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ワクチン接種後のアナフィラキシーについて:ブライトン分類とは?(3月10日こびナビClubhouseまとめ)

2021年3月10日

木下喬弘
日本のみなさん、おはようございます。
本日も「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース」始めていきたいと思います。

日本で医療従事者を対象にコロナワクチンの接種が進むに従って、少し気になる報道も出てきているかと思いますので、今日はそれについて30分お話したいと思います。

本日のテーマは、昨日から少しずつニュースで報道されているんですけれども、「新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーが日本で多い」という報道内容についてです。
一昨日くらいから報告数レベルで言うと確かに多いんですけれども、それに対して田村厚生労働大臣が「欧米に比べて多いように見える」という風にご発言されて、「アナフィラキシー大丈夫なのか」といった話が出てきているところかと思います。

今日はアレルギーの専門医がいらっしゃるので、前田先生、そもそもアナフィラキシーって何なのかというのを、難しい言葉を使わずに説明していただけますか?

前田陽平先生
まず、「アレルギーを起こすものをアレルゲンと言う」と考えてもらうといいと思うのですが、アレルゲンが体内に入ってきて、複数の臓器に全身性にアレルギー症状が出て、生命に危機を与えうる過敏な反応のことをアナフィラキシーと言います。
さらに、その状態で血圧の低下とか意識障害とかを伴った場合は「アナフィラキシーショック」と言います。
ポイントは、「複数の臓器」「全身性」このあたりがキーワードかなと思います。
アナフィラキシーの定義って実は複数あってややこしいのですが、日本アレルギー学会が出しているものであれば、「生命に危機を与える」という点も入ってくるというのが1つの重要なポイントかと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
アレルギーって色々あって、例えば卵とかそばとか食べ物のアレルギーであれば、それを食べた後に体がかゆくなったり、皮膚に発疹が出たりというのがいわゆるアレルギーですよね。
それとは別に、みなさんが多分よく聞いたことがあるのは「アナフィラキシーショック」っていう言葉だと思います。
それはどちらかと言うと救急医である僕のテリトリーに入っています。
「ショック」と言われる状態は、「ガーン( ̄□ ̄;)」ということではなくて、全身の臓器に障害があって、血圧が下がったり、意識が悪くなったり、そういう命に危険があるような状態のことです。
こういったケースは、日本だと大体、三次救命センターに搬送されることが多いと思います。

それで、「アナフィラキシー」は「ショック」なのかと言うと、そこが微妙に違うところなんです。
前田先生にご説明いただいたように、複数の臓器の障害が出てるというのが日本アレルギー学会の出している定義になります。
複数の臓器というのは、まずは皮膚の症状と、加えて呼吸の症状や、循環の症状が出てくると考えていただければ良いと思います(循環の症状の場合はショックに近い)。
あるいは消化器の症状ですね。腹痛や吐き気です。
このように、皮膚の症状だけではなくて、他にも呼吸とか循環とか消化器の症状が出てくる、これがアナフィラキシーだとご理解いただければと思います。

ポイントとしては、アナフィラキシーのときは「アドレナリン」という薬を筋肉に注射して治療するのが大事です。
実は、昔は「アナフィラキシーショックのときはアドレナリンで治療する」と教えられてきましたが、「ショック」にならないアナフィラキシーでもアドレナリンを使った方がいいことがわかってきたのです。
つまり血圧が下がらなくても、皮膚の症状に加えて全身に呼吸の症状とか消化器の症状とかが出てきたら、アドレナリンを筋肉注射して治療するのが良いということです。
なので、血圧低下や意識障害がなくても、複数の臓器の症状があれば、アドレナリンが必要な「アナフィラキシー」という重大な病気であると捉えましょうということです。

アレルギー専門医の先生、こんな感じでよろしいでしょうか。

前田陽平先生
なかなかプレッシャーかけてきますね(笑)
概ねそれで良いと思います。
1点、木下先生もこの後話そうと思っているところかもしれないですが…
注射の時に血管迷走神経反射といって、気分が悪くなってしまう体質の人が結構いると思うんですけれども、そういったことで一時的に血圧が下がる人がちょっと皮膚に発疹が出ていた場合に、これはアナフィラキシーなのかという議論になって、ワクチン接種の場合はそこが結構問題になってくるのではないかと思います。

めちゃくちゃ厳密に言えば、それがアナフィラキシーの病態を表しているかと言われると微妙なところになってきてしまいます。
こうした場合に、アナフィラキシーの病態を限定的にせず広めに取るという意味で、アナフィラキシーとして報告するのはいいことだと思います。
一方、あまりにかけ離れた、少なくとも皮膚の症状だけでアナフィラキシーと判断することにはならないように気をつけた方がいいかなと思います。

木下喬弘
ワクチンのことまで先読みして話していただきありがとうございます!
ひとまずアナフィラキシーの定義に関してはこんなところで良いでしょうか。

前田陽平先生
そうですね。定義はその通りで良いと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
では次にアナフィラキシーの治療についてですが、安川先生、簡単にご説明いただくことはできますでしょうか。

安川康介
はい。治療に関しては木下先生がおっしゃったように、一番大事なのは「アドレナリン」です。これがメインだと思います。
他にも抗ヒスタミン薬やステロイドが使われることもありますが、一番重要なのがこのアドレナリンという薬を、アナフィラキシーが疑われた段階でできるだけ早く打つということです。

木下喬弘
ありがとうございます。
アナフィラキシーは、アドレナリンを打ったらすぐ治るということでいいでしょうか?

安川康介
そうですね。2回以上打たなければならない方もいらっしゃるとは思いますが、その患者さんの症状を見て追加で打つかどうかを決めていきます。

木下喬弘
まとめると、アナフィラキシーというのは、アレルギーの反応が皮膚に出ただけではなくて、複数の臓器(皮膚、呼吸、循環、消化器)に症状が出ると。
このように、複数の臓器にも症状が出てきていたら、アドレナリンという薬で治療するのが大切だということですね。
そして、ちゃんと治療すれば回復することがほとんどで、実際にアメリカでも全員回復していますし、日本でもアナフィラキシー疑いが今のところ17例が報告されていますが、全例回復していると発表されています。

さてここからは、田村厚生労働大臣が「日本で頻度が多い」とおっしゃった意味について、少し解釈をしていく必要があるかなと思います。

首相官邸の11時間前のツイッター(3/9 21:00のツイート@kantei_vaccine)によりますと、総接種回数は107,558回で、それに対して17件のアナフィラキシーが報告されているというデータが出ています。
一方で、今年の2月11日にアメリカの予防接種諮問員会がまとめたデータが論文として報告されていて、ファイザーのワクチンではアナフィラキシーが100万回投与あたり4.7回とあります。
分母も分子も違うと比較するのにごっちゃになりそうですが、日本では107,000回に17回ということは、大体5,000~6,000回に1回という頻度が報告されているということですね。
それに対しアメリカの諮問委員会がまとめたデータでは20万回に1回くらいなので、確かに日本の方が見た目の頻度は多いと言える状況で、田村厚生労働大臣も「多く見える」とおっしゃったのではと思います。

この報告の詳細は厚生労働省のホームページに公開されています。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_hukuhannou-utagai-houkoku.html)
詳細といっても1つの症例で3行くらいでどんなことが起きたか書いてあるだけなので、そこから僕たちが診断するというのは難しいのですが、そういった報告例が挙がってきているということですね。
アメリカや世界では、予防接種の後の安全性をちゃんと評価するために一定の報告基準を設けましょうという動きがあって、このあたりについて池田先生がお詳しいと思いますので、少しお話していただけますでしょうか。

池田早希
はい。簡単にお話します。
まずアメリカで、アナフィラキシー、つまり重篤な副反応が疑われるような有害事象が起こったときには、医師や医療スタッフを中心にオンラインで情報を報告する「VAERS」というシステムがあります。 「Vaccine adverse event reporting system」の略です。
このシステムで報告されたものをアナフィラキシーかどうか評価するにあたって、スタンダードな方法があるんですね。
国際的に使われているものでなのですが、 ブライトンコラボレーション(Brighton Collaboration)というものがあって、その定義(case definitions)を満たしているかどうかで評価を行います。
ブライトンコラボレーションは専門家の国際的なネットワークで、科学的にワクチンの安全性の評価をすることに焦点を当てて考えているような団体です。
そのブライトンコラボレーションが出している症状の基準を使って、アナフィラキシーかどうかの確からしさを分類分けできるようになっています。

木下喬弘
ありがとうございます。
実は今、WHOの「Vaccine Safety Basics」というe-ラーニングコースのホームページを開いていて、「MODULE 5 : Vaccine safety Institutions and mechanisms」という項目のところにブライトンコラボレーションのことが載っています。
(https://vaccine-safety-training.org/brighton-collaboration.html)
簡単に訳すと、「ブライトンコラボレーションとは国際的な科学専門家たちの団体で、2000年に始まりました。質の高い情報や、ヒトのワクチンの安全性に関する情報を提供するための団体です」というようなことが書かれています。

そのブライトンコラボレーションが出している「standard case definition」が重要ですね。すなわち、国際的に起こっている頻度の比較がちゃんとできるように、例えばアナフィラキシーであれば、「これがアナフィラキシーである」という疾患定義を使って報告できるよう、様々なワクチン接種後の安全性に関する疾患定義を出しているということですね。

ブライトンコラボレーションのアナフィラキシーの定義について、安川先生か池田先生、簡単にご説明いただくことってできますか?
これ結構長いので、全部説明するとキツいかなぁと思うのですが、簡単にまとめてお話しできそうでしたらお願いできますでしょうか。

安川康介
はい。アメリカのワシントンD.C.で内科医として働いている安川康介です。
まず最初に、アナフィラキシーというのは①発症が急で、②進行が早く、そして、③皮膚・粘膜、呼吸器、循環器、消化器のうち、2つ以上の臓器に影響を与えているものだとされています。この3点がまず最初に満たしていなければならない項目だと思います。
ブライトン基準の場合は、レベル1~5でアナフィラキシーの確からしさが階級分けされていて、「アナフィラキシーかどうか」ということだけでなく「どれくらい確かか」も検討するための基準になっています。

アメリカでワクチンを100万回打ってアナフィラキシーが4.7回起きたとか、モデルナのもので100万回中2.5回という数字は、ブライトン基準でレベル1~3までに当てはまる事例の数字です。
最近出たマサチューセッツ総合病院の報告も、国立アレルギー感染症研究所の診断基準もブライトン基準を使っていますが、アナフィラキシーに該当するのはレベル1~3までとされています。
ブライトン基準のレベル4、5あたりになるとアナフィラキシーと言えるか怪しいと考えられており、レベル4、5に該当する例はアナフィラキシーには含めていないという状況があります。

一番確かであるレベル1は、皮膚・粘膜の症状(蕁麻疹や、唇・舌などが腫れてしまう血管浮腫など)と、循環器の症状(血圧が下がる、頻脈があって意識が下がるなど)もしくは呼吸器の症状(息をする音がヒューヒュー言う喘鳴、呼吸が速くなって苦しいなど)といった、かなり重症な症状を含めたものです。
これがあるとレベル1「かなり確かだ」ということになります。

木下喬弘
ありがとうございます。一旦ここで切りましょうか。
急性の発症であるということと、2つ以上の臓器障害というのが、まず前提であるということですね。

それにプラスして、全身の皮膚の症状が出ていて、かつ循環の症状か呼吸の症状が出ていると、アナフィラキシーとして一番疑わしいレベル1に該当するということですね。
循環の症状については、ブライトンの基準は結構厳しく、頻脈だけでなく、血圧の低下や意識の悪化などの他の症状も満たしていないと、循環の大症状には含まれないという基準になっています。
また循環に問題がなくても呼吸の方でレベル1になることもあり、両側の喘鳴(喘息のひどいときに起こるヒューヒューいうような症状)や、上気道の閉塞音(のどが腫れて呼吸が苦しくて、ゴォォォといった音がする症状)が、呼吸の大基準(major criteria)だとしています。

一番確からしいレベル1になるためには、全身の皮疹+循環または呼吸の大基準を満たす必要があるというのが、ブライトンのアナフィラキシーの定義ということですね。

レベル2以降になると結構解説が難しくなりますが、ちょっと触れてみましょうか。

安川康介
そうですね。
全部を詳しく伝えるのは難しいですが、重要なのは、各臓器の症状について大項目(major criteria)と小項目(minor criteria)というのがあり、「大項目を満たす点もあるが、小項目に該当する点もある」というようなところを見てレベル分けがされていくという点です。
例えばレベル2ですと、皮膚の症状はないけれども、先ほど話したような循環器と呼吸器の大項目を満たしている場合とかが当てはまります。レベル3になるといくつか小項目を満たしているということになってきます。
レベル4以下は、ブライトンの診断基準を満たさないということになるんですね。

日本で報告されたアナフィラキシー疑いの17例について症状を見ていると、ブライトン基準を明らかに満たさないようなケースがいくつかあります。
さらに、その症例報告には、下の方に専門家の意見が書いてあるのですが、専門家の意見だと主観が入りやすくなるので、しっかり診断基準を設置して報告していかないといけないと思います。
アナフィラキシーに関する情報で不安になる方も多いと思います。どのようにアナフィラキシーを診断したのか、どういう治療を受けたのか、などに関してはここの報告には「投薬した」とかしか書いていませんが、アドレナリンが必要だったのかといったことが、臨床をしている医者としてはかなり気になるところです。

木下喬弘
ありがとうございます。
少しまとめますと、アナフィラキシーのブライトン基準のレベル1は、全身に皮疹が出て、かつ血圧の低下や、呼吸が危険な状況になる例が該当するということですね。僕がよく診ていた感じの症状だなと思うのですが、救急車で救命センターに運ばれて来るような人たちがこのレベルに該当するということですね。

レベル2・レベル3になると微妙な診断になってくる人がいて、例えばレベル2は皮膚の症状がなくてもいいんですね。
普通はアレルギーだと全身の皮膚に発疹が出るとか、紅斑といって真っ赤になるとか、あとは唇が大きく腫れるといった粘膜の症状が出るのが一般的ですが、そのような皮膚の症状がなくても、血圧の低下と呼吸の障害とかでレベル2に入ります。

そしてレベル3に関しては、微妙な症状の組み合わせということになります。いくつかの臓器の症状に対して小項目を満せばレベル3に該当することです。
たとえば血圧が低下するほどではないが脈が速い、ずっと咳が続く、などの症状の方が、複数集まってくるとレベル3に分類されることになります。

さて、本題に戻りますが、今回日本で報告されている17例がこのブライトンの基準に基づいて報告されているかというと、厚生労働省の報告書を見る限りはそうではなさそうです。
この「新型コロナワクチン接種後にアナフィラキシーとして報告された事例の一覧」という資料に、ブライトンの基準という言葉は一言も出てこないので、恐らくこの基準に基づいて報告されたものではないと考えられます。

安川先生のおっしゃったように明らかにアナフィラキシーに該当しない例もあるかもしれないのですが、17例のうち何例が実際にブライトンの基準に該当するかについては、この報告だけで議論するのは若干危険かなと思うくらい情報が少ないというのが現状です。
ですので、17例のうち何例が国際的な基準に基づいたアナフィラキシーに該当するのか、諸外国でのアナフィラキシーの頻度と比較できるのかなどに関しては、まだわからないです。
ただ読んだ限り、該当しそうな例も確かにあります。
10万例中2~3例あったとして、アメリカの20例中約1例と比べると、多いように思える一方で、偶然の可能性もあり、何とも言えないと感じています。

こういう話をすると、ワクチン接種後のアナフィラキシーはブライトンの基準を絶対使わないといけないのかと思われる臨床医の先生もいらっしゃるかもしれないですが、臨床上の治療については、日本アレルギー学会のガイドラインに基づいて疑ったものは、大腿の外側に0.3mlアドレナリンを打てばほとんど良くなると思います。
ですので、臨床のガイドラインに基づいて治療を行って、ワクチンについてはワクチンのガイドラインに基づいて報告する、あるいは厚生労働省がワクチンのガイドラインに基づいて情報を収集すべきなのかどうかというのは議論が必要かと思いますが、そういうデータの集め方をしてリスクコミュニケーションをしていくことが大切ではないかなと僕は思います。

他に、何かコメントいただける方いらっしゃいますか?

峰宗太郎
少し脱線しますが、アメリカでは診断基準をすごく大事にしている印象があります。
診断基準に従って診断しないと、保険会社が投薬などに対してしっかりお金を出してくれません。
一方日本では、「診断名は保険病名」というように、医者がそれぞれのスキルや経験に基づいて病名をつけて、投薬をしていますよね。
もちろんそれが全部ではありませんが、厚生労働省などがデータを集めて行っている疾病の分類の運用がどのくらいしっかりしているか、日本のデータが国際統計として比較ができるのかという話につながります。
ですから、日本の臨床医も基準やガイドラインができましたら、それをどんどんアップデートし、その基準やガイドラインに従って診断をしていき、診療成績などを評価していくことが今後ますます重要になると思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
岡田先生、どうぞ。

岡田玲緒奈
小児科の岡田と申します。
こびナビが出している、アナフィラキシーの初期対応についての動画に私も関わっています。
初期対応という意味では先ほど木下先生がおっしゃっていた通り、若干広めにとって筋注という対応でいいと思います。
ブライトン基準に当てはまるチェック表で報告できるような形になれば、後からアナフィラキシーかどうか、しっかり検証できると思いますし、そうなればいいと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
久米さん、どうぞ。

久米隼人氏
今回の報告書については、ワクチンの結果としてどういうものなのか、今後しっかり検証していけたらと思います。
国は隠したりすることなく、広めに報告した上でしっかり検証するという態度が伝わるといいなと思います。
私は直接関わっているわけではないのですが、そのように思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
ここでは厚生労働省の見解としてお伺いしているつもりは全くありませんので、聞いている方もその点ご理解いただけたらと思います。

原則、有害事象報告は広く取ることが非常に重要であり、久米さんのご意見に100%同意です。まずは疑いのあるものをしっかり集めるということですね。
その後でしっかり精査し評価して、実際に国際的な基準で当てはまった数が報告されますと、安心感が増します
池田先生、どうぞ。

池田早希
木下先生のご意見と同じく、広く取るのはとても大事なことです。
ただ、専門家が本当にアナフィラキシーかどうかを評価・判断した上で公表する方が、余計な不安をみなさんに与えなくていいのではないかと感じてます。

木下喬弘
ありがとうございます。
できるだけ中立な視点でお話しさせていただくつもりですが、データの報告が遅れれば遅れるほど政府が隠しているのでないかと思う方は一定数確実にいらっしゃいます。
例えば、政府公表の前に報道機関から発表されることで、政府としては信頼を失うことをかなり懸念しているのではないかと思います。
実際に精査が終わっていない情報をどんどん出していくと何が起こるかと言いますと、確かに池田先生がおっしゃるような問題も起こりえます。
今回、日本でのアナフィラキシーの報告が非常に多いです。
アメリカでは約20万例に1例ですが、日本は約5,000例に1例の報告があり、これは日本人特有の問題なのかという話になります。
他のアジアの国でファイザーのワクチンを打っているのはシンガポールくらいで、実際アナフィラキシーについてはあまり報告されていません。
そこで「アナフィラキシーが日本人が起こしやすい副反応である」などと、話がどんどん盛り上がっていってしまうと、日本国内でデータが出るまでは接種を一旦止めるという流れになり、HPVワクチンの二の舞にならないかと非常に心配です。
このような事態だけは避けたいので、厚生労働省だけではなく我々医療従事者も、できるだけ噛み砕いてみなさんにわかりやすくお伝えしていければと思います。

黑川先生、お願いします。

黑川友哉
こびナビ事務局の黑川と申します。
実は日本には副反応報告制度というものがあり、この認識が現場の先生方にあまり広まっていないのかなといつも感じます。
この制度については今資料を作っている段階で、こびナビからわかりやすい形で情報を提供できればと考えています。
(※以下、黒川先生が作成した副反応報告制度に関する資料)
https://covnavi.jp/1001/

ある副反応が起きたらどのような手順で報告していけばいいのか、またそれに対してPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)がどういった調査を行い、どのような流れで公表に至るのかについて、わかりやすく解説するスライドを作成しましたので、そちらもご覧いただけたらと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
今ここで聞いていただいている方の中にメディアの関係者の方もいらっしゃいますので、このような報告システムにも違いがある点や、現状のデータは最終報告じゃないということを念頭に置いていただいて、報道していただけたらと思います。
こびナビには各方面の専門家がそろっていますし、取材依頼もお受けしておりますので、お声がけいただければ解説させていただきます。

みなさんが一番心配されているのは、「アナフィラキシーが日本で多いのか」、「起こってしまうとどうすべきか」の2点だと思います。
現状、データを見ると確かに日本で多いですが、国際的な基準に従って報告を精査していったときに本当に多いかどうかについては、まだ結論づけるのが難しいと思います。
何よりも大事なことは、アナフィラキシーは治療ができるということです。
起きた後、通常10分前後で症状が出てきますので、心配な方は接種後15~30分ほど様子を見ていただくのが良いと思います。
アメリカでは、93%のアナフィラキシー症状が30分以内に起こっています。
アナフィラキシーの治療は、アドレナリンという薬を太ももの外側に0.3mg注射します。
すると、呼吸症状や血圧の低下などが回復し、今のところ回復しなかった人はいません。
なので、「まず治る病気であるということ」と、「病院でちゃんと治療を受ければそんなに心配がない」、「後遺症なども残る病気ではない」ということをご理解いただくのが非常に重要です。

今日も色々な角度から皆さんにお話しいただき、ありがとうございました。
日本で話題になっているコロナワクチン接種後のアナフィラキシーについてお伝えしました。
本日はこのあたりとさせていただきたいと思います。

我々「こびナビ」は日米30名以上の専門家で運営している、コロナワクチン・コロナ感染症の啓発プロジェクトです。
Twitter、Instagram、Facebookで「こびナビ」と検索していただくとアカウントが出てきます。
こちらでも最新の情報を提供しておりますので、ぜひフォローしていただけたらと思います。

また、クラブハウスを聞いてくださっている皆さんは今日お伝えした内容をご理解いただけると思いますが、もう少し幅を広げて、ニュースを見て不安になっている高齢者の方や、オンラインの情報へのアクセスが難しい方々にも情報を届けていく仕組みを作っていきたいと思っています。
そのためのクラウドファンディングを行っていますので、もしご支援いただける方はそちらも覗いていただけたら嬉しいです。

▼クラウドファンディングのページ(READY FOR)
https://readyfor.jp/projects/cov-navi

明日・明後日は、ハーバード大学小児精神科の内田舞先生に、妊娠中のコロナワクチン接種について解説していただきたいと思っています。

本日もみなさん、どうもありがとうございました。
日本のみなさん、良い一日をお過ごしください。


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