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「失われた時を求めて」と「プルーストを読む生活」を読む 118

失われた時を求めて

13巻、181ページまで。「失われた時を求めて」はこの13巻から、すっかり戦争の小説になってしまった。これまで全くそんなふうでなかったから、大きく変わった。同じ小説の続きだとはとても思えない。途中から戦争を描いた小説といえば「魔の山」があった。あれは本当に最後の短い部分だけで、それまでずっと山の結核療養所の話だった。「失われた時を求めて」の第一次世界大戦の様子は、けっこう長く続きそうだ。

フランスでは大戦時、家賃などの支払猶予令が出されていたそうだ。これはコロナ禍で政府にやってほしかったことだ。フランスでもやらなかったんじゃないか。権利が尊重される今の時代には、現実的じゃないかもしれない。

パリのマジェスティック・ホテルが出てきた。ベトナムにあるマジェスティック・ホテルは同じ系列ではないらしい。プルーストはマジェスティック・ホテルでストラヴィンスキーやピカソ、ジョイスたちと会食したと注釈に書かれている。プルーストもちゃんとした地位にいたんだな。この本だけ読んでいると、ただの情けない人だと勘違いしてしまう。マジェスティックは現在、改装してペニンシュラになっているようだ。

主人公の友人サン=ルーは貴族の矜持を見せる。もともと軍人だったこともあり、戦線に赴く。対象的に、ブロックは口だけ大層なことを言っておきながら兵役を逃れようとする。サン=ルー夫人となった主人公の初恋の相手ジルベルトは、戦禍を逃れようとパリを離れ、コンブレーの方へ移動するも、むしろドイツ軍はコンブレーの方へ迫ってきており、巻き込まれる。そういえば三島由紀夫の豊饒の海も、ちょっとだけ戦争が出てきたことを思い出した。松枝家の家政婦のお婆さんに、主人公が玉子をあげていた。

その頃主人公は体調を崩して入院したり、パリへ戻ったりを繰り返す。病弱な主人公は当然ながら、徴兵検査に通らない。主人公の立ち位置は、戦争についてはずっとこの傍観者的な立場が続くのだろう。

プルーストを読む生活

630ページまで。著者は「失われた時を求めて」の最終巻に突入したようだ。ちくま版は確か全10巻で、僕が読んでいる岩波版が全14巻の13巻を読んでおり、抜かされていないか気になる。このあたりは既にプルーストの死後に発表された巻で、描写が足りなかったり序盤にあった書き直し、練り直しの繰り返しの様子がなかったり、完成形とは言い難い文章だと著者は言っている。僕はあまりわからなかった。やはり追い抜かれているのだろうか。

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