、本当にそうなのか。簡単に数字を見ていきたいと思います。
致死率というのは、検査をどれくらい広くやっていて、無症状の方や軽症の方をどれぐらい補足できているかということで変化することは、まず注意しなければいけないと思います。
つまり、たくさんの人に検査をしていて、軽症の方を多くひっかけていれば致死率というのは数字で見れば低くなります。

まず日本の致死率についてお話しします。
新型コロナウイルスの診療の手引きというのがあります。

参考: 新型コロナウイルスの診療の手引き 第4.2版(PDF)
https://anshin.pref.tokushima.jp/med/experts/docs/2021022200016/files/2.pdf
出典: 厚生労働省 2021/02/19発行

これを読むと結構勉強になるんですけれども、ここに日本人の致死率、つまり感染した方がどのくらい亡くなるのかということが書いてあります。

80歳代以上では 12.5%(男性だと17.3%)
70歳代:4.7%(男性だと 6.5%)
60歳代:1.4%
50歳代:0.3%程度
それより若い世代では、さらに少ないパーセンテージとなっています。

この致死率は、実は他の国と比べても大きく差があるわけではないんですね。
アメリカだと、少し初期の CDC のデータになりますが、
85歳以上:10.4%~27%の間
75歳~84歳:4~10%
our world in data というウェブサイトがあるんですけれども、ここにいくつかの国の致死率が載っていて、韓国では80歳以上が13%、スペインでは15.6%。日本とそこまで大きく変わらないですね。

70歳代だと韓国では6.4%、スペインでは4.8%。
50歳代ですと、韓国では0.5%、スペイン0.4%、日本が0.3%。
若干低いんですけれども、劇的に違うということはないと思います。

日本で新型コロナウイルスが原因で亡くなる方は1万人を超えてしまったんですけれども、それでも他の国と比べて亡くなる人は比較的少ないといえるんですね。
ただそれは、日本人が特別な何かで新型コロナウイルスから守られているということではなくて、感染自体がそれなりに抑えられてきたから、というのが一番大きな要因だと僕は考えています。

ウイルスの情報発信をしていると、日本は他の国と違う・日本人の致死率は少ないという意見があるので、それは数字で見る限りは違うんだよという話をしてみました。
ここまでで何かコメントありますかね。 
木下先生。

木下喬弘 
お疲れ様ですとしか言いようがないです。私や峰先生はこの話を去年の1月からしているので何十周目かわからないんですけども、必ず日本人であることに誇りと希望を見出す人が出てくるんですよね。僕たち(日本人)は感染対策をしなくてもいいという結論に至るんですね……これは人にもよるんですけど、私は正直、こういう方の考えを変えていただくのは無理かなと思ってまして。
なので、こういう主張は目には映るんですけど大脳には認識されないようになりました。

安川康介 
信号が入ってこないような感じですかね。

木下喬弘 
そうですね。後頭葉で止まってます。
※編集注: 視覚の信号が最初に入る脳の部位、そこから先の意識に上らないという意味

安川康介 
わかりました。峰先生、何かありますか?

峰宗太郎 
大事なことで、致死率は人口10万人当たりでよく比較されるんですけれども、日本のテレビ番組「報道1930」を見ていたら、日本・中国・韓国・オーストラリア・ニュージーランド……あと、台湾だったかな、を比較して、人口10万人あたりの死亡者数は、日本が超高いというようなことを逆に言っているということがあったんですね。

死者1万人を超えましたよね、日本で。
その報道で、日本の致死率は確か人口10万人あたり8人ぐらい?7.9〇人だとかだったと思うんですけれども、それで中国が0.〇人とかで、韓国が日本の半分くらいで0.3人くらい、オーストラリアも同じくらいで、台湾が0.0〇人とかそれくらいだだったんですけど、これもおかしな話で、この人たちは標準化死亡比というのを知っているのかという話なんですよね。標準化死亡比、 SMR っていいますけど、死亡率、致死率でもいいんですけど、通常年齢によってすごく大きな差がある訳ですよね。

安川先生が先ほど紹介されたように、年齢構成によって違う訳ですよね。そうすると地域別の死亡率というのは異なった年齢構成ではそのまま比較することができないわけですよ。
それで、比較を可能にするためには年齢構成に合わせてその国なり地域別の年齢、階級別って言いますけど、この死亡率を算出して、そして比較していくということが必要なんですよね。この SMR を出していく必要があるんですけれども。

こういった医学部生でも知っているようなことを全然やらないで報道したり、変なことを言うような人がテレビに出てたりする訳ですよ。
「比較」って科学の基本なので、どうやって比較するかというのを勉強していただくのが大事かなーって、去年の夏くらいまで思ってたんですよ。
ところが僕の脳が Taka 先生と同じようになってしまって、最近そういうこと言う人がどうも見えないんですよね。リプライ読めないんだよなぁ。どうなっちゃったんでしょうねー。
という話でした。

安川康介 
ありがとうございます。本当に重要な話だと思います。
比較という話は、重症の定義とかにも関わってきます。
日本の重症者と他の国の重症者というのは、重症の定義自体が元々異なるので、単純に比較することができないこともありますし、国ごとに人口構成も違うので、ただ数だけを見てもいけないということがあると思います。
日本人が特別何かに守られているということは考えにくいので、基本的な感染予防対策が重要ということを僕たちはずって言い続けています。
感染が爆発してしまうと、やはり死者というのは増えてしまうので、それが今起こっているのがインドです。
大変なことになっているので、「世界のニュース」ということでいつもはアメリカと日本の話と、少しヨーロッパ、という形で話をすることが多いんですが、今日はインドの話をしたいと思います。


【テーマ2】新型コロナウイルスの感染者数が爆発しているインドの状況について

アメリカの病院で働いていると、本当に色々な国の医者の方がいるんですね。
特に多いのがインドやパキスタンの方々です。
同僚に色々な国の方がいて、各国のコロナウイルスの状況の話をするんですが、今、インドが本当に悲惨なことになっているということを聞いていて、最近ニュースでも取り上げられていて日本でも報道されてると思うんですけれども、どのくらい感染者数がいて、なぜこういうことになってしまったのかという事について考えて行きたいと思います。

これについては僕は色々読んで、今回は特定のどれか1つの記事というわけではなく、全体的にまとめて話していきたいと思います。

今、世界で感染者の方が合計1億4800万人ぐらいいて、亡くなってしまった方が312万人くらいいると。一番感染者が多かったアメリカで、その数は3,200万人以上です。
2番目がインドでですね、これが1,763万人くらいですかね。3番目にブラジルが感染者が多いと。

今、世界の新規感染者数の半分近くがインドになっているという恐ろしい状況になっているんですね。インドでは、ここ最近1日の感染者が、30~35万人というものすごい数になっています。実際、これよりもはるかに多い方が感染していると言われています。というのは、検査もできないような状況で、一部の地域では検査陽性率、検査した方の何%が陽性だったかというのが、36%とかになっています。陽性率というのは低ければ低いほど良くて5%くらいがよくて、10%以下に抑えておこうというのが大体の基準なんですけれども、それをはるかに超えていますので、捕捉できていないような状況であると思います。
亡くなる方が1日あたり2,000~3,000人近くになっていて、これもある新聞の記事によると、新型コロナウイルスで亡くなっていても実際に死因として報告されていないので、実際の数字よりはるかに多くの方が亡くなってしまっていると言われています。

今回のインドの新型コロナウイルスは第2波なんですね。第1波は去年の9月くらいにピークがありました。この時は1日に10万人近い、約9万6000人の方が1日に感染していたんですけども、今回はそれの3倍以上ということで、ものすごい数で、ある記事では「第2波からみたら第1波はお風呂の中のさざ波みたいだった」というような表現があったくらいです。本当に今、大きいセカンドウェーブだといわれてます。
ある疫学者の推計では、感染者はこの2~5倍くらいなのではないかと言っています。

インドでは火葬が多いんですけども、火葬場が足りないとか、火葬場の写真などが色々なところに出ていると思います。なぜ、こういうことが起きてしまったのか、いくつか要因があると思うんですけども、まず1つに言われているのが、接触が増えたと言われています。
よくまとまっていたのが、nature の記事です。

India’s massive COVID surge puzzles scientists
https://www.nature.com/articles/d41586-021-01059-y
出典:nature 2021/4/21

かなりインドは油断していた、ということがあると言われていて、今年の初めにモディ首相も「インドは新型コロナウイルスに勝利した、克服した」というような宣言をしていて、行動が規制されることなく、色々な集会を開いたりしていたということがかなり大きな要因だと言われています。

これは僕のインド人の友人にも確認したんですけれども、大きなイベントが2つありまして
1つは、クンブメーラ(Kunmbh Mela)といって、今年はハリドワールという北部にある地域でガンジス川にみんなこぞって行って沐浴するというような宗教的な儀式があって、ここでまず感染の爆発が起きていると。

あとは西ベンガル地域で西ベンガル州議会議員選挙が行われていて、ものすごいたくさんの数の方が選挙集会みたいなのを開いていて、これが1つの原因だと言われています。
あとインドではクリケットが盛んなのですが、クリケットの試合がたくさんの観客をいれて行われていたとか、結婚式が普通に行われていたとか、本当に色々な行動が、接触が制限されずに進んでいたということが大きな原因だと言われています。

インドの結婚式というのはすごく大人数で行われるんですね。村とかだと大体200~300人くらい呼んで、中流の家庭で200~500人、裕福な層になるとなかには750~1,500人くらいの人を呼んで行うということがあると聞いたことがあります。ものすごい数の方が集まって、マスクをしないでやっていたということもあって、これが大きな要因となって感染が増えているんじゃないかということが言われています。

もう1つは、ここは峰先生に説明していただこうと思うんですけども、インドで話題になっている「B.1.617」という変異ウイルス、これは「二重変異ウイルス」と言われていたりするんですけれども、このウイルスについて峰先生、説明していただけますか?

峰宗太郎 
インドで今、主流になっている感染は「B.1.617」という名前がついている変異ウイルスなんですね。これ、実際には12個以上変異が入っています。スパイクタンパク質の一番大事と言われているレセプターバインディングドメイン(RBD)という部分、ここは ACE2 という細胞の表面に生えている分子とくっつくところですが、ここに2か所変異が入っています。ここはワクチンによってできる抗体がくっつくところでもあるので重要なんですね。だからワクチンが効くかどうかという非常にクリティカル(重大)なことに関わってくる。
2つの変異のうち1つが E484Q というものです。実はテレビで聞かれている E484K というのが今まで南アフリカやブラジル、そして日本に入ってきたフィリピンの R.2 だとか P.3 だとか見つかっていたんですけれども、この484番目のアミノ酸が変わるとワクチンが効きにくくなるんじゃないかということが言われているんですね。

もう1つが L452R というものですが、これは452番目のアミノ酸 L が R に変わっていて、これも別の変異ウイルスで見つかっています。これは B.1.429 という名前がついていて、これはカリフォルニアで広がっているものなんですね。この B.1.429 の L452R については、東京大学医科学研究所にある佐藤佳先生のラボを中心に今プレプリントが出ていまして、L452R 変異があると、ウイルスのスパイクタンパク質が細胞の ACE2 受容体に非常にくっつきやすくなるということが1つ、それから、細胞性免疫から逃れるのではないかという示唆、データとしては確実なんですけれども、どの程度影響があるかということはまだ不明な点が多いんですがそういった実験結果が出てるんですね。ですから、L452R というのは何が問題視されているかというと、ウイルスの広がりやすさにも関わっているのではないかと言われているんですね。

まとめると E484Q の方はまだ詳細はわかりません。けれども、ワクチンは効きにくくなるんじゃないか・免疫がつきにくくなるんじゃないか、そういったことが言える。 L452R という方はウイルスが広がりやすくなるんじゃないかということと、これも免疫が効きにくくなるんじゃないかということが言われているので、この2つの変異があるということで、インドやイギリスの科学者がダブルミューテーションと呼んじゃったんですね。そんなこと言ったら、南アフリカやブラジルののものなんかはトリプルミューテーションということになってしまうんですけど、
とにかく2つ疑わしいところに変異が入ってしまっているということで、実際には B.1.617 lineage はまだどういう性状・性質なのかということははっきりはしていないんですけれども、多くの研究者が注目して見ているという状況ですね。
そういった状況の中で、日本の中でもこのウイルスが検出されたということで、今日本の報道も加熱してきているかな、ということで、そういう変異になります。
ちょっと長くなりましたが、こういう説明でいいですか?

安川康介 
ありがとうございます。ワクチンがいわゆるインド由来の B.1.617 にどれくらい効くかというのは今の時点ではほとんどよくわかっていないと思うんですけれども、そういう理解でいいですかね?

峰宗太郎 
はい、ワクチンがどのくらい効くかということはまだ全然わかっていないに等しいです。
ただ preliminary (予備試験)な中和抗体の結果というのが情報的には漏れてきていまして、完全に効かなくなるということはないというレベルだとは言われています。

安川康介 
わかりました。ありがとうございます。今とんでもないことになっているインドではワクチンを受けている方というのが、1回受けた方というのが大体10%以下くらいしかいないんですね。インドで使われているのが、 COVISHIELD といって、これはアストラゼネカ(AstraZeneca)のワクチンをインドの会社が作っているものと、 COVAXIN というインドの Bharat Biotech というところが作っている不活化ワクチン、主にこの2つのワクチンが供給されています。
COVAXIN に関してはあまり情報がなくて、会社のプレスリリースでは、 efficacy(臨床試験などでの効果)が 80.6% だったということは出ていますが、実際学術的な論文にはなっていない状況です。

今、大きな問題になっているのは、とにかく入院するベッドが足りない・酸素が足りないということで、インド人の医者はインド人の医者のグループチャットみたいのものがあるみたいで、インドにいる医者が他の医者に「親戚とかが新型コロナウイルスになったから、どうにかしてベッド確保できないか」とコネを探したりしている状況になっていると聞いています。
新型コロナウイルス、特に肺・肺炎にくるウイルスですので、酸素がとにかく必要なんですね。
インドだと、酸素自体が足りなくなってきて、酸素がなくて亡くなってしまったという方がたくさんいらっしゃるということを聞いています。

僕はインドを旅行したことがありまして、病院の中に入らせてもらって見たこともありますし、 Global Health といって、世界の医療に関して興味があるので、研修医の時にネパールやアフリカのウガンダの病院に行ったりとか、去年はナミビアに超音波の為に行ったんですけれども、やはりリソースが限られている国の病院というのは、本当に脆弱なんですね。特に、感染者の方が増えて一気に病院に押し寄せると、何も治療できずに亡くなっていく方というのがいるので本当に悲惨な状況に陥る。実際にインドの地域によってはそうなっていると聞いています。
なので本当に心配しています。今からワクチンを供給するとしてもワクチンの効果が現れるまでに時間がかかりますし、それまでに亡くなってしまう方もたくさんいますので、本当に接触を、基本的な感染予防ということしかないと思います。

酸素が足りない件に関しては、今色々な国が援助をしていて、例えばシンガポールが酸素ボンベを送るとか、ドイツでは酸素の濃縮機を送るとか、他のヨーロッパの国からも人工呼吸器などを送るとか、アメリカもバイデン大統領が Twitter などでインドを支援する、ワクチンの原料になるようなものを送ることで支援していくというような事も表明しています。日本がどういう支援をするかということは、ニュースを色々探しても今のところ見つかりませんでした。

インドの感染に関して、何かコメントある方いらっしゃいますでしょうか。
いなければ、池田先生。

池田早希 
はい。私もインドに何人か友人がいるんですけれども、本当に悲惨な状況みたいですね。病院に行っても死にに行くだけだとか、その友人の1人はミャンマーで医療支援をしていて、でもミャンマーでクーデターが起こってインドに戻ってきたら、また別の悲惨な状況になったと言っていて、本当にかわいそうでしたね。もう、恐怖に怯えながら生活しているみたいで、ワクチンを打った人でも感染している人とかもいて、本当に大変な、地獄みたいな状況のようです。

安川康介 
みなさん、この Clubhouse が終わったらインドの感染者のグラフを見ていただきたいんですけれども、本当にありえないくらいの急カーブで上がっているんですね。
本当に今後どうなってしまうんだろうという……。本当に、残念で、こういうことになってしまったこと自体が残念ですね……。
さらに、モディ首相を批判するようなツイートなどをすると、そういった情報もインド政府が Twitter の会社とかに抗議をして表示できなくしようとしたりとか言論に関しても規制をし始めたりとかしていて、こういったこともかなり不安だなと思います。
もし木下先生がインドにいたら、ほぼ確実に、かなり高い可能性で BAN されているかもしれないです。

木下喬弘 
気を付けます(笑)
重要なことは2点あって、1つは冬が危ない説というのはあんまり関係ないということですよね。もちろん屋内に換気の悪い場所で集まりやすいという環境自体がウイルスの広がりやすさを後押しする可能性はありますけども、夏になったら大丈夫・春になったらなんとでもなるというような楽観論というのは全く意味がない危険な発想だということと、アジア人は守られている説に関しても全く根拠はなくて、最終的に日本人守られてる説までたどり着いてしまわれると、もうどうしようもないですね。
もちろん、極端に怖がって、例えば毎日全員検査するとかそういった発想になるのも問題ですけど、自分たちは何もしなくても大丈夫と考える方にふれてしまっても危ないですね。

最初にも言いましたが、考えや行動を変えてもらうというのは難しい人もいますけれども、この Clubhouse を聞いていただいている人は、インドの情報とかをよく知っていただいて、こういう情報・領域に触れている人に情報を共有していただくのは重要ではないかと思いました。

安川康介 
そうなんですね。実はインドでもインド人は守られているんじゃないか、という方が結構いたようです。まず BCG の話とか、インドでは大気汚染や細菌がたくさんいるから自然免疫が強いから新型コロナウイルスにかかっても大丈夫なんじゃないかとか、そういう意見もあったりしたみたいなんですね。実際、去年の9月くらいの第1波が終わって今年の2月くらいまで、感染者がかなり少なくなって「あれ、インド大丈夫だったね」みたいな雰囲気になっていて本当に油断していたということがあるんですね。
なので、本当に一瞬で感染というのはこれぐらい爆発的に広まってしまう怖い事態を目にしているのかなと思います。

ちょっと暗くなってしまったんですけれども、すごく重要なトピックだと思ったので取り上げてみました。
他にどなたか、これは何か言っておきたいという方いらっしゃいますか?
内田先生・峰先生・岡田先生あたりどうでしょうか。

内田舞 
はい、では。どちらのニュースも今は接触を避けるという点で予防対策をしっかりするしかないというメッセージを強く発信してくださってありがたいなと思ったんですけれども、やはり日本がこれだけ死亡者の絶対数がアメリカとかと比べると低く保てているのは感染対策というものが日本文化の中で、例えば手を洗う文化だったりあまりハグやキスをしないという文化という、そういう文化の中に感染対策や衛生観念というものがしっかり織り込まれているということが大きいと思いますし、
また、アメリカの中でコロナに感染してしまった場合に死亡に繋がる3大リスクは高齢・肥満・低所得という基本的なものだったという話なんですが、その時ちょうどトランプ大統領が感染した時、高齢・肥満と低所得ということで……ちょうど税金申告でトランプ大統領が毎年750ドルしか払ってなかったということだったんで、これは三大リスクがバッチリ当てはまっているのでちょっと心配になってしまったんですけれども、そういった点で日本が国として生活水準が他国より標準が高く保てているということと、肥満という点で普段から栄養観念というものが文化の中に入っていたというものが大きいと思われると思うんですね。

なので、日本人が生物学的に何か特別なものがあるから守られているということではなくて、社会の文化として感染対策というものが既に文化の中にあったということで、その点に関しては私は日本人として誇りに思うべきだと思いますので、是非ともこのまま感染対策と健康を守るための行動を続けてくださいというメッセージを送れたら、と思います。ありがとうございます。

安川康介 
ありがとうございました。本当に、基本的な感染予防対策が重要で、日本の方はここまで本当に頑張ってきたと思います。感染者が比較的少なく抑えられているのも、皆さん頑張ってきたからだと思っています。他に何か最後ありますかね。
今日はここで締めさせていただきたいと思います。
今日聴いていただきありがとうございました。明日峰先生ですかね。

峰宗太郎 
明日はですね、これ……祝日なんですよ、日本。

安川康介 
わかりました。では、皆さん、金曜日の岡田先生のこびナビの Clubhouse
楽しみにしててください。
それでは皆さん、良い1日をお過ごしください。ありがとうございました。

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