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「失われた時を求めて」と「プルーストを読む生活」を読む 109

失われた時を求めて

12巻、157ページまで。主人公の家を出ていったアルベルチーヌを呼び戻そうと、今いるであろう叔母のボンタン夫人宅へサン=ルーを送った。そのことについて、アルベルチーヌから怒りの電報が届く。

「あなたはお友だちのサン=ルーを叔母のところへ寄こしましたね、非常識なことでした。ねえ、あなた、あたしを必要としているのなら、なぜ直接あたしにそう書いてくださらなかったの?そうしてくださったなら、喜んで戻ったでしょうに。こんなばかげた工作は二度としないでください。」

12巻 P89

至極まっとうだ!アルベルチーヌの言葉はまともそのもの。しかし主人公はこの電報を受け取って、まだ脈アリと安心する。そしてこれに対して最悪の返事を出す。

ぼくのかわいいアルベルチーヌ、永久にさようなら。別れる前日にふたりでした楽しい散歩のこと、あらためてありがとう。とてもいい想い出になっています。

12巻 P97

さらに手紙には、サン=ルーには何も頼んでいないと嘘をつき、アルベルチーヌが出ていった翌日に母が結婚を承諾してくれたのに台無しにしただの、アルベルチーヌのために買ったヨットやロールス・ロイスが無駄になるだの、相手に罪悪感を植え付けようとする。主人公は自分のそういう態度が今の事態を招いたにもかかわらず、いまだ体裁を取り繕って物事を自分の優位に進めないと気がすまないらしい。まったく改心の余地がない。

それにしても、社交界パートは立ち話が長々と続くだけで、退屈でうんざりしていた。このあたりはちゃんと物語が進む。どんどん読み進められる。

主人公はアルベルチーヌが寝泊まりしていた部屋で指輪を見つけ、男性から贈られたものなんじゃないかと焦る。わざわざ遠方にまで使いに行ってくれたサン=ルーを呼び戻しては、アルベルチーヌを連れ戻す作戦が失敗したことを責めまくる。本当にひどい。

その間にもアルベルチーヌと手紙のやり取りは続く。主人公は手紙に嘘を書きまくり、なんとかアルベルチーヌの気を引き、呼び戻そうと苦心する。そんな小細工を労せずに、真正面から向き合うという選択肢はないのだろうか。やはり、所詮相手を所有物か何かとしか思っておらず、プライドが許さないのだろうか。

このアルベルチーヌとのやりとりは、幕切れとなる。「失われた時を求めて」はこれまでリアリズムを追求するような作風だったのが、急に安物の三文芝居のような、ド定番の展開になるとは予想していなかった。あ、これ、もしかしてオリジナルなのかな。他の物語との決定的な違いは、プルーストのしつこさだろう。

12巻も序盤でアルベルチーヌが消え去り、残り3巻弱はどうするんだろう?もう少し引っ張ると思っていた。しかし今ここが「失われた時を求めて」全体の核心を突いているように思う。ここからがまさに「失われた時を求めて」なのではないか。

プルーストを読む生活

583ページまで。自意識がどうとかという話。「失われた時を求めて」と絡めて自分のことを話しているが、僕は自意識がどうとかっていう話は全然わからなくて、ついていけない。自意識ってなんなのか、なんとなくは知っているけれど、自分にとってはあまりにも実感のない言葉。

前回著者はブレスオブザワイルドを買ったと言っていた。毎日やっているそうだ。あまり魅力的に書かれていないため購買欲がそそられず、安心する。あれからゼルダ欲しいと思って調べたら、2017年のゲームなのに中古市場で5千円もする。全然値崩れしていない。来月にはきっと買うだろう。

「失われた時を求めて」のアルベルチーヌの話にも少し触れていた。かなりあっさりしていた。そして相変わらず別の本の話ばかりしている。僕は「失われた時を求めて」のこのあたりの展開を、かなり真っ直ぐに受け止めているけれど、著者にはそんなに響かなかったのだろう。

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