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【音楽×本 鑑賞録】"366日の西洋音楽" 2月8日~スティーブン・フォスター 金髪のジェニー

音楽観を鍛える鑑賞録。
2月8日 本日のテーマは、
【逸話】
とりあげる作品は、
スティーブン・フォスター /
金髪のジェニー
です。

いますぐ聴きたくなる! 1日1ページでわかるクラシック音楽の魅力
1週間で7テーマ! 1年で「クラシック音楽」の虜になる!
本書には、いまでも多くの人に愛好されているクラシック音楽の名曲の数々を、より深く楽しむための知識や情報を盛り込みました。366の名曲を、「音楽史」「主題」「ジャンル」「逸話」「作曲・演奏」「周辺」「謎」といった7つの共通テーマで考察・解析・推理・解説します。

スティーブン・フォスター(Stephen Collins Foster)
19世紀半ばの"アメリカ音楽の父"。
ゴールドラッシュの賛歌「おおスザンナ」、ミンストレル・ショーの代表曲「やさしいネリー」、「ケンタッキーの我が家」「主人は冷たい土の中に」など、わたしたち日本人にも耳馴染みのある歌曲を作曲。
1854年に「金髪のジェニー」がヒットするも、翌年親族の死去、借金生活で困窮が続く。
1864年に37歳で亡くなる。

とてもノスタルジーを感じる楽曲で、メロディーがわかりやすく、明るいのに切なさが胸にくる。
フォスターの音楽からはアメリカの当時の物語が読み解ける気がします。それは、いまも引き継がれて流れ続けている物語です。

フォスターの楽曲を聴くと、アメリカはもちろん、人類はだいぶ進化したと感じ入ります。
それでもいまなお一層求められることは、
リテラシーを育み、言動を慮る
ということではないかと思い知らされます。

今回取り上げられている楽曲、「金髪のジェニー」は、原題は"Jeanie with the Light Brown Hair(薄茶色の髪のジェニー)"です。
当時の翻訳された方も、フォスター自身も、現在の観点からすればアウトなタイトルです。もちろん、差別的意図はまったくなかっただろうし、むしろ愛らしいイメージを思ってこのタイトルをつけたと思います。
ただ、特徴を端的に表現し、偏見を助長することは否めません。
考えすぎだし、昔の話だからと溜飲を下げることはかんたんですが、この感覚を内包しながらも、いまならどう伝えればよいかと、言葉を磨いていくことが大切なご時世ではないでしょうか。
そして他者の言動や背景を慮れるリテラシーも求められます。
つまり、「経験に根ざした思考と言葉が通用しなくなっていく」ことが顕在化してきた気がします。
現在世界は、どんどん他者と話しづらくなり、格差や差別を目の当たりにするようになり、分かり合えず孤独に追いやられるような感覚を覚えるかもしれません。
しかしながら、人類が思考を持ってからというもの、「他者の気持ちはわからない」とずっと対峙してきました。そしていましばらくはこの「分かり合えない他者と共に生きる」ことと向き合わざるをえません。フォスターの時代も、現在も、この対人関係に常に苛み、これからも物語は続いていきます。

いまもフォスターの楽曲を聴くと、いい曲だなぁ〜と思うとともに、さみしくなるなぁ〜という感覚があります。この感覚を受け入れながら、それでも世界は美しいと思い、明るい未来を語れることができるように。
言葉をアップデートすることは、思考をアップデートすることと同義です。
この往復運動が人類を進化に導いてきました。そして、このエンジンである"慈愛"がわたしたちの世界に搭載され、駆動されることを願ってやみません。

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