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【音楽×本 鑑賞録】"366日の西洋音楽" 2月22日~セルゲイ・ラフマニノフ 『ピアノ協奏曲』第2番

音楽観を鍛える鑑賞録。
2月22日のテーマは、
【逸話】
とりあげる作品は、
セルゲイ・ラフマニノフ /
『ピアノ協奏曲』第2番

です。

いますぐ聴きたくなる! 1日1ページでわかるクラシック音楽の魅力
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本書には、いまでも多くの人に愛好されているクラシック音楽の名曲の数々を、より深く楽しむための知識や情報を盛り込みました。366の名曲を、「音楽史」「主題」「ジャンル」「逸話」「作曲・演奏」「周辺」「謎」といった7つの共通テーマで考察・解析・推理・解説します。
セルゲイ・ラフマニノフの名言
"The new kind of music seems to create not from the heart but from the head. Its composers think rather than feel. They have not the capacity to make their works exalt - they meditate, protest, analyze, reason, calculate and brood, but they do not exalt."
「新しい種類の音楽は、心からではなく頭から生み出されているようです。そんな作曲家は感じるのではなくて考えている。彼らは自分の作品を昇華させる能力を持っていない。熟考、抗議、分析、推論、計算、考え込みはしますが、高揚することはありません。」

セルゲイ・ヴァシリエヴィチ・ラフマニノフ
Серге́й Васи́льевич Рахма́нинов
ラテン文字転写: Sergei Vasil'evich Rachmaninov
Sergei Vasilyevich Rachmaninoff
1873年4月1日 - 1943年3月28日
ロシア帝国出身の作曲家、ピアニスト、指揮者。

ラフマニノフのなかでも代表曲であり、再起の曲、ピアノ協奏曲第2番ですね。
多くのドラマやタイアップなどで聴く機会がありますが、ピアノを弾けない自分だけがそう見えるわけではない、兎にも角にも超絶技巧の連続な楽曲です。
この楽曲制作の逸話としては、当時ラフマニノフは鬱傾向な自信喪失状態にあり、催眠療法を受けるなどで精神を快方して、1901年に完成させたそうです。
この楽曲を聴けば、ラフマニノフの精神性というものが垣間見えます。
熟考して作ったことは言わずもがなですが、それにも増して情動の赴くまま、人体の可能性を超えようという意志を感じます。
スコアを見れば、圧倒的な情報量であり、縦横無尽。オーケストレーションとの兼ね合いも併せもちながら、まさしく鬼気迫る楽曲。
美しく、情熱的であり、ロシアの豪傑さと悲哀も想起させ、稀代の感覚を音で現しています。

最初、上記の名言をみたときは、
「最近の若いもんは〜」という紀元前2000年から始まってる論考かと思っていましたが、さまざまなアーティストを経て聴き続けると、少しわけが違うと思うようになりました。
ラフマニノフの場合、やや狂信的な世界観から射抜かれているものの、それを材料にしての尽瘁的アートワークであり、ロシアのストイックさが傑出されていると思える。そこにはもはや言葉もない感覚を覚えます。

そんな楽曲を、ピアニストの辻井伸行さんがBBC Promsで弾いている動画があり、この31分53秒、ラストへ一気呵成の部分は感極まる。
「人間は可能性に溢れている」ということをまざまざと教えてくれる名演と楽曲。
根源的な人間の感性を滾らせ、燃え尽きるくらいアートに打ち込むアーティストの姿がある。
感動とともに、翻すことも難しく、もはや途方に暮れるしかありません。

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