「失われた時を求めて」と「プルーストを読む生活」を読む 94
失われた時を求めて
10巻、221ページまで。主人公はたびたびいろんな人から、「仕事しろ」と言われている。今日読んだ部分ではないけれど、アルベルチーヌからも「ねえ、いいこと、あした出かけないのなら、仕事をするって約束してちょうだい」(10巻P174)と言われている。主人公は小説家ということになっているが、ここまで作中で小説を書いているらしき素振りが描かれたことはない。
主人公のモデルが作者だとしたら、現に「失われた時を求めて」が存在しているため、しっかり小説を書いているはずだ。ずっと後になって書かれたものなのか。プルーストも若いうちはずっと無職同然だったのだろうか。きっと調べたらわかるんだけど、「失われた時を求めて」のネタバレに遭遇しそうでやめておく。
主人公の性格について、シャルリュス氏からは「くり延べ癖」と言われている。何でもかんでも後回しにしてほったらかして手を付けずそのままにしてしまうようだ。だから、周りから作家になるなら小説を書けと言われても、いつまでも書かない。そして本人はそのことに落ち込んでいる。まるでギャグのようだ。
今日読んだあたりは、相変わらずアルベルチーヌへの疑いと嫉妬がえんえんと繰り広げられている。このくだりが以前からずっと続いている。当時のフランスはそんなに浮気や裏切りがまかりとおっていたのだろうか。相手を束縛しようとするのではなく、そんな人と付き合わなかったらいいのにと思ってしまう。それも主人公はさして好きでもないようなことを散々ほのめかしていた。意味がわからない。
しかし、それを解説するように恋愛論を語っている。彼らにとっての恋愛とは、相手そのものではなく、相手に対して不安に思う気持ちのことを指すらしい。第二篇のスワンとオデットもまさにそうだった。主人公はさらに行き過ぎて、一人で暴走しているようにも思う。この小説を読んでいると、主人公のアルベルチーヌ評は、全部が全部妄想のように見える。一人相撲ではないのか。
このあたり、確かに10代の頃の恋愛はそういうものだったかもしれない。主人公もせいぜい20歳前後だ。そして大人になってもそういう恋愛を楽しんでいる人がいることは知っている。そういう人は、駆け引きだったりゲームのように恋愛することを楽しんでいる。安定とか、望んでいない。
プルーストを読む生活
490ページまで。著者が読んでいる本の中で「自分への信頼」とか「自分の理想」という話が出てくる。全然わけがわからなかった。自分への信頼って何だ。信頼ってのは、知らなかったり確証が持てない物事に対して抱くものではないのか。自分のことを左右するのは自分なのだから、信頼しようがしまいが、自分でどうにかなる話だ。自分に対して「信頼してたのに!」とか「裏切られた!」なんてならないだろう。他人じゃないのだから。
「自分の理想」とは、自分の理想を持つという話で、こうなりたい願望(ワナビー)みたいなものだろうか。僕は全然ないからよくわからない。目標みたいなものだろうか。でも理想はやはり理想なのだろう。自分は自分でしかないと思うんだけど、自分ではない別人の理想を抱くのだろうか。それって何か意味があるのか。
著者は名古屋出身の人みたいだ。それを知って、なんだか納得する。僕は名古屋に3年半住んでいたことがある。当時は会社員だったから、名古屋はあまり印象がない。休日も毎回同じところを行ったり来たりしていた。そんなに堪能とか満喫はしていない。
サラリーマンが転勤や出張で訪れる場所なんて、どこもみんなそうなるんじゃないか。いや、違うか。今大学の友人が転勤でタイに住んでおり、日々の写真がInstagramにあがってくる。さすがに満喫しているようだ。僕もタイやベトナムなら転勤してみたかったなー。
著者は日記のイベントに客として参加している。僕の中で日記といえば、原体験は太宰治の「正義と微笑」。これは正確に言うと日記ではなく、日記風の小説、日記のフォーマットを用いた文学作品。本物の日記が本として公開されるのは、それはそれで危ういことで、「アンネの日記」とか読んだことないけれど、本人が知ったらめちゃくちゃ怒るんじゃないだろうか。
「板尾日記」という板尾創路の日記本がある。これも立ち読み程度でしか読んだことないけれど、帯には「人の日記を読むなんて最低だと思います」とかそういう文言が書かれていた。日記は本来そういうもので、公開を前提とした日記はやはりどこか別物、また新たなウェブ日記的なフォーマットにあたる。「猿岩石日記」をおととしに読んだ。旅行と日記はさすがに相性がいい。
「プルーストを読む生活」もこの辺になってくると、「失われた時を求めて」の話が本当に全く出てこない。今著者がどこまで読んでいるのか、全然わからなくなった。
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