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⑩さようならクラクフ

7日目後編と8日目、前回の続き

ヴィエリチカ岩塩坑からの帰りは304のバスに乗り、旧市街で降りた。スーパーでビール4本とトイレットペーパーを買い、オルガ・パブロ邸へと帰った。とにかく何らかの形で、オルガ・パブロへお返しがしたかった。と言ってもこっちのビールは安いから4本買っても11złoty(386円)ぐらいしかしない。夜の9時頃二人の家へ戻ると、オルガはまだ帰っておらずパブロが出迎えてくれた。

「ビール買ったぜー」
「おお、後で飲むよ。今ネットゲームが忙しくてね!」

そんな感じでパブロは部屋へ引っ込んでいった。ネトゲ廃人気味なのかもしれない。僕はリビングで自分の荷物を整理したりしていた。すると間もなくしてオルガが帰ってきた。

「つかれたー!今日は朝9時から今まで働いてたんだよ!すごく疲れた!」

言葉とは裏腹に元気そうだ。

「お疲れ様(日本語)。ビール買ったけど飲む?」
「ビールは今はいいや。Teaを飲むから」

初日に彼女たちの常備飲料を聞いたことがあり、Teaと水ということだった。コーラや清涼飲料水の類は基本的に飲まない。オルガはコーヒーも好きじゃないけれど眠いときに時々飲むそうだ。パブロはコーヒーが好きで毎朝飲んでいる。そしてオルガが飲む「Tea」とは、僕はてっきり紅茶だと思っていたら、なんと緑茶だった。

彼女らに対しての僕の懸念

先日から彼女らに対して思っていたことを、この家を出る前に聞いておかなければいけないと思っていた。そして自分の無礼を詫びたいと思っていたから、この際に話を切り出してみた。

「君たちに迷惑かけたり、失礼な態度をとっていたことを本当に謝りたいんだ。例えば、君たちと日本のカップルとの違いを話したり、君が見せてくれた妹や母親の写真が君と似てないと笑ったり、他にも…悪気はなかったんだけどそれって失礼な態度だと思ってさ、まだ僕は何か君たちに迷惑かけていないかな?いや、かけていると思うんだ。おそらくね。僕は君にもパブロにも本当に感謝している。初日からトラムやバス、スーパーについてきてくれてあれこれ教えてくれたり、僕が一人で郊外に行くときも調べてメモまで書いてくれたよね?このメモは君の親切の証だよ。内容はもう覚えたけれど、今でも大切に持っている。他にも君たちは街を案内してくれたり、パブロは僕に半日間ガイドしてくれた。そんな人達に対して、僕はなんて態度が悪かったんだろうって思っていてね。詫びたいんだよ」

「何言ってるの?あなた本気でそんなこと心配しているの?可笑しい。やっぱりあなたって生粋の日本人ね。考え過ぎ。あなたが謝ることなんて何もないし、あなたが失礼だなんて思ったことも一度もないよ?それに、そんなに感謝されるほどのことはしていないから。私達がやっていることって普通だよ。私もパブロも好きでやっていることだし、あなたって今までの人生で余程ひどい目にあってきたの?笑」

彼女のこの返答に、僕は心が洗われるようだった。

「それは、君たちの親切は決して普通のことじゃないんだ。でもわかった。そんなに重く考えてもらわなくていい。君たちがそう思ってくれているなら僕は安心した。とにかく、僕は君たちにすごく感謝しているってことだよ。ありがとう」

「そう?どういたしまして」

オルガは少し照れくさそうにしていた。僕も日本語だったらこんな風に正直に話せなかったかもしれない。

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