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「失われた時を求めて」と「プルーストを読む生活」を読む 98

失われた時を求めて

10巻、440ページまで。やっと10巻が終わった。この10巻を読み終わるまでにめちゃくちゃ時間がかかってしまった。読み始めたのはなんと3月で、今6月だから3ヶ月ほどかかったことになる。「失われた時を求めて」も序盤は一週間に1巻ぐらいのペースで読んでいた。「このまま行けば半年かからないだろ」と思っていたが、いつの間にか1巻読むのに1ヶ月かかるようになり、毎日読んでいたのが読まなくなり、親父のことで忙しくなって後回しになり、10巻には3ヶ月かかってしまった。このままいつ読み終えることになるだろう。あと4巻ある。今年中に終わるだろうか。

「えれえ立ちんぼうめ」というセリフが繰り返し出てくる。これはモレルが婚約者であるジュピアンの姪に吐き捨てた言葉。その様子があまりに乱暴だったせいか、立ち聞きしていた主人公の中で反芻している。「えれえ立ちんぼうめ」という言葉そのものは可笑しい。

今回読んだ部分では、モレルがいかにひどい人間か語られている。この時代には普通だったのだろうか。

娘を手ごめにする段取りを多少進めたとたん、とりわけ許嫁に紹介してもらうほかの娘たちと関係を結ぶつもりだと話したとたん、モレルは娘の抵抗に出会って憤慨した。その結果(娘があまりにも純潔だったからか、それどころかすんなり身を任せたからか)モレルの欲望ははたと消え失せた。それでモレルは許嫁と手を切る決心をした

10巻 P433

モレルはシャルリュス男爵がパトロンで肉体関係があり、その上でジュピアンの姪と結婚しようとしていた。しかしそのジュピアンの姪の友達とも関係を持とうとしたところ、反対されて興味を失い、結婚もやめようとしている。ただシャルリュス男爵とジュピアンは繋がっており、モレルの行いがジュピアンの姪からジュピアンを通して男爵に伝わってしまうと、パトロン関係もなくなってしまうことを恐れて、モレルは道端で泣いていた。それを主人公に見つかった。

金と身分と権力と、肉欲と、こういうことは時代を問わずあるんだなー。昔は今よりも生存競争が厳しかったから、より露骨だったこともありうる。それにしても女の人はだいたい大変だ。ジュピアンの姪なんて、ろくでもない目にしかあっていないんじゃないか。この物語に登場する女性は、スワン夫人ことオデットや、ゲルマント夫人ことオリヤーヌなど、自由で狡猾でたくましい人もいるから、かわいそうな女性ばかりというわけではない。アルベルチーヌは、不憫でありかつ危うい感じ。

プルーストを読む生活

517ページまで。著者は休日の日記をまとめて書いているようだ。毎日の日付をつけた日記の体にする意味はあるのだろうか。著者は夏休みの絵日記を、初日に書き上げていたらしい。なにそれ、意味わからな過ぎて怖い。ホラーだ。夏休みの宿題を序盤に終わらせてしまうという話は聞いたこと有るけれど、日記でそれをやってしまうと全部想像であり、つまり誤魔化し、嘘日記ということになる。

後でまとめて書いてしまっても、覚えておらず結果的に嘘日記になってしまうかもしれないが、最初から嘘をつく意図で書かれた夏休み序盤の夏休みの絵日記と、思い出せなくて嘘が混じっているかもしれない夏休み終盤の絵日記とでは、意味合いが変わってくる。

僕は夏休みの宿題をいつやっていただろう。全然覚えていない。7月中に終わらせたこともあれば、夏休み終盤に終わらせたこともあり、9月に入ってからも出していなかったり、結局出さなかったこともあるんじゃないか。

夏休みといえば、僕は学校の宿題なんかよりも、地獄の夏期講習を思い出す。小学校高学年と、中学の夏休みはだいたい塾で過ごしていた。朝9時から夜9時まで、下手すれば11時まで、ほぼ毎日缶詰の日々を送っていた。それに比べたら学校の夏休みの宿題なんか、やっていようがいまいが同じ。

でも結局僕は、中学も高校も大学も受験に失敗したため、そういう努力というか、我慢というか、苦労は全く報われることはなかった。ただ受験という悪夢の記憶だけが残った。勉強も学校も嫌いだったけど、塾はそんなに嫌じゃなかったなー。

僕に知性の片鱗でもあるとすれば、それは学校ではなく家庭でもなく塾で芽生えたものだ。進学は失敗したけれど、自分という人間を形作る上で大いに影響を受けた場所だった。

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