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ブレイクスルー感染とはなにか?(4月22日こびナビClubhouseまとめ)

こびナビ広報

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2021年4月22日(木)
こびナビの峰が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター: 峰宗太郎


【オープニングトーク】

黑川友哉
おはようございます…?

木下喬弘
おはようござ…います…?

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
おはようございます!

峰宗太郎
おはようございます!
ということで皆さんからなにか雑談はありますか?
もう入っちゃってもいいんですけど、入っちゃうとそれはそれでいつも通りなので…
安川先生、何かありますか?

安川康介
今仕事が終わって帰っているところです。

峰宗太郎
5点ですね、5点です。
ひまみみ先生、何かありますか?

前田陽平先生
昨日僕がいないっていう話題が出たというのをツイッターでチラッと見たんですけど、一体何だったのかな?ということだけ気になりました。

峰宗太郎
あ!それは知りたいでしょ?

前田陽平先生
めっちゃ知りたいです。

峰宗太郎
内緒です(笑)
池田先生、何かありますか?

池田早希
玲緒奈先生が峰先生と Clubhouse で話す前に、実はインスタライブの練習をやっていたんですよね、コロナウイルスワクチン Q&A で。

岡田玲緒奈
そうなんですよ。

池田早希
楽しかったですよね!

岡田玲緒奈
楽しかったですね! 池田先生が RNA が細胞に入るところという踊りを作ってくれまして。
ぜひインスタの方でチェックしていただけると!

池田早希
踊り??いやいやいや!

峰宗太郎
いいですねぇ。

池田早希
こびナビ TikTok を始めてもいいかもしれないですね!

峰宗太郎
例の「踊ってみた」みたいなやつですね!
十分場もあたたまったかと思うので、今日のニュースに早速入っていきたいと思います。


【ニュース1】治療薬などに関するさまざまなニュース

今日は「こびナビの峰が解説する世界の最新医療ニュース」ということで、今日もいろいろ動きがありましたね。
たとえばメルクという会社(日本法人 MSD )の「モルヌピラビル」というウイルスの増殖を抑えるお薬が日本でフェーズ3(第3相試験)の臨床試験に入るというニュースも入ってきました。
これは重症の方に対しての開発が停止されたというニュースがあったばかりなんですが、軽症の方、まだかかった早期の方に飲み薬としてコロナを改善できるのではないかといって第3相試験に入っています。
これは日刊工業新聞などを見ていると「ゲームチェンジャー」のようなものだとかなり期待されている最右翼のお薬なんだろうな、というものが出てきています。
それから治療薬として「バリシチニブ」という JAK 阻害薬というのがあって、炎症を抑える関節リウマチで使われるお薬なんですけど、これが日本でもおそらくコロナに対して治療薬承認されるだろうという状況が見えてきました。

こうすると使えるのが「デキサメタゾン」「アクテムラ」というリウマチのお薬、それから「バリシチニブ」これが使えるようになる可能性があるということで、治療薬も進んでるな、というニュースが今日はありました。
また妊婦さんに行われているメッセンジャーRNAワクチンの臨床試験の公表データ、というよりは普通の中間データで、妊婦さんに悪い影響はなさそうだ、ということが出てきはじめているので、この辺りは今週他の先生が紹介してくれるのではないかな、と思っています。
いろいろとニュースって出続けますね、という状況が続いています。


【ニュース2】Breakthrough(ブレイクスルー)感染について

木下先生のタイムラインの Clubhouse ルームのリプライ欄に貼り付けました。
NPR って皆さん、ご存じですか? すごくいいラジオなんですけれども、オンラインラジオとか文章になっていて、英語の学習にとてもいいということで最初に習いました。
アメリカに来たのが3年半くらい前なのですが、この NPR ラジオの記事を読んで音声を聴いて「Four Minutes Listen」というので英語を結構勉強したのでお世話になっています。
結構面白いコラムだとか最新のニュースというのが載っているので、今日はこの NPR というところから1つ紹介をしたいと思います。

NPR では「THE CORONAVIRUS CRISIS」ということでずっと特集が続けられています。

CDC Studies ‘Breakthrough’ COVID Cases Among People Already Vaccinated
https://www.npr.org/sections/health-shots/2021/04/13/986411423/a-mystery-under-study-how-why-and-when-covid-vaccines-arent-fully-protective
出典:NPR 2021年4月13日

これはどういうことなのか解説しますけれど、「breakthrough infection」というのは伝えやすくするためによく使われている言葉で、この言葉さえ覚えていただければ今日の小テストは満点ということになります。
つまり新型コロナウイルスワクチンをしっかり受け終わっているにも関わらず感染してしまった、ワクチンの効果の壁を突破してしまったというような感染、これを「breakthrough infection(ブレイクスルー感染、以下日本語で表記)」といっているんですね。
これを CDC が研究しているよ、調査しているよ、というような記事になっています。

さてどんな記事になっているかといいますと、1週間近く前の4月15日に更新されたものなのですが、最初に Ginger Eatman という女性のエピソードから始まっています。
この方はマスクを着用し続けていて手を洗い続けていて、とにかく一生懸命対策をしていた方なんですね。2月に2回ワクチンをしっかり受けていたということなんです。
ところが熱が出てきてしまった、そして具合が悪くなってアレルギーのような症状が出てきて鼻水もいっぱい出た、そしてそうこうしているうちに匂いを感じなくなったというんですね。
「あ、これはまずいな」とコロナウイルスの検査を受けたところ、なんと結果が陽性だったということで、本人はショックを受けたということです。
こういうエピソードから始まっている記事です。
この経験は Eatman さんだけではなくて、いろいろなところで認識されている現象で、
これが「ブレイクスルー感染」、しっかりコロナウイルスに対してのワクチンを2回受けた人でもコロナウイルス感染が起こるということですね。

当局である CDC (Centers for Disease Control and Prevention、アメリカ疾病予防管理センター)はこれまででアメリカ全体で5,800件、これを多いとみるか少ないとみるかのちにお話しますが、「ブレイクスルー感染」突破事案というべきでしょうか、ワクチンの効果を突破してしまうというような報告を受けているということなんですね。
ただこれについて CDC は「あり得ることだ」ということを今後述べていくわけで、そういう記事になっています。
実際はこういうブレイクスルー感染がどんな割合で起こっているかというと、60歳以上の方が40%、65%が女性、29%は無症状、7%が入院して、実は74人が亡くなっています。
つまりコロナワクチンを2回しっかり受けた、ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J)社のワクチンなら1回受けて2週間経ったあとに感染するという事例においても、74人の方が亡くなっているんですね。
こういうことをうけて、この記事の中では Yale 大学の Saad Omer 博士という人にインタビューしています。

インタビューでは、基本的にワクチンは効果があるんですけれども、びっくりする必要はないんだよ、そういうことはありうるんだよ、ということをこの博士が説明してくれています。
これまでにアメリカでは7,600万人以上が完全なるプロテクションのある予防接種、つまりファイザー社とモデルナ社のワクチンであれば2回打ってから2週間、J&J社のワクチン であれば1回打ってから2週間経って、体が完全にワクチンで守られているという状況になった方が7,600万人いるわけですね。
計算するとブレイクスルー感染というのは現在のところ5,800件、0.008%未満ということになるんですよね。
これは非常に稀なんですが起こる、そしてファウチ博士(Dr. Anthony Fauci、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所 NIAID 所長)もこれについてコメントしていまして「危険信号ではない、これは明らかに注意深く監視を続けるのだけれども、ワクチンが有効であるというそのコンセプト、重要な概念を変えなければいけないというものは何も見当たっていない」 と述べています。
これは誰もが予防接種ワクチンを受ける理由を否定することにはならない、むしろ逆でちゃんと受けましょうという話なんですよ、ということです。
さらにこの記事ではカリフォルニア大学サンディエゴ校のトリアーニ(Francesca Torriani)博士にもしっかりとインタビューしています。
予防接種を受けたとしてもマスクをしたり距離をしっかり取ることが必要で、今まで通りの予防策を積極的に続けていくべきだということを述べているんです。

ここからが2つ目のリプライに貼り付けた CDC の COVID-19 ブレイクスルー感染の研究ページに対しての導入になるコメントなります。
ワシントン大学のグレニンガー(Alexander Greninger) 博士にも NPR はインタビューして、どうしてこのブレイクスルー感染というのは起こるのだろうか、ということを聞いています。
答えからいうとこれはまだわかっていません。
ワクチンの効果が出にくい方がいるのではないかとか、免疫系を回避できるような変異体あるいは変異ウイルスがいるのだろうかということも背景にある可能性があって、ワクチン反応が悪かった人に対して変異体にたまたま感染してしまうとこういうことが起こるのではないか、という仮説を述べていたりします。
そういうことを含めまして、CDC では
・ブレイクスルー感染した患者さんの人口統計はどのようなものか
・地理的位置、どういうところにいる人たちに感染しているか
・ワクチン接種からどのくらい時間が経っているか
・ワクチンの特定の種類やロット番号によってそのようなことが起こりやすいのか
・変異ウイルスであるかどうか
こういったことをしっかりと研究することによって、どうしてブレイクスルー感染ということが起こってしまうのか、これを特定していこうとしているんだよ、と締めています。

最後にもう1つエピソードがありまして、最初にブレイクスルー感染を経験した Eatman さんの身近でその方の通っている教会で起こったあるケースについてです。
この人よりも少し年上の女性が COVID-19 になってしまって、病院に運び込まれ ICU の出入りを繰り返し、そして「with the Lord」亡くなってしまったというようなケースがあるということで「ワクチン大事だよ」ということで締めくくられています。

この記事ではブレイクスルー感染というものがあるということが伝えられていますが、引き続き皆さんのコメントを得る前に次のものを見てみたいと思います。

COVID-19 Breakthrough Case Investigations and Reporting
https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/health-departments/breakthrough-cases.htmlting | CDC
出典: CDC

CDC の保健部門のホームページの中に COVID-19 のブレイクスルー感染に関する調査と報告のページができています。

まず「ブレイクスルー感染は予測されるものであっておかしいものではない」ということをしっかりと最初に述べています。
2021年4月14日の時点で米国人は7,500万人以上が完全なワクチン接種状態にある、そして米国で流通している SARS-CoV-2変異体に対する防御に関しても基本的にはしっかり守られているということがわかっている、そして予防接種、このワクチンによって病気の重症度が低下する可能性がある証拠がしっかりあることも述べているんですね。

その上で今 CDC がどういうことを行っているかについてここで解説をしています。
CDC が行っているのはこのワクチンの有効性に関する様々なこと、そして SARS-CoV-2 の感染調査をするために、州及び地方の保健部門と協力しながらいろいろなデータを集めています。
その中で年齢や基礎疾患など患者さんの特徴(プロファイル)、投与されたワクチンの種類(ファイザーなのかモデルナなのか J&J なのか)、そして感染を引き起こしている Variant、どういったウイルス(変異ウイルス・変異体)に感染しているのか、といったことをしっかりデータとして集めて解析することによって、ブレイクスルー感染がどういう状態で起こってどういう状況なのか解析していく、というようなことが書かれています。

このブレイクスルー感染にはちゃんとした定義が書かれています。
FDA が承認した COVID-19ワクチンをしっかり打ってから、つまり「primary series」と書いてあるのですが、ファイザーとモデルナならば2回、J&J ならば1回を打ってから14日以上のちに呼吸器検体から SARS-CoV-2 の RNA または抗原が検出された人、これをブレイクスルー感染が成立しているということで調査をしています、と書いてあります。
それ以外にもデータの解釈の仕方や「どのような研究をしています」「システムをつくったよ」というようなことと、統計値が書かれています。

基本的には先ほどの NPR が言っていたのと同じで、7,500万人以上がワクチンを打っているけれど感染した人が出てきてしまって、突破してしまった感染症のうち1%程度、74人が亡くなってしまっている、ということも書かれています。
この記事の締めくくりでは「COVID-19ワクチンは効果的です」とバッチリ述べているんですね。
「COVID-19 Vaccines are Effective」ということで、やっぱり CDC としてはそれでもレコメンドしている、これは推奨を切るような理由にはなっていないことを述べています。

さて、基本的に今日はブレイクスルー感染についてなのですが、安川先生、ブレイクスルー感染の患者さんをもう診察されたことありますか?

安川康介
冒頭でトークに5点をつけていただいた安川康介です。
すごくショックを受けまして、でも おると先生よりも高かったので良かったと思っています。
ブレイクスルー感染は診ています。ここ1か月くらいで何人か診ていて、しっかり症状が出ている方とか、肺炎になっている方も一応診ています。ただ数としては少ないですね。
これだけの数の方がワクチンを受けているので、そういう方が出てきてもおかしくないかな、と思っています。
今回峰先生に取り上げていただいた CDC のページ、臨床で働いている僕のような医師にとってもものすごく役に立つ情報で、そういう方を診たときにどうすればいいのかというのがはっきりと決まっていないとそのまま何もしないで終わるということになります。
詳しく読むと、ワクチンを受けたあとで感染が分かった方は現場にいる医師が「Vaccine Adverse Event Reporting System(以降 VAERS)」に有害事象の報告をするとか、病院でデータを集めてそれを州の保健省にちゃんと送るようにします。そうして、できるだけ検体を残しておいて、シークエンシング(塩基配列の解析)をしてそれが変異ウイルスかどうかというのをしっかり調べようという方針が書かれています。これがすごくわかりやすくていいのではないかと思っています。

峰宗太郎
ありがとうございます。
池田先生はブレイクスルー感染の患者さんというのはご覧になっていますか?

池田早希
私は小児ですので……

峰宗太郎
あ! 打っていないのか!

池田早希
はい。かかりつけの患者さんで16歳以上で基礎疾患のある子で打っている子はいるのですが、そういう方で入院された方は今のところいないですね。

峰宗太郎
ありがとうございます。
これはですね、今安川先生にお話していただいたように、やはり突破してくる感染「ブレイクスルー感染」というのは起こってきてしまうんですね。
リプにつけました3つ目の記事、これは NHK の今日の日本のニュースです。

新型コロナワクチン接種後に231人が感染 厚生労働省まとめ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210421/k10012988891000.html
出典: NHK 2021年4月21日

日本は全然ワクチンが進んでいないのにもうすでに231人もやられちゃってるんですね。
これは接種者全体の0.01%にあたります、ということで少し多めですね。
このうち205人が1回目の接種後ということで、実はまたここでも定義の問題があります。
24人は2回目の接種後に感染が確認されています。
さあ、先ほどの CDC の定義はどうだったかというと「fully vaccinated」 ですね。
2回打ってから2週間経った人を超えるとこれはブレイクスルー感染ということ。
厚労省がまとめた結果、確かに231人というのはワクチンを少なくとも1回打っている人ということなんですけど、実は1回目だけを打ったあとの人が205人もいるということで、ほとんどはまだワクチンが十分に働いていない状態で感染しているということで、厳密には CDC が検討しようとしているブレイクスルー感染とは別のものなんですね。

大事なことはワクチン、完璧ではないんですよ。
完璧でないということ前提で、つまり100%の予防効果があるというわけではないですし、95%や90%の感染予防効果を発揮してくるまでにはやはり日数・時間がかかってくる。
その間、そしてワクチンを打ったあとも予防行動をしっかりしていただくことというのはとても大事だね、という一般の皆さんに対しては凡庸な結論に達するわけです。
この凡庸なものが非常に重要なんですね。

岡田先生と真夜中の Clubhouse でもお話をしていたんですけれど、やはりワクチンを打ったらそれで終わりだとか完璧なんだ、ということを前提として、ワクチンを打っても感染する人がいるのだからこのワクチンはダメなんだ、と全部ひっくり返そうとする極論をおっしゃるような方も出てくるわけです。
しかしそうではなくて、ワクチンを打ったとしても全員に抗体がつくわけではありません。
つかない人というのはどんなワクチンでも出てくるんですね。
たとえば水ぼうそうのワクチンだって2回打っても感染してしまう方もいます。HBV という B型肝炎のワクチンなどは、お医者さんや看護師さんは打つことになっているんですけど、抗体がつかないということで、何回も打ち直しになる方というのがいまして、僕は12回打ちました。12回打ったんですけど、まだついていないです。
ということで「vaccine failure」といいますけれど、抗体がつかない人がいる。
今回 CDC のサイトを見ていても、いろいろな論考を見ていても、僕が抜けているなと
思うのは、抗体がどのくらいついているかということになかなか触れないんですよね。
抗体が100%つくことをまるで前提としているような研究が多くなされていて「これ、抗体価も入れてよ」というのが私のコメントなんですね。

さて、だらだらしゃべっておりますけれど、皆さんからこれに関連する、もしくは全然関係ないお料理の話題でもいいですけど、何かございますか?

木下喬弘
非常に当たり前なことが起きているのをちゃんと観測しているポジティブなニュースですね。
ワクチンを打った人の中に一定数重症がいるということだと思うんですけど、それに対して ADE が起きているかどうかを、血液を採って抗体を調べたりということはやっているんですか?

峰宗太郎
はい、これすごくいい質問で、皆さんにご説明しますと、ワクチンを打った人がコロナに感染すると、実際にワクチンを打っていない時よりも症状が悪化するというのを「Antibody-Dependent Enhancement(ADE)」といいます。Enhancement というのは増強される、という意味なんですけれど、これは症状とか感染が「enhancement」されてしまう、より悪くなるんだよ、という病態です。また、抗体ができていることで呼吸器の症状が強くなるという VAERD というようなものもあるんです。
そういうことが起こっていないのか?という話ですよね。
これについては現時点では情報がまだ十分集まっていません。
つまりブレイクスルーの症例報告などを集めてその重症度の比較、これがうまくマッチしている人たちを見つけて比較したときにより重くなっているか、治療が困難であるか、死亡率が上がるか、とかそういったことがすごく重要になると思うんですね。
これが記載されている報告は私は見ていません。
ただ注目して考えている人はいるはずだと思うので、今後出てくるのではないかな、と思います。

安川先生、実際ブレイクスルー感染の方って重症度が高いとか治療しにくいという印象があったりしますか?

安川康介
それはないですね。
僕がみている限りでは結構マイルドな経過で収まっていて、ワクチンを受けていなかったらもっと重かったんではないかとは思ったりします。

峰宗太郎
木下先生の質問は大変いい質問で、今後も注目していく必要がありますね。
特にワクチンを打ってから日数が経って、抗体価が下がった状態でブレイクスルー感染を起こしたときにどうなるかというのは科学的にはしっかり着目していく必要があると思います。
さて、安川康介先生、さっきのコメントはとても良かったので95点なんですけど、次どうでしょうか?

安川康介
(笑)
やっぱり日本のメディアの報道の仕方が気になるな、というのがあって、今回の NHK も2回目以降だとたった24人ということでかなり少ないですよね。
ただメディアを見ていても「ワクチン後に感染が発覚!」みたいな、もうそれだけしか書いていない速報的なニュースがいくつか目についたりしました。特に1回目を打って2週間以内というのは、受けていない方と感染のリスクがほとんど変わらないということが研究でわかっています。ですからそこはもう無視して、というかそういうニュースを見る方もそれくらいのリテラシーは身につけて「まあ、そういうことは起こるよね」ということはわかってほしいな、と思っています。
日本もまだ少ないんですけれど、今後ワクチンをどんどん打っていくうえで、CDC みたいにワクチンを受けた方で感染が見つかった場合はどういう風に報告して情報を集めて分析するのか、それをまた臨床の現場に役に立てていくのかというのは、今からすぐ考えて、全国の医師などに伝えることができるのではないかと思います。

峰宗太郎
本当にその通りですよね。
日本も副反応に限らず、いろいろな事象をちゃんと集めて研究する、ということを全国規模でできるようになるともっといろいろなことで強いと思いますよね。
黑川先生、何かコメントとかございますか?

黑川友哉
ありがとうございます。
私、気になったのは安川先生のお話で、アメリカだと VAERS に報告するということになっているんですか?

安川康介
一応 VAERS に報告するとか、あとは各州に保健省がありますので、まずそこに報告をして、そこから CDC へ報告するというシステムに今なっているみたいです。これでいくつかデータベースみたいなものを作っていて「REDCap database」とかもともとある「National Notifiable Diseases Surveillance System」とか、そういうところで情報を集めてやっていくということになっていると思います。

黑川友哉
そうなんですね。
日本だと感染者の情報というのは NHK のニュースでもあったように、厚生労働省が最終的には全部集めていると思います。そこで感染者がワクチンをちゃんと2回接種した人なのかどうなのか、ワクチンを接種した人だったらワクチン接種後何日目に発症してしまったのか、どういう検査で陽性と判断しているかまではこの記事から読み取れませんが、一応把握はしていることはわかってよかったです。

峰宗太郎
ありがとうございます。
ひまみみ先生、何かありますか?

前田陽平先生
いや、特にないです。
昨日ツイッターで「リスト:こびナビ」というリストに入れられたので「違う!」ということを言いたかったです。皆さんに申し訳なくて…

黑川友哉
(笑)ひまみみ先生、違うんですか?
こびナビじゃないんですか?

前田陽平先生
この番組ではこびナビのような顔していますけれども、こびナビを愛するただのひとりの人間ですね、すみません。

安川康介
すみません、ひまみみ先生のアイコンのイラストで右手にもっている物って耳の骨(編集註: 耳小骨)ですよね?

前田陽平先生
あー、これは耳鼻科の攝子(せっし、ピンセット)です。

安川康介
そうなんですね!

黑川友哉
これ、持ち方が逆なんじゃないかな、って…

前田陽平先生
あー、それね、僕もイラストできた時に思ったんですけど、そこはちょっともういいか!と思ってつっこまなかったんですよね。
これ、耳鼻科医的には逆やな、って僕も思ってたんですよね。

黑川友哉
いつか言いたいなー、って思っていて…すみません、失礼しました。

木下喬弘
ひまみみ先生が入れられた「こびナビ」って「コビ」がカタカナで「なび」がひらがななんで、先生が新しく「コビなび」カタカナ・ひらがな逆で団体立ち上げたのかなと…

前田陽平先生
あ、パチモンを作るっていう新しいの、いきますかね。

峰宗太郎
いやいや、私とひまみみ先生で、もっと偉い人に媚びを売っていく「こびウリ」っていうのを作りますかね?

前田陽平先生
(笑)こびウリ!いいですね。

木下喬弘
ちょっと気に入ってるよね、この「こび」をその意味で使うっていうの(笑)

峰宗太郎
そうですね(笑)
さて、岡田先生から何かございますか?

岡田玲緒奈
一番最初のところくらいしか聞けてなかったんですけど…

峰宗太郎
今日は岡田先生の話をずっとしていたんですよ!

岡田玲緒奈
ほんとですか?あとで録音で聞きます。
回診してました。

峰宗太郎
お疲れさまでございます。

岡田玲緒奈
これ、きっといる人がいるだろうなというのはですね、「日本の感染状況を考えたらそんなワクチンなんか要らないんだ」とみたいな方がいるんですけど、きっとこの今回のワクチンを打ったけれど発症した人の絶対数を、いつもは海外のことは関係ないと言っているのに、その数字をもってきて「ほら!こんなに効かないワクチン!」とおっしゃる声がきっとあるだろうなと思って、今からズーン…としておりますけれども…
その辺りのどういう計算をしてこのようになるのかということを細かく、特に割合の問題というのはワクチンがらみでいつも難しいなと思っていて、わかりやすく説明することができたらいいなと思っています。

峰宗太郎
ありがとうございます。
ワクチンの普及情報提供活動をはじめて岡田先生がかなり病んでしまっているということですね。
いろいろと反発がきますので、これは怒りだとか否認だとかいろいろな段階を経て、最終的に受容になっていくと段階があります(編集註: キューブラー・ロスの「受容の五段階」)ので、岡田先生もそのうち「あ、こういう人たちはいるんだな」と受容できると僕は信じております。

木下喬弘
そのうち楽しくなってくるから大丈夫です、岡田先生。

岡田玲緒奈
僕、でも結構楽しんでいるんですよ。
陰謀論を含め、おもしろい説を持ってきてくださる人を結構味わい深く感じてはいるんですけど。

木下喬弘
なによりでーす!

峰宗太郎
池田先生、最後に締めの言葉はございますでしょうか?

池田早希
締めじゃないんですけどちょっと言ってもいいですか?
先ほどのワクチン接種後に感染したことに関しての検討なんですけれども、それを検討するには峰先生も大好きな「定義づけ」というのが大事だと思うんですよね。
ですので CDC のように「fully vaccinated」というような定義をちゃんと作って、日本語でなんと言ったらいいのかちょっと私も悩んだりもするのですが、そういう言葉も作ってちゃんと検討するのが大事だなと思いました。

峰宗太郎
そうですよね。本当に論文などでも「inclusion criteria」(組み入れ基準)とか「exclusion criteria」(除外基準)とかいかにしっかり定めるか、そこから始まるんですよね。
そういう前提からしっかり揃えていい比較をしていきたいと思いますよね。

さて、3分オーバーで今日は終えられそうで、特に激しい言い合いもなくきていますけれど、皆さんから言い残したことはないでしょうか?
なければ今日は「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース」
穏やかに終わったほうだとは思いませんか?
今日は安川先生にブロッコリーが生えたこともなかったですし、手がネギにもなっていないということで、穏やかに終えられそうなんですけれども、安川先生、何かありましたか?

安川康介
いやー、岡田先生がちょっとひねくれてしまったな、と思いました。
Clubhouse で戦い過ぎてるんじゃないですかね?

池田早希
え…? もともとですよ!

一同
(爆笑)

木下喬弘
めっちゃ冷たいな!

峰宗太郎
ということで、インスタライブでより親交が深まったおふたり、そういうことが言える仲になったということで…

池田早希
元同級生なんです。

峰宗太郎
えっ?

岡田玲緒奈
大学、同級生なんです。
でも6年間でほとんどしゃべったことはなかったです。

池田早希
なんか「話しかけるなオーラ」が出ている感じがちょっとしていて…
あっ、でもとてもいい人なんだろうなというのは知ってましたよ!

峰宗太郎
すごいですねぇ。最後なんだかよくわからない「同級生トーク」で絶句してしまいましたけれども…
それでは締めていきたいと思います。

今日は「ブレイクスルー感染」ということで、そういうことがあり得るんだということを知っていただいて、そして皆さんにはもう一度しっかりやっていただきたいこと、これはワクチンを打った方でもしっかりと予防を続ける、ワクチンは完璧なものではない、予防だとか接触抑制、これを流行が完全に収まるまではワクチン接種率を上げることと、車輪の両輪ですので両方きっちりやっていこうということを意識していただきたい。
そして日本はワクチンのロールアウトは今すごくゆっくりです。
皆さんに達するまでにすごく時間がかかっているという状況がありますけれども、予防を継続することがとっても大事だということがこの記事からも言えるんだと思うんですね。
予防をきっちりというと「そんなくだらないことしか言えないのか、専門家なのにそんな単純なことしか言えないなんて落胆した」とか意見を僕もいただくんですけれども、これこそが大事なんです。
「きほんのき」ですね。優れたスポーツ選手も基本的なトレーニングをとっても大事にするように応用的なことからやろうとしてもダメです、基本からやりましょう!
ということで一度気を引き締め直して、ワクチンは進んできていますけれども、しっかり予防を続けていきましょう、そういう気持ちでいっていただけたらと思っています。

今日の「こびナビの峰が解説する世界の最新医療ニュース」はここまでとさせていただきたいと思います。
日本の皆さまは良い1日を、アメリカの皆さんはおやすみなさい、ということで終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。


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