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検疫所での変異ウイルス患者の退院基準緩和、陰性証明書について(4月13日こびナビClubhouseまとめ)

4月13日(火)
こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース
本日のモデレーター: 吉村健佑(初)


【オープニング】検疫の歴史

吉村健佑
おはようございます!!!!!

黑川友哉
いやいや、勢い強すぎでしょ、吉村先生(笑)

吉村健佑
これはもう始めちゃっていい感じなんですか?
「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース!」
本日4月13日、始めたいと思います。
今日は私、こびナビ代表の吉村健佑が進行役を務めさせていただきます。
よろしくお願いします。

一同
(拍手モーション👏)

吉村健佑
昨日早稲田大学での講義だったんですが、対面での講義だと年間80回くらいやっているのでだいぶいいんですけど、ラジオって準備とか結構大変ですね。
木下先生は慣れていらっしゃるなと自分でやって思うんですけど、みんなどんな感じでやってるんですかね?

木下喬弘
気にしないことでーす!

吉村健佑
わかりました!では自分のペースで好きなように30分やりたいと思います。

どんどんルームに入ってきてますね。
「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース!」今日はこびナビ代表の吉村健佑がお送りしております。
今日の内容にいきなり入っていっていいですかね?

木下喬弘
先生、最初の15分ぐらい無駄に使っていただいていいですよ(笑)

吉村健佑
最近あったこと、みたいな話なんですけど…

木下喬弘
そんなに真面目に捉えていただかなくても(笑)

吉村健佑
こびナビを始めて少し生活が変わったというか、やっていることも少し変わったな、と思っています。
こびナビの活動を開始してから2か月が経って、たとえば昨日東京新聞の記事になっていたようなんですけれど、それを人に教えてもらって気づいたりとか、メディアなどにいつのまにか取り上げていただいていくつかニュースになっていたり、どんどん自分の知らないところで拡散していることが非常に面白いと思うのと、皆さんに関心をもっていただいて話題にしていただいていることはありがたいなと思っております。

今日ですね、何を話そうかなと思ったんですよ。
DJ 木下のようにいかれるか…今まではワクチンの専門的な話というところをこびナビとしてずっとやってきたんですけど、今日は少しコロナ全体を見渡してみようと思います。

ワクチン以前に私が一生懸命取り組んでいる事業で「検疫」というのがあるんですね。
検疫をやっていく中で「ワクチンが大事だな」と思ってこびナビの活動に入っていった経緯があるので、ちょっと皆さんに今日は「検疫」ということをキーワードに「医師が解説する世界の最新医療ニュース!」をお送りしていきたいと思います。
どうでしょうか? そのような感じでもよろしいでしょうか?

木下喬弘
最高です!

内田舞
すごく興味あります!

一同
(拍手モーション👏)

吉村健佑
あ、安川先生おはようございます!

安川康介
おはようございます。

吉村健佑
「検疫」についての話をしたいと思っていますけれども…すみません、絡んでしまいました…
皆さんのコメントもぜひ途中でもらえるとありがたいなと思います。
では今日の内容に入っていきたいと思います。

そもそも検疫は英語で「Quarantine」というんですが、なぜ「Quarantine」というか皆さん、ご存じでしょうか?
調べて初めて知ったのですが、イタリア語で「40日間」という意味だそうです。14世紀にペストが流行したときについた名前らしく、どのような理由があるかというと、「東洋の国から来た船が広げているのではないか」と当時のヴェネツィア共和国が疑いをもって、船内に感染者がいないことを確認してから乗員を自分の国に入れたということでした。その時のペストの潜伏期間が40日間だったということで、疑わしい船をヴェネツィアの近海に強制的に停泊させて、40日間そこで留め置いたというのがこの「Quarantine」の語源だそうです。
これが実は現在の新型コロナに対する検疫の考え方そのままなんですよね。
まさに同じ概念で運用されていることですのでその通りなのでしょうけれど、いまだにそれを踏襲してやっているということになります。

日本国内で見てみると、今回は検疫「Quarantine」はコロナ対策をしていますが、普段は何をしているかといいますと、どちらかというと食品衛生をやっているんですね。
食中毒の原因を調査したり、食品と一緒にいろいろな外来生物・害虫が入ってこないかみたいなことを対策している部門です。
ここを厚生労働省の中で所管しているのが「医薬食品衛生局」で、その一部として日本中に検疫所が設置されているという、そんな感じです。
後でニュースにつながっていくのでもう少しだけ背景の話をさせてもらっても…大丈夫ですか? 木下先生?

木下喬弘
新鮮でなかなかいい始まりです!

吉村健佑
ホントですか!?

木下喬弘
はい、歴史から始まった人、今までいないので。

吉村健佑
そうですか!木下先生はいつも料理の話されてるんでしたっけ?

木下喬弘
そうです(笑)
14世紀から始まるとは思わなかったです!

吉村健佑
ペストは東洋の国から来た船が広めているという噂から始まっているので、若干日本も無縁では無いような気がしていて、そんな語源を持つ「Quarantine」検疫なのです。
今日本でどれぐらい検疫所があるかってご存知ですか? 日本中で何か所あると思いますか?
スピーカーの中で…副代表の池田先生、指名してもいいでしょうか?

池田早希
そうですね…ズバリ20か所くらいですか?

吉村健佑
あぁ、20か所くらいですとさすがに世界からやってくるいろいろな問題を止め切れないと思うんですよね。
答えをいきなり言ってしまうと、空港と海港(検疫の世界では海の港のことを空港と並んで海港という)合わせて110か所くらいとされています。
日本中110か所の空港・海港に検疫所が設置されて、そこで今言ったような食品衛生対策や害虫対策や、今回のような疫病対策をしています。
110か所のどこが最大の窓口になっているかというと、物流は海港が大きな窓口になり東京港や千葉港などそれぞれの都市にあるのですが、空港でいうと圧倒的に成田空港なんですよね。

国際空港でめちゃくちゃ人が入ってくるところは成田空港、あとは関空、中部、その3か所なのですが、入国者の数から比率でいうと成田が大部分をしめていると聞きました。
全体的に空港検疫というと成田が中心になっているのですが、普段検疫って皆さんが耳にするとか、生活の中にあるかというとほとんどないと思うんですね。
海外から帰国して入国した時に、皆さんご自分のバゲージは気にしていると思うのですが、その時に実は検疫を通っています。
検疫の前を通っていて「申告するものはありますか?」「熱が出ている人はいますか?」とか聞かれて、疲れているしほとんどの場合は「大丈夫です」「いません」という感じで前を通って税関に進む。
税関で課税されるものを申告して、あとは自分のカバンを持って帰る、というような感じだと思うんですけど、検疫所の前はほとんど素通りでして、検疫の体制が今のような緊急事態に対応していないという状況なんですよね。
なので、だいたいはこれまでそんなに大量の感染者が国内に入ってくるという想定で作っていないものですから、平和な体制でやっていたのです。

たとえば黄熱・マラリア・デング熱といった発熱者が時々出ていて、それに対する対応をしたり、また黄熱ウイルスが蔓延している土地に出国する方に対して黄熱の予防接種をするとか、そういったことが検疫の仕事だったのですが、ここにきて一気に検疫の仕事がフィーチャーされて稼働せざるを得ない状況が出てきた、というそんな状況です。

いいんでしょうかね……しゃべりっぱなしになってますけれども、こんな感じで大丈夫ですか?

木下喬弘
あの…最初の15分くらい無駄に使っていただいていいですって言ったのですが、まさか10分本題に行かずに…(笑)

吉村健佑
(笑)背景の話をしている! わかりました!
この辺までで気になることはありますか?


【ニュース】検疫所での国内変異ウイルス患者の退院基準緩和

ではそこでニュースに行ってから内容をディスカッションしましょう。
ニュースに行きたいと思います。

検疫所というのは先ほど言った「Quarantine」の語源にあったとおり、潜伏期間の間一旦留め置くという考え方に沿っています。
新型コロナ「COVID-19」ではどうなっているかというと、今も成田空港に入ってきた方々で陽性となる方も多く、こういった検査で陽性になった方や、あとは変異ウイルスが蔓延している土地から成田空港に到着された方に対しては潜伏期間の間留め置くという措置をしてきたんです。
世界のニュースと言いながら今日は国内の話なのですが、最近の話題のニュースとして、変異ウイルス患者の方の退院基準を緩和して従来ウイルスと同様にしたという事務連絡が出ています。
厚労省「新型コロナウイルス感染症対策本部」が4月8日付で発出した事務連絡で、これがめちゃくちゃ重要なんですね。これは検疫業務を大きく変えるといえるものです。
名称は「新型コロナウイルス変異株*流行国滞在歴のある入国者の方々の健康フォローアップおよび SARS-CoV-2 陽性と判定された方の情報および検体送付の徹底について」(*国の名称では「変異株」と呼ぶ)というめちゃくちゃ長い事務連絡なのですが、その内容の改定をして取り扱いを変えたというニュースになります。
どんな内容に変更したのかということを簡単に確認します。

従来は
・有症状の方で変異ウイルスが確認された方はそのまま療養施設に入って PCR検査(陰性)2回確定するまで宿泊療養を解除できず家に帰れなかった。

PCR検査2回陰性確認とは、一番最初にコロナが1年くらい前に流行ったときを思い出して欲しいのですが、その時も同じような対応を医療機関でやっていたんですね。
その場合に何が起こるかというと、症状が全く消失しても PCR 2回をひたすら待つというような状態に陥ります。
多くの方は2回陰性で帰れるのですが、一部の方は PCR検査をやってもやっても陰性化しない、症状がおさまって10日経ち、2週間経ち、3週間経ち、中には1か月経っても PCR検査が陰性にならないという方が従来ウイルスのときにも見受けられました。
それが今、変異ウイルスでも見られていて、これは本人は大変なんです。
ずっと隔離された状況で家に帰れず、以前の従来ウイルスだと医療機関に留め置かれる、現在の変異ウイルスですと検疫の宿泊施設に留め置かれる、ということが実際に発生していました。

私も2020年12月から成田空港の検疫官を非常勤でやって土日など24時間待機をさせてもらっていて、実際に陽性者を診察していました。
多くは長い間留め置かれて疲れてきますし、ずっと隔離されていますのでメンタルがだいぶ弱ってきてしまうということで、私は診療は精神科が専門なので、精神科診察もして評価させてもらったりという仕事をしています。

解除して欲しかったのですがなかなか解除できなかったんですね。
一緒に働いていた厚生労働省の方に何度も問い合わせをして「これはなんとかできないか? この運用そのものに意味がないよね、感染性はとっくに消失しているので早く帰してあげた方がいい」と現場から意見を出させていただいていました。
それでとうとう先週4月8日に退院基準が緩和されたんですね。

どのように緩和されたかというと、まずこれまで有症状の人は PCR検査2回とやっていたわけですが、有症状の人は取り扱いを「人工呼吸器をつけていない人・つけた人」と大きく2つに分けました。
多くは有症状でも人工呼吸器はつけていないわけですけれども、つけていない方は発症日から10日経過してかつ症状が改善後72時間を過ぎた場合は隔離を解除して良い、宿泊施設を退出して良いと言うことになりました。
それで多くの方は帰宅を許されるということになるわけですね。
ちなみにいわゆる重症化して人工呼吸器が必要になった方は、発症日から15日間経過して症状軽快後72時間過ぎた方ということになっていますが、多くは人工呼吸器をつけていないと思いますので10日間経過さらに72時間ということになって、これはうれしかったですね。
ちなみに無症状の方については発症日から10日間経過した場合はもう変異ウイルスであっても帰って良いというかたちになったんですね。
要は従来ウイルスと同様の扱いにしたというのが簡単な整理でして、これは非常に現場の運用を変えること、またいわゆる陽性者に対しては人権保護もできますし非常に重要な運用の変更だと思います。
このように変異ウイルスについても知見が重なってきましたので、取り扱いを単純化して従来のやり方・従来ウイルスと同じにしたという考え方になっています。

もう1つ同じ事務連絡の中で重要なことが書かれているんですが、従来ウイルスと同室も可能になったということもここで追加しておきたいと思います。
南アフリカ株などの患者さんについては地域の病床が逼迫していると言う状況であるならば従来ウイルスの方と同室での治療も差し支えないという明記をしました。

これも、地域の病床確保の観点で非常に重要な運用になりますね。
これまでは変異ウイルスがある場合は従来ウイルスと分けて治療を行う、別室で個室管理しなくてはいけないという運用だったんですけど、病床の使用率が20%以上の都道府県、ある程度の病床を使っている状況になってくれば変異ウイルスの患者は従来ウイルスの患者または当該患者と別の変異ウイルスの患者と同室として差し支えないという明記も Q&A でなされました。
ということでこの事務連絡1本で検疫の運用も大きく変わりましたし、地域の医療機関における患者さんの管理の内容も変わることになります。
非常に重要な事務連絡がニュースにもなりましたので、今日ここで取り上げたというような話でした。

どうですかね、ちょっと一方的に話をしてしまっていますけれども…
実は黑川先生も検疫所の非常勤医師として成田空港で働いているのですが、どうですか?
黑川先生、これ知ってましたか?

黑川友哉
ふりますねぇ(笑)
検疫はすごくピリピリしているのかなと思っていたら、皆さんもう1年間されてきてプロだな、と感じましたし、私自身も2021年2月のはじめから検疫業務に参加させてもらっていて「あ、こうやって水際対策ってやっているんだな」とか非常に勉強になりますよね。
確かに見ていると少し心許ない部分があったりだとか、現場でしかわからないような乗客とのトラブルのようなものも見えて、どちらかというと私は社会勉強として非常にいい経験をさせてもらっているなと思っていますね。

吉村健佑
なるほど。ありがとうございます。
確かに乗客トラブルというか、個別の方々の要望への対応は大変ですよね。

黑川友哉
日本にいらっしゃる方って旅行でくるという方よりも仕事で NAVY関係の方が結構いらっしゃっているじゃないですか。ゴツいですよね、いちいち(笑)
結構な威圧感があって緊張感があるんです。

吉村健佑
そうですね。
私も検疫に行っていろいろ思ったのですけれど、検疫もやっぱり港なので、職場として港の男たちみたいな感じで、どちらかというと働いている人たちも寡黙で黙々と仕事にあたっている印象です。
ちょっと「外科系の医師」を彷彿とさせるような雰囲気があって、いちいち丁寧に手取り足取り教えるということよりも「まあ、やってみろ、背中を見て覚えろ」みたいなところもあって、面白い職場です。

そこで私も12月から検疫官を実際にやってみて、現場で困ったことを紹介したいと思います。
ひとつは陰性証明というものです。
海外から国内に入ってくる時に、外務省などが指定したフォーマットに陰性証明書というのを出国する際に作ってもらってそれを持って出国する、そして日本に入ってきた時に改めて唾液で検査を行う、という運用で2重のチェックをして、国内に COVID-19が入ってくるのを防ぐというやり方をしています。
各国が出国の際に発行する陰性証明が中には若干怪しいものもあるというのが検疫官をやっていて実際の現場で直面します。
検疫官も陰性証明の確認という仕事を手伝わせてもらってますが、それを見てみると現地で作られたもので、どこの医療機関なのかな? 大丈夫かな? と思った時が時々あったんですね。
それが確信に変わった、やっぱりな、というインドネシアのニュースが出ました。
今年1月19日に出された「じゃかるた新聞」(現地の日本人が購読しているもの)のウェブニュースに載ったのですが、スカルノ・ハッタ空港で15人が逮捕されました。200人に対して偽の陰性証明書を発行していた疑いで逮捕されているんですね。

参照:
https://www.jakartashimbun.com/free/detail/54188.html
出典:じゃかるた新聞 2021/1/19

容疑者らは昨年10月から累計200人に対して100万ルピア(4/13現在約7,500円)前後の価格で偽の証明書を売っていたと地元メディアが報じたということです。

15人の大所帯でやっている組織犯罪ですから多分200人では済まないわけですよね。
といったことでこういった出国の際にはあまり各国気にせずに陰性証明を発行してしまっているのではないか、というのが1つの感覚のようでして、日本の場合はその一つひとつをかなり信用して運用していたわけですけれど、本当に大丈夫なのか? と言うのが検疫の現場で得たところでした。
ですので全件もう一度、改めて入国したときに確認していかないと自国を守ることはできないのだろうなと思ったんですね。

ただこの偽者か本物か真偽のはっきりしないような(国から来ている)陰性証明についても、一件一件検疫官の方が確認をして入国を判断しているという現場の努力というのも皆さんにもお伝えしたいかなという話でした。
ということで陰性証明の取り扱いというのはちょっと注意が必要だったということと、今は全件での確認フォローをしているよ、ということになります。
世界の最新医療ニュースっぽい感じで「じゃかるた新聞」を出してみましたが、こんな感じで検疫の現場の1つでした。

もう1つなんですけど、皆さん最近成田空港行ったことありますかね? 人気がなくてがらんとしていて…
池田先生、行きましたか? どうでしたか?

池田早希
ほとんどすべてのお店が閉まっていて、開いていたのはカフェテリアのお店で、あと限られていましたね。また、一つだけ雑貨屋さんのようなところが開いていました。

吉村健佑
そうですね、ありがとうございます。
成田空港へ行くと Duty Free Shop はすべて閉店で、私も検疫官をやってご飯を食べに行くにところを探しにいかなくてはいけないんですが、マクドナルドや吉野家はやっています。
あとスターバックスが2軒やっていて、セブンイレブンは開いている。
それぐらいしか我々に食料を供給してくれるところがなくて、あとは旅行用小物を売っているお店は開いていますけれど、そのような感じでほとんど人気もなくがらんとしています。
1日の入国者数というのがどれぐらいかというと、年末年始に私も当直していましたが、だいたい3,000人から4,000人くらいが成田空港に入ってきています。
そのうち年末年始だと COVID-19の検査で1日大体10名から15名の陽性者が出るという状況で、その方々は皆さんホテルに留め置くというような状況でした。

今時点ですとだいたい1,800人から2,000人くらいの方が成田空港に入国されているようです。他の空港だと数百人のレベルだそうですけれども、じわりじわりと増えている感じですね。
特に緊急事態宣言解除後は入国者がまた増えている状況でして、多くの方はビジネストラックという仕事を持たれている方の入国者。
後はレジデントトラックですね、技能実習生という方を外国から受け入れていますがその方々の入国許可。
あと最近はアスリートトラック(アストラ)といってオリンピックに向けて関係者たちが入ってきているという状況にあります。
関係者には選手も含まれますがコーチや同行者や関係者ということです。
「ビジトラ・レジトラ・アストラ」というふうに呼んで、実際にそういった理由で入国されている方が1日2,000人ぐらいいらっしゃいます。
その中で1日3人・5人・7人と日によって違いますけれど、コロナ陽性になる方が出ますよね。陽性者が出るとすべて千葉県内にありますホテルを検疫所が借り上げて、そこへ留め置くというような状況になっています。
ちなみに私もそのホテルに入っている方々の健康管理を担当することをさせてもらっていて、その方々が重症化した際には医療機関に対する入院を判断したり、入所中の様々な健康な問題を電話診療したり、場合によっては対面の診療したりなどといった健康管理の仕事を今も日々やらせていただいてます。

そんな検疫の話で残り3分まできたのですが、もう1つだけ、現場のこぼれ話的なものです。検疫は体制が不十分なところで人員が足りないんですよ。どこから人を集めていると思いますか? という話なんですが、実は仕事がなくて困っている職種があるわけですね。
航空会社 ANA とか JAL とか国内の様々な航空会社さんは便が止まってしまっていて多くの方がなかなかお仕事がないということで、地上勤務の職員の方やキャビンアテンダントの方々を検疫所で雇用して、今言ったようないろいろな検査の誘導を行ったり受付を行ったりという作業をしています。
皆さん検疫の制服を着てお仕事をされているので一見するとわからないのですが、やってらっしゃる方は ANA や JAL のキャビンアテンダントや地上勤務の方などがかなり勤務されていて、非常に重要なマンパワーとして現場を支える職員になっているということで、やはり航空業界お互いに支え合いながらやっているのかなと思います。
非常に重要な働き手ということになります。

あと1分ですね、おしまいにします。
この検疫をいつまでやるのかということで、最後にワクチンの話をしますが、おそらく諸外国でワクチンが広く接種されて、入国する方のほとんどで COVID-19 陽性が出ないという状態がきちんと確認されたらおしまいだと思うんですけれども、それにはいつ頃までかかるのかなあ、とやりながら思っていますね。
1年ではきかないかもしれないと思いながら現場での作業をしています。
1年とか1年半とか諸外国でのワクチン接種の広がり方もおそらく国によって違いがあるので、そこをどういうふうに捉えるか、ということで、まぁおそらくしばらくはこの検疫所も続くのではないかなと思います。

ということで今日は「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース!」ワクチン以前の検疫というところを取り上げて紹介させてもらいました。
木下先生こんな感じでどうでしょう?

木下喬弘
最高でーす!

安川康介
吉村先生、2つ質問があるのですがよろしいですか?
僕は日本に帰られる方の陰性証明書にサインをしたりするんですね。
自分の働いてる施設と名前とサインをしてそれで終わりなんですけれども、それの真偽というのはどのように審議されるんですか?

吉村健佑
間違いでしたらすみません、基本は、医療機関の名称を確認し、医師などの責任者のサインなどから「おそらくそうであろう」というところで通過だと思います。
国によっては、本当にどこの医療機関なのかということを二重チェックをしていますが、基本的にはその場の検疫官らの判断となるかと思います。

安川康介
陰性の検査結果というのは一緒に出さなくていいんですか?

吉村健佑
だいたい陰性証明書と一緒にお持ちになる方が多いですよね。
検体採取方法と判定方法と陰性と確認した、というのが一緒に示されている陰性証明書をもたれていることが多いです。
ただその証明書の書式も結構バラバラ、まちまちですよね。
その中から読み解いていって、多分このやり方で合っているだとか判定していくというのをひとりひとり人間がやっています。

安川康介
あともうひとつ、海外に住んでいる日本人の方でワクチン接種が僕も含めて終わっている方が多いんですけれども、そういう方に対しての検疫とかとか変更っていうのは日本って考えてるのでしょうか?

吉村健佑
そうですよね。接種された方ですよね。
役所的ですが今のところ事務連絡は来ていないです。ただこれは、医学的に考えると変えなきゃいけないですよね。どう変えたら一番合理的なんでしょうか。接種の証明を出せば時期によっては陰性証明は不要だ、とかそういうことになるんですかね。

安川康介
あとは隔離期間ですね。
日本に帰って2週間、公共交通機関が使えないですとかかなり不便ですので…

池田早希
あとコストもかなりかかりますよね、検査の結果が出るまで宿泊施設を用意したり、段ボールのベッドを用意したり、食事を用意したり、人件費もかなりかかりますので、この隔離はワクチンを接種した人はなし、とした方が国としても助かるのではないかな、と思いますね。
感染伝播も予防してくれるという科学的なデータも出てきていますので。

安川康介
CDC もワクチンを受けた方の海外渡航・国内旅行に対してガイドラインを最近変えていますので、吉村先生、ぜひ変えてください。

吉村健佑
ありがとうございます。
先ほどの池田先生の結果が出るまで留め置くという話がありましたけれども、以前 PCR検査の運用の時はそうだったんですが、今は基本的には唾液での抗原検査なので、数時間で結果が出るので、結果が出るまでずっと待たされるという運用はされていないですね。
空港内で段ボールベッドを作ってそこで休んでいる方がいるとかいうのは、昨年の4月とかの状況ですね。今はそこまでではないということと、お二人がおっしゃった通りさすがにこれだけワクチンを接種した方が世界中に増えてきましたから、入国の際に取り扱いをどうするかというのは、あらためて決める必要があるでしょうね。
ちょっと検疫管理室の方とさっそく議論してみたいと思います。
いい方向に進むといいのかな、と思います。

池田早希
その場合いろいろなワクチンがありますので、ファイザー社・モデルナ社、かつ中国のワクチンだったりロシアのワクチンだったりいろいろあるので、すべてを認めるかどうか等、色々と検討が必要ですよね。

吉村健佑
そうですよね。確かにおっしゃる通りですね。
ありがとうございました。ちょっと投げかけてみます。
内田先生、何か発言されましたか?

内田舞
いえいえ、聞きたいことはまさに安川先生、池田先生がおっしゃっていたワクチンを接種した日本人が帰国した場合はどのようなプロセスになるのかということでした。
私もワクチンを2回接種し終わっているんですけれども、今の時点でたとえば陰性証明を持って日本に帰国した場合というのはどのようなプロセスを経ることになるのでしょうか?

吉村健佑
日本に帰ってきた場合ですね?
当該の国にもよるんですけれども、変異ウイルスが蔓延している土地から来た方とそうでない方というので2つに分かれます。基本的に全員唾液による検査を行って、陰性であったという前提ですが、いま変異ウイルスが蔓延していない土地から来た方はそのまま入国していただいて、公共交通機関の一時的な利用制限をお願いしたかたちで入国になります。
変異ウイルスが蔓延している土地から来た方というのは3泊4日宿泊施設に入っていただいて留め置かれるという運用だと思います。

内田舞
なるほど。ということは私がアメリカから帰った場合ですと成田空港や羽田空港で唾液検査をして3時間待つ、そのあとは横浜の実家に帰れる感じですかね?

吉村健佑
ごめんなさい、アメリカが今どの程度変異ウイルスの蔓延地になっているかというのは確認をしなくてはいけなくて、結構カナダとか州によって扱いが違ったりしていてですね、その時の対象表を見ておかなければいけなくて、適宜更新されるので今すぐ私が「大丈夫です!」とか言うと間違ってしまうかもしれないので、その時のリストに…

内田舞
わかりました、ありがとうございます。すごく興味深かったです。

吉村健佑
そんなワクチンではない話をしておりましたが、もう37分過ぎちゃいましたね。
木下先生、今日はこんな感じでいかがでしょうか?
まとめちゃって大丈夫ですか?

木下喬弘
「一刻も早く日本に帰りたい米国医師たちが吉村先生に相談する会」みたいな(笑)
めっちゃ勉強になりました!
僕もいろいろあって、そのうち帰らなくてはいけないかもしれないので、ワークフローを知れてすごい勉強になりました。
それと共に CDC もワクチン接種後の「Travel Restriction」を変えたので、そこも政府を動かしていただけると合理的かな、と思ってます。

吉村健佑
ありがとうございます。勉強します!
最後に検疫所の方々はすごく現場で頑張っていて、24時間体制・365日がもう1年以上続いている状況で、ダイアモンドプリンセスから頑張っていらっしゃいます。
現場の方々、非常に大変だと思いますが、皆さんもぜひ応援していただいて、検疫官の方々に対する感謝もしていただけると嬉しいなと思います。
もしそんな検疫業務に関心のある医師がこの中にいらっしゃいましたら、非常勤の医師などでの協力もできるかと思います。お手伝いしてくれる人が出てくると助かるなと思います。

以上で今日の私の話はおしまいにしたいと思います。
「こびナビの医師が解説する世界の最新医療ニュース!」
今日は代表の吉村健佑が検疫の話題を中心にしてお送りいたしました。
また来週私の出番もあるかと思いますので、よろしくお願いします。

皆さん、どうもありがとうございました。

一同
ありがとうございました。

吉村健佑
それでは皆さん、今日もいい1日をお過ごしください。


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