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EUがアストラゼネカワクチンを一時中断した件:その②(3月17日こびナビClubhouseまとめ)

木下喬弘
日本の皆様おはようございます。

僕はいま料理にハマっています。
リモートワークで一日中家にいて、仕事以外は食事と入浴くらいしかやっていないので、料理の重要度が高くなりました。
実は僕はパンデミックが始まるまでほとんど料理の経験が無く、今はリュウジさんのバズレシピ(https://bazurecipe.com)のYouTubeチャンネルを参考に、見よう見まねで作っています。
最近はステップアップして、ガチのイタリア料理人のチャンネルを見始め、ペペロンチーノを乳化させるためにブレンダーも買ってみました。

安川先生は普段何を作ってますか?

安川康介
僕は子供が食べられるものしか作っていません。
バズレシピのリュウジさんの炒飯はめちゃくちゃ美味しいです!

木下喬弘
いやーあれいいですよね!
リュウジさんの中華はどれもめちゃくちゃ美味しいです。

安川康介
チャーハンに醤油使わないんですよね。
僕の中でパラダイムシフトが起きました。

木下喬弘
めっっちゃわかりますわ。
ちなみにワシントンD.C.では日本食は手に入りますか?

安川康介
韓国系のHマートとかロッテで大体買えます。

木下喬弘
ボストンも殆どHマート頼りだったのですが、最近マルイチという日本食スーパーができました。

安川康介
この近くにもあります。
日本食材を扱う店が近所にあるかどうかでアメリカ生活のQOLが変わってくると思いますね。

木下喬弘
私もマルイチのお陰で大福とか食べられるようになりました。

安川康介
薄い肉とか手に入らないので、冷凍肉をスライスするミートカッターの購入を検討した時期もありました。

木下喬弘
そうそうそう超わかります!

それでは本日も「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース」をやっていきたいと思います。

昨日、アストラゼネカのワクチンがヨーロッパで相次いで中断されているという話題をご紹介しました。
EMA(European Medicines Agency、欧州医薬品庁)という、ヨーロッパの薬を承認する機関が本日結論を出す予定だったのですが、木曜日に変更になりました。
そういう理由で今日は結論は出ませんが、代わりにCNNに掲載されたかなり長い記事をご紹介します。

Have European countries made a mistake in halting AstraZeneca shots? Here's what health experts say
https://edition.cnn.com/2021/03/16/health/astrazeneca-blood-clots-europe-explainer-intl/index.html?utm_term=link&utm_medium=social&utm_source=twCNN&utm_content=2021-03-16T19%3A00%3A09

アストラゼネカのワクチンが普及するに従い、西欧で大きな問題が起きています。
問題になっているのは静脈の血栓です。

ワクチンが、静脈に血の塊ができる病気を引き起こす可能性が問題視され、各国(フランス・スペイン・ドイツ・イタリア、その他何十もの国々)は相次いでワクチンの接種を中断しています。
世界的な健康保険に関する機関(WHO、EMA等)の推奨に反して各国が使用を中断していると報じられています。

現在使用を中断している国は

ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、南アフリカ(変異ウイルスに対する効果が無かったという理由)、ルーマニア、オランダ、オーストリア、スイス、ブルガリア、デンマーク、ノルウェー、アイルランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、ルクセンブルク、アイスランドです。

タイも一旦接種を中断していましたが、現在は再開しています。
全ての国が中断しているわけではありませんが、特にヨーロッパで接種を中断している国が多いと話題になっています。

このCNNの記事を順番に見ていきます。
まず、ヨーロッパの各国政府がワクチン接種を中断したことが専門家を驚かせたと書かれています。

この記事の中に登場するマイケル・ヘッド氏(英国サウサンプトン大学のリサーチフェローで国際保健が専門)は、
「ワクチンを中断しなければいけない理由が今のところどこにも見つからず、surprising(意外、驚くべき)である」
と述べています。

そもそもどういう経緯でこんなことになったのかをCNNは解説しています。

根本の問題として、アストラゼネカが約束した本数のワクチンを供給できなかったため、EUの国々がアストラゼネカに対して、かなりのフラストレーションを抱えていたことが背景にあります。

まず、ドイツ、フランス等の主要国を含むヨーロッパの国は「高齢者に対して効かないのではないかという」疑念を投げかけて高齢者への接種を推奨しませんでした。
次に、ドイツが中心になり、EU内で作ったワクチンをEU外へ輸出するのを禁ずる契約を結びました。
実際イタリアはそれを一度実行しました。
そして3つ目の問題が「blood clot(血栓)の懸念がある」ということで、ほぼ全てのヨーロッパの国がアストラゼネカのワクチン接種を止めることになりました。

きっかけはデンマークで起きたワクチン接種後の静脈血栓の報告です。
デンマークはこれを受け、接種を2週間中断しました。
ノルウェーがすぐに追随し、そこからほとんどのヨーロッパの国々はアストラゼネカ社のワクチンの接種を中断しました。
「EMAの決定を待ちます」という声明を出し、月曜日に主要国であるドイツ、フランス、イタリア等が全面的に中断することになりました。

一方で、WHOとEMAはどちらにせよワクチン接種が静脈血栓症を引き起こす証拠は無く、ワクチンの利益はリスクを確実に上回ると言っています。
繰り返しになりますが、EMAとWHOは現時点で解析を行っている途中で、EMAは木曜日に結果を発表する予定です。

オランダでは、ワクチン接種後の血栓症が10例報告されました。
他の国でもちょこちょこ出ています。
1点注意が必要なのは、脳の静脈に血栓ができた例が7例ドイツで見つかっていることです。
足に生じる静脈血栓は1000人に1~2人の割合でみられる非常によくある病気です。
しかし、脳の静脈洞にできる血栓は稀なため、懸念点になっていると書かれています。

脳の静脈の血栓症というと相当恐い感じがすると思います。
実際に、脳出血をきたし重篤な合併症を起こすこともあります。
実は私は2年間脳外科医をやっていたのでそれなりに経験があるのですが、
「稀といえば稀ですが、全く見ないってことはない」
程度の病気で、経口避妊薬を飲んでいる若い人にも起こることがあります。

ドイツの例は7例で、CNNは100万例中5人くらいの頻度だというデータを出しています。

このデータからどういうことが言えるかというと、
「ワクチンをたくさんの人が打って10例とか5例とか血栓症が起こりました」
と言っても、多いか少ないかも原因かどうかもわかりません。
ある程度レビューがされているデータはイギリスのもので、きっちりと何回接種した人の中で何例起きているというのが判明しています。
イギリスはアストラゼネカのワクチンを1700万人に接種し、15例に深部静脈血栓症(足の静脈に血栓が生じる)、22例に肺動脈血栓塞栓症(足に生じた血栓が肺動脈に入り込む。致死的になることもある)が起きたことがわかっています。

ただ、自然に発症する症例数よりも少ない状況であると書かれているので、何人かの専門家はデータから「すごく大きな懸念ではないはずだ」と記事の中で述べています。

次の見出しは「そもそもワクチンは血栓症を引き起こすのか?」です。
専門家は「非常に考えにくいが不可能ではない」と解説しています。
これは僕たちの中でも少し議論しましたが、免疫を惹起させると血栓ができたり血小板が減ったり、出血しやすかったり血が固まり易かったりということは「起こり得ないとは言い切れない」です。
風邪をひいただけでもごくごく稀に免疫の病気になって血小板が減ることがあります。
血栓が生じることも、免疫系に介入すると「メカニズムとして絶対にあり得ない」と言えるほどではないのです。
ただ「このワクチンを接種したせいで、こういうメカニズムで血栓ができる」ということは明らかになっていないと注釈を添えています。

今までのワクチンで稀な合併症が起きたことがあるかについてですが、2009年のH1N1(ブタインフルエンザ)ワクチンで、ナルコレプシーという病気と関連があることが後にわかった稀な例があります。

国際的な健康保健に関する機関(WHO、EMA)は、アストラゼネカのワクチンについて「コロナウイルスの感染を防ぐことはわかっているし、入院や死亡のリスクを下げるメリットがあり、それは副反応のリスクを確実に上回るので推奨する」という見解を示しています。
まとめて木曜日にEMAが声明を出すことになっています。

以上で記事をほぼカバーしました。
最後に、これらの情報がワクチン忌避を引き起こすかどうかという論点について、登壇者の先生方に追加のご意見や解説をお願いしようと思います。

どなたかコメントをいただけますでしょうか。

安川康介
あ…。

木下喬弘
安川先生いっつも先陣切っていただいてありがとうございます。

安川康介
沈黙が続くと話した方がいいかなって思うんです(笑)

木下喬弘
ありがとうございます。
本当は今日結論が出てるはずだったんですよね。

安川康介
そうですね。
深部静脈血栓症といっても色々な部位に血栓ができことがありますが、太ももに起きる病気が一番多くて非常によく見ると昨日もお話ししました。
大体アメリカ人だと1000人に1人で、アジア人だと他の人種の方に比べて頻度が低いということもお伝えしました。
今日EMAのウェブサイトに掲載された文書(https://www.ema.europa.eu/en/news/investigation-covid-19-vaccine-astrazeneca-thromboembolic-events-continues)を読むと
cases of blood clots, some with unusual features such as low numbers of platelets(血小板低下を伴う深部静脈血栓が起きた)
と書かれています。
臨床の現場にいて深部静脈血栓症が起きても特に何も感じたりしないのですが、もしかしたら「何か普通とは違うな」と強く感じる静脈血栓症が起きていて、それがレポートになったのかなという印象を受ける文章でした。

単に深部静脈血栓症が起きたというだけではなく、どういう深部静脈血栓症が起きていたのか、普段見る深部静脈血栓症と違うケースがどれくらい起きているのかを慎重に見なくてはいけないと思います。

木下喬弘
ご指摘の通りで、確かに普通は血小板減少は伴いません。
ただ、血小板減少と言っても何を持って減少というのか。例えば「元の血小板数がわかってるのか」とか「8万なのか5千なのか」でも全然違います。
ここまでで得られた情報がざっくりし過ぎていて、ワクチンのせいなのかどうか判断するのが難しいですよね。

安川康介
そうですね。やはりそれぞれのケースをしっかり見ていって、慎重に判断しないといけません。

池田早希
安川先生の仰ったとおり、ただの塞栓症というだけではない可能性がありますよね。
これからのデータや評価に期待をしたいと思います。

色々な有害事象が報告されていますが、また今回のClubhouseでも強調したいのが、その病気の定義が大事ということです。塞栓症ももちろんですが、他の有害事象に関しても定義がしっかりしていないとその後の議論が難しいので、ブライトンコラボレーション(Brighton Collaboration)を中心とした国際的な定義が大事です。日本もこれから色々な有害事象の検討が行われますが、それぞれについて国際的に用いられる定義をしっかり満たしているか考えた上での議論がすごく大事だと感じています。

木下喬弘
ありがとうございます。
ブライトン分類の話が出たので解説いたします。
ワクチンを打った後の安全性を調べるための疾患定義は国際的に決まっています。
アナフィラキシーに関しては日本アレルギー学会も診断定義を作っていますが、それとは別のものになります。
「ワクチンの接種後に起きた副反応としての疾患定義を国際的に統一しよう」という目的で、ワクチン接種後に何例こういう診断になったか、即ちブライトン分類に則った症例が何人いたかを国際的に比較できるよう定義を作ります。
それがブライトンという集団のやっていることです。

池田先生のご指摘は、定義に則って有害事象の数を数えるのが重要だということです。

ちなみに池田先生、ブライトン分類でDVT(深部静脈血栓症)の定義は決まっていますか?

池田早希
実は決まっていなかったようで、私の職場の上司がこの24時間以内に専門家を集めてアストラゼネカのワクチンの審議のために新たに定義を作っていると言っていました。
今ドラフト段階なのですが、それを元に議論を進めていくそうです。

ちょっと話脱線していいですか?ちょっとだけ。

木下喬弘
どうぞどうぞ。

池田早希
例えば発熱の定義も凄く重要になります。
ブライトンコラボレーションはこれまでに58以上の定義を作っていますが、最初に作ったのが発熱の定義です。
その定義によると、発熱は38℃以上です。
しかし、日本の医療従事者160人で最初の副反応の検討をしていますが、そこでは37.5℃となっています。
定義が違うと比較が難しくなり、頻度も変わってきてしまうので問題だと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。アナフィラキシーも日本は世界に比べて多いのではないかと言われていましたが、半分以上はブライトン分類の基準に合致しませんでした。
ただその説明は難しく、なかなか伝わらない印象です。
頑張って説明して一部の方にはご理解いただいていますが、報道で「日本はアナフィラキシーが多い!」とドーンと出ると、そのままのイメージが残ってしまいます。
医療従事者の先生方でも「アナフィラキシーが起きたときの対応が心配だからワクチン接種を躊躇している」というお声を時折いただきます。

国際的な定義に則って比較するのは非常に重要です。
日本のワクチン行政の改善点として考えるべきだと思います。
厚生労働省ももちろんこのブライトン分類に則ってアナフィラキシーの審査をしていますが、そもそも論として第1・2相試験で報告されている発熱の定義が37.5℃で、日本だけ違う定義を使っているのでちぐはぐな情報提供になるリスクをはらんでいると私は思います。

何かこの件についてコメントのある方はいらっしゃいますか。

峰宗太郎
今のブライトンの続きなのですが、もし木下先生が知っていたら教えて欲しいのですが、なぜ日本の専門家はこの国際的なコラボレーションボードに参加させてもらってないんですかね?

木下喬弘
僕が知ってるわけないじゃないですか(笑)

峰宗太郎
行政が意見交換をしているというのは聞いていますが、日本の専門家の学術団体は国際交流があまり盛んではないのかなといつも疑問に思っていました。
それが、こういうときに出てきますよね。
もう一歩今後の課題かな、臨床の先生も頑張んなきゃいけないのかなと思います。

木下喬弘
なるほど。そういう問題は確かに非常に大きいと思います。
どうぞ安川先生。

安川康介
これを聞いている非医療従事者の方は
「なぜそんなに診断基準がなければいけないのか」
という疑問を持つかもしれません。
病気って、はっきりしないことが多いのです。
多くの病気に診断基準が設定されているんですね。
うつ病、全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチなど、病気の診断というのはグレーゾーンが多く、同じ物差しで比較できるように診断基準が存在します。
それを使って副反応の割合も比べられる方が良いのです。
白か黒かというのは医学では意外と少ないため、診断基準というものが重要になってくるというお話を付け足します。

木下喬弘
仰る通りで、確かに誤解されているかもしれません。
僕たちも臨床をしていて「画像的に明らか」という状況があるなら別ですが、「確実にこの病気だ」と言えないことは多く、診断基準は非常に重要です。
今回のブライトン分類の何がトリッキーかというと、臨床的な診断基準とは異なる、ワクチン専用の安全性評価のための診断基準であるということです。

臨床をやっている医師からすると、それを知らないと一定の報告が難しくなり、そこがトリッキーな部分と言えます。

池田早希
あと大事なのは、ブライトン分類はワクチンとの因果関係を示すものではないということです。
ただ、有害事象として検討すべき項目があり、その項目を満たしているかどうか、どれくらいその診断が確からしいかを示す分類だということを念頭においていただきたいです。

木下喬弘
因果関係を調べることになれば、passive surveyとかの問題もあると思いますが、アメリカのシステムについて解説していただけますでしょうか。

池田早希
因果関係に関しては色々な方法があると思いますが、case definitionを満たした上でbackground rate(その診断名の疾患が、ワクチンを接種していない人で起きる頻度)を検討し、比較するようなシステムが存在します。

木下喬弘
いわゆるVAERSで、これバーズですか、ベアーズですか?
あ、ベアーズなんですね、熊のほうですね。いやなんでもないです。

池田早希
Vなので。

安川康介
くちびるに少し歯を当ててください。

木下喬弘
まさか発音で怒られることになるとは思いませんでした(笑)

VAERSという報告システムがあり、これはワクチン接種後に起きた有害事象をどんどん報告するものです。
この発生数が、統計学的に自然に起こっている頻度と比べて多いとアラートがかかり、積極的にその疾患がどれくらい起こっているかsurveyしに行きます。
これがアメリカの、ワクチンの副反応の因果関係を調べるシステムと理解しています。

※注
当日のClubhouseでは「VAERSでは自然発生の2倍以上でアラートがなされる」と表現しましたが、「Empirical Bayesian Geometric Meanの90%信用区間の下限(EB05)が2以上」という基準が慣習的に用いられているというのが正確でした。解釈としては、「自然発生より多いかどうかを調べている」が適切です。

安川康介
エモリー大学のワクチン研究者の紙谷先生に聞いて僕のYouTubeでもご紹介したことをお話しします。

有害事象を報告するVAERSは、ただ単に「こういうことが起きたから報告しました」というシステムですが、他にもVaccine Safety Datalink(VSD)というシステムがあります。
VSDは有害事象の報告に臨床データがくっついたデータベースです。
アメリカではVSDのおかげで一歩踏み込んだ因果関係の研究が可能です。
例えばインフルエンザワクチンと血栓に関係があったか、VSDのデータを使用して論文化されています。
日本には同様のシステムが今は無く、副反応の研究を考える上での日本の課題だと紙谷先生は仰っていました。

木下喬弘
ありがとうございます。
VAERS自体は最初のアラートを鳴らすためのシステムで、厚生労働省の有害事象の報告システムとかなり近いです。
それにプラスして積極的に臨床的なデータも取って因果関係を調べるシステムがあると理解しています。
紙谷先生が一番詳しいと思いますので、紙谷先生とお話しされた安川先生が一番正確だと思います。

CNNの記事ですが、特にロンドンからの報告なので、記事の中に出てくる専門家の意見としては
「なんでアストラゼネカのワクチンを止めているのかわからない」
「政治的な介入の匂いがする」(陰謀論的なことを言うのは好みませんが)
という論調です。
いずれにせよ、アストラゼネカ社に対する欧州各国の不信感が根底にあるのは間違いなさそうです。

現時点で間違いなく言えることは、
・血栓症とワクチンの因果関係が証明されていない
・ワクチンが重症の新型ウイルス感染症を防ぐ効果は確実である
・メリットがデメリットを上回るので、ワクチン接種を止めるべきではない

というのが大方の専門家の意見であり、WHOも同じことを言っています。
最終的にはEMAが木曜日に結論を出し、各国がそれに従ってワクチン接種を再開するかどうかが決まります。
以上がまとめになります。

ご参加の先生方で何か追加がございますか。

岡田玲緒奈
こびナビの岡田です。小児科医です。
今回の後半戦のお話は、国際的に比較をしようというコンセプトに基づいた定義なので「臨床上でそれを満たさないとエピネフリン(=アドレナリン)を打てないのか」とか、「治療を開始できないのか」というのは無いと考えています。
特にアナフィラキシーは進行が速かったりするので、現場の判断で治療を開始することも可能です。定義を満たさないとやってもらえないとか、定義にこだわって臨床が動くのも違うというのは追加しておきたいです。

木下喬弘
非常に重要なご指摘です。
アナフィラキシーについてもブライトン分類があり、日本でそれを満たしたのは半分以下だったとお伝えしました。
残りの半分の症例は多分アドレナリンを筋肉注射されたと思いますが、その判断が間違いだとかそういうことではなく、あくまでもワクチンの接種後のアレルギーで臨床的にアナフィラキシーと診断し、アドレナリンを筋肉注射して治療するのは、それはそれでOKです。
ただ、報告基準として国際的な比較をし、日本における安全性を議論する場合においては、ワクチン接種後の安全性の評価基準であるブライトン分類を使う必要があるということです。
岡田先生ありがとうございました。

5分超過なので本日はこの辺りに致します。

アストラゼネカの話、皆さんだいぶ飽きたと思うので、明後日、日本時間の金曜日に最終的なEMAの結論はお伝えするとして、明日以降は違うワクチン関連の話にします。

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それでは本日はここまでです。
ご登壇いただいた先生方ありがとうございました。
日本のみなさん、良い一日をお過ごしください。

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