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雇用統計からみるリセッションの可能性
近頃の底堅い雇用や消費の統計などを受け、アメリカは1996年のようにリセッションを回避しながらインフレーションを鎮圧する、ソフトランディングを達成できるのではないかという声が非常に高まっています。
株式市場も完全にソフトランディング(どころかノーランディングさえも)を織り込んでおり、連日最高値を更新する勢いです。
しかし、まだまだインフレへの勝利宣言に向けたハードルは高く、fedの年内3回利下げの予想に反してアトランタ連銀の総裁が1回を予想するなど、先が見通せていません。
結局のところ、アメリカは大きな痛みを伴うことなくインフレとの闘いに打ち勝ちつつあるのでしょうか。
今回の記事では、雇用統計の歴史的な挙動から現時点でのアメリカ経済の立ち位置を考察します。
失業率:じわり曇天迫る
下図はアメリカ労働統計局の公表する失業率(季節調整された。黒線は筆者加筆)のグラフです。
依然として低水準ではありますが、23年の春ごろからゆっくりと上昇傾向にあります。これはリーマンショック前にも見られたものであり、安心できるものとはいいがたいでしょう。
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この失業率は人種や年齢ごとにも集計されており、特定の集団の数値などからある程度景気に敏感な職の状況をおしはかることもできます。
下図は先ほどのグラフに16~19歳、黒人、そしてヒスパニック系それぞれの失業率を重ねたものです。
こうしてみると、若年層とヒスパニック系で顕著に失業率の上昇トレンドが形成されているのがわかります。とくにヒスパニック系でのそれは「まもなく離陸」といった雰囲気を醸し出しており、3月分の結果次第ではありますが非常に危なっかしいでしょう。
(ちなみに、こちらのグラフでのTotalが先ほどのものと少し違うように見えるのは縦軸が35%まで延ばされているためです。)
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サーム・ルール:準備万端
また、雇用とリセッションとの関係において、サーム・ルールという有名な法則があります。「直近3か月の平均失業率が過去12か月の最低失業率を上回ればリセッション」とするもので、経済学者であるサーム氏が機械的に個人への給付金を支給することで景気の維持と行政コストの軽減を図るべく考案しました。
下図はそのサーム・ルールを満たしている度合いの指数をあらわすグラフの全景と直近10年間です。
ほとんどの場合で(1960年代後半を除く)この値が継続して0を上回ればその後リセッションを迎えています。また、こちらでも2023年ごろから継続して0を上回っており、危険水域と言えるでしょう。
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直近ピーク-0.5%:まだ大丈夫そう
さらに、このサームルールと似たものとして雇用率に注目し、「直近ピーク-0.5%を警戒する」というものもあります。
雇用率とは、生産年齢人口に占める被雇用者数の割合のことであり、
下図は雇用率の全景と96年、00年、08年、そして24年前後のものです。
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96年では直近ピークである63.1%から62.7%への0.4ポイントの下落をみせるもその後踏みとどまり景気拡大局面を迎えています。
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00年は64.7%から64.2%ときれいに0.5ポイント下落し、その後一瞬持ち直したものの結局リセッションに突入しました。
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07年も63.3%から62.7%へ0.6ポイント下落し、そのままリーマンショックが発生しています。
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翻って24年はというと、直近のピークは23年11月の60.4%だったのが現時点で60.1%、0.3ポイントの下落を記録しています。この数値に照らした見方では、まだまだリセッションの突入まで猶予がありそうです。
まとめ
以上、失業率、サーム・ルール、直近ピーク-0.5%の三つの視点から雇用面でのリセッションについてみてきました。正直、私は先行き不透明だと感じています。
一見強そうに見える最近の雇用統計ですが、内実は製造業やIT系での減少をパートタイムサービス業が覆い隠す形であり、雇用率など実態をより反映している(と考えられる)ものを検討してみると実際のところもう少し弱い可能性が大いにあります。いずれにせよ、当分はシートベルトを着用し、不必要なリスクを遠ざける努力が要されそうです。
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