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【音楽×本 鑑賞録】"366日の西洋音楽" 2月5日~エマニュエル・シャブリエ 狂詩曲『スペイン』

音楽観を鍛える鑑賞録。
2月5日 本日のテーマは、
【音楽史】
とりあげる作品は、
エマニュエル・シャブリエ /
狂詩曲『スペイン』

です。

いますぐ聴きたくなる! 1日1ページでわかるクラシック音楽の魅力
1週間で7テーマ! 1年で「クラシック音楽」の虜になる!
本書には、いまでも多くの人に愛好されているクラシック音楽の名曲の数々を、より深く楽しむための知識や情報を盛り込みました。366の名曲を、「音楽史」「主題」「ジャンル」「逸話」「作曲・演奏」「周辺」「謎」といった7つの共通テーマで考察・解析・推理・解説します。

エマニュエル・シャブリエ(Alexis-Emmanuel Chabrier)
フランスのアンベール生まれ。この表題曲 "管弦楽のための狂詩曲『スペイン』(España, rapsodie pour orchestre)"は、1883年に作曲。
前年に滞在したスペインの印象を音楽にし、交響曲としては短い楽曲。
初演時から現在に至るまで、オーケストラの人気あるレパートリーのひとつです。

40歳近くになるまでフランスの内務省で公務員をするなか、休日に曲づくりや音楽家との親交をはかるなどの、「日曜作曲家」をしていたそうです。
それが、1880年、ワーグナーの楽劇『トリスタンとイゾルデ』を観たことで、作曲家一本への道を志し、その3年後にこの楽曲が生まれたとのこと。
この楽曲の成功がありながらも、53歳という若さで亡くなってしまったため、実質的な作曲家としての活動は14年ほどで、作品数は少ない。

それにしても、
代表曲であるこの楽曲はなぜこれほど広く長く受け入れられたのでしょう?

想像を膨らませると、軽快で弾むようなリズム、ホーンセクションの程よい熱気感が、フランス人にとってのスペイン観に合致していたのではないかな、と。
演奏時間も6分くらいで気軽に聴けるし主題となるメロディは勇壮でありながらモダン。
とても聴き心地よく、穏やかな高揚感が演奏家も聴衆にも生じて、
「快活な演奏だったねぇ〜」とウキウキでディナーへ行けそうです。

作曲したエマニュエル・シャブリエは、もっと長生きしてワーグナーのような思想を反映した曲をどんどん作っていきたかったろうと思います。
志し半ばの夭逝は無念であったことでしょうが、手がけた楽曲が後世のドビュッシーやラベルに受け継がれ、今もなお演奏される機会があるのは冥利に尽きるでしょう。

作曲家の中途採用でもチャンスはある。
たくさんの遅咲きな音楽家への励みになる事例を遺していってくれたことは、早熟の天才から学べることとはまた違った意義があります。

チャンスを掴もうと手を伸ばすことに、遅いなんてことはない。
挑んだ分だけ確実に自分の環世界に引き込めるはずです。
そして、遺せるものが少なくても、その挑んだことが遺せれば、後世の誰かが賛辞し、贈与の感謝を思うことでしょう。
それこそ尊いものだと思います。

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