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【音楽×珈琲 鑑賞録】12月21日~アントン・ヴェーベルン 大管弦楽のための牧歌 『夏風の中で』

音楽観を鍛える鑑賞録。
エンディングまであと【11日】
12月21日のテーマは、【周辺】

とりあげる作品は、
アントン・ヴェーベルン /
大管弦楽のための牧歌 『夏風の中で』
です。

アントン・フリードリヒ・ヴィルヘルム・フォン・ヴェーベルン
Anton Friedrich Wilhelm von Webern
1883年12月3日 - 1945年9月15日
オーストリアの作曲家、指揮者、音楽学者

大管弦楽のための牧歌『夏風の中で』(In Sommerwind - Idyll für grosses Orchester)は、1904年に作曲した初期の管弦楽作品です。

ウィーン大学在学中に作曲した作品で、生前には演奏されず、没後の1961年に遺品の中から再発見され、1962年、シアトルでユージン・オーマンディの指揮によって初演が行われています。
詩人のブルーノ・ヴィレの『ねむの木の黙示録』にインスピレーションを受け、ワーグナーやR・シュトラウスなどの影響がみえる、ロマンチックで抒情的な作品です。

この作品が作曲された時分にシェーンベルクから師事を受けるようになり、1908年の「パッサカリア ニ短調 作品1」によって独立を許されています。
これ以降は音楽家と指揮者としての道を歩むようになりますが、2度の大戦がヴェーベルンの人生を大きく左右しました。
シェーンベルクというユダヤ人音楽家の弟子ということで、ナチス・ドイツに迫害を受けてしまいます。
ヴェーベルンの音楽は「頽廃音楽」「文化的ボルシェヴィズム」の烙印を押され、演奏活動で生計を立てることが難しくなってしまいました。
シェーンベルクは早々にアメリカに亡命しますが、ヴェーベルンはむしろ「ヒトラーに十二音技法の意義を納得させる」という意気込みでウィーンに残る決意をします。
程なくして戦争が終わり、音楽活動の再開としたかったところですが、疎開先の娘婿が元ナチ親衛隊で、米兵に目をつけられており、ヴェーベルンが喫煙のためにベランダに出てタバコに火をつけたところ闇取引の合図と誤解され、その場で射殺されてしまいました。
ヴェーベルンの最期はなんとも無慈悲で無常を感じてしまうものです。
社会や時代から少なくない影響をアーティストは受けますが、ヴェーベルンは社会や時代に翻弄されながら、非業の死を遂げてしまった音楽家としても有名になってしまいました。
運命がどう転ぶかは窺い知ることもできませんが、いつか来る日を恐れ止まるより、今できる最善の行動を果たしていけるようにしていきたいと改めて思う機会になりました。

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