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CDCが新たな指針を発表:ワクチン接種者同士はマスクなしで会ってもよい?(3月9日こびナビClubhouseまとめ)

木下喬弘

日本のみなさん、おはようございます。
本日も「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース」始めていきたいと思います。

今日は、アメリカの大手報道機関が一斉に報じている、CDCの新たな指針についてお話していきたいと思います。
CNNのニュースを元にしているのですが、その引用としてCDCの指針がありますので、まずはそのキーポイントをしっかり見ていきたいと思います。

CDCが、ワクチンを接種した人に対する指針をアップデートしました。
コミュニティ内でのコロナの広がりのレベルなどによって勿論変わることもあるかもしれないですが、コロナワクチンについて日々刻々と更新される情報に基づいて、新たな指針を出したということです。

内容は、コロナワクチンの最終接種(ファイザー、モデルナのものであれば2回目の接種、あるいはジョンソン・エンド・ジョンソンなど1回接種のワクチンであれば1回目の接種)から2週間以上経過した人を「完全なワクチン接種を受けた人」と定義し、その方々に対して医療・介護施設外での推奨として以下のものを提示しています。

・相手も「完全なワクチン接種を受けた人」であれば、マスクや身体的距離なしで家を訪問して良い

・相手がワクチンを打っていなくても重症化リスクが低い人であれば、マスクや身体的距離なしで訪問して良い。ただし相手は同一世帯の人に限る

・無症状感染者の濃厚接触者になったときは、隔離やPCR検査は省略して良い。(ただし14日間は症状を監視する必要がある)

この3点が今回出た内容です。

これを読み解くにあたり、CDCが何を前提にしているかというと、まずワクチンを打った人は症状が出る可能性が少ないし、重症化するリスクも少ないということです。
そして「概要」のところに明確に書いてありますが、「完全なワクチン接種を受けた人は、無症候性感染のリスクも低くて、他の人に移すリスクも明らかに低い」とのことです。
発症・重症化予防の効果は確かだし、感染するリスク・人にうつすリスクのどちらも低いだろうということを元にこの指針を出しているということですね。

また、この指針にはポイントが2つあります。1つはハイリスクな人に対しては引き続き感染対策に気をつける必要があるということです。
元のリスクに限らずワクチンを打った人同士、あるいはワクチンを打った人とローリスクの人の組み合わせであればいいけれど、相手がワクチンを打っていないハイリスクの人の場合は、わずかに残る「人にうつすかもしれない可能性」を考える必要があります。

もう1つは「1つの世帯に限定する」ということで、相手がワクチンを打っていない人の場合、例えば3家族で集まるのはダメだということです。
ここでCDCが暗に言っているのは「基本的に家庭内での感染は防げない」ということです。
一緒に暮らしている人はもう運命共同体で、世帯内の人たちは1つのリスクとみなすという考え方です。
つまり、この指針では「1つの世帯であればOKだけれども、複数の世帯で集まるのはまだ控えてください」ということを言っています。

その他にもいくつか「まだやめてはいけないこと」があって、公共の場でのマスク着用、身体的距離、中~大規模の集まりの制限などが書かれています。また症状が出ているときは検査をしてください、とのことです。
そして旅行に関しては「まだ変更はありません」と書いています。
つまり、ワクチンを打ったとしてもまだ好きに旅行をしていいわけではないということですね。

このあたりがCDCの新たな指針の内容です。
残り20分を丸々使って、登壇者の先生方から意見をいただきたいと思います。

池田早希
CDCのサイトにも書いてあったことなのですが、地域感染がまだ起こっている限りは、ワクチンを接種した人でもコロナに感染したり、さらに他者に感染させたりするリスクをゼロにすることはできません。
しかし、隔離とか社会的途絶の代償と比較すると、ワクチン接種者における感染伝播のリスクは低いだろうと考えて今回のガイダンスの判断をしたようです。

感染対策の規制を安全だと考えられる範囲で一部緩和するということは、ワクチン接種の大きなモチベーションにつながりますので、国を上げての大規模接種プログラムには大きなメリットがあるなと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
これも「概要」のところにしっかり明記されていて、社会的に孤立させられている状況を考えると、いくつかの感染対策のための施策を緩める方が利益が大きいということですね。
まだ他の人に移すリスクが微妙に残ってはいるけれども、メリットの方が勝ると。そのような趣旨がしっかり書いてあります。

もう1つ、「いくつかの感染対策を緩めるというこの施策そのものが、人々のコロナワクチンの受け入れや接種率改善を助ける」ということも書いてあります。

安川康介
アメリカのワシントンD.C.で内科医として働いている安川康介です。

今回の推奨はすごく面白いなと思いました。
日本にいる方にとっては、アメリカでどのくらいワクチンの接種が進んでいるかを知らないとなかなか判断しにくい内容だと思いますが、アメリカでは1回目の接種を終えた人が既に国民の18%以上いて、65歳以上の方だと、1回目を終えた人が60%近く、2回目を終えた人が約30%いるという状況です。
こういった状況の中で、ワクチンを打った人と打っていない人に対する指針がないとどう行動していいのかわからない方が多いと思うのですが、今回の推奨はなかなか現実的な内容だと思います。
まだわかっていないこともたくさんありますが、現時点での科学的な検証の中で、おぼろげながらも見えてきたことに基づいて推奨しているというのが勇気のある内容だなと思いました。

去年コロナウイルスの流行が始まってから、僕たち臨床の現場にいる医者はCDCのサイトをひたすら見続けてきたんですけれども、最初はかなり批判があったんですね。

木下喬弘
そうですね。

安川康介
というのは、ものすごくカタいと言いますか、エビデンスにきっちり基づいていないと推奨しないというスタンスだったんですね。
例えばマスクにしても最初は「いらない」という推奨をしていて、かなり混乱した人が多かったです。
それがだんだん現実的になってきたというか、100%のエビデンスがなくても「大体このくらいのことは言えるんじゃないか」というのに基づいて推奨するようになってきたので、そういう転換というのは医者として、あるいはアメリカに住む一人の人間として面白いなと思いました。

木下喬弘
そういえば、僕もすっかり忘れていました。
最近こびナビのサイトを作り込むのにCDCのサイトをよく見ていて、「良くできているな」と思っていましたが、1年前は相当叩かれてましたね。

安川康介
そうなんですよね。
コロコロと推奨が変わったりして、アメリカの国民や医療現場の人はかなり混乱していました。

木下喬弘
当初は検査数の数字を間違っていたりとかいろいろあって結構批判されていましたが、今は公的な情報源としてかなり信頼のおけるものになっているんじゃないかなと僕も思います。

黑川友哉
こびナビで事務局をやっている黑川と申します。
今朝起きてみたら、寝てる間にツイッターでこの内容がすごく盛り上がっていて、まだ内容をしっかり読めていなかったので、今話が聞けてすごくありがたいです。

これ日本だと、公的な機関が思い切ってこういうガイドラインを出すというところまではまだまだハードルが高いと思うのですが、アメリカだとなぜこの時点でここまで踏み込んだガイドラインが出せるのかといったことについて、もし久米先生とかお話いただけることがあれば解説を伺いたいのですが、いかがでしょうか。


久米隼人氏
そうですね。
日本ではまだワクチンを打ち始めたばっかりなので、今の段階で打った人にどうするという議論にはまだ至っていないのかなと思います。

黑川友哉
そうですね。

久米隼人氏
日本のコロナ対策においても完全にエビデンスが確立していない中でクラスター対策を行ったりしていました。
これに対して、最近CDCでも予算をつけて過去を遡って調査・研究し、それを普及させる動きがあります。
コロナについては、科学的に完全には確立していないことも含めて世界でいろいろな取り組みをしているということかなと思っています。

黑川友哉
ありがとうございます。
日本の行政組織や公的な組織って、世論や業界団体、患者団体などからの批判や訴訟を懸念している部分が大きいのかなと思うのですが、今あるエビデンスの中でベストな政策を受け入れていこうという文化が世の中に根付いていくといいなぁと思いながら聞いていました。

木下喬弘
お二人ともありがとうございます。
そういえばこれも最近忘れがちでしたが、そもそも日本発の3密の回避が「3C」としてWHOに取り上げられましたよね。
日本の感染対策も、思い返してみるとなかなかイケてた部分もいっぱいあるのではないかと思います。
この配信ではCDCのことを多く取り上げていますが、日本の対策にも素晴らしいところがたくさんあったというのを明確に言及しておくといいかなと思いました。

他にもポイントがたくさんあると思うのですが、僕はCDCのガイダンスって今後変わり得ると思っています。
現在アメリカの1日あたりの感染者数は6万人で、人口比で考えると日本なら2万人くらいです。
日本において今までの最高感染者数は5,000人くらいなので、それに比べるとかなり多いとは思いますが、今後また感染者数が増えてきたら感染対策を元に戻すという可能性はあると思います。
アメリカでは最高で1日あたりの感染者数が30万人くらいになったときがあったので、それと比べたら今はかなり収まってきているからこそ対策を緩めることができるのだと思います。

もう1つ、これはバランス感覚として難しいところだとは思いますが、CDCはやっぱりワクチンを接種して欲しいと考えています。
自己決定を奪わないながらもインセンティブを与えて、かつ科学的なエビデンスに基づいていることを伝えるような情報提供をうまく行うのはかなり難しいと思います。
ともすれば「ワクチンを打っている人だけずるい」という話に恐らくなりますし、まだ打てていない僕自身もそう思わないことはないです。
しかし社会活動を再開して経済を取り戻していかなければならないし、そのためにこのくらいのラインであれば妥当ではないかというのを、国民とコミュニケーションしながらやっているのかなと思います。
そのあたり、日本もうまくやっていく必要があるのではないかと感じました。

他の先生、いかがでしょうか。

内田舞先生
内田舞です。
アメリカのボストンで小児精神科医として、またハーバード医学部の助教授、マサチューセッツにある病院の医師として働いております。

私の見解としては2点あります。
1つは、CDCのスタッフが数ヶ月前に変わったことが大きいのではないかということです。
ご存知のようにアメリカの大統領が変わって、CDCのチーフも、2ヶ月前まで私の働く病院の感染症科のチーフだった女性に替わりました。
この1年のアメリカのコロナ対策は完全に失敗していて、CDCの信頼や権威が落ちてしまいました。
私としてはCDCは頑張ってくれていたと思うのですが、以前の政権下では出来ること・出来ないことがあったのだと思います。それを大きく変えて「アメリカの国民のためのCDCでなければいけない」ということを明言し、スタンスを変えているというのがあると思います。

今回のガイドラインの中でよかったと思うのは、マスク着用や身体的距離を取るなどの対策は常に推奨しつづけていて、でもその中で「ワクチンを受けたらできることがあるよ」という内容を示しているのはバランスが取れているなと思います。
アメリカで感染対策が失敗した大きな原因は、もう全部諦めて「何もしなくていい」となったり科学やその他推奨されているものを全て拒絶してしまった人がいる一方、感染対策を徹底する人もいたりと、人々の行動が両極端になってしまったケースが多かったことだと思います。
しっかりガイドラインを守っている人は感染はしないけれど家から出られず、そうでない人はマスクもしない、距離も取らない、レストランにどんどん行っちゃう。
このような状況では「これはやっちゃいけない、でもできることはある」という形でオプションを示さないと、これ以上の予防対策が続けられないような状況に来ていたと思うので、今回のガイダンスでそういった心理的なバランスを提供したのではないかと感じます。
これは勇気ある判断ですし、効果もあるのではないかと思います。「ワクチンを受けて人と会えるのだったらマスクはしよう」というように、できることがあるのであれば、他の対策は嫌だけれどやろうと思うようになる人もいるのではないでしょうか。

木下喬弘
ありがとうございます。
まさにガス抜き的な要素があると思いますし、たとえばCNNの伝え方とかもうまくて、「2回ワクチン打ったおじいちゃん・おばあちゃんは孫に会いに行ってハグしていいんですよ」というように書いていて、報道もうまいなと思いました。

前田陽平先生
1つ聞きたかったのですが、今アメリカでは、ワクチン接種率が伸び悩んでいるというのが社会的な問題になっていると捉えられて、今回の政策の背景になっているのでしょうか?

木下喬弘
僕はそういう認識ではないのですが、他のみなさんいかがでしょうか?

安川康介
最近接種率はどんどん伸びていて、1日200万回以上とかなので、伸び悩んでいるということは今のところないと思います。いずれそういう状況になるかもしれないですが…

前田陽平先生
なるほど、いつかそういうフェーズが来ると思うけれど今はまだそうでもない、でもあえて今の時点でこういう政策を打っていったということなんですね。

安川康介
はい。なので、勇気のある推奨だなと思っています。

前田陽平先生
そうですね。
アメリカ人にとってホームパーティができないとか、誰と会うときでもマスクをしていなきゃいけないというのが、めちゃくちゃ苦痛に思う人が多いんだろうなと思いました。

日本人でマスクをしているのがどうしても嫌だという方の割合は、アメリカに比べると相対的に少ないんだろうなと感じていて、ワクチンを打ったらマスクどうこうというのはそれはそれで反発を招きそうな気もしています。
日本だと、みんながしたいのは恐らく飲み会ですよね。
ワクチンを打ったことのインセンティブを設けるという政策自体が、日本で受け入れられるかというとちょっと微妙なところがあると思って、ワクチンにインセンティブを持たせるとしたらどんなことがあり得るかなと考えていたんですけれども、なかなか日本だとそれにふさわしい内容がないような気がしています。

池田早希
ただ、みなさんやっぱり大切な人に会いたいですよね。

前田陽平先生
間違いないですね。

池田早希
こびナビのクラウドファンディングのページやInstagramに載せている、漫画家のこしのりょうさんが描いてくださったイラストがありますよね。
車椅子に乗っているおばあちゃんのところにお孫さんが来て、再開を喜んでハグしようとしているイラストなんですけれども、ワクチン接種が普及したら近い将来そういう風に会うことができるんだろうなと思いました。
日本でも国を上げてワクチンキャンペーンに取り組んで、接種がどんどん進むことを期待したいと思います。

前田陽平先生
僕も病院で働いていて思うのは、面会ができないというのはかなりキツいですよね。
たとえばがんのターミナル(末期)の方とかも面会できないというのが、ワクチンによって大きく変わるといいなと期待しています。
もちろん、一般的な状況でリスクの低い人同士がマスクをした上で、近隣に住んでいる場合は会えているかもしれないのですが、遠方に移動して会うというのが今はなかなか難しいと思うので、その点が変わることへの期待はあるかなと思いました。

ただそもそもの部分として、ワクチンを打った人に特権的なものを与えることに対する反感は、アメリカよりも日本の方が強いのかもしれないなぁとなんとなく思ってはいるのですが、とにかくみんなで打っていくというのがその点に対しても有効なのかもしれません。

池田早希
そうですね。今はまだ優先されている方だけですが、今後他の人にも段階的に増えていくタイミングだというのも大きいと思います。

木下喬弘
ありがとうございます。
藤松さん、どうぞ。

藤松翔太郎氏
ここに上がっていいのかと思いながら、メディアの人間としてお話したいと思います。
意外と世間のみなさんは、副反応について気になるのでよくニュースは見てくださるという状況だと思います。
その中で、とっかかりは副反応のニュースなんだけれども、そこに「アナフィラキシーは対処できますよ」といった情報も毎回出されているというのが、以前のHPVワクチンのときの報道とは変わってきていると思っています。
ちゃんとした医療情報を発信してくださっている方々のSNSがちょっとずつ効いてる気がしていて、ワイドショーとかの論調がSNSきっかけで変わっているというのはこの半年くらいですごく感じています。
ですので、継続的に同じように発信していただくだけで、前とは全然違う状況になるのではないかと思っています。

木下喬弘
ありがとうございます!本当に嬉しいお言葉です。

藤松翔太郎氏
メディアの中の人間は、近年「このニュースどう見られているかな」というのをツイッターとかでチェックするようになりました。。
「この発信がダメなんだ」とか「この発信は良いと言われている」というのを意外と報道の人間はみんな気にしていて、今のまま情報発信を続けていただくと報道の方にちょっとずつ浸透するので、ぜひ変わらずに発信をしていただきたいと思っています。

木下喬弘
ありがとうございます。
温かいお言葉をいただいてみんな嬉しく思っていると思います。
今回のニュースはインセンティブに取られかねない内容というか、実質インセンティブとしての面もあるニュースだと思います。
そういったところのリスクコミュニケーションって非常に気をつけなければならないと思っています。
サイエンスと、社会としてワクチンをどう見るかという要素のバランスを考えながら発信するのが重要だと思いました。

峰宗太郎
いい話の中で、全然違う話をしてもいいですか?

木下喬弘
出た(笑)どうぞ!

峰宗太郎
はい。
僕は今回のCDCの推奨を見たときに、日本でこういう推奨を書けるような行政機関があるんだろうかということを考えました。
外国だと、行政の立場性というものが明確ですよね。
CDCは、ワクチンに関するページに「safe & effective」とバッチリ書いています。

しかし日本の行政というのは、科学的に中立というか、両論併記というか、どこかメディアとも似ていて、人間味や立場性を感じさせないことに至上の価値を置いているんじゃいかっていうくらい引いているんですよね。
その点が外国との大きな違いだと感じていて、そういうところのあり方ってどうなんだろうというのを今後みんなで考えるんだろうなと思っています。
今みたいにどっちつかずだったり、論文を羅列して科学的な正しさを表現したりとかで、推奨という形で国民全体に呼びかけられないというのが日本にはあると思います。
じゃあ学術団体がワクチン推奨の立場にいるのかというと、アメリカでは学会が「ワクチン素晴らしいよ」と言っていたりしますが、日本の学会は「こういう情報提供です。あとは個人で考えておくんなまし」というような感じになっています。
そのあたりが、今後外国のようになっていくのか、それとも日本の良さを残しながら、でも少し前に進んでいくのか…こういう推奨を日本でもできるのかどうか、そのあたりにも注目したいと思っています。

内田舞先生
私も全く同意です。
外国はワクチンに対して「safe & effective」と言い切っているだけではなく、「ワクチン忌避は大きな社会問題だ」とも言い切っていて、その上でコミュニティとして何ができるか、CDCとして何ができるかといった「コミュニティ・エンゲージ部門」というのがCDCの中にあるんですね。
例えば去年では「マスクはいいものなのか悪いものなのか」に関して、CDCは完全に「マスクは皆さんしてください」ということを言っていたんですけれども、アメリカでは反マスク派が多く出てしまいました。
政治家も共和党と民主党で分かれてマスク賛成派・反対派になって、「マスクは口を塞ぐものだ」と言ったり、「マスクをする人は弱い人だ」といったイメージを作ったりする動きがありました。
今回体制の新しく体制の変わったCDCでは、ワクチン接種の推奨と共に、「マスクはかっこいいものだ」というイメージを作ろうということになりました。
そのためにマスクをしているスーパーヒーローのアニメを作るなど、アメリカの国民にとってどんなものが響くかをコミュニティ・エンゲージ部門で専門的にやっていて、そこがすごくいい働きをしてくれていると思います。

ワクチンに関しても、同部門がいろんな提案をしたり統計をとったりしています。
たとえば、ワクチンに対して躊躇している方がアメリカの中にどのくらいいて、どういった属性かといった研究がされています。
アメリカでワクチンを躊躇している人は20%くらい、その中の半分くらいの人は「反ワクチン派」として説得が難しい層、残り半分くらいの人は考え方を変えてもらえる可能性があるかもしれない層とのデータが示されています。
また、ワクチンを躊躇している人の中で、有色人種、黒人の方の割合が多いようです。また貧困層も多いそうです。
その方々に何が響くかということを研究して、提案を出しているということなので、今回のガイドラインもそのあたりの方々がターゲットになっているんじゃないかと感じています。

木下喬弘
ありがとうございます。
おっしゃる通り、アメリカはヘルスプロモーションも上手になってきているのかなと思います。
日本の厚労省にもいくつか成功例があって、例えばセーラームーンのポスターを出していたりします。一方で人生会議(ACP:Active Care Planning)で小籔さんのポスターを出したときは炎上して、そういったことが厚労省がリスクとして捉えることに影響したのではないかと思います。
行政として努力をしていると思いますが、アメリカではワクチン忌避の方々にささる情報提供をしようとしている点が非常に評価されるところだということですね。

今日は盛り上がって10分ほど過ぎました。
他にもこれを言っておきたい、という先生いらっしゃいますか?

池田早希
峰先生がおっしゃったように、もし日本の厚労省にも日本の良さを活かしながらCDCのような疫学的・科学的な情報をベースにした指針を出したいという考えがあるのであれば、ライフワークとして協力したい人はこびナビメンバーを含めてたくさんいるんじゃないかと思いました。

木下喬弘
ありがとうございます。
私が在籍していたハーバード公衆衛生大学院では、ヘルス・プロモーションとか、ヘルス・コミュニケーションを専門にする学部があるんですよね。
たとえば禁煙キャンペーンはどういう感情に訴えかけたら一番効果があるかとかを考えていて、実は「禁煙するのがカッコいい」というプロモーションよりも、「タバコを吸っている若者はタバコ会社に搾取されている」という怒りの感情を刺激する方が禁煙が進むといったことが研究されています。
これも一種のサイエンスであり専門性なので、このあたりも国として真剣に専門分野として尊重して扱って、その方面のスペシャリストを養成するといった方向性が、実際に進めて行く上ではまず必要になるんじゃないかなというのが私の私見です。

みなさんありがとうございます。30分の予定が、楽しくて40分になってしまいました。
今日のニュースは、CDCが「ワクチンを打った人は、ワクチンを打った人同士で会っていいし、ワクチンを打っていない人でもコロナのハイリスクの方でなければ会っていい。マスクなしでハグもしていい」という指針を出したことを取り上げ、それを日本に持ち込むことができるかについて、多角的な視点でお話をさせていただきました。

毎朝8:30~9:00に「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース」ということでこうした情報発信を行っています。
Twitter、Instagram、Facebookの各種SNSで「こびナビ」と検索していただくとアカウントがあります。そちらでも最新ニュースを発信しておりますので、ぜひチェックしていただければと思います。

今週の後半はニュースではなくて、妊娠中にワクチンを接種してその情報を非常に力強く発信しておられる内田先生に2回ほどご登壇いただき、妊娠中のワクチン接種の考え方についてお話をお伺いしたいと思っています。
女性の方で気になっている方たくさんいらっしゃると思いますので、木曜日・金曜日を楽しみにしていただけたらと思います。

では、本日もみなさんありがとうございました。
日本のみなさん、良い一日をお過ごしください。

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