ファイザー社が6ヵ月時点での新型コロナウイルスワクチンの有効性を報告(4月2日こびナビClubhouseまとめ)

2021年4月2日
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター: 木下喬弘

イントロダクション(料理コーナーとお知らせ)

木下喬弘
皆さん、おはようございます。
今日もこびナビ「医師が解説する世界の最新医療ニュース」を始めます。
この一週間は忙しくてあまり真剣に料理が出来ておらず、科学医療情報料理バラエティーを運営してる身としては心苦しい限りです。

ボストンは、僕が思っていたよりもおいしいごはんを食べられるところで、ハーバードの公衆衛生大学院在学中によく行ったタイ料理屋があります。
インドネシアのフライドライスを頼むのですが、結構おいしいです。
フライドチキンがタイ風チャーハンにのっているメニューがあって、昨日の夜も出前して食べました。
もし、皆さんがボストンに来ることがあったら僕はこのタイ料理お勧めするぐらい、このタイ料理は美味しいです。
店がどこにあるか、こっそり聞いてもらったら、お教えします。

友人は最近、料理系 YouTube を観て、自分で作っています。
日本語でタイ料理の作り方を観ても実際は全く違ったりしますが、 YouTube は自動翻訳が付くので、タイ語で自分の作りたい料理を検索して、英語に自動翻訳しながら聴いて作っていると言ってました。
そこまでガチ勢になれば、メジャーなイタリアンとか和食とか中華以外も自分で作れるようになるかもしれないですが、そこまでの根性はまだないのでやっていません。
最初に2分ぐらい料理情報の提供をすることは続けていきたいと思います。

(拍手👏)

ありがとうございます(笑)
今日のテーマに入る前に……来週から運用を少し変えようかなと思っています。
急なお知らせはどうかな? と思うので、事前に、可能性としてお伝えしておこうと思います。
毎朝僕が一人でモデレーターを続けるのではなくて、こびナビメンバーに日替わりでモデレーターをお願いしようと考えています。
そのメンバーが気になったニュースを見つけてきて話してもらう感じです。
僕も出来るだけ参加しますが、モデレーターに関しては日替わりにすることで続けていく形にしたいなと思います。
ただ、ルーム自体は僕が開設するのが、おそらく一番多くの皆さんに通知が届くので、そういうルールを検討中です。

【ニュース】ファイザー社製新型コロナウイルスワクチンの有効性が、6ヵ月時点で91.3%だというプレスリリース

さて、今週の水・木・金とビッグニュースが続きましたね。
子どもに対するトライアルの有効性が出て、取り上げさせて頂きました。
もうひとつ大きなニュースとして、ファイザー社が「新型コロナウイルスワクチンの有効性が、6ヵ月時点で91.3%だ」というプレスリリースを打ちました。
これでワクチン界隈は沸いています。
今日はこのニュースを見ていきます。

大前提として、ファイザー社のプレスリリースに基づくものです。
論文化されておらず、 FDA(アメリカ食品医薬品局)の審査に通ったものでもないので、どの程度信用できるかはまだ分かりません。
それでも、臨床試験の結果の数値自体は出ていますので、ファイザー社のプレスリリースではなく周辺のニュースをピックアップして観ていきましょう。
CNN のニュースです。

【参照】
Ongoing trial shows Pfizer Covid-19 vaccine remains highly effective after six months
https://edition.cnn.com/2021/04/01/health/pfizer-covid-vaccine-efficacy-six-months-bn/index.html
出典: CNN health 2021/4/1update

このファイザー社/ビオンテック社製のワクチンが、実施中の第3相臨床試験で、2回目接種から少なくとも6ヵ月時点まではその予防効果が持続することを発表しました。
ちなみに、これは「現在も実施中の臨床試験」ですけど、まだ実施中だって知ってました? 皆さん。

安川康介
知っていました。
2年ぐらいの計画ですね。

木下喬弘
仰る通りです。
池田先生どうぞ。

池田早希
うちの病院、ベイラー医科大学と Texas Children’s Hospital でも、それぞれ小児の臨床試験を行う予定ですが、それも2年間のフォロー予定です。
ヒューストンに在住の方で興味ある方はぜひ連絡ください。
6ヵ月から11歳までです。

木下喬弘
それは小児のお話ですよね?

池田早希
そうです、小児の話です。
いずれも「2年間で同じですね」というお話です。

木下喬弘
ありがとうございます。小児の試験も大人の試験と同じように2年間の計画であるというご指摘でした。
Twitter で「安全性と有効性は確立されてます」みたいな話をすると「臨床試験がまだ終わってないのにそんなことを言うな」と言われます。
しかしこれは、従来の短期的な有効性・安全性を確認する臨床試験と同じレベル、さらに言えばもっと大規模で厳密な審査をしています。
ですので、その臨床試験の期間までの有効性は十分証明されています。

さらに、長期的な有害事象の頻度や有効性の頻度を調べるために、長期の計画で臨床試験を行っているというだけの話です。
その上で中間解析としてニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン( The New England Journal of Medicine・略称「NEJM」)に載っているということです。
文字通りに「進行中」としか読めない人は、まるで結果が出ていないかのように解釈してしまうようですが、中間解析は中間解析でも「解析に資するものである」と考えて頂いてよくて、「臨床試験は進行中だからまだ分からない」ということではありません。

ということで、この6ヶ月時点での有効性が約91%だと報告されています。
前後してファウチ博士のインタビューがあり、詳しい数値が示されています。
「このワクチンでは46,000人のボランティアが入り、927例のコロナ感染を確認している。
この927人のうち850人がプラセボ群、77人が BNT162b2 というファイザー社製のワクチン群である。
これを元に計算すると、このワクチンの治験における有効性は91.3%であった。」
という報告です。

さらに追加情報で、南アフリカすなわち B.1.351 lineage 、リニエージと書いていますね。これは “峰ポイント” が高いと思います(笑)
これがかなり優勢になっている南アフリカでは、800人がこの治験に参加していて、そのうちの9人が新型コロナウイルス感染症を発症したと分かっています。
その9人全員がプラセボ群だということで、ファイザー社は「ワクチンの有効性は100%だ」と言っています。

こうした「6ヵ月時点での有効性が93%」、先日の「小児での有効性100%」、さらには「南アフリカでの有効性100%」というデータを併せて同時にプレスリリースして、お祭りみたいになっているということです。
このニュースに関して、コメントのある先生はいらっしゃいますでしょうか?

安川康介
いいですか?
後で文字起こしを読むと、僕、いつも先に喋っていて。最後の方は話していないので、このクラブのアペタイザー(※食前酒や前菜のこと)的な存在ではないか、と思うようになってきました(笑)
ちょっとアペタイザーから先に行かせていただきます。

木下喬弘
ありがとうございます(笑)

安川康介
まず、一番の関心ポイントは「変異ウイルスに対するワクチンの効果」ですね。
これまでニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンなどの論文雑誌には、いくつもの「実験室での、抗体の効き具合を調べた結果」は出ていて、従来よりは落ちるけれど、ある程度は保たれるだろうということでした。
このクラブハウスでも何回かそのようなお話をして、ただ「実際はどうなのか?」がよく分かっていませんでした。
今回、少なくともメッセンジャーRNA ワクチンに関しては、実際どうなのかが垣間見えるデータが出てきたかなと思います。
ただ、注意しなくてはいけないのは、南アフリカでの「B.1.351に対する効果」は、まだはっきり分かっていないということです。
今回報告されたのは「プラセボ群とワクチン群の合計が800人、プラセボ群で9人が感染、発症して、ワクチン群は0人だった」という結果でした。
そのプレスリリースの95%信頼区間、「実際の値はどれぐらいなのか?」という予測は53.5%から100%の間となっています。
ごく少ない数字ですので、例えばワクチン群で発症者が1人出ても有効性のパーセントの数字はすごく変わってしまいますし、100%かどうかはまだ分かりません。

アストラゼネカ社の臨床試験を見ると「治験では90%以上がB.1.351系統の変異ウイルスだった」ということです。
一方、今回のファイザー社の治験では感染した9人のうち6人しか検査していないので、どれくらいの割合が変異ウイルスだったのかははっきり分かりません。
800人の治験が、変異ウイルスがどのくらい蔓延している地域で行われたのか? という点は注意が必要です。
同様に、小児での100%という効果も、対象が約2000人と少ないので、発症者が1人出ると100%が95%くらいに下がってしまいます。
こういう数字が出てきた時は、注意して解釈しなくてはいけないな、とこびナビメンバーでも話しました。

木下喬弘
ありがとうございます。重要なご指摘かと思います。
僕たちは科学的な事実をわかりやすく一般の方に伝えるために “点推定値” という「最も確からしい数値」しかお伝えしていませんが、データには常に “点推定値” と “信頼区間と確実性の幅” があります。
例えば、イスラエルの120万人の研究だと、その信頼区間の幅がすごく狭いです。
一方で、この800人ぐらいの治験では、信頼区間、不確実性の幅がすごく広い。すなわち「あまり確かな結果ではない」となります。
安川先生のご指摘通りで、この点は非常に重要ですね。その95%の信頼区間が「約50%から100%の間だ」と仰いましたが、少しわかりやすく説明をすると「この効果は少なく見積もっても50%ぐらいある、高く見積もると100%」と解釈するのが分かりやすいです。

これを聴いて頂いているドクターの方で、信頼区間をしっかりと理解したいという方のために正確に言うと「この研究を100回行うと95回は信頼区間が真の値をまたぐ」という解釈です。
「95%の確率で真の値がこの中に入る」という解釈は間違っています。何を言ってるかよく分からないと思いますが(笑)

端的に言うと「真の値は動かない」ということです。“真の値” は母集団の中で決まったもので、僕たちはそれを知りうるデータから推測していることになります。

いずれにしろ、この“信頼区間”というのは、要は「少なく見積もると50%、高く見積もると100%ぐらいの有効性がある」、それほど不確実なものである、という意味です。
もう少し噛み砕くと、安川先生のご指摘のように「もし次の1例が(治験における)ワクチン群に感染するのであれば、有効性の数値は大きく変わる」ぐらい、不確実なものです。
ただ、その次の1例がワクチン群に起こると決まったわけではないですし、実際に有効性が低いというわけではありません。
単に「今どの有効性の数値が一番確からしいですか?」と聞かれたら「100%」です。「幅は?」と聞かれたら「下は50%強で、上は100%」、そう認識することが重要です。

この確率の認識は、実はかなり難しくてトレーニングが必要です。
Twitter などでもお叱りを頂きますが、大抵、メッセージを送ってくださった方の確率に対する考え方が間違っていることが多いです。
要は、信頼区間も点推定値も大事ですが、点推定値は「一番確からしい数字」を出しているので、それを自分の解釈のために勝手に変えないでいただきたいです。
他の研究、例えば基礎研究の治験で抗体価が下がることを元に「きっと100%はないだろう、なぜなら抗体価自体は下がっているから」と解釈されるのは間違ってはいませんが、その臨床研究の1つのデータを根拠に「100%というが症例数が少ないからもっと低いはずだ」と考えるのは間違いです。

今日はこの辺にしておこうと思いますが、このデータに関して何かコメントがありましたら、お話いただければと思います。

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
いいですか?

木下喬弘
前田先生、お願いします。

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
これは峰先生に確認したいような内容ですが……「試験管の中で抗体の効き方を確認する」方法では効果が落ちるかもしれないが、実際のワクチンの効果としては「変異ウイルスに対しても、もう少し効果は高いのでは?」と以前から言われています。
試験管の中で確かめられるのは「液性免疫」という免疫による効果ですが、ワクチンが「細胞性免疫」という別の免疫細胞の免疫も刺激することで、実際は「試験管の中での効果以上という可能性はある」という話は以前から出ています。今回のデータだけではそこまでいえませんが、「試験管での結果よりもより効く」という結果だったとしても不思議ではないと、僕は理解しています。
他の先生方は、どうでしょうか?

木下喬弘
要するに、僕たちが確認している変異ウイルスに対する効果減というのは、「(試験管の中での)液性免疫の抗体価が下がっている」ということで、他の獲得免疫が刺激されるところは見えていない。実際のワクチンの効果が下がっていないのは「そちら(細胞性免疫)が効いてるのでは」ということでいいですか?

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
そうですね……元々「細胞性免疫を刺激して、抗体による、免疫(液性免疫)以外の部分でも効果が出ているのではないか?」という話もあり、今回のニュースはそれを示唆する結果だと理解してよいのではないかということです。木下先生の仰る通りです。

木下喬弘
じゃあドラえもんに答えてもらいましょう。
安川先生がアペタイザーなら、これはメインでしょうか? パスタ? ひまみみ先生がパスタぐらいかな?
峰先生お願いします。

峰宗太郎
私はデザートですね〜(笑)

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生・木下喬弘
(笑)

峰宗太郎
いい質問ですね!
まず、抗体価がどのくらいまで下がると、いわゆるプロテクション(防御効果)が下がるか? ということは、実は明らかになっていません。今回のワクチンの場合、ハッキリとは分かっていない。
「ワクチン接種後の抗体価がどこまで高ければ、十分に感染症から身を守れるか?」が分からないので、もしも「実はかなり低い抗体価でも守れる」ということであれば、今回の結果に関しても液性免疫の効果だけで説明することも可能です。そのため、今の時点では断言できません。

非常に重要なことは、今ご指摘のあった「細胞性免疫」(cell mediated immunity)いわゆるT細胞という、感染した細胞を壊して体を守る免疫や、感染した細胞を体から排除することによって治す免疫も、ワクチンによってかなり強く刺激されます。ただ、これを数値的に測る方法が今のところありません。
たまに 「T細胞を計ればいい」だとか言っている人もいますが、具体的に何を計るのか私には分からない……とても難しいんですよ。
その(細胞性免疫による)効果がどのくらいあるかは、実は定量化が出来ないので、よく分かりません。

ですが、実際にワクチンを打つと、液性免疫と細胞性免疫、両方が頑張ってくれるのは事実なので、試験管内で抗体価を測っただけで「効果が落ちているかもしれない」というのは、正しくない可能性があります。
まず「抗体はどのくらい下がると効果が切れてくるか?」 ということは、まだ分かっていません。
また、試験管内で抗体価が下がったとしても、実際に投与した人の防御力はそんなに下がっていなかった可能性もあります。それに加えて、細胞性免疫が働くのを支えているという可能性もありますね。

この議論、どちらが重いかということも、まだ把握できる状態にないです。
ワクチンによる効果を議論する上で考慮する必要がある点として、抗体がどのぐらい下がるとコ・リレーション、感染しやすくなってしまうのか? どこまで弱くなるといけないのか? を今後出てくるデータで調べることが一つにはあります。
また、細胞性免疫がどの程度頑張っているのか、を検討する方法を手に入れない限り、実際の効果は正確には分かりません。

木下喬弘
僕の方からも一つ指摘をさせて頂くと、この件は、基礎研究上のことだけではありません。
前田先生の仰るように100%という有効性が示されているのであれば「細胞性免疫がかなり重要だ」と推測していいのかどうか? これは、データの不確実性も考慮する必要があります。
繰り返しになりますが、この100%というデータは点推定値で、僕たちが到達できる「一番確からしい」結論が100%です。
ただ、不確実性がかなり大きいので、もし真の値がそれより随分低いのであれば、きっとその推察はバリックではないですし、真の値が95%ぐらいあるのであれば「メカニズムとして、細胞性免疫が結構重要なのかもしれないですね」という推測をすることになります。

前田陽平(Twitterネーム「ひまみみ」)先生
ありがとうございます。

木下喬弘
どうやら前田先生がメインになってしまったみたいですね(笑)
この話をちょっと深掘りしました。
まとめると、細胞性免疫、液性免疫、どちらが効いているのかよく分からない。ただ、実験室では「液性免疫は極端に下がらない」と確認されていますし、実際のデータでも有効性は低く見積もって、50%以上あるとされています。
つまり、現状では「そこそこ効くのだろう」という結論がベストになると思います。

さて、3日前にシアトルタイムスに出ていた記事です。

【参照】
How long will coronavirus vaccines protect you?
Researchers offer educated guesses

https://www.seattletimes.com/seattle-news/health/how-long-will-coronavirus-vaccines-protect-you-experts-weigh-in/
出典: The Seattle Times 2021/3/29

この記事を読んで、結論として「まだわからない」ことに対して、わからないながらもどういう推測をするかについて、専門家の見解を交えながら話していきます。

記事の時点でワクチンで獲得できる免疫は、「データとしては、3ヵ月ぐらい有効ということしか分かっていない」、ただ「6ヵ月ぐらい経っても91%の有効性ということが分かってきた」とあります。
初期の有効性は95%、6ヵ月経つと91%と少し下がったデータが出てきている。それ以降は、まだ観測してないから分からない……というのは面白くないので、いくつかの論点を見ていきます。

まず「自然に感染したケースのデータを、ワクチンを打って得られた免疫で守られる期間の研究に外挿できますか?」という問いがあります。Extrapolate、つまり別の研究のデータを違うところに引用して解釈することを外挿(がいそう)と言いますが、それができますか? という質問に対して、明確に yes と答えています。
もちろん、確実性には差があって、既感染の人での防御効果の持続期間 と、ワクチンを打った人のそれは、全くイコールではありません。ですが、既感染の人のデータからの推測は行ってもいいのではないか、ということついての専門家の見解が書かれています。
感染した人のデータから「この免疫は感染して8ヵ月経っても保たれる」とわかっており、そういったところから「(初めは3ヵ月とされていたが)もう少し長い期間、感染を防ぐ効果があると考えてよいのではないか」といっています。

もう一つは、「他のコロナウイルス、いわゆる風邪のコロナウイルスの知見を、今回の新型コロナウイルスに外挿してもよいか?」という問いに、専門家はかなり突っ込んで話しています。
結論から言うと……小さい時に風邪の他のコロナウイルスに感染してひどい風邪をひき、メモリーB細胞がひとたび活性化されると、抗体価が下がっても、次に病原体が入ってくると速やかに反応するようになる。
それで大人になっても風邪の症状が抑えられてきた。しかし、今回は全く(新型コロナウイルスへの)免疫を持たない大人にいきなりガツンと来たので、多くの方が亡くなった。
ただ、広くワクチンを打って免疫を持つような状況になれば、抗体価が下がった状態でも、他の免疫システムで抑えられたり、軽症で済んだりといった可能性があるのでは……というようなことを書いていますね。

このあたりは僕は専門外なので、先生方、何かコメント、ご意見、それは言い過ぎだ〜などがあれば、お話していただければと思います。


安川康介
今日の Clubhouse、コース料理が2回出てくるぐらいテーマが重いので。(笑)
もう1回、アペタイザーが出てきます。(笑)

結論からいえば分からないです。
昔、風邪のコロナウイルスに対するチャレンジ・テスト(実際にウイルスに感染させる試験)みたいなものをやった際、「1年後に感染したけど軽症だった」というデータが出て、「免疫は1年ぐらい持つのではないか?」という議論がありました。
あとは、今回の新型コロナウイルスに似ているSARS(重症急性呼吸器症候群)の免疫が1〜2年ぐらい、さらにはもっと持つのではないかかという話もあります。とにかく、誰にもはっきりとは分からないと思います。

やはり、ワクチンに関して、今の時点で個人的に一番関心があるのは、変異ウイルスに対してどのくらい効くのか? ということと、今後どんな変異が出てくるのか?、そして抗体がどのくらい持続するのか? という3点です。
新型コロナワクチンの情報発信をしていると、新しいワクチンを作ったけれど、変異が生まれて、免疫逃避が起きて、また新しいワクチン作って……イタチごっこでワクチンを打ち続けなければいけないんじゃないか、と考える方を多く目にします。
けれど、変異というのは永遠に続けることは出来ません。ウイルスも変異を起こすと、何かを得るために何かを犠牲にしないといけない時があります。例えば HIV でも、薬に対する耐性が出来ると増殖能が下がるということもあり得ます。有名なものでは M184V という変異がありますが、これは薬の耐性は起こすのですが、ウイルス自体が増殖しにくくなるという特徴があります。薬への耐性を得るには、ウイルスは何かを失わなければいけない時があります。

この一年で(新型コロナウイルスの)流行がこれぐらい広がって、重要な変異がある程度分かってきたかなと思います。
1つには、今まで議論になっている E484K が挙げられます。
また N501やK417などの細胞膜の ACE2受容体にくっつくレセプター・バインディング・ドメイン(受容体結合ドメイン)に起こる変異や、他にもN ターミナル・ドメイン(N末端)にもいくつも変異が起きています。今後どういう変異が起きてくるのかは すごく関心があります。
峰先生、何かありますか?

峰宗太郎
仰る通りですね。
今回のウイルスの場合、レセプター・バインディング・ドメイン(Receptor binding domain; RBD)という細胞の表面に出ている分子 ACE2 とくっつく部分に変異が入ってきます。この ACE2 にくっつけなくなってしまうと、最後には感染できなくなってしまいます。
ウイルスとしても、打つ手が無限にあるわけではなくて、あくまでも「ACE2 レセプターにくっつくことが出来て、なおかつ中和抗体から逃れられるような変異」が選択されています。そうすると詰め将棋と一緒で、どこかで必ず「詰む」わけです。
延々と新しい変異が起こるというのはあまり考えられません。1年間流行してて、これだけいろいろな変異が出て、特に問題なっているのが今のものであれば、今以上に危ないものが出てくる可能性の方が少ないのではないかと思っていますす。

安川康介
チェックメイトですか?

峰宗太郎
うーん、もうちょっとでチェックメイトじゃないですかね。

木下喬弘
変異自体は永遠に続けられるものではなくて、「死亡率が高く、感染力は強く、免疫逃避も高いウイルスが、そんなにバンバン出てくるのは確率的には低いのではないか」という意見ですね。

この記事は、その他も本当に面白くて、専門家がいろいろ好き勝手に言っていますが、確実性というかコミュニケーション自体もちゃんとしていて、分からないけどこう思うというところと、分からないというところは切り分けて書いています。
そして最後はやはり、変異に対する懸念が挙げられています。

もちろん、今の時点で「変異に対して対応出来ていくか」ということは分からないです。この記事は、ファイザー社が「南アフリカでのワクチンの有効性が100%」と発表する以前のものなので、「今はまだ全くデータがない」という記事になっています。
繰り返しになりますが、このオレゴン州立大学の先生が仰っているのは、「ウイルスが蔓延し、ワクチンを打ってその感染を減らすことに時間がかかればかかるほど、新たな変異が生まれるリスクが上がる」ということです。
その対策として一番有効なのは、感染自体を抑えるか、ウイルスを体の中で増殖させないことだと。今は、ワクチンが効くかどうか結果を心配している暇があったら「1日でも早く1人でも多く接種した方がいい」とのメッセージを強く打ち出しています。私はもう、これには100%同意なので、いい記事だなあと思った次第です。

今日はこの辺で締めさせて頂こうかなと思いますが、ご登壇いただいた先生方、ご意見などありますでしょうか。
なさそうでしたら、日替わりモデレーター制度は検討しまして、来週月曜日からひと味変わった、ひょっとしたら前菜が安川先生じゃなくなって……。

安川康介
「安川の回の方が木下の回より面白い」みたいな、そういうのを目指します!(笑)

木下喬弘
ありがとうございます!(笑)
ぜひぜひ、目指していただいて。

峰宗太郎
では、私は毒々しい回を目指したいと思います。

木下喬弘・安川康介
(笑)

木下喬弘
今日はちょっと、私も峰先生もチョイチョイ毒を吐きましたけど(笑)
そんな感じで、モデレーターによって色が違うのも、これから楽しんでいただければと思います。本日もありがとうございました。
それでは日本の皆さん、よい週末をお過ごしください。

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