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新型コロナワクチンの医薬品承認審査、日本の医薬品承認審査の課題について(5月14日こびナビTwitterspacesまとめ)

こびナビ広報

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5月14日(金)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター:黑川友哉(←クリックでTwitterに飛べます)


木下喬弘 
日本の皆さんおはようございます。
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース、今朝もやっていきたいと思います。
今朝は”こびナビの良心”こと PMDA (医薬品医療機器総合機構、以下 PMDA)の薬事経験者で耳鼻科医の事務局長、黑川先生がモデレーターです。

黑川友哉 
おはようございます。いやー、今日はドキドキしちゃいますね。皆さん、よろしくお願いします。

一同 
よろしくお願いします!

黑川友哉 
それでは、今日のニュースは……これはもう始めてよかったでしたっけ?

木下喬弘 
大丈夫ですよ、無理に引っ張らなくて(笑)。そういうルールではないので。

安川康介 
あのー、でも古事記か料理の話をしてもらわないと多分始められないと思います。

木下喬弘 
またややこしい事言い始めた(笑)

黑川友哉 
あの古事記専門医はどうすればいいんですかね。僕は古事記専門医持ってないので、ちょっとそれは難しいんですけど……じゃあ今日はもう始めていきたいと思います。


【日本の医薬品承認審査・課題とは?】

今日はこびナビの黑ちゃんが解説する世界の医療ニュースということで私こびナビの事務局長をやっております、黑川友哉が世界のニュースをお知らせしていきたいと思います。
今日の話題は2つ用意しているんですけど、もしかしたら1個で終わっちゃうかもしれないですが、まず1つ目です。

Japan vaccine chief blames drug approval system for slow inoculation drive
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/japan-vaccine-chief-blames-drug-approval-system-slow-inoculation-drive-2021-05-13/
出典:ロイター通信 2021/5/13

Japan vaccine chief 、河野太郎先生、日本のワクチンの責任者が、薬事承認制度が原因で予防接種が遅れていると指摘した、というニュースを解説してきたいと思います。

河野大臣は水曜日に放送された TBS のインタビューで、そんなお話をされていたそうなんですけれども、危機的な状況・パンデミックの中でもなおワクチンの承認に平時と変わらない同じルールを使っている、と述べています。
詳しくお話すると、”平時と同じルール”というのは、おそらく日本国内での治験を求める、ということですね。
海外で大規模な RCT (ランダム化比較試験)と言って、ランダムにワクチンを打った人・打たない人とで分けて、その有効性を新型コロナウイルス感染症の発症者の数で比較した、そんな第3相試験を実施して、そこで有効性と安全性をしっかり見られているにも関わらず、また国内での治験を求めているということ。これをもって「平時と同じルールを使っている」とおっしゃったのだと思います。
これは「同じルール」と言うと、ちょっと語弊があるかな、今回、緊急承認という承認のされ方をしているので、もう一度説明すると、普段とは少し違うような承認の考え方をしている、というのは少し後で説明をしていきたいと思います。

記事の要約をしていくと
今回のコロナの事態を受けて、行政は変わる必要がある、と。これはもう、その通りだなと思います。今回の承認プロセスは、国内の既存のルールの中でもできる限り早く、ということで最速に承認を得られたと思いますが、必ずしも今回のやり方が正しかったのか、というのはしっかりと見直していかなければいけません。

続けます。
日本政府は、2021年7月末までに65歳以上の人口にあたる3600万人のほとんどにワクチン接種することを目指している。昨年、新型コロナウイルスが世界に蔓延していたために延期された東京オリンピックは2021年7月23日に開幕する予定です。このオリンピック開催のため、政府はワクチン接種のペースを現在の約3倍の速さで、1日当たり約100万回の予防接種を行いたいと考えている。このコロナウイルスの危機の初期段階から、政府はワクチンの安全性と有効性を確保するための規制措置を省略しませんと宣言している。
これは国内での臨床試験や審査に数か月を有することを意味します。

私は TBS の番組で河野太郎氏が実際話されているのを直接見たわけではないので、実際に話されたのかどうかは分からないんですけれども、ファイザーがワクチンの製造販売を日本の PMDA に承認申請したのが2020年12月で、実際に承認されたのが2021年2月の半ばです。2か月ぐらいの審査期間を取っているんですが、個人的には結構早いんじゃないかなと思っています。

続けていきます。
他のいくつかの国ではワクチンをより早く普及させるために緊急承認というシステムを導入しています。日本でも似たような緊急承認ですが、日本は少し遅いよねという指摘ですね。
日本では、ファイザーとビオンテック社が開発したワクチンが2021年2月中旬に承認されました。これは米国に比べて2か月遅れたもので、この遅れと多くの物流上の問題によって、日本でのワクチン接種率は人口のわずか2.9% にとどまっています。(5/14当時)
これは裕福な国の中では最も低い水準となっていますし、記事内で指摘されていますね。

ファイザーは2020年10月に日本での臨床試験を開始し、160人の被験者(ボランティア)を募集しました。一方 アストラゼネカ社(以降アストラゼネカと略)は256人の被験者を集めて先に日本での臨床試験を先に開始していました。実はアストラゼネカの方が日本での国内臨床試験を開始したのが早かったんですよね。ボストン在住の日本人医師研究者である木下喬弘……これ私の知ってる木下さんですかね。

木下喬弘 
多分そうだと思います(笑)

黑川友哉 
彼はこのような少人数の試験は really meaningless だと。本当に意味がないと述べておられると。

木下喬弘 
なんてことをいうんだ(笑) そこまで言ってないと思うんですけどね(笑)

黑川友哉 
気持ちはすごく伝わります(笑)
実際に治験もかなりのスピードで開始されたので、かわいそうだなという気もしますけども、科学的にどの程度の意味があるのかというのは大きな問題だと思いますね。さて、この木下氏によると、国際的な臨床試験では、十分な数のアジア人が含まれていて、アメリカに在住の日本人の方々も治験に参加して結果を出しているという中で、その遺伝子型における安全性は確認されているとおっしゃっているんですね。
日本の臨床試験・長い審査・遅い展開というのは、 HPV や他の病気に対する過去の予防接種キャンペーンを弱体化させました。これはワクチンに対する国民の不安を惹起する、とおっしゃられています。これも木下先生の発言ですよね。

木下喬弘 
そうですね。これは間違いなく言いましたね。

黑川友哉 
これはすべてのワクチンをためらう行動に繋がっているんだ、と木下氏は語ると書かれています。その通りですよね。
『厚生労働省及び医薬品医療機器総合機構(以下 PMDA)からは、河野氏の発言についてコメントを求められたが、すぐに回答しなかった。』
これ、やめてあげてよというのが私の感想です。
今、モデルナやアストラゼネカの審査でかなり差し迫った状況で忙しいんですから、そんな難しい質問を投げないであげてほしい、と思いました。
最後、『世界的なコンサルタント会社である CNC 社が水曜日に発表した調査によると約75%の日本人がワクチンの展開に不安を持っている。日本はパンデミックに対する政府の対応について主要6カ国の中で最も低い満足度・水準だった』ということですね。

私のコメントを先にお話させていただきますと、まず2点。
1点目は国内治験の結果を待つせいで審査期間が長くなってしまうんじゃないかということ
もう1点は国内試験を求める意味はどこにあるのかというのが、非常に重要な論点だと思っています。
まず1点目。審査期間が長いということについてですが、アメリカではファイザー・ビオンテック社のコミナティは2020年11月に申請されて 、承認自体は12月です。この1か月という期間は、めちゃくちゃ早いスピードです。
これは開発の段階から綿密にアメリカの規制当局、 FDA とコミュニケーションをとりながらそこまでの時点で随時データを共有しながら開発を進めていたという、非常に先進的なプロセスをとっていたので、たった1か月で審査報告書・委員会・外部の諮問委員会などが開催できた、というカラクリになっていると思います。
一方で日本はどうかというと、国内の臨床試験が2020年10月に始まって、確か PMDA にその結果が提出されたのが2021年1月後半くらいだったんですよね。
承認されたのが2月半ばです。日本で承認の申請がされたのが2020年12月の半ばなので、約2か月の審査期間なんですね。あまり比較対象として適切じゃないかもしれないですけど、通常の日本の薬剤承認のための審査期間は、平均すると約1年なんですね。過程としては、このお薬を審査してくださいと製薬会社の方が申請に必要な資料をまとめて PMDA に提出してから、厚生労働大臣が承認のハンコを押すまで、これが大体平均1年、と言われています。
今回は平常時と比べて、非常に早い審査がなされている。
パンデミックですので当然かなと思います。加えて、今回のワクチン、アメリカの審査期間が1か月・日本が2か月ですので、この日本の審査期間は長いか?といわれると、私はそこまで思いません。ちょっと言いすぎなのかなと思いますね。
ただ、確かに承認申請ですよね。日本に申請してきたタイミングが12月半ばだったのは、国内治験の結果を待たなければといけないという企業心理が働いたことには間違いないはずです。では、本当に国内治験が必要だったのかという話に移っていきたいと思います。

この論点については背景を理解していかなければ議論がなかなか難しいと思います。
そもそも、なぜこの国内治験を求めるのか、第3相試験の結果があるのになぜ各国でまた治験をやり直さないといけないのかというのは、基本的な考え方として ICH-GCP のガイドラインというものがあります。
これは国際的な規制当局・製薬会社などが集まって、世界の規制のあり方とか、薬事承認プロセスのあり方をどうすべきかなどを話し合っている大きな会議体です。
この中でガイドラインというのがたくさん出されています。
例えば、有効性に関する考え方は ICH-E(Effficacy)というセクション、
安全性に対する考え方は ICH-S(Safety)など、複数のセクションに分かれていてかなり多くのガイドライン・ガイダンスを出しています。
その中で、ICH-E6 というセクションに入っており、臨床試験のルールブックとして非常によく知られている GCP(Good Clinical Practice の略)という鉄壁のルールがあるんです。
これは世界中で絶対守らないと治験できない、というルールなんですね。
そんな中で、別の ICH-E5 というセクションでは、民族的な要因が集団の遺伝的・生理学的な要因と文化・環境的要因に分類されると定義して、国際共同治験を実施する際にはこの民族的要因の差異・差分をちゃんと見ましょう、また海外臨床試験の結果をもって日本で承認をしようとする場合には民族的な差異というものをちゃんと見ましょうね、ということが書かれています。
これはあくまでも平時のルールとして基本的な考え方ですので注意しないといけないんですけど、ICH-E5 では、有効性・安全性について海外の人と国内での差異というものを、遺伝的生理学的な内因性要因と、外因的要因(文化的・環境的要因)の2つに分けて、考えなければいけないという事が書かれています。
もう一つ、 ICH-E17、17番目ですが、これは国際共同治験の考え方についてガイダンスが出されています。現在は、国際共同治験をどんどんやっていきましょうというのが世界の主流なんですが、当然今回のコミナティの第3相試験のように、第3相試験に入れなかった国があるわけですよね。
この試験に入れなかった・除外された国/地域において、疾患あるいは医薬品をさらに検討するための追加の戦略というのを考慮しましょうねということが ICH-E17 には書かれています。
追加の戦略を考慮するというのは、一番分かりやすいのは臨床試験をやって、 ちゃんとしたデータを集めましょうということです。ではそこをどうやって集めるか・本当にまた同じ第3相試験みたいな規模の試験をやらなければいけないか等、そういう詳しいところまでは言及はされてはいませんが、ちゃんと民族的差異というものを考えましょうということです。
その際、遺伝的な要因だけではなくて環境的要因もしっかり考える必要がある、これが大前提として普段から適用されている考え方です。

ICH-E5 に書かれている、海外の臨床試験を日本に適用するにあたって必要とされる国内での小規模な臨床試験のことをブリッジング試験と言います。”海外のデータを日本で実装させるための橋渡し”という意味で”ブリッジング試験”と言うんですけれども、これを行うのが通例です。
今回、コミナティの開発において、ファイザーと PMDA が国内治験の相談を実施していたのがおそらく2020年7月ぐらいだと思われます。2020年10月から試験が開始されているので、7月ぐらいには 国内治験どうしましょうというお話をしてたと思います。
その時点では、まだ メッセンジャーRNAワクチン(以降 mRNAワクチン)のリスクがどの程度のものなのか・有効性がどの程度のものなのか、というのがほとんど分からない状態だったので、今まで通例的に行われてきており、必要とされてきたブリッジング試験なしで開発を進めていこうというのは、逆に企業にとっても非常にリスクだったということは配慮しなければなりません。ですので、この国内第1相試験を実施したこと自体は、開発上の事を考えると、私は正しかったのではと思っています。
ただ一方で、国内治験の結果を本当に待たないといけなかったのかというのは面白い・重要なところです。今回日本でも緊急承認という特殊な承認のされ方をしています。パンデミックの状況の中で早めに使えるお薬を承認しないといけないという考え方で、今回のような緊急承認をしているんですけれども、そこでもやっぱり国内治験の結果を待たないといけなかったのかというところは、コンセンサス(合意)がないと思います。

実際に米国在住の日本人での安全性も第3相試験の中でも見られているはずですし、そこが議論すべきところではなく、今回の記事の中でも行政は考え方を変えなければいけないと書かれてあります。
たとえ国内治験を待たなかったとしても、審査期間というのは大体1か月くらい早くなったかなと思いますし、そしたらまたオリンピックに向けた状況というのも変わっていたかもしれないです。しかし、そこまで劇的に承認が早まる訳ではありませんし、例えば国内治験をやらずに日本にワクチンが入ってきて、”実はそれは非常に希少なリスクですが血栓をきたしうるものですよ”という情報が新しく出てきたときに、一気にワクチンの接種が止まってしまう恐れもあるわけです。
日本人のデータが全く取られていないとなってしまうと、それはまた厳しい話になります。逆にワクチンの接種がその後普及が遅くなってしまうリスクというのも考えなければいけないかなと思います。
ということで、ここまでザーッとしゃべってしまいましたけど、登壇者の皆様いかがでしょうか。コメントいただければ。

木下喬弘 
僕が国内第1・2相試験を meaningless と言った疑惑があるという話については、英語だったので細かいニュアンスが伝わらなかったんではないかと言い訳しておきます(笑)
でも、実際科学的に考えてみれば、meaningless だと思うんですよね。
そもそも第2・第3相試験を一緒にやっていて、そこに1,000人以上のアジア人が入っていたわけです。それなのに160人の日本人で国内治験をやったところで、希少な副反応はわからないので、科学的には意味がないかなと思うんですよね。

ただ実は、去年12月予防接種法の公開審議で、国内治験をやらずにワクチンを承認するとよくないということで、厚生労働省がかなり批判されているという話があるんですよね。
衆参の付帯決議があるんですけど、「まず新しい技術を活用した新型コロナウイルスワクチンの審査にあたっては、その使用実績が乏しく、安全性・有効性についての情報量に制約があることから、国内外の治験をふまえ慎重に行うこと」と書かれているんですね。ということは、国会で国内できちんと治験を行うようにと言っているわけです。これだと厚労省が国内試験をパスするのはかなり難しいでしょう。

やはり、海外でのワクチンの治験がこういう状況であるということはしっかりと専門家は説明して、本当に国内での治験がいるのかどうかということを審議できるようにすべきだと思います。また、なんとなく新しいものだから安全かどうかわからないから・怖いから国内治験をやるべきだというあまり大局観のない理論で議論がなされている、というのが今回の問題としてあると思います。

黑川友哉
ありがとうございます。その通りですね。

内田舞 
私も Taka 先生と同じ考え方で、国内での治験が必要だと判断された背景というのは日本のワクチン忌避というのが強い中で、急いでちゃんと審査しないで承認した、という印象を持たれてしまうことに対して懸念が強かったという、科学的な理由ではなくて心理的な理由の方が大きかったのではないかなと私は予想しています。
これに関しては、 Taka 先生がおっしゃったように、すでに外国でアジア人を含めた何万人もの人が治験に参加して、有効性・安全性が証明されていて、さらに今年の初めという時にはすでに何億人もの人が世界中ですでに接種されているリアルデータもある状況だったので、それに加えて日本の160人程度の規模での治験をするというのは、科学的には meaningless というしかないなと思います。
科学的でなくても国民の感情を考えると科学的ではないプロセスを通らなければならないといった社会状況だったのではないかなと思います。
その際、国民の感情というところが大きな要因になることに関して、不安という感情というのは本当にパワフルなものだなと。こんなに大きな影響を及ぼしてしまうのなんだなぁと考えてしまいます。

日本の赤十字も言っていることなんですけれども、”感染と不安と分断差別の悪循環”というものがありまして、感染が増えると不安が増える。その感染に対する不安またはワクチンに対する不安があると、怖いものから身を守りたいと思うがために、いつも以上にそれを悪いものと思ってしまう。不安という感情がある時には気づく力だったり聴く力・自分を支える力を弱めてしまう。その結果、分断差別が生じたりして、その結果、正しい知識が行き渡らなくなって感染の拡大に貢献するといったこういった悪循環があるということがよく言われていて、私は本当にその通りだと思っています。
この不安を基にした悪循環の中で、そのサイクルを断つには transparency と peer review が必要になると思うんですね。
transparency というのは日本語で言うと、透明性・透明度が高い情報開示という感じですかね。
peer review というのは、第3者、Stakeholder (関係者)ではない専門家が何人もが審査したものだということですね。
この2つが非常に重要になるので、アメリカでの FDA のワクチンの審査のずいぶん前から臨床試験の情報が開示されていましたし、許可申請された際には全文公開されていました。また、緊急使用許可にむけての FDA 内での討論・投票がライブ中継されました。このあとデータが論文として公開される際にも、何人もの専門家がちゃんとした研究の手順と理論で分析をしているかと検討した上で公開されたものだったので、この上ない transparency と peer review が関わったものだったという印象を私は受けたんですね。
きっと日本でもこの transparency と peer review というのは厚生労働省内でも科学者コミュニティの中でも、しっかりと行われていると思うんです。
でもその transparency と peer review がこれだけ重要視されて、これだけのプロセスを踏んでいるということ自体が 国民に対して transparent ではないというか、見えてないというところが、日本人のワクチンに対する不安というもののレベルを変えてしまっているのかなと思うところがあって、そんなこともふまえて日本の承認が遅れてしまったところもあるのではないかなと私は感じております。

黑川友哉 
ありがとうございます。おっしゃる通りで、この今回の治験を行う背景にはやっぱり国民の不安というものが大きく関与していて、その不安を払拭することも非常に重要かもしれないポイントは透明性なんだろうと。
それと、 peer review ですよね。そこも重要になってくるんだけど、日本でも実際は透明性をもって審査はされているはずなんですけども、国民の方にはその透明性は伝わっていないという透明性ですよね。
背景には知財管理というものが日本は厳格で、今公表されている審査報告書も黒塗りがあって、日本人て黒塗りとかって、陰謀といったイメージを抱きやすい・つながりやすいと思うんですよね。

内田舞 
どんなところが黒塗りされているんですか?

黑川友哉 
これは企業の知財に関わるところで、審査報告書ができた時点で企業の方にそれを見ていただくんですね。で、企業の方にマスキングをしてもらうんですよ。実はこれはあまり言われていないことだと思うんですけど、マスキングしているのは PMDA の方から企業の方に依頼をしてマスキングをしてもらっているという状況なんですよ。そんな結果で、黒塗りの部分がある審査報告書があるので、「こんな報告書信じられない」と言われてしまうような状況になってるんですよね。
この背景には知的財産法などが関与しているので、なかなか難しい状況もあるかなとは思っていますけど、それが国民にどういう風に映るのかという事も、製薬協とか厚生労働省・ PMDA などの行政が合同で話し合いながら、どこまで審査報告書で明かしていくのか審査プロセスを国民に伝えていいのかというのは議論していかなきゃいけないかなと思います。
他、登壇者の先生方いかがでしょうか?
ひまみみ先生、いかがでしょうか?

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※参考:
審査報告書のページの一部。知的財産の観点から、黒塗りが多い。
(コミナティ筋注の審査報告書より)
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000739089.pdf


前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生 
黑川先生の言っていたことの中で、1つわからなかったことがあるんですけど、国内治験の結果を待たずに、薬剤の申請に入ったらよかったというような内容のことをおっしゃってましたか?

黑川友哉 
私は結構そういう主張をちょいちょいしてるんですよね。実際は、それもどうかなという意見も私の中にもちろんあって、せっかく実施した国内治験の結果を待たずに審査するのであれば実施しなければよかったじゃないかというような話にもなってしまうので、難しいところではあるんですが……

前田陽平先生 
あーなるほど。みんな常にそういう突っ込みを気にしながらやっているということなんですね。要するにここにいる方々、みなさん大局観の方がそういう分かっていない人からの突っ込みよりよほど大事だと思っているけどそこらへんが揚げ足取りの人に対応するためにどんどん遅れているという側面があるのかなと思いました。
あと、内田先生の言われたことは僕もすごく大事なことだなと思いました。
透明性と peer review ということで。ただそもそも透明性と peer review が大事ですよということをまずみんなのリテラシーをあげて分かってもらうということがすごく大事だなと思いました。
透明性と peer review が大事という観点を持っていれば、何かよくわからない国産ワクチンを臨床試験を省略してでも承認した方がいいなんてことには当然なるわけがないので、これはまさしく透明性と peer review を確保した上でどうするかという大前提がみんなあってのことなので、「みんな国産だから簡略化して承認したらいいだろう」というのは何言ってんのという感じにまともな人はなると思います。
だから、みんなのリテラシーをあげていくということがすごく大事なのかなと思いますね。内田先生の話を聞いていて改めてそれをすごく感じました。

黑川友哉 
前田先生、もう100点のまとめをいただいてありがとうございました。
今日は、このコミナティの承認審査のプロセスと今の問題点を中心にお話をさせていただきました。
私はかつて PMDA という組織に所属をしていました。今も非常勤で所属しておりますけれども、そういった経験から、今後も何かコメントとか記事を取り上げていければと思っております。
それでは、日本のみなさま良い1日をお過ごしください。
アメリカのみなさまはおやすみなさい。

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